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ゴッホの死とピストル、山田五郎説

ゴッホの死については、本人が自分で撃ったと言ってるので自殺とされています。しかし不審な点も多く、これを疑問視する声は当時からありました。それが10年程前から他殺説が話題となり、それらしい拳銃も畑から発見されるなどして議論が交わされるようになっていました。今年の5月には原田マハさんも小説「リボルバー」を発表してゴッホの最後を描いております。そんな状況の中、山田五郎氏は「オトナの教養講座」で「カウボーイハットの男」犯人説を解いています。ネタ本は2011年に発表されたスティーブン・ネイフとグレゴリー・ホワイト・スミスの共著の「フアン・ゴッホの生涯」で、ナルホドと思わせる証拠や証言もあり、筋は通ります。そうなると最後まで犯人をかばって「誰も責めないで下さい。」と言い残したゴッホの人間性が浮き上がってきて、いっそう心を打たれました。私としてはこれが真相だと思いたいですね。【死の真相】ゴッホは自●か他●かそれとも…？【カウボーイハットの男】＊他殺説の詳細については、下記の河内さんという方の美術ブログが参考になります。「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ死の真相に迫る！ゴッホは本当に自殺したのか？（前編）」「ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ死の真相に迫る！ゴッホは本当に自殺したのか？（後編）」＜追記＞ゴッホはもともと牧師を目指していたので自殺は罪というのは知っていたはずです。それでも自分で撃ったと言い張って息を引き取る。そのため村の教会からは葬儀を拒まれます。弟のテオは仕方なしに、荒れ果てた墓地の一角を買って葬ったそうです。そのテオは心労のためか、その翌年に亡くなります。残されたのはテオの妻と生まれたばかりの赤ん坊。亡くなってからも不運がつきまとうゴッホでした。------------------------------------------------------------前のページ／ 20220716 絵画をめぐるドラマもたまらない「オトナの教養講座」次のページ／ 20220718 みのさんのビートルズ解説動画にときめく ------------------------------------------------------------

2022/07/17

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「オトナの教養講座」の絵画をめぐるドラマもたまらない

先日採り上げた「オトナの教養講座」は2021年の正月から始まっており、これまでで80テーマを越えますが、現在はダイジェスト版が続々出てます。今後は絵画意外の分野もどんどん出てくるのでしょう。山田五郎氏はBS日テレの「ぶらぶら美術館」シリーズでおなじみ。今回の企画は作品別に掘り下げて解説した動画ですね。なので、いつものくだけた口調で、絵に詳しくない人にも分かるように解説します。そのお相手がスタッフのワダさんという秀逸なキャラです。アカデミックな教養講座では決して見られない大ボケがたまりません。「そこ？？！」と絶句する山田氏はいっそう説明意欲を刺激されます。「ぶらぶら美術館」では、おぎやはぎの二人がこのボケ役でした。「こんなヘタな絵のどこがいいの？」と素人丸出しのコメントを出し、それに対して山田氏が「あのねー、」と説明する。それが専門的になりがちなこの手の番組に分りやすさと親しみを与え、日常的な会話レベルに引き下ろしてくれます。ところがこのお二人、10年を超える年月で目が肥えて、今ではいっぱしの評論が出来るようになってしまった。ボケ役がいなくなったらあかんやろ！その点、このワダさんは完璧です。　さて、この絵画解説編では絵画をめぐる様々なドラマもわかりやすく語ってくれます。画家たちの人間関係、印象派やナビ派の誕生秘話、などです。また、印象派が酷評されたという新聞記事の意外な新解釈もとても興味深かったです。好青年画家【バジール】印象派誕生のきっかけになった人！印象派は当初ディスられたは嘘？当時の新聞記事の全貌を解読したらまた、真作と贋作、パクリとコピーの違いについて、いろいろ考えさせられる事件。関連する人間達のドラマはまさに小説よりも奇なり、でした。【メーヘレン事件】英雄か詐欺師か？ナチスを騙した天才贋作者！【フェルメールの贋作】【メーヘレンの人生とは？】なぜ贋作を次々と自白！？反骨心から生まれた贋作魂【贋作事件】日本も騙された偽ゴッホ！オットー・ヴァッカー事件とは？絵画の世界はほんと、奥深いですね。＜オマケ＞【期間限定公開】エッシャー人気を仕掛けたのは、まさかの少年マガジン！？【日本でのエッシャー人気】 ------------------------------------------------------------前のページ／ 20220708 腑に落ちる山田五郎氏の絵画談義「オトナの教養講座」次のページ／ 20220717 ゴッホの死とピストル、山田五郎説 ------------------------------------------------------------

2022/07/16

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腑に落ちる山田五郎氏の絵画談義「オトナの教養講座」

「腑に落ちる」という言葉がありますが、これほどぴったりした表現はないと思うことがありました。山田五郎氏がYOU-TUBEで発信している「オトナの教養講座」での体験でした。ルソーの奇妙なちょい足しサービス！？&送りつけ問題【ルソー解説第３弾】私も幼い頃から美術館や画集で数えきれない程の絵画を鑑賞してきました。好きだけでなく美術系の学校だったので画家の友人も多く、環境的にも絵画美術には縁が深かったのです。しかしながら様々な絵画を眺めても、その内容や趣旨をしっかり受け止められた作品は多くなく、大半の作品は理解や納得ができないままにスルーしてきました。なので美術関連の書籍や評論もそれなりに読みました。坂崎乙郎の「幻想芸術」とか、岡谷公二の「楽園の謎」とか、ケネス・クラークの「芸術と文明」などは今も大事に持っています。あとはすっかり忘れましたが、当時の読書メモを見ると東野芳明とか、中山公男、中原佑介、針生一郎などの人の解説にも目を通していたようです。しかしそれらは概して哲学的な感じがして、消化不良なまま、今に至っていました。ところがです。山田五郎氏が歯に衣を着せないでずけずけと解説するこれらの動画を見て、ナルホドと胸のつかえが下りました。ルソーの絵のどこが面白いのか、西洋絵画にやたらと出てくる裸の女性、なんでタヒチまで行ったの？、モローの首の絵、セザンヌの落ちそうなリンゴ、ボッシュの謎の怪物などなど。様々な名画に漂っていた長年のモヤが晴れてすっきりです。物心ついて70年間、今まで私は何を観てきたんでしょう？おかげで改めて画集のページを繰るのが楽しみになりました。一方で、ドガやロセッティの動画は..、見なかった方がよかったかも..。好き嫌いが分かれる解説動画でしょう。でもとっても面白かった。＜「オトナの教養講座」の一例＞【マネ】「草上の昼食」この女性はなぜ1人だけ裸なの！？【問題作】破滅が成功の鍵？【ゴーギャン】実はゴッホ以上の闇深画家！【説教の後の幻影】怖い絵シリーズ【モロー】恐怖！なんで生首浮いてるの…？【出現】【現代絵画の父】セザンヌのリンゴはなぜ落ちない？【実は〇〇っぴ】【廃墟の絵】滅びの美よりも深い意味！？ドイツとゲルマン人の歴史がまる分かり！【フリードリヒ】日本人はなぜミュシャが好き？【山田五郎が解説】＜その他＞モネ「日傘をさす女」消えた少年【山田五郎が解説】大量に描かれるナポレオン肖像画の謎にせまる！【ジャック＝ルイ・ダヴィッド】【ジョージアのアンリ・ルソー】泣ける！放浪の画家ピロスマニの悲劇【加藤登紀子・百万本のバラ】なんでチ◯ビつまんでるの？実はあの大天才とも関係！？【フォンテーヌブロー派】レンブラント「夜警」不気味な少女の正体を追え！【山田五郎が解説】etc.------------------------------------------------------------前のページ／ 20220503 明治頃の武者人形次のページ／ 20220716 絵画をめぐるドラマもたまらない「オトナの教養講座」------------------------------------------------------------

2022/07/09

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寒山寺の拓本の奇妙な文字

なんやね！この「鐘」の字。昔から気になっていることがあります。それは友人から中国土産にもらった拓本。有名な蘇州の寒山寺の七言絶句「楓橋夜泊」です。ところが、立派な文字が並ぶ中、１か所だけくにゅくにゅっとしたミミズのような文字が混じってるのに気が付きました。「鐘」という字なのですが、何ともやる気がない！うーん、中国の土産物だからなあ。拓本取るのに失敗して、印刷屋のオヤジがよっしゃ、いてまえ！とちょこちょこ書き込んで売ってしまった。どうもそんなシロモノのようです。髙い金払って掛け軸にまで仕立ててしまって失敗だった。とがっくりしていました。あれから40年、床の間の掛け軸を眺めながら何気にネットで確認してみたら、なんと本家の寒山寺の石碑までもが、くにゅくにゅではありませんか。もともとこの石碑は、明代に文徴明の書で彫られていたが、損耗して、清の時代に兪樾(ゆえつ)が彫り直したとあるので、この時からこのままなんでしょうね。驚いたが誰もこの件について取り上げてる人はいません。出てくるのはこの詩の内容や寒山寺のいわれ、作者の張継などについての疑問ばかり。ま、これはこれでおもしろかった。詩は抒情的で静寂感に満ちて、私のお気に入りですが、月が落ちたら何も見えないやん、とか、夜中に鳥が鳴いたり鐘をついたりしないよ、とかいろいろ疑問反論があり、今なお決着はついていない。そして、作者とされる張継はこれだけの名詩を残しながら他の詩は何も残ってない。寒山寺とはどこにでもある寺のことで、蘇州の寒山寺とは限らない、どうも後世で同名のこの寺にこじつけたらしい。などなど。そんなあれこれはともかく、この鐘のくにゅくにゅ文字問題については誰も取り上げてないので、あえてこの場で提示してみました。しかし待てよ、ここに至ってちょっと思いつきました。書については圧倒的な歴史と伝統のある中国のことです。生半可な理由でこんな変な書体を挿入するはずがない。石碑は明代に文徴明の書で彫られてます。それが耗激しく、3～500年後の清代末期に考証学者の兪樾(ゆえつ)が翻刻したとあります。翻刻とは文字や内容を変換するという意味ですが、それならば兪樾の書体にて自由に書けばいい。ところがこんな文字を使っているところを見ると、兪樾は文徴明のオリジナル書体で刻印しようとしたのではないので、しょうか？ところが鐘の字がひどく損傷し、オリジナルの書体が判別できなかったので、兪樾は勝手な書体を使わず、あえてくにゅくにゅに崩して書きとどめた。そのためか、鐘以外にも何か所か、変な部分があります。この事を言い換えれば、全体の文字はオリジナルの文徴明の書を写しているわけです。まあ、門外漢の私としてはとりあえずそう考えておきましょう。真実をご存知の方がおられましたら、どうかご教授下さい。＊ちなみに、参考までに文徴明のオリジナルの書と比較してみました。　寒、天、江、半などの文字、なんとなく似てませんか？（翻刻した兪樾は篆書が多い人だったので、隷書のサンプルは見つかりませんでした）（追伸：素人の暴論なので専門の方々に不快な思いをさせましたらお許し下さい） --------------------------------------------------------前のページ／20191014／ジェリー・マギーさんのフィンガー・ピッキング次のページ／20191108／寒山と拾得が残したもの--------------------------------------------------------

