ソール・バスの映画タイトルワールド
「ソウル・バス」で検索するとソウルの市内バス情報が出て来ますが、「ソール・バス」と打つと「グラフィック・デザインに革命を起こした男」として出てきます。彼は商業デザインの世界で多彩な活躍をし、特に彼が手がけた数々の有名企業のICマークは我々も日常的に馴染んでいます。しかし何と言っても彼の一番の業績は映画のタイトルデザインでしょう。映画好きの人なら、オープニングタイトルだけでもワクワクするような作品の数々を上げることが出来るでしょう。時には映画本編よりもずっと印象的なタイトルもあることも。初期の映画では、最初にタイトルや制作関係者の名前が簡単に表示されてましたが、関連する人物や企業が増えると共に、タイトルが長大化し、延々と文字が続いて退屈することもありました。これを彼は視覚的に面白くするだけでなく、映画の内容を暗示し、観客を本編に引きずり込む効果をももたらしました。この手法は現在、我々が楽しんでいるTVドラマやプロモーションビデオに引き継がれています。そんな彼のタイトルデザインの代表作を集めてデザイナーの西岡りきさんが講演会を開いてくださいました。以前からタイトルデザインの素晴らしさを語っておられたので、おもちゃ映画ミュージアムが企画したのです。昨年と今年の2回にわたった講演会はとても見応えがあり、上映後の懇談会でもいろいろと盛り上がりました。ソール・バスの代表作は「黄金の腕」。印象深いジャズとともに白いラインがリズミカルに文字を呼び出し、最後に折れ曲がった腕に変化する。麻薬と暴力で歪んだ腕が作品の強烈なシンボルとなっています。Saul Bass-opening credits- 'The Man With The Golden Arm' (1:27)(曲はエルマー ・バーンスタイン作曲で、ショーティ・ロジャーズのトランペット、シェリー・マンのドラム)また彼はアニメーションも手掛け、「80日間世界一周」や「おかしなおかしなおかしな世界」ではタイトルというより、一つのアニメーション作品として成立するほどの出来です。It's a Mad Mad Mad Mad World - title sequence by Saul Bass (4:11)「ウエストサイド物語」のラストタイトルには街の落書きや標識が使われ、「ザッツエンターテイメント」ではタイトルアイデアの総集編といったかたちで、盛り沢山のアイデアで出演者が紹介されていました。ここまでいろんなアイデアが出るかと驚く程、ソール・バスの柔軟な感性は深いものだと感心しました。Saul Bass title sequence - That's Entertainment, Part II (1976)彼はまた、タイトルだけでなく、映画本編にまでかかわったそうで、「サイコ」のシャワー室の殺人シーンのショット構成や、「スパルタカス」の戦闘シーンなどのスクリーンシナリオを書いたそうです。改めて見直してみるとなるほど、映画本編のカット割りとは一味違ったキレのいい画面構成でした。現在では様々なアイデアにとんだタイトルシーンが生み出されていますが、そのきっかけを作ったソール・バスの偉業をじっくり見直したひと時でした。ところで、彼はこんなフィルムも作ってました。なんとドアーズのデビュー曲「ブレイク・オン・スル―」です。まさにプロモーションビデオの走りです。(当時は映画フィルム)とても意外な堀出しモノでした。ドアーズのデビュー曲のプロモフィルム/Break on Through - Saul Bass