愛着障害(反応性アタッチメント障害)を乗り越えるには?
反応性愛着障害は反応性アタッチメント障害ともいわれています。幼いときに、虐待(ぎゃくたい)やネグレクトなどを受けることによって正しいアタッチメント(愛着≒養育者とこどもの結びつき)が形成されないと,その後上手に人間関係を結べなくなることがあります。アタッチメント障害は基本的に安全が脅かされる体験があって、アタッチメント対象を得られない状態である。文字通り,養育者(両親など)との愛着関係(=きずな)がうまく形成されないことによる障害です。「アタッチメントは人間の赤子が生き延びるために必要不可欠なものである」 という 「アタッチメント理論」 を確立したのは,イギリスの精神科医のボウルビィとアメリカの発達心理学者のエインズワースです。人間として生きていくには養育者に守られて安心を感じながら、一方で自分の知らないものへの冒険や挑戦をやってみることが必要です。つまり、子どもが社会的・精神的に正常に発達するためには,少なくとも一人の養育者と親密な関係を維持しなければならないとボウルヴィは述べています。人間は社会的動物であり,ライオンなどの野生動物と比べて弱い身体能力を社会性でカバーして生き抜いてきました。そして弱すぎる自分を守ってくれるはずの存在が、養育者なのです。そして、人のすごいところは、次第に本物の養育者がいなくても、心の中で自分をまもってくれる養育者をイメージできるようになるのです。さらに養育者と似ている人を信頼できるようになっていきますし、「養育者でなくても,それらの人は自分を助けてくれるんだ!」という発見につながっていきます。その上、ひとりで物事に対処していくスキルも身につけ,社会の中で他人と助け合いながら自立していくのです。 ではもしもあなたが基本的な信頼感を持てないことで苦しんでいるならば、一体どうすればよいのでしょうか? 第1に自分の弱さを否定せずに認めてあげることが大切です。なぜなら、あなたにそんなつらい感じ方・考え方をさせているのは、養育者が原因だからです。あなたはちっとも悪くないのです。 第2に自分の考え方のくせを見つけると、それを直していきやすくなります。たとえば「どうせ人間なんて信用できない。必ず裏切ってくるものだ!」とあなたが感じているのを、はっきりと認められたなら、それは大きな成長への手がかりとなります。 第3に自分の考え方のくせを直してみることです。例えば認知行動療法などを使って、自分の考えを自分の助けになりながら、現実的な考え方に直して受け止めるようにします。たとえばさっきの例でしたら、「確かに人は信用できない人が多いし、裏切られたことも過去に何度かある。だが、信用できるような人間も世の中にはいるし、裏切らなかった人間も今まで多くいた。それに人を信用できるかどうかの方法を私は十分に学んでいない。よし、加藤諦三先生の本などを読んで試してみよう。」などに修正します。第4に自分から関係を作ってみることです。あなたから挨拶してみる。相手がどうやら好意的だと感じられた。ならば、あなたからちょっとだけ自分を開いてみる。どうやら受け止めてくれたし、変なうわさもながれていないな。じゃあ、もう少し個人的な話をしてみるかな?つまり、自分を傷つけないようにしながらも、ちょっとずつ慎重にあなたから関係を作ってみるのです。10人中9人失敗しても、1人成功したなら大成功です。なぜなら…★少なくとも一人以上の信頼できる親密な関係ができたら、精神的にとても楽になれるからでしたね。傷ついている人は、なおさら臆病になっているかもしれません。でもよかったら、あなたのペースでいいから、第一歩を踏み出してみませんか?【参考】『アタッチメント(愛着)障害と脳科学』 友田 明美先生児童青年精神医学とその近接領域 59( 3 );260─265(2018)