2019/10/24

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同じ画家に心惹かれて、西澤知江子さん

日頃、絵の話などめったにしない弟が珍しく絵について語り出しました。たまたま見かけたデパートでの絵画展。光の具合がとても美しくて、テーブルの上に置かれたものがくっきりと映えて、樹木や花やカーテンがとてもリアルで..、と延々と続く。印象派のような絵なのに、日本画の画材で描かれているのもユニークだと。え？とそれまで流して聞いていた私が聞き耳を立てました。女性の絵描きさんでたしか西なんとかさん...私は本棚に行き、ストックファイルから１枚の絵ハガキを取り出して差し出しました。これかい？彼の声が途切れ、　え？なんで持ってるの？　この人知ってるの？私もそれほど頻繁には街の画廊を訪れることはありませんが、昨年末、知り合いのグループ展に行った際に、みんなが近くでやってる個展がすごいと噂していたので、興味を持って訪れていたのです。西澤知江子さんという方の個展。絵も素晴らしかったが、描かれた庭園やインテリアがまた素敵だったので、作品が欲しいと思ったけれどとても手が出ない。で、せめてもと絵ハガキを頂戴し、大事にアルバムに保管していたのです。確かに魅力的な作品でした。とても趣のある庭やテラス、室内が豊かな植栽や花で満たされ、陰影に富んだ光りが差し込んでいます。精緻な筆使いと深い色彩。しかしこの絵は一見、印象派的な油彩に見えるのに岩絵具を使われてるそうです。日本画で使われる岩絵具はどちらかというと表面(マチエール)が乾いた質感になるのに、西澤さんの絵は油彩と思ってしまう程の色艶が感じられます。元は油彩を描かれていたそうで、光りを表現するために岩絵具を使われているとか。確かにこれは成功しているようです。何より、描かれた空間に入り込んでくつろぎたいという感じになるんですね。人物が描かれてないのに人のぬくもりも感じられます。絵画作品の役割のひとつに、人の感情に寄り添うことがある。西澤さんの作品はそんな、人を爽やかな気分にしてくれる絵だと思います。好みも生き方も違う兄弟二人が、まったく期せずして同じ画家に感動するなんて、不思議な出来事でした。

2018/05/02

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従弟が亡くなった理由／京都国際写真展2017より

これほど重くて切ない写真展はなかったです。京都国際写真展のひとつ、改築中の新風館の一隅で開かれた吉田亮人氏の個展「Falling Leaves」です。展示された写真は吉田氏が彼の従弟(いとこ)とそのおばあちゃんが暮らす日々を記録したものです。両親が多忙なため、おばあちゃんの愛情を一身に受けて育った従弟はそれを感謝し、「大きくなったら自分がおばあちゃんの世話をするんだ」と公言し、大学に通うようになってその通りにしました。祖母と孫、二人きりの生活、食事や風呂の世話までの日常が沢山の写真作品となりました。しかしある日、祖母が「あれ、バイクで行ったきり、帰ってこんわあ」とぼんやり窓辺を見ていました。そして1年のちに彼は山の中で発見されます。彼の死の原因も理由も全く分からないまま、気落ちした祖母はその１年後に亡くなります。吉田氏は迷いながらもこれらの写真を公表することにより、二人が生きた証を残したいと思ったそうです。私は写真芸術には興味が薄いので、この展示も買い物の途中の駆け足での鑑賞でした。なので会場で展示作品のいきさつを知り、愕然としながらも、ざっと写真を鑑賞しました。しかし最後の小部屋の意味が解らず、釈然としないまま会場を後にしました。その日の夜、その写真展についてぼんやり思い起こしていてやっと気づきました。最後の小部屋は従弟が亡くなった山中だったのですね。樹木や落ち葉らしき陰影に囲まれ、天井には明り取りの丸い穴が開けてあったのですが、この穴は彼が昇天した穴だったのかもしれない。翌日ネットを探ると、報道記事やブログなどに、この展示会の構成がちゃんと書いてありました。のどかな日常生活の写真をぐるりと見ながら、最後に彼が他界した空間にたどり着く、という巧みで効果的な構成でした。BuzzFeed NEWS／祖母と生き、23歳で死を選んだ孫。二人を撮った写真家は思う京都案内人のブログ／おばあちゃんと孫の物語さて本題ですが、なぜ従弟は大事なおばあちゃんを見捨てて死を選んだのか？　誰もそのことは語っていません。もちろんいい加減な詮索は失礼です。しかし、状況はかなり違いますが、同じように母と暮らす私には彼の気持ちの一端が分からないでもない気がします。もちろん勝手な憶測で申し訳ないですが、その従弟さんは祖母がいなくなる日を恐れたからではないでしょうか？彼は祖母に庇護されて育ったが、そのまま、今度は庇護する方の立場の生活に入ってしまった。彼には自分の人生を歩む期間がなかった。また祖母との二人の密接な生活が続いた。これはとても睦まじい事ながら、彼が独立する期間、祖母と距離を取る機会がなかったということ。そんな状態で、突然祖母がいなくなったとしたら..。自分ひとりで生きていけるのかという恐怖。一人ぼっちになる喪失感と孤独感、何を拠り所として生きればいいのかという迷い。そんな日々が刻々と近づいてくる。達者だった祖母は弱々しくなり、記憶もおぼろげになり、会話も通じなくなる。祖母はだんだん遠ざかり、そこにいるのは昔、祖母だった一人の老人。そして最期の日がじわじわと近づいてくるのを感じる毎日。その先には真っ白な自分の生活。そんな状況と向かい合うのは、彼にとって狂おしいほど辛い日々だったのではないでしょうか。私のように、仕事や家族や趣味などを一応経てからの介護とはまったく異なる環境。それが彼の不運だったのでは？ほのぼのと見えながら、23歳には重すぎる環境だったのでは？当然、他にも幾つかの要因があったかも知れないし、真実はわかりませんが、とりあえず簡単に「謎」で済ませるのでなく、そんな風に考えて、私は胸のつかえを取り除いています。それでもずっしりした胸の重さはかわりませんが。とにかく、いろいろと意見する人はいますが、これを作品として仕立て、公表した吉田亮人氏には感謝します。

2017/05/17

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通りがかりのメープルソープ写真展

母の薬をもらいに行った帰りに、室町通りの帯の誉田屋(こんだや)さんの前を通りがかると、なんとロバート・メイプルソープの写真展をやってました。今は「京都国際写真祭 2017」の時期だったのですね。日常のひと時のいい拾いものでした。ロバート・メイプルソープは写真界だけでなく、アートや社会にまで影響を与えた写真家で、アーティストらしい尖った生き様が作品からも感じられますが、とにかく白と黒のコントラストが美しい。ただ私の目的は写真だけでなく、会場である誉田屋さんの建築空間。中央の通り庭を挟んで北と南に建屋があり、通り庭の突き当りに倉がある。いつもは独特の空間にリノべーションされた「黒蔵」での展示が多かったが、今回のメープルソープ展は南の棟の「竹院の間」。こちらも多目的空間に改造されているが、かっての趣きは残っており、庭を隔てた奥の間に通じる廊下のしつらえがとても美しい。もうひとつの拾いものは二階で展示されていた帯展。誉田屋さんの十代目の山口源兵衛氏の渾身を込めた作品。海外からの生活文化と技術の波をかぶった和装の文化。その様々な技法を極め尽くそうとした作品の数々。和装の帯の超絶技巧を駆使しておられた数々の作品。こちらも写真展に合わせてか、ほぼモノクロームの展示。黒地に金糸を盛り上げて織られた渦巻き文様、若冲に挑んだ真っ白な大輪の菊、水の中から浮かび上がる鯉。そして目を奪われたのが、真っ白に咲き誇る藤の花にびっしりと群がる黒い蜂の群れ。どれもがじっくり見ないと見落としそうな繊細な技だが、まさに技の粋を尽くして織られた名品ばかりです。帯という世界でこんなことが出来るのかと感心しました。世界を驚かせた日本の技。ロンドンのヴィクトリア＆アルバート美術館にも展示されているいう誉田屋の技の凄さを味わったひとときでした。誉田屋源兵衛「KYOTOGRAPHIE 京都国際写真祭 2017」会期：2017年4月15日(土)〜5月14日(日)　※休館日 4月24日(月)メインプログラム会場：・ロバート・メイプルソープ - 誉田屋源兵衛「竹院の間」（入場無料）・イサベル・ミュノス展- 誉田屋源兵衛「黒蔵」（入場料\800.）・アーノルド・ニューマン - 二条城二の丸御殿台所・ラファエル・ダラポルタ - 京都文化博物館別館・荒木経惟 - 両足院(建仁寺内)・フランス国立ギメ東洋美術館古写真コレクション - 虎屋京都ギャラリー※虎屋京都ギャラリーのみ5月15日(月)まで開催。

