職場でいじめにあった場合の対処について
近年職場でのいじめが非常に増加しています。令和元年のいじめ・嫌がらせの民事上の個別労働紛争件数は87,570件にのぼります。これは10年前の約2倍の数字となっています。いじめは対象者の人生を不幸にし、生活の質を下げてしまう悪質な行為です。やめるべき行為だと私は強く感じますが、残念ながらいじめは無くなりません。人間には残念な言動をする部分があり、そうした心理的な問題を抱える人間が一定数存在するのです。さらには過酷な労働環境が、人をいじめへの加担に追いやることも珍しくありません。ですので今回は、もしもあなたが職場でいじめられたら、どのような対応ができるのか?について、助言していきたいと思います。ではまず最初にいじめの種類について確認しておきましょう。【いじめの例】・暴力をふるわれたり、暴言を言われたりする。・無視されたり、仲間外れにされるなど、あなたの存在を尊重しない。・業務上の無理難題を要求されたり、強要される。・業務上のミスを不要にしつこく追及されつづける。・仕事からはずされる。仕事をもらえない。・過度な仕事を強要される。残業を強要される。・失敗やミスの責任転嫁をされる。・自分の仕事上の成果・手柄を横取りされる。・休めない。・プライベートに過度の干渉をしてくる。・指導や教育のふりをして、痛めつけることを目的にする。ではどんなことが原因でこれらのいじめは起き得るのでしょうか?【いじめの原因の例】・自信がなく、他人の顔色をうかがっていて、おどおどしている。・欠勤、遅刻、病欠等を繰り返していて、負担が大きいと思われる。・ミスばかりしていて、能力が低く、負担が大きいと感じられる。・他人の意見を聞かない。可愛げがない。・自己主張的すぎる。・容姿端麗で成績優秀。特に嫉妬を招きやすいパターン。・相手はいじめる意図がないのだが、完璧主義的で容赦がない。・距離(物理的・心理的共に)を近づけすぎている。・相手の期待通り(例:思ったとおりにうろたえる、怒る等)に反応する。・敏感すぎる。臆病になっていたり、小さなことを大きくとらえすぎる。「うーん? 原因と結果というけれど、ごちゃごちゃになっていてよくわからないなぁ。。。」と思えたあなたは本質を捉えています。なぜなら☆いじめには公式がない。個性のある人間同士の関係性、その環境ならではの影響、それらが影響しあうので、無数の原因、いじめ内容があるからです。しかし!諦めることはありません。なぜならそれでも☆いじめとその原因にはパターンがいくつかあり、理解して対応することで善処可能だからです。いじめ対策の多くのウェブページは、対処法を列挙しているケースが多くみられます。もちろんこれでも効果があるのですが、より効果を上げる為にみなさんにしてほしいこと。それはいじめが発生する隠れた要素、土台のような部分を理解することです。【いじめが発生する隠れた要素】・いじめる側の人間には、殆どの場合何らかの心理的問題を抱えている。生育歴に問題があるケースが多い。つまり「いじめる奴の人間性が悪い」パターン。・いじめる側の人間は無力感、対人不信、対人恐怖、不安等を強く感じている場合が多く、それを一時でも消し去りたいために、自分より弱いと感じられる者をいじめて、自分の力を確認したい衝動が強い。安心を切望しているのです。・動物が集団活動を強いられるとストレスが発生し、その解消の手段として弱い者をいじめて解消しようとする行動が普通にみられること。そして人間は動物でもある事実。・ストレスが無いときには穏やかな人でも、高いストレス(職場環境が悪い)にさらされると攻撃性が増してしまうケースがあるという特徴。・人間は自分と似ている人、理解できる人には安心する。一方、似ていない人、理解できない人には不安や脅威を感じてしまう特徴がある。恐いから排除したいのです。・人間は自分が認められていて安心できる状態を強く望みすぎる、弱い存在の面がある。・いじめられる側も心理的問題・生育歴の問題などが悪影響を与えていて、ソーシャルスキル、協調性、共感能力などが著しく欠けている場合がある。その場合本人が自覚できていない場合もある。・いじめられる側にHSP等の特徴があり、それが不要に問題を大きく捉えさせている。要は人間は動物であり、いじめる側に心理的問題がある場合が多いのです。人間は安心したくて仕方がないのです。いじめられる側にも心理的問題やソーシャルスキル不足などがありえるという背景が、いじめ問題にはつきまとうわけです。それらを理解したうえで、主な対処方法を確認していきましょう。【主な対いじめ対策】・毅然とした態度をとり、相手に弱い存在だと思わせない。ただし注意したいのは、攻撃的で強いイメージふりをするのではなく、(覚悟を決めていて)穏やかな言動の中にも物怖じしないという芯の強さを相手に感じさせる点が重要となります。・社内の相談窓口、上司、上司の更に上の人間(上司等がいじめる人間、または問題解決力が低い場合)社外のカウンセラーなどに相談する。その際1.常日頃から冷静にいじめ内容を把握・記録しておく2.情報は時系列に整理しておき、登場人物も整理しておく3.相談の目的や自分の希望などを予め明確に決めておく4.相談される側が支援しやすいように、証拠を集めておく等を留意しましょう。企業には労働者をパワハラから守ったり、適正な労働環境で働かせる義務があります。企業に相談するという選択肢も、有効だと感じられる場合は遠慮することはありません。※2020年 改正労働施策総合推進法 施行(いわゆるパワハラの防止)※民法715条 職場環境配慮義務(企業は労働環境を適切に整える義務を持つ)・転職を実施する。