2017/04/28

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自然から色をもらったクレヨン

絵描きにとっては絵具は自分の好む色を出すことが最大の条件。私の知り合いの画家Iさんは、欲しい色や風合いは自分で作られます。様々な素材や溶剤を練って作る。その中にはルネサンス期の文献による製法まであります。それ程の手間をかけた彼の絵は、そこらの画家さん達とは比べ物にならない程の深い絵となってます。しかし一方で、限られた表現方法で作品を描く手法もある。思うように表現出来ないことが、かえって作品に独自の味わいをもたらす。これもそのひとつではないでしょうか。花や草、土や貝などの、自然素材から色を抽出したクレヨンや絵具。クレヨンは蜂の巣から取った蜜蝋で固め、絵具はアラビアゴムを混ぜ、胡桃の殻の器に入れてあります。これらは北海道の川上郡にあるTuna-Kai(トナカイ)という工房が制作しており、これに賛同したアーティストたちがその画材で作品を作ってます。今回はおもちゃ映画ミュージアムでの企画展ということで、それぞれが映画を題材に作品を寄せてくれました。クレヨンが生まれる元々のきっかけは、石油アレルギーを持つ子供たちに絵を楽しんでもらおうという思いからだったそうです。しかし、色数は限られるがナチュラルなトーンを持つ絵具の色合いが、人々を魅了し、全国にまで広がり始めています。「手作りクレヨン工房トナカイ」のIさんは現在、樹木からの色の抽出に取り組んでおり、何日も様々な樹皮を煮込んだりして奮闘中だそうです。出来るかどうかよりも、とにかくやってみる。その真摯な姿を想像すると、ちょっぴり心が温かくなります。「Tuna-Kaiと13人のアーティスト「映画」を描くin 京都」展は8月28日まで、京都の「おもちゃ映画ミュージアム」にて。

2016/08/20

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ランチのあとのヤンセン・モンスター

土曜は母のデイサービスの日。何とか支度して送り出し、夏物やシーツを洗濯して一段落。空を見ると抜けるような青空。どこかでランチをするかと、自転車で出かけました。しかし週末なのでいい店が見つからない。そういえばと堀川商店街に行ってみると、昨年に出来た「京極ダイニング」が開いてました。このお店は堀川周辺のまちづくり事業の公募で出来たカフェ＆食堂だそうです。近所のお店で買った食品を持ち込んでもＯＫで、フリーWi-FIも備えているという、大変ありがたいお店でした。バーコーナーのタイルが美しく、なかなかいい風情でした。が、並んでいるお酒類が寂しく、もうちょっと充実すればいいのに、なんて思いながら、チーズの固まりが入ったハンバーグをほおばりました。美味しかったよ。ここ、気に入りました。そして、食後のコーヒーを飲みながら先日もらった京都映画祭のパンフレットを眺めました。１５日から始まっており、おもちゃ映画ミュージアムさんも連動されてます。しかしパンフを見ると、ごちゃごちゃといっぱいイベントがあり目移りするばかり。申し訳ないけど、結局何も参加しないで終わりそうです。するとアート部門に目が留まりました。あれ？テオ・ヤンセンだ。彼のモンスターが来てたのだ。場所は、市役所前。こりゃいかんと、さっそくコーヒーを飲みほして自転車を飛ばしました。すでに市役所前は沢山の人。大きな「ストランド・ビースト」が広場に中央に据えられていたが、決まった時間しか動かないようだ。残念。しかし私は３－４年前に東京のお台場でのヤンセン展を堪能してるので、ま、形だけ見るのでもＯＫ。（詳細はこちらを、20110201 水辺の巨大生物たち)特設ステージではお笑いタレントさんが大声でしゃべっていて、又吉さんがもうじき来るとか言ってましたが、私はこの怪物にしか興味ない。（いや、又吉さんは昔から好きでしたが）近くのテント内を覗くと小型のビーストの模型を売っていて、子供たちが一生懸命作っている。そして出来たのを扇風機の前に置くとのこのこ歩き出した。一緒にいたお父さんが「あ、そういうことか。」と感動してました。訳もわからず子供に付き合ってたようです。いいねえ。この子たちがいつか、もっと面白い物を作り出してくれるのを、楽しみに待ちましょう。ご参考動画：　テオ・ヤンセン展－砂丘の生命体－

2015/10/18

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友人、知人の作品群に圧倒されて

このところ友人・知人の個展や作品を見せてもらう機会が続きました。会社をリタイヤしてから本格的に打ち込んだ人達の絵画や工芸の世界。とても興味深いものですが、どれもがかなりのレベルなので、自分もやりたくなるというよりは、打ちのめされて手を出す気にもなりません。会社の上司だった池島従孝さんの墨絵会社の先輩だった武林進平さんの水彩会社の先輩だった西村さんの自宅工房でもらった木工作品その他、上司の遺作や友人の切り絵、油彩など様々な力作をギャラリーやアルバムで堪能。学校の先輩で日本画家の澤野慎平さん、今月は東丘社展で新作を見せてもらいましたが、１月に開かれた回顧展では、今日に至る画業の歩みをじっくり拝見。澤野さんと過ごした下宿屋の日々も懐かしく浮かんできました。

2014/06/07

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富良野のガラス屋さんの生き方

「ふらののガラス屋さん」こと山口一城さんは今、71歳私が入社した頃は、山口さんは関係会社の社長さん、一見コワモテなのにとても人懐っこい人柄、年代物のトヨペットコロナ・シングルピックアップを乗り回し赤と緑のチェックのシャツに真っ赤なジーンズコテコテの大阪弁で「わらべの心を持ちなはれや」と解く。商品開発業務ではいろいろと厳しい要求に応じてもらっていたが、ステンドグラスを学び始め、ユニークな照明の作品を生み出しあちこちの施設に納入したりして、どんどん自分の世界を広げていく私は山口さん主催のパーティで様々な分野の人々を紹介もらったり、幾度か飲みに連れて行ってもらったりする数年。ドイツのハノーバー見本市の時には、宿が見つからなかったのか、突然、私達の民宿にころがり込んで来て、一緒のベッドで寝た事も。(汗！)ガラス制作に打ち込む山口さんにお堅い業界は合わなかったのか突然、会社を弟さんに譲って山口さんは日本一周の旅に。それっきり20年近く音沙汰なし。北海道でガラス作品を作っているという風のたよりだけ、あるとき札幌行JALの機内ビデオで、山口さんの顔がアップ。コーヒーを吹き出しそうになって見たら、北海道のアーティスト紹介、すっかり富良野の有名人になってました。現地営業所で山口さんの事を聞くと、みんなちゃんと知っていて、営業所長とも親しくしているとのこと帰ってネットで探すと著名人も含め様々な方々と交流されているさすが幅の広い人脈の持ち主。自然と人を引き寄せる魅力もお持ちだ。先日、山口さんが大阪のイベントに来ると聞いたので、梅田の阪急デパートの北海道物産展に出かけました。20年ぶりにお会いした山口さんは、お歳は召してもまだまだ情熱的。真っ白のコットンに身を包み、ガラスの蝶ネクタイがお洒落。さほど大きくない出店ブースには何人もの若い女性スタッフが。穏やかな笑顔で「みんなが私を助けてくれるんですわ」と嬉しそう、がむしゃらに自らの道を歩んだ人は、安住の地を得て幸せそうでした。ふらののガラス屋さんのご案内

2014/05/02

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ワケわからんが楽しめる映像アート

TVのニュースでちらっと紹介された現代美術のイベント。その雰囲気に興味ひかれて足を向けました。ウィリアム・ケントリッジという作家の映像インスタレーション。肺のように動き続ける大きな構造物が中央に置かれ、周辺に映像が映し出される。この作品を私なりに強引に解釈しますと、ノーマンロックウエル　のカリカチュア化された人物描写と藤城清治のお伽噺のような影絵で描かれる人間たちの営々たるいとなみとでも言いましょうか。ケントリッジは南アフリカの作家で社会問題を題材に、手描きの絵による映像を作っていて、結構シリアスな作品が多いようですが、今回は時間をテーマに活動写真風メルヘンチックに仕上げてます。この作品は「時間の抵抗」と題されてますが、永久運動的な映像以外では「時間」を思わせる表現は感じられず、ちょっと肩すかし。中央の構造物と映像との絡みもなく、私的には物足りなかったが、それでも結構楽しめました。南アフリカのダンサー、ダダ・マシロの魅力にもよるのでしょう。それよりも何よりも、音楽がよかった。ブラスと太鼓による原始的粗野なマーチ。今も耳の奥で響いている逞しい音。これで500円なら、金返せなどとは絶対言うまい。それにしても開催場所。新聞やTVでは「元・立誠小学校にて」としか言われてなかった。ここは映像イベントの拠点として有名なようですが、私を含め、知らない人もいるんだから、ちゃんと「木屋町通蛸薬師下る」と記してほしかったなあ。立誠小学校という名称、もう地図には記されてないんだから。

2014/03/09

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京で生き延びたコロタイプ印刷

幕末に撮影された写真を「とらや」の京都ギャラリーで見ました。日仏外交史研究家のポラック氏のコレクションとのこと。面白そうだし、実家の近くなので昼下がりにちょっと覗きに行きました。羊羹の「とらや」さんの創業は室町時代だそうです。なんと500何前。それゆえかオーナーさんは沢山の美術コレクションをお持ちのよう。それを展示するためか、一条通りにある京都支店の喫茶部の横にギャラリーを開かれてます。ギャラリーはこじんまりしたスペース、写真もそれほど多くはないが、100年以上も前の人々のリアルな表情には味があります。箱火鉢を囲むおかみさんや、うたた寝をする芸者さんの写真のセットがなんか不自然だと思ったら、たぶん庭に設置したステージなんでしょう。当時の撮影には強い光が必要なので撮影は屋外。曇りだと撮影不可だったそうです。建物訪問ブログ／三陽アートギャラリー　～ちらっとのぞいてきました～虎屋・京都ギャラリーところで、展示物の中に印画紙でなく、紙に印刷されたものがあり、それはフランス生まれのコロタイプという特殊な技法だという。それを印刷した「便利堂」さんが、この近くにギャラリーを開いて、コロタイプの作品展をしてるというチラシがあったので、その足で訪れました。自転車で数分のそのギャラリーには、印刷機を並べた作業場も併設されてます。他にお客がいなかったので、居合わせたお店の方にいろいろとお話を聞かせてもらいました。コロタイプの画像は厚いガラス板に直接焼き付け、それで刷るので繊細な表現となる。つまり写真のネガのような中間媒体がない。現在の印刷物を拡大していくと画像は点の集合になる。しかしコロタイプなら自然な画像である。また、どんな紙や布にでも印刷出来、精密で退色が少ない。明治から昭和まではコロタイプは絵葉書や卒業写真アルバムによく使われた。コロタイプは白黒しか出来ず手間もかかるが、日本では職人の技のおかげで独自に発達し、この便利堂では多色刷りにも成功し、国宝級の美術品の複製なども一手に引き受けている。しかしとても手間のかかる技法なので、印刷技術の進歩によりすっかりすたれてしまい、今ではコロタイプの印刷機は京都の３社にしか残っていない。ということだそうです。便利堂さんのギャラリーは、そんなコロタイプの可能性を知ってもらうために開設したとのこと。今後もいろんな展示があるそうなので、楽しみです。正直私も、このコロタイプ技法の本当の味や特長をまだわかってませんが、特別に拝見させてもらった写真家の作品集の中には、印画紙では出せない独特の風合いのある作品があり、それなりの魅力をちょっぴり感じた気がしました。実家に山ほどある大正、昭和の絵葉書のいくつかもこのコロタイプで刷られたのでしょうね。一度、便利堂さんに一箱持って行ってみましょう。クリスチャン・ポラック　コレクション［今昔写真］(入場無料）５月６日まで虎屋京都ギャラリー便利堂ＨＰコロタイプ印刷

2013/04/30

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三尾公三さんの平面美女

三尾公三さんといえば写真雑誌「Focus」の表紙でお馴染み。写実と抽象をミックスした画法、遠近感をトリッキーに使って独特の世界観を表現されてます。三尾さんはキレイなモデルさんを写実的に描くけど、モチーフになるのは平面になった女性像。対象物を一旦平面に置き直してから、それを絵画空間に配置して不思議な空間を創る。だから裸の女性のエロティシズムも昇華されてクールでモダンな絵画となってます。三尾さんが使ってるエアブラシ技法は、私も会社でデザインした器具のレンダリングを描くのによく使いました。エアポンプの吹き出しノズルにポスターカラーを入れ、マスキングしたカラーボードに吹き付けてね。手間のかかる作業でしたが、出来上がりは結構写真そっくりに出来たりして面白かった。しかしこれで絵画を描こうとは思わなかった。今から思うと一度やってみればよかったなあ。開催しているのは京都府庁近くの中信美術館。このおしゃれな建物の空間に三尾さんの絵がよく合ってます。「生誕90年・三尾公三展（幻想空間へのいざない）」は5月12(日)まで。三尾さんは私が卒業した京都の柳池中学の美術の教師だったそうですが、残念ながらその頃私はまだ赤ちゃんでした。

2013/04/22

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京大でルネサンス絵画をどアップで

実家の本棚に1960年に開催された展覧会のパンフレットがあります。西洋絵画の名画50点を写真に撮って実物大に引き伸ばし、裏から蛍光灯で照らすという、駅の内照看板方式の展覧会でした。それでも世界各地の名画を一度に鑑賞できると、当時は大好評で、私も学校から見に行きました。これはTIME-LIFE社が企画し、世界各地をまわった「100万人の世界名画展」でした。あれから半世紀。いま、デジタル技術の粋を生かした同様の展覧会が開かれてます。京大の総合博物館で開催されている「ウフッティ・ヴァーチャル・ミュージアム」。美術を最先端の技術で気軽に楽しもうという趣旨は、50年前のあの展覧会と同じです。我々は今では世界各地の美術館にアクセスし、おもうがままに楽しめます。ただ、ネットでは画素の密度に限りがある。この展覧会ではものすごい高密度な画質がポイントです。大型画面で絵を選ぶといくらでも拡大出来る。ボッティチェリのビーナスの目がどんなタッチで描かれているのかも、しっかり拡大して見える。これは実物にへばり着いて拡大鏡で見てやっとわかるような世界なので現実では出来ず、デジタルならではの成果です。特に絵を描いたり研究したりする人にとっては素晴らしい事です。私の友人に薦めていただいたので初めて知った地味な展示会ですが、よかった。この博物館には、象の骨やアジアの樹林、古墳の石棺や鎧、文書や陶器、古銭など、発掘に関する様々なものが展示されていました。ゆっくりしすぎたので、お昼を回ってしまった。京大の正面玄関にまわって、時計台の前の学食カンフォーラで\570のランチを。会場でアンケートを書いたらパンフレットをもらいました。詳細な解説の入った立派なものなので、残しておきたくなりました。あと50年後にこれを見直すとしたら、技術はどれだけ進歩してるだろうかなあ？いや、もうその頃には、私はいない。京大総合博物館／残念ながら3月24日までsmiling drunkard さんのブログ／再現技術がここまで来ている…

2013/03/21

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芦屋の飲み会と元町散策　

イベントやライブのために溜まった日記ネタを遅ればせながら公開していきます。日がずれた日記なんて、気の抜けたビールみたいなもんでしょうが、ご勘弁を。11月初めに会社の同期8名での同期会。足が悪くて遠出が出来ない友人の地元・芦屋で飲もうという企画。時間もお昼。こんな飲み会も悪くない。気持ちよく晴れた日でした。芦屋はさすがに気品のある落ち着いた街。昔、この川沿いの芦屋ルナホールで「サディスティック・ミカバンド」を見に来ました。前座に出た宇崎竜堂の「ダウンタウン・ブギウギバンド」にぶったまげたなあ。同期会はさらっと終わったので、私は三宮にフェルメールを見に行くという友人に同行。「マウリッツハイス美術館展」で例の「真珠の女の子」を見ました。画集などではターバンの青が結構強調されてますが、本物は意外とあっさりとした色合いに見えました。これは白熱照明のせいで、青が引き立たなかったのかもしれません。友人のゴーヤテンプルさんの説では、自然光で鑑賞する事の多い欧州では青が引き立ちます。そしてフェルメールはラピスラズリの青を色合いでなく空気感を出すために使ったとのこと。これは興味深い解釈でした。ゴーヤテンプルさんのブログ日記／フェルメールのラピスの話もうひとつ、私が気になったのは彼女の眉毛がないこと。調べると当時の流行だったという説がありましたが、モナリザも含め、眉のないことが神秘性を醸し出しているのでしょう。フェルメールの絵に漂う情緒感はとても好きですが、絵を描かないわたしにとって、他のオランダ絵画は絵としてはいまいち興味が湧きません。しかし風俗画として見ればけっこう面白い。衣装、風俗、船、建築など、見ていると飽きません。　そんなフランドル絵画を堪能したあと、私は一人で付近を散策。明治期から続く街並みに残る古いオフィスビルの一画で、レトロな風情の喫茶店を見つけて休憩。高い天井、赤い壁紙がなかなかにおしゃれ。神港ビルヂングの「Cafe Rest 8番館」でした。そのあと、海が近いようなのでそれらしい方向に歩くと波止場に出ました。海上保安庁のボートがたくさん浮かんでいて、看板になんと「メリケン波止場」と書かれていました。ははあ、ここがカラオケでよく耳にする港でしたか。そこから続くメリケンパークに傾いた街灯が見えたので、何か？と近づくと、大震災で陥没した波止場がそのまま残されており、黄昏の明かりの中で波に洗われていました。あたりが暗くなったので元町駅に戻る事にして、JRの線路を目指しました。このガード下が面白い。「モトコー（元町高架下）」と呼ばれる神戸のアメ横。闇市的な雰囲気がたまらない。日刊ＷＥＢホビー／神戸元町ガード下元町高架下商店街「モトコー」（２）元町に着いた時に腹が減ったので、お店を探していると急に派手な通りに出ました。神戸の中華街。そうか、ここにあるのを忘れてました。ということで、紹興酒と五目チャーハンで、今日の充実した一日を締めくくりました。

2012/12/10

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黒い絵が迫る個展

先日はまた別な先輩の個展に行きました。久々の銀座通りには長い行列が。いやいや、その個展でなくユニクロの新装開店のお客の列でした。地図を頼りに歩くと並木通りのど真ん中、高級バーの入ったビルの２階にこじんまりしたギャラリー・カノンがありました。やっているのは「石田賢礼／小林秀之助　二人展」。意外なことにギャラリーには黒い絵ばかり。２人申し合わせたわけでなく、絵を運び込んでお互いの作品を見て驚いたということです。聞くと昨年の災害以降、色を使うのがためらわれるとお二人が口を揃えていう。そのせいか、ギャラリー内はモノクロームで不思議な雰囲気が漂っていました。黒といっても、画家の石田さんの作品はキャンバスに衣類の断片を貼り付け、香油を溶いた黒の絵具を塗り、純金の文字で和歌を配しています。テーマは災害の後に来る生命（男女の愛）とのこと。銅版画の小林さんは粗い線と微細な線が入り乱れて動物たちを描いていますが、白と黒の激しい対比が印象的です。こちらは荒れ果てた大地に残された生き物たちがテーマのようです。それぞれの作品に色がないのに、テクスチャーや線のタッチによる風合いが作品に深みをつけて見応えがしました。以前見たブラウン系で刷られた版画が黒に変わるとまったく違うテイストを感じたのも面白い発見でした。黒の持つ不思議な力を感じました。それをより強調するのが照明。同じ黒でも光の当たり方で白から漆黒までのグラデーションが出来る、陰と影の効果もある。一度暗くしてみましょうと会場の電気を落とすと、同じ絵がまた異なった見え方になりました。昔の壁画や屏風絵もこんなあかりの元で見てたんでしょう。絵というのは光によって異なって見えるので、それぞれの見え方を楽しむのも大切な鑑賞法です。新装なったオルセー美術館は外光が間接的に取り込まれるので、朝の青っぽい光と夕方の赤っぽい光で同じ絵の色が違って見えることでしょう。こんなふうに照明を変えて絵を観ることが出来たなんて、贅沢なことです。こういう画廊があってもいいんじゃないかと思いました。そういえばこのギャラリー・カノンはオープンしたばかりですが、ここでは絵を見ながらお酒が飲めるようにしたいとオーナーさんは言うのです。お酒もたくさん揃えてある。貸切で飲むシステムのようですが、自由な雰囲気で絵を鑑賞して欲しいという面白い発想です。それなら光を変えて作品を鑑賞する事も出来そうですね。ユニークなギャラリーになりそうです。Gallery Kanon石田さんの絵についてはこちらをますめねこ／2012.03.19日記