ただしこれは最終手段にするか、このままでは精神的疾患に陥る等の重大な問題が発生している時に検討するもの(有効)であり、十分な対応をする前に実施してはキャリア形成にマイナスに働く可能性もあります。・仕返しをしない。誤解しやすいのは「×耐えればよい」という点です。相手と同じ土俵にたって、感情的に巻き込まれたり、心理的に距離を近づきすぎてしまったり、相手を思わず殴る等の暴力をふるったり等の問題を回避するためです。耐えるのではなく、穏やかに毅然と覚悟を持って言動するのでしたね。この為には感情的に(恐怖のあまり)怒ったり、怯えたりするのはマイナスです。証拠集め等もはかどりませんね。・仲間を作る。人間は群れを形成する動物として進化してきましたから、まだその本能は私たちに多分に残っています。可能であればあなたを支える仲間を作っていくことです。もちろん相談窓口の人間等でもよいのです。本能的に安心できますし、また強力なヒューマンネットワークがある人間は「強い人間」となるため、いじめにくくなりもします。・自分の言動をふりかえる。相手の劣等感をいつのまにか刺激していないか?確認してみましょう。たとえ相手に心理的問題があっても、大切なのは誰が悪いかではなく、いじめを無くす(低減する)ことができるかどうか?なのです。嫉妬深くて自信喪失の心理的問題者(いじめっこ)に対しては、あまり1.自分は周囲の人から信頼をもらっているすがた2.自分は家族・友人関係にめぐまれているというすがた3.自分は能力があり、それを発揮し、また磨いているというすがたを感じさせない対応もときには有効です。・自分のソーシャルスキルを確認してみる。例えば「みんなから挨拶してもらえない」と落ち込んでいる人に限って、自分からまず挨拶するというソーシャルスキルが無かったりします。また挨拶の仕方も研究すれば意外と奥深いものです。(例:アイコンタクト、声の調子、相手の状態に合わせる等)近年はソーシャルスキルについての本もたくさん出ていますから、研究してみると良いでしょう。私のサイトにも情報は載せてあります。(ソーシャルスキル関連その1 その2)【終わりに】確かにいじめは卑劣な行為です。場合によっては非常に悪質な言動な場合もあり、労働基準監督署、弁護士、カウンセラー、警察等の協力が必要不可欠であるケースもあります。しかし、いじめはあなたの生き方・姿勢・対応力・成長力を問われている面もあることを忘れないでください。そして、あなたには対応力や、眠っている対応力が確かにあるのです。最大の理解者は自分自身です。今回の情報を活用しながら、自分を自分で支えつつ、適切な方法を選択・実行してもらえることを願っています。そしていじめが無くなったり、大幅に減ることを願っています。またあなたの最善を尽くしてもいじめがなくならない場合は、自信をもって転職等をしてもいいのです。それは「問題解決的回避」だと言えるでしょう。参考サイト:『労働問題弁護士ナビ』『Cheer』『TSL MAGAZINE』『徳島労働基準監督署WEBページ』『CAREER PICKS』『Life hacker』【追記】思いついた内容を追記しておきます。参考にしてください。1.認知行動療法を使って自分の思い込みを修正することで、いじめられている被害の度合いを低めることができます。例えば「あいつは必ず無視しやがって。許せない。もうこんな職場で働くのは我慢できない!」→認知行動療法による修正→「自分が挨拶をした相手は、自分にも公平に挨拶を仕返すべきだ」「人を大切にしない人間など存在するべきではない」等の非現実的な思い込みの発見→「あいつはいつも無視してくるけど、BさんやCさんはしてくれるな。無視されるのは残念だけど、仕事に大きな支障はないし、○○のメリットもあるから、今後も気楽に仕事を続けるか。」2.交流分析を使って、相手の性格に合わせた対応をすることができます。例えば相手がA偏重(情に薄いが、論理的かつ合理的)ならば、自分も相手に合わせて合理的な提案等を行う。相手がFC偏重(こどもっぽい)ならば、馬鹿話をくだけて雑談する時間につきあう、など。3.対人関係療法を活用して、相手を必要以上に重要視しない。言い方が悪いけれど「仕事で利害が絡むから、仕方なく相手してやっているだけ」などと納得できれば、心理的距離が遠くなるので楽になります。物理的な接触が減らせれば、いじめの量自体も低下させることが期待できます。4.自己主張をするさいに、相手のプライドを傷つけないような表現方法を実行します。アサーションなどがあります。アサーションはちょっと演劇っぽい部分もあるので、本質を守りながら自分流に表現をアレンジするとよいかもしれません。5.各種コーピングを実践して、そもそも自分の心身を充実させておく。心と身体は繋がっているので、心身の調子がよいと、ストレス耐性が増えたり、回避や受け流しが上手になったり、冷静になりやすくなったりします。6.ADHD等のハンデを抱えている場合は、精神安定剤や漢方などの服薬を実施して気持ちのコントロールを補助する方法があります。詳しくは受診の際に医師にきいてみましょう。7.自分にも問題の「誘因」があると思える場合、ソーシャルスキルを学んで即時効果を得る方法や、心理的問題を根本から治療する方法があります。後者の場合は、例えばアダルトチルドレンの自分を発見しつつ、エクスポージャー療法で幼少期等のトラウマを治療する場合などが挙げられます。8.軽いいじめ程度で済んでいる場合、相手の望んでいることを実施したり、相手の置かれている労働環境の改善を手助けしたりすると、いじめが軽減する可能性があります。ただし冷静に賢く対応しましょう。相手のいいなり・心理的に服従する等にならないように注意しましょう。