2012/03/21

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カラフルな文字が躍る／有元郁雄展

私の学生時代の先輩・有元郁雄さんの個展に行ってきました。自由が丘のギャラリーにはカラフルな作品がいっぱい。紙を切り貼りしたパピエ・コレという作品展です。今年はモチーフに文字を取り込んでいて、絵の趣を彩るだけでなくその文字や詩や文体などがもたらす内容が作品に深みをつけています。特に、獄中のノーベル平和賞作家・劉暁波（りゅう・ぎょう）氏に啓発されて書いたという漢詩の作品は新しい有元さんの側面を見た感じがしました。ギャラリーに行くと有元さんは不在で、30分後に出てこられました。昨夜は夜更けまで飲んでのう、帰ったら携帯がないんじゃ、と大笑い。相変わらずです。昔、美術の友人たちのほとんどが苦難の形相で制作するのに対し、有元さんは鼻歌を歌いながら描いてました。飄々としておおらかな性格の方です。でも作品は色や線のバランスが絶妙で沢山の賞も受賞されてます。卒業前後に北欧やパリ、ニューヨークなどを放浪して、アルバイトで金を作って個展を開いたりされてます。しかし団体に属さない一匹狼でネットにも興味ないので、世にあまり知られてないのが残念です。有元さんとは学生時代に同じ下宿でした。金沢の浅野川のほとりの元産婦人科医院の建物を学生たちが借り受け。私は分娩室、有元さんはテラス付きの個室暮らし。私の部屋は広いので、いつもみんなの喫茶室か麻雀部屋。外から帰ったら誰かがコーヒー飲んでたりして、のんびりした日々でした。有元さんと過ごすと、そんなのどかな日々がいつも蘇ってきます。お互い高齢の母親がいるので自分の時間が取りにくいけれど、そんな中でもこれだけの創作を続ける先輩の姿に刺激を受けました。

2012/03/17

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リャドのジクレーという版画技法

買い物に行ったら、まだリャドの版画展をやっていたので再度会場を訪れました。版画展とあるのにどうしても油彩画にしか見えません。それが不思議で、斜めに見上げてもキャンバス地の目や筆のタッチが立体的に見えます。絵にかじりつくように見入っている私に説明の方が近づきました。聞くとこれは「ジークレー」という版画技法で、早い話、原画をコンピューターで精密解析し、インクジェットプリンターで吹き付けたものだという。だからキャンバス風の凹凸のある印画紙にも色が乗り、重ね塗りのタッチも出るそうです。印刷でなく版画と称せられるのは、色の密度も刷り回数も並はずれた手間をかけた上で監修するからだそうです。それでこんなにリアルで迫力ある絵になるのです。絵を味わうにはその質感（マチエール）も大切で、光の具合できらっと光ったり、絵具の影なによってその色をいっそう引き立てたり、絵に深みを与えたりします。これは平板な絵では味わえない者です。量産版画でありながらこんな魅力を持つジクレー版画は、本物の絵画を誰でも購入できるようにしてくれました。ま、それでもちょっと高いのですが手の届く範囲ではあります。リャドについてもいろいろと話してもらいました。彼の生い立ちから大動脈瘤破裂による急逝、肖像画家としての成功、写実と抽象を混ぜた技法、一気に描き上げる驚くべきスピード。彼が来日したとき、TVの番組でジュディオングの肖像画を描くシーンの撮影があり、そのあまりに早く鮮やかに描き出される様に、撮影クルーが漏らしたため息が録音に入ってしまったとのこと。肖像画は肖像権の問題で版画には出来ないそうです。今回の画商さんは購入を押し付けることなく対応してくれました。先日に業者が絵画を汚すなんて失礼なことを言ってしまいましたが、それは一部の売らんかな業者のこととしてご理解いただきましょう。ちなみに、会場の作品の７割がすでに売却済みでした。どれも30万もするのに。彼の作品をざっと見るのに適した動画がありましたので紹介します。スペインのリャド美術館も紹介されます。Xim Torrents Llad?彼を日本に紹介したガレリア・プロバの鈴木さんの手記（ヒロ・ヤマガタもこの人）「リャドとの出逢いから別れまで」

2012/03/07

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トレンツ・リャドの色に酔う

近くのデパ地下に昼の弁当を買いに行ったフロアで、展覧会のポスターが目に留まりました。カラフルな花畑の絵なのにその周辺がラフで荒々しいタッチで省略されていて、その対比がとても魅力的。思わず会場に足を運ぶと絵画の販売会でした。390円の弁当とカップ・トン汁を下げて気取ったギャラリーに入るのも面白い趣向です。そんなことより版画展となっているのに鮮やかな色彩とタッチで油彩画のようです。作者はトレンツ・リャドとあります。本人の写真はヒゲのかっこいい男。人物画が１点あってこれがとてもよい。ホアキン・トレンツ・リャドは若くから才能を認められ、パリでは＜パーソナリティ・オブザイヤー＞に選ばれたとのこと。スペイン人画家としてはミロ、ダリに続いで3人目とのこと。現代風の時流に逆らって印象派の色彩感覚を引き継いだ作家として高い評価を受けているそうです。肖像画家としても売れっ子で「ベラスケス」と比較されるほどだとか。専門家からはどんな評価をされているか知りませんが私の好みです。レコードジャケットにぴったりの画風。それにしても会場にいる販売員にちょっとシラケました。ビュッフェにしてもカシニョールにしても投資商品として売ろうとする人達のおかげでせっかくの美術作品が汚されているような気分がします。とは言うものの、高価で貴重な作品をタダで鑑賞しようとする私も、偉そうな事を言う立場にはいませんが...。

2012/03/04

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銀座で見せる「金の美」

世に数々の美術大学がありますが、金沢に美大があることはどれだけ知られているでしょう？　東京芸大や京都芸大の影に隠れているのでちょっと影が薄い。それに全校700人という全国一の小規模校。歴史は長くそのＯＢたちは各界で様々に活躍しているのですが、特に有名なアーチストや芸能人が出ていないからかもしれません。そんな地味なイメージを破ろうと企画されたのが今回の銀座画廊ジャック。３度目の今回は、９月いっぱい銀座の貸しギャラリー122ヶ所を一斉に借りての展示を行います。同時に金沢とニューヨークでも連動して展示会を開くという大イベントになりました。参加者はＯＢ＆現役1300人が参加してます。ただしギャラリーや参加者のスケジュールの都合で、開催日がまちまちなのでネットや黄色のリーフレットで事前計画を立てないとちょっと周りにくい。ジャンルは絵画、彫刻、工芸、陶芸、染織、デザインと幅広い。ギャラリーの入り口に「金の美」の黄色の旗が出てたらそこが展示会場です。私が金美の先輩と続けている見物＆飲み会グループ「パウエルの会」もこれに連動しようと、別な金美ＯＢを誘っての参画。私も誘われたが何も出すものがないので不参加。初日の２日はみんな集まって、会場で飲み始めました。そして有楽町近くの店で二次会。いつもながらのアートの話題からなぜか私に話題が移り、あんたはなぜ絵を描かないのかという議論に発展。これには困った。この問題は私自身、学生時代から悩んできたテーマだからです。美術には人一倍興味を持って口先だけはいっぱしの評論家。なのに何もしない。エッチングの道具一式を渡されながら、線１本引けないというのはどういうおつもりかと問われたり弁解したりして、すっかり疲れてしまいました。でもまあ、これはこれなりに刺激になりました。夏になってずーっと横浜の自宅で過ごしてきてこの日、半年ぶりに東京に出ました。で、前の会社の人と合ったり、銀座のギャラリーで初対面のＯＢさんらと話したりしたあとのパウエルのメンバーとの議論。（いつも何気ない話が議論になっちゃう）おかげで、その日はぐったり。「なんで俺は絵を描かないのかなあ？」と考えながらもぐっすりと寝入りました。

2011/09/05

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のどかな木陰でクリエイト

先日、御所の木陰でくつろぐ母子の情景を友人がブログに書いていました。「草上の昼食」を思わせるようなシーンだという話を読んでいて、BSテレビの「ぶらぶら美術・博物館」で見たモネとルノワールが一緒に描いた絵の話を思い出しました。モネは妻と息子の絵を幾つか残したが、彼が芝生でくつろぐ妻子を描いていたとき、ルノワールが尋ねてきて、横にキャンバスを広げて同じ題材を描きだしたという。それがこの絵。モネの絵と比べたかったのですが残念ながら画像が見つかりませんでした。大画家二人の当時の交流を写すいい話題ですね。そういえば、クラプトンとジョージとの間にもそんなシーンがあったような。たしか、連日のアップルの会議に疲れたジョージ・ハリソンがクラプトンの自宅の庭でサボっていて、"Here Comes The Sun"のフレーズを思いついたという話がありましたね。smiling drunkardさんのブログ／“草上の昼食”がとても涼しそうでした… ---------------------------------------------------------------この「ぶらぶら美術・博物館」はＢＳ日テレで毎週放映しており、先日は「ワシントン・ナショナル・ギャラリー展」特集でした。この番組はよくある教養番組でなく、絵や芸術に特に興味のないおぎやはぎの二人に山田五郎がおせっかいにも説明するという趣向なので、とてもユニークで分かりやすい。特に、セザンヌを見て矢作が「なんだこりゃ」「わかんね」と言ってのけるのが面白く、「そうだそうだ、もっと言ってやれ」と応援してしまいます。だいたい、芸術と名が付けば、自分の気に食わなくても「ほほう、そんなのものですか」とかしこまって拝聴しなければならない雰囲気が美術・芸術界には漂っている。そんな風潮が気に食わない。分からん絵は分からないし、気持ち悪い絵は気持ち悪いのでいい。自分の感性が大切。ところが最近、矢作は「セザンヌもなんとなくいいねえ」なんて言い出している。負けるな矢作。納得させられるな！山田五郎氏はザルツブルグで西洋美術史を学んだということで、なかなかに博学。美術評論的にはどうなのか、私には分からないが、美術専門家の杓子定規的な解釈とはまた違った、独自の語り口はけっこう楽しめます。「ぶらぶら美術・博物館」放送ラインナップ

2011/07/09

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憂き世の浮世絵

　　先日テレビで写楽の肉筆画から本人を探る番組をやってましたが、耳の書き方や線の引きかたから写楽とは誰だったかを推測するもので、なかなかに興味深い内容でした。そういえばうちの家にも浮世絵があったなあと思い出し、引っ張り出しました。ホコリまみれの箱をあけると、父が仕舞い込んでいたカレンダーや雑誌切抜きにまじって、錦絵が20枚ばかり出てきました。どれも変色したり虫が食ったり色が滲んだりしていますが、たしかに木版の浮世絵のようだ。しかし製作年月を見るとほとんどが明治20年前後のもの。なーんだ複製かとがっかりしましたが、調べると浮世絵は江戸期だけでなく、明治になっても発行されていたようです。だから本物には間違いないが、どうせ無名の作家だろうとネットで調べると、意外に有名らしき名が幾つも出てきました。となると気になるのはお値段。（我ながら俗物根性が出て恥ずかしいが）寺町通りの大書堂という浮世絵専門店に行ってみる。ここは昔からある美術古書専門店で、最近は浮世絵だけを大量に展示していて、けっこう見応えあるお店です。店内にも同じような作品が見受けられ、３万から８万程の価格がついてました。ま、うちのは例の切手コレクションと同じように痛みや劣化があるので、商品としての価値はないでしょうが、一応どんな評価のものかがわかりました。そんなわけで、新聞紙にくるまれていた浮世絵を、100円ショップで買い込んだビニールファイルにいそいそと移し換えている私です。ところで庶民の典型である私の父がなんでこんなものを持っていたかというと、子供の頃に古新聞や古紙を燃やしていたら、その中に沢山のきれいな絵があったのでもらっておいたとのこと。昭和の初期だ、古いものはどんどん捨てられる、そんな時代だったのでしょう。絵の好きな父のおかげで、今、本物の美術品を楽しませてもらってます。＜My浮世絵コレクション詳細＞---------------------------------浮世絵は４つの期間に分けられますが、江戸から明治にかけての時期が浮世絵の終期（末期）と呼ばれています。明治維新後には異国文化や各地のハイカラな風俗から実験的描写モノ、見世物的なものやグロテスクなものまで流行っていたとのこと。まあ現在のグラビア誌のような役割だったから時代性を表していたのでしょう。しかしその後は、写真や印刷などにその役割は奪われ、浮世絵は衰退します。一方で、浮世絵・中期に生まれて円熟した浮世絵技法は、挿絵画や日本画の世界に受け継がれていったとのことです。出てきたコレクションは以下です。ほとんど３枚セット。・一魁斎芳年（月岡芳年）／「川中島三討死両雄血戦之図」(上の図）・一魁斎芳年（月岡芳年）／「月百姿」シリーズの「山城小栗栖月」（1枚刷り）・大蘇芳年（月岡芳年）　／「明治小史・年間紀事～鹿児島県下賊徒蜂起之事件」　　---「血まみれ芳年」と呼ばれた残酷絵で有名な人だが、これらは歴史もの。・玉蘭斎貞秀／「軍法八陣略図」　　---横浜の鳥瞰図や外国風俗・文物の題材が多い人だが、これは兵法の陣形図。・井上探景　／「観兵式之図」　　---教育や皇室や憲法発布などを題材とした時事報道の錦絵が多い人。・梅堂国政（歌川国政）／役者絵　　　---東京風景や機関車など文明開化絵や役者絵が多い人。　　・揚州周延／「女礼式茶の湯」「ちよだの大奥」「貴婦人の絵」　　---官廷官女、大奥風俗などの美人画で知られ、洋風風俗画も多い。・東洲勝月／「観古東錦・幕府道中川越之図」　　---憲法発布、博覧会、日清戦争などの題材が多いが、これは大井川を渡る絵。・河鍋暁翠／「花月」　　---「暁翠」らしき銘の雛祭り図。狩野派絵師・河鍋暁斎の娘。赤色の滲みが残念。

2011/05/11

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友、遠方より来る、また楽しからずや　

　先日、思いがけなく昔の先輩達と飲むことになりました。いつも飲もうと声をかけていただく京都の先輩の家に、東京でお会いしている先輩が泊まりに来るというので、呼ばれて出かけたわけです。　ところがもう一人、同期の先輩が来られたので驚きました。卒業以来の再会です。私がデザイン科の学生だった頃、1年上の美術系の先輩達と付き合うことが多く、交流は今でも続いています。たぶん当時から私の心の隅に、純粋美術への憧れみたいなものがあったからでしょうね。彼らの作品や制作過程における様々な悩みと努力、そして美術に関する様々なお話はとても刺激的で面白かった。特に今回集まった面々は当時強烈な個性で、近寄りがたい雰囲気さえ漂わせていた方々です。その人たちがそれぞれの人生を歩んで来られて、今再び、昔の安下宿と同じように集まり、当時と同じようにお互いの人格や作品についてあるときは褒め、あるときはボロクソにけなす。その歯に衣を着せない口調に大笑いしてしまいました。今回みんなをもてなしていただいたＫ氏と奥様は、耽美的で情緒のある絵を描かれる日本画家。東京から来られたＩ氏は高度な描写力で感性の高い絵を、現在は抽象画を描かれている。ふらりと来られたＴ氏は学生の頃、力感溢れる群像の大作を描かれていました。例えて言うなら、Ｋ氏はラファエロ、Ｉ氏はダビンチ、Ｋ氏はミケランジェロのように、私の目には映っていました。（これはちょっと言いすぎかもしれませんが、まあいいじゃないですか）そんな人たちが一同に会したのですから、この日は私にとってとても価値ある日になりました。しかし愚痴になりますが、あれだけの才能と技量を持った人達が皆、未だ正しく評価されていない、というか世の中にもほとんど知られていない。たぶん皆さん、画壇の派閥に属さない一匹狼だったからかもしれませんが、膨大な情報の飛び交う現代の日本においても、絵画（芸術）の門戸はまだまだ狭いのでしょうか。残念なことです。あ、いや、まだ結論は早い。この先輩方の今後の活躍を楽しみにしましょう。（残念ながら手元にはＩ氏とＴ氏の作品しかありませんでした。勝手に載せると　怒られるかもしれませんが、私好みの作品を選んで掲載させていただきました。）

2011/05/06

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水辺の巨大生物たち

海岸で風を食べながら無数の足を動かして進む巨大な生物。テオ・ヤンセンの生み出したチューブ細工の作品ビーチアニマルです。おもしろかった。プラスチックのチューブやビニールで造られていて、近くで見ると意外と雑っぽいのに、それが実に複雑な動きで歩き出す。造りがゆるいせいか、たわみながら動くのが、生物のようなリアリティを生み出すんでしょうね。初代のアニマルの関節はビニールテープで雑にぐるぐる巻きにしてました。それでもモソモソ動く。まさに原始生物。会場ではおねえさんがこれらの生物をいとおしそうに説明し、動かしてくれます。彼等は風で飛ばされないように砂浜に杭を打ち込んだり、障害物や波が来ると逃げるための触覚も出来たりと、どんどん進化しているそうです。その日は汐留でやってる白井晟一展に行こうと思ってたのですが、テレビで戦場カメラマンさんが宣伝してたので思い出し、お台場の日本科学未来館まで足をのばしたのです。この建物はお金と人手をかけた立派すぎる施設でしたが、今回のような展示は廃屋になった工場か学校なんかの空間で展示されたほうが、もっと雰囲気が出たでしょうね。アニマルは沢山いたけど、その中でも私はこれが一番好き。古代生物みたい。ベニヤ板と蝶番で作られてます。背中の板に風を受けて勝手に歩くんです。写真の生物はこの映像の最後のほうで出てきます／strandbeest evolutionテオはBMWのCMで有名になったそうですが、残念ながらそのＣＭはもう見ることができません。ただ、彼のビーストの構造はこちらで見ることができます。Series of robots and "new forms of life" using Theo Jansen mechanism - Blender Bullet SmallLuxGPUヤンセンの構造解析ビデオ遠くて行けない方は、オウガマテツさんのブログを読めば疑似体験できます。オウガマテツ／[イベント]テオ・ヤンセン展に行ってきました--------------------------------------------------- ところで昨年秋に大阪の淀川に出現したこの巨大生物もいいですね。夜には可愛いすぎてどこかこわい。それがまたいい。じっくり鑑賞したい方はこちらのニュースサイト「ギガジン」に。大阪の街に浮かぶ1匹の巨大アヒルテオさんもアヒルの作者のF・ホフマンさんも、共にオランダのアーチストだそうです。

2011/02/01

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横尾さんの倉庫にて

　　＜横尾さんは滝の絵だけでなく絵葉書まで展示しちゃった＞横尾さん、なんて勝手に呼ばせてもらいますが、横尾忠則氏ともお会いしたことがあります。もちろんあちら様には何の記憶にもないでしょうが。ちょっと信じられないことですが、バブルの頃はうちの会社も文化活動に目を向けたことがありました。そのイベントのために横尾さんにも作品制作をお願いすることになり、担当しました。秘書の方を通じての依頼、制作のための部品調達、作品の搬出入、会場でのご案内などです。数年後に再度作品をお借りするときには、倉庫にあるから勝手に引っ張り出してよと言われ、一人倉庫に入ってぎっしり詰め込まれた作品の中をさまよって探したこともありました。なんという贅沢。身の丈を超える横尾さんの大作の隙間に入り込み、引き起こしたり引きずり出したり。画集で見かけた作品もありました。1点あたりいくらの価値があるのか知りませんが、もしも傷つけたりしたら大変です。息を殺しての作業でした。始めに会った頃は彼の「カタストロフィの時代」と呼ばれる時期で、過激な暴力や死がテーマの絵を描かれてました。打ち合わせに出てきた横尾さんのセーターのヒジがほころびんでいたので、意外と質素な人だなあなんて感心してたら、後でそれが流行りだということを知りました。数年後の横尾さんは滝に興味をお持ちで、沢山の滝の絵葉書のスクラップを出して来て、いいでしょう、と見せてもらいました。滝のことはよくわかりませんでしたが、私の思い出の１ページに横尾さんと並んでスクラップを見る自分がいるというシーンがあるなんて、ちょっと信じられませんでした。私のさえない平凡な人生への、運命からのちょっとしたプレゼントなのかな。

2010/10/31

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亜喜良氏との邂逅

宇野亜喜良といえば、60年代、横尾忠則と並んで一世を風靡した鬼才イラストレーター。神経質な細い線によるシュールな世界。彼の画集は昔から大事に持ち歩いています。横尾さんの情念のつまったような画風に比べ、クールで虚無的な亜喜良氏の絵は私の好みで、似たタッチの絵をよく描いてました。その頃の彼は眉を剃り落とした鋭い表情で、近寄りがたい神秘的な風貌。ほんとにこんな人いるんかなと思わせるような異次元を感じさせる人でした。70年も後半になれば時代の風潮も変わり、彼の名もあまり聞かなくなった。あれだけぴりぴりしたイメージの人だから、おそらくどこかで隠遁生活しているのかと思っていたが、意外と舞台美術や絵本の仕事を続けておられたそうだ。とはいえ、まさかそのご本人に会えるとは思いもかけなかった。1990年前半の頃、あるモダンバレエの先生からコスチュームに電飾をつけたいとの申し入れがあり、担当させてもらった。デジタルの世界に迷い込んだ男の話で、光源は当時はまだ表示にしか使えなかったLEDやルミネッセンスシート。何度かの試作のあとで、完成した衣装を着けての練習のスタジオに、宇野亜喜良氏は登場した。どきどきして待つ私の目に入ったのはやさしい眼差しの穏やかな老人。かっての張り詰めた雰囲気は微塵も感じさせない。衣装やポスターの構成のチェックのあと、紹介してもらった時には「やあ、いいのが出来ましたね。」と笑顔を見せた。その光る衣装を着けたバレエ公演はなかなかに効果的でいい舞台となり、これら一連の仕事を通じての体験は私にとって思い出深いものとなりました。しかしそれ以上に忘れ難いのは宇野亜喜良氏と仕事が出来た事で、かってモノクロのグラビア写真のはるか向こうに存在していた謎のアーチストが目の前に立っているというのを、私は感動をもって味わいました。名刺整理のとき沢山出てきたバレエ集団ダンス・エレマンの人々と舞台関係者の名刺の束が、その時の充実感と気分の高まりを思い出させてくれました。ダンス・エレマンＨＰhttp://www.d-element.jp/aboutus.html

2010/10/26

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若冲ドットの謎

昨日の日記を読み返してみると、若冲は変なことした人だからエライみたいな書きかたになっていて、我ながらしっくりきません。そこで、補足します。私が言いたかったのは、この人は表現することに途方もない労力を惜しまなかったということに感動するのです。精密な中国画の模写は千点にも及んだそうです。で、例の「鳥獣花木図屏風」の「桝目描」ですが...(ちなみにこれは「ますめが」と読みます。ますめネコじゃないよ、私はそう読んでしまいましたが。)この屏風の真偽については、研究者の間では様々な論争があるようですが、それはどうでもいい。作者が誰であろうとこの絵はすごいからです。で、なんでわざわざ桝目にしたのでしょうか。ネットで調べてもこれといった答えはありませんでした。そこで素人なりに考えたのですが、彼は立体的なブロックで絵を構成することによって、絵の質感を増すとともに、見る角度による色の混合や、陰影による変化を求めたのではないでしょうか？この屏風は縦2ｍ、横5ｍ程もあるような大作なので、移動しながらでないと鑑賞できません。だから視点が変わることで絵に深みが出る。これがのっぺりした絵の具なら、でかい平面は退屈な安っぽい絵で終わりそうです。モザイクタイルのように生前と並んだ１cmほどの升目は同じ程盛り上がっています。これに段階的に濃淡の違う色をのせたり、白の上に唐突に黒を乗せたりしてますが、これが遠くから見ると混ざり合って独特の色調を奏でます。点描画の一種とも言えるのではないでしょうか。まあとにかく、勝手にあれこれ想像したくなるというのもこの作品の持つ力ではないでしょうか？若冲のもうひとつの魅力、水墨画も自由闊達で楽しい作品が多かったのですが、ここではニワトリや鶴の絵をあげておきましょう。ニワトリの絵は、先に尾を描いた後で胴体を描写したかのように思えるスピーディな筆使いが楽しいです。鶴の絵もどこかとぼけたいい味がありますね。見飽きません。

2010/07/06

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江戸期のゲージュツ家

伊藤若冲（いとうじゃくちょう）と言う人。私は全然知らなかったのですが、大した人でした。一般的に有名なのは緻密に描きこまれた極彩色の日本画。でもこの人のすごいところは思い切った筆使いの墨絵やタイル画もどきのパラダイス画。当時、誰がどのように評価したのか、それを想像するだけでも面白い。彼については結構若い人にも人気があるそうですが、私も一目ぼれといった感じです。達者な筆の使いにも魅了させられますが、なんといってもこのタイル画風の作品「鳥獣花木図屏風」。並のインパクトではありませんでした。とにかくでかい、極彩色のド迫力、想像力をフルに働かせた動物たちを集合させたアンリ・ルソー的楽園。それに加えての謎。絵を１cm程のブロック状に分割し盛り上げた奇妙奇天烈な画法。描きにくいのになんでわざわざこんなことをしなければならないのか？わけわからん。18世紀の“デジタル花鳥図”とも表されているそうです。これは「桝目描」と呼ばれた彼独特の技法で、この屏風一隻に４万以上の升目があるという。しかもこの絵は二対ワンセット。描くのも大変でしょうが、鑑賞するのも大変です。疲れます。まいりました。日本画の枠を完全にぶち壊した作品です。この人は芸術家と呼ぶにふさわしい人だと思いました。この作品を所蔵する世界屈指の日本美術コレクタージョー・プライス氏は、この絵をタイルで再現させた風呂に入っているという話に笑いました。＜おまけ＞千葉市美術館は充実した浮世絵コレクションを持ってます。所蔵品コーナーには北斎や広重なんかのチョー有名な絵がいっぱいありました。波間の富士や骸骨や東海道など本物を見たのは初めて。時間がなくて急ぎ足でしたがこれも感激でしたね。

2010/07/05

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黄色の絵をもらった

ほれ、みんなにやるよと画家である友人がカバンからビニールに包まれた梱包をみんなに配りだしました。久々の飲み会の席上です。あっけにとられながら包みを開けるとこの絵が出てきました。黄色が描きたかったそうで、油彩で下地を塗って墨を落として混合したとのこと。キレイです。黄色が家にあると元気が出るよと友人。私の好きなクロムイエローに近い黄色。山吹色。暖かく、やわらかく、そして美味しそう。炊き立てのご飯にかけて食べたいなあ。昔、工業デザインしてた頃、黒い成型品にこの色のラインを入れるとびしっと引き締まってかっこいい。このアクセントカラーはレモンイエローだと全然ダメ。あの頃、クロムイエローを塗る時は楽しかった。しかしこの色はその名前のとおり六価クロムや鉛が入っているので、有害と言われ、公害が社会問題になった頃には使うのがはばかれました。カドミウムオレンジやコバルトブルーもそうですし、いくつかの絵の具にはなにがしの有害物質が入っていたようです。でも最近の絵の具は無害な材料で作られているので大丈夫です。とはいってもそれは代用品、発色にこだわるアーティストは、やはり昔のままの素材を使った絵の具を使う人もいます。危険を超えてでも表現するのがアートなんですから。で、その絵を家に帰ってじっくり眺めました。門扉のレンガ壁にかけてみたり、芝生の上に置いてみたり、青空をバックに眺めてみたり、ベンチに立てかけてみたり...どれもみごとに黄色が引き立ちます。さすがクロムイエロー、偉い！ところで私は抽象画は苦手です。といっても色と色とがはっきり構成されているものならデザインとして認識できるので、モンドリアンとかフランク・ステラなどは好きです。でもアクションペインティングというのでしょうか？無秩序に色が構成されているのはどうもよくわからない。この絵を渡された時もどちらが上か下かもわからない。くるくる回してると、こっちが上だよと言われて、あわててなるほどとしたり顔で眺めなおす。雲海のようなグレーの塊が滲みながら、右からやって来て左のほうに去ってゆく。ほのかに左上に揮発してゆく煙が遠くの景色にも見える。墨の色のせいか、その濃淡や地色と混ざり合ったりしてさまざまな色調に見え、美しい。今までは回りの色と画面の黄色を楽しんでいましたが、この絵の中に入り込んで見れば別な色世界がありました。今はテレビの横に置いて毎日眺めてます。するとついついその中に眼が引き込まれしばしの別世界に気をとられます。嫁さんは最初それをみたとき「あらキレイな包装紙ね。チョコ？」と嬉しそうに声をあげました。残念でした、食べられません。でも眼にはいいご馳走です。

2010/07/03

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パリッシュブルーの空

ちなみにマックスフィールド・パリッシュは私の大好きな画家です。「アメリカのイラストレーション黄金時代」と呼ばれた19世紀後半から20世紀前半にかけて活躍した売れっ子イラストレイターで、パリッシュブルーと呼ばれたコバルトブルーがとても美しい。イギリスのラファエル前派の影響を受けたロマンチックな画風と正確で美しいデッサン力もたまりませんが、クラシカルで装飾的な構成や、光と影の表現力が加わった彼の独自の世界はいつ見ても魅了されます。また彼が成功を収めたのにはポスターやカレンダー、アートプリントといった商業ルートを抵抗なく受け入れたことがあります。当時の彼の人気は高く、アメリカの家庭の４軒に１軒の壁には彼の作品がかけられていたと言われる程の売れっ子だったそうです。＜私の愛蔵画集＞彼の描いた女性の絵にインスピレーションを得て、日本のプログレバンド「四人囃子」の森園勝敏は「レディ・ヴィオレッタ」を作ってます。ゆったりとした情感溢れる曲で、私はたまらなく好きです。「ゴールデン・ピクニックス」のラストに収められたアルバムバージョンは、生ギターで始まり、まろやかなエレキギターやフルートソロが絡んで、夕日に包まれるような穏やかな気分にさせてくれる名曲です。 YOU-TUBEにはシングルバージョンしかなく、フルートに替わる森園のギターソロが少しハードですがイメージは伝わるでしょう。<四人囃子 - A Song For Lady Violetta シングルバージョン>＊追伸：森園氏はとてもこの曲を気に入っていて、その後、何度も再録音してます。それらを集めたアルバムまで作ってます。また、彼のギター教則本の課題曲にも収録されてました。この曲は１バンドの代表曲という枠を超えて、日本のフュージョン音楽シーンのスタンダードナンバーになっていると私は思っています。＜ご参考＞森園勝敏、「レィディ・ヴィオレッタ」だけを収録したアルバムをリリース

2010/05/30

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散策日和／その２　上野のブラングィン

＜ブラングイン／ハワード・パイル／マックスフィールド・パリッシュ＞上野の岩崎邸を出た私達は、次に不忍池ほとりでぼんやりし、池をめぐって国立西洋美術館に出て「フランク・ブラングィン展」を見る。この画家については私はよく知りませんが、松方コレクションの蒐集に尽力した人だとのこと。造船所を描いた作品が多く、造船業で財を成した実業家・松方幸次郎と親交を深めたのもうなづけます。ブラングィンは若い頃にモリス工房でアーツ・アンド・クラフツ運動に傾倒していたこともあり、室内装飾や工芸にも才能を発揮していたそうです。彼の絵は的確な描写による具象なので、イラストレーターと比較するのは失礼かも知れませんが、ハワード・パイルやその弟子のマックスフィールド・パリッシュのイラストを見るような気分で楽しめました。コルビジェの国立西洋美術館もじっくり見たかったのですが時間がなく、豊富なコレクションも早足で通りすぎただけでした。というか、私が集合場所を間違えてみんなを探し回ったからですが。ま、この建物はコルビジェが構想スケッチを描き、弟子の前川國男や坂倉準三らが実設計をしたとのことです。でもコルビジェの設計料は莫大だったとか。美術館を出ると力感溢れるロダンの地獄の門、カレーの市民が見送ってくれました。ブラングィンのおかげで贅沢な気分にさせてもらいました。

2010/05/28

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アートな文字、そえじま先生の書

ＴＶで「なんでも鑑定団」を見ていたら面白い書が出てきました。くるくると何重にも輪を描くように描かれた文字。スピード感溢れる書です。と思ったら、次はじわじわと時間をかけて筆を動かし、周囲に墨をにじませながらナメクジのように這い回る文字。かと思ったら、右に左に傾いたノー天気な文字。書には興味のない私ですが、思わず目を離せなくなるグラフィックデザインのような感性溢れる書ですが、なんとこれは明治時代の作品でした。この作者は維新後の外交を担った副島種臣（そえじまたねおみ）というお方。彼は、世界が手を焼いていた清国皇帝に対する巧みな交渉で、各国の外交官に絶賛されたとあります。豊かな漢詩の教養と中国の古典を引用した説得力溢れる交渉に加えて、彼はイギリス船の中国人奴隷を解放したこともあり、それに対する清国の謝意もあって硬直していた外交の道を開きました。その手腕を買われて、のちに中国政府からのスカウトもあったそうです。（彼は断ったそうですが）ま、後年の多少の誇張はあるにしろ、ドナルド・キーン、草森紳一など数々の評論家による賞賛の書が数々あるということは、それなりの輝きを持った人物だったのでしょう。私が歴史を好むのは、このような傑出した人物が過去にこの地上に存在したということを知ることが出来るからです。翻って現代の日本の政治家、知識人は、と問えば...何も言うことありません。

2010/05/26

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お久しぶりのへっぽこ先生

春になりました。先々日は天気もいいので母を連れて砧公園に出かけました。まだ桜も開いていませんでしたが、公園の一画にあるレストランでの食事後、世田谷美術館をのぞいてみると、ちょうど川上澄生の木版画展をやっていました。そこで昔サントリーのＣＭに出てきた「へっぽこ先生」に久しぶりに会いました。懐かしい版画本「ゑげれすいろは人物」です。これは川上澄生の自画像で、彼は宇都宮の英語教師だったのですね。昼は学校の先生､夜は木版画作りという生活を送ってたとのこと｡彼の作品に感動した棟方志功は絵画を捨て、版画の道を歩み始めたそうです。60歳を超え学校を退職した澄生は初めて版画に専念し、72歳で勲四等瑞宝章を受章しました｡喜んだ澄生は授賞式の後、そのまま勲章を下げて家まで帰ったそうです。そして途中で出会ったおばあさんがその勲章を見て深々と頭を下げたと嬉しそうに語っていたとのこと。いい人柄です。私は彼の作品の文庫本しか持ってませんが、その雰囲気が各頁から滲み出てきます。例の「へっぽこ先生」のCMを見たくなったのでYOU-TUBEで探しましたが残念ながら見当たりませんでした。それにしても、サントリーのＣＭには実に沢山の名作がありますね。ランボー、ファーブル、ガウディ、そして子犬をはじめとするドラマ仕立てのもの、サミー・デイヴィスJr.、ロンカーター、レイ・チャールズなどのミュージシャンもの、タレントは大原麗子、野坂昭如、緒形拳など、覚えているだけでもほんとに数え切れません。制作費は莫大なものでしょうね。みんな、我々の飲み代に含まれてるんでしょうが、その価値はたっぷりあるようにも思いますね。サントリーウィスキーホワイトCM　ロン・カータートリスウイスキー　「雨と子犬」篇

2010/03/22

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ニッテンの美女たち

日展は日本美術展覧会の略、ほぼ毎年見せてもらっていますが、いつもその作品の多さにぐったり、様々な絵が行けども行けども並んでいる。洋画なんかは上下２段掛けですよ。首が疲れる。途中で休み休みしながらでも足が棒になる感じ。バチカンやルーブルに比べる程ではないにしても、会社帰りにざっと見るには多すぎる。（金曜は20時まで開いてるんです）毎年、全国のすごい数の画家達がすごいエネルギーと高価な画材をつぎ込んで制作した大作ばかりです。どの作品も畳よりも大きいので、我々のほうが絵に見下ろされる感じ。今回とくに印象に残ったのは描かれた女性の顔。一昔前に現れたスーパーリアリズムの影響か、写真以上のリアルな表現が増えているように思います。以前の女性画なら類型化された顔か、ちょっとピンボケの粗いタッチの顔が主流だったのですが。今は写真を越えるようなリアルな表現の女性画が目につくようになりました。それは拡大した写真とは異なり、執拗なタッチで描かれた表情や背景から独特の雰囲気や深い情感が漂ってきます。特選の「滑走路に限りなく近い場所」という作品はその典型例でしょう。でもリアルな表現になるとモデルの個性が際立ちます。絵の前に立つ女性の顔立ちが様々でもそれぞれが独自の美しさに満ちています。そんな美女たちを楽しんでいると、あたかもグラビア雑誌を見るようなオヤジ的自分に気が付き、ちょっと恥ずかしい思いにもとらわれました。だけど、絵なんて好きな風に見ればいいんだと思いますよ。ま、そんな勝手な楽しみ方も絵画鑑賞のひとつ。類型化からの脱却の果てにモデルの存在が前面に出てしまう絵と、モデルも絵画の部品として描かれる絵との違いをそれぞれに楽しむのも面白いかな、なんて考えながら、週末の六本木のネオンの下を歩いて帰りました。追伸「ニッテン」なんて通販みたいに呼ぶと偉い先生方に怒られそうですが、芸術を親しみを込めてゲージュツと呼ぶように、シロート感覚で独断的に見た展覧会なので、今回、そう呼ばせてもらいました。（会場では撮影禁止なので、もっともリアルな画像は入手できませんでした）

2009/12/06

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剋太さんからの葉書

京都の実家に須田剋太さんからの手紙や葉書が残されていました。古びた封書の裏表には須田さんの豪放な文字が踊っています。昔、父が須田さんの奥さんに絵を習っていたことがきっかけで、おつきあいが始まり、個展にも顔を出していて作家の司馬さんともお会いしたとの話。私の幼い頃から聞かされていた話ですが、当時は興味なかったので聞き流していました。描く紙がなく困っていた須田さんに父が会社で余った大判の紙を融通したこのことです。須田さんの奥さんはそれをずっと覚えておられたようで、手紙には「最近はやっと人並みの生活が出来るようになりましたが、昔親切にしていただいた恩は忘れたことがありません」という文面がありました。当時はお二人は大変な困窮生活だったようです。私の部屋に掛けてあった絵は、当時人気のあった中国の歌手梅蘭芳（メイランファン）を描いたものですが、乱暴な絵だなあという感想しか持っていませんでした。その絵の味が分かり始めたのはごく最近です。その絵の額をはずしてみると絵は小さな額に収めるために四隅を折り畳んだまま50年が経ち、変色し、あちこち虫に食われてました。もったいないことです。とりあえず大きな額を探して入れ替えました。額の中からも何枚かの絵が出てきました。ま、有名になった方の作品だからありがたがるわけではありませんが、たいがいの絵は画集でしか見たことがないので、本物の作品を真近で見るのは新鮮な体験でした。須田さんは無口で実直で無心の人だったようで、その人柄がそれらの絵からにじみ出てきます。

2009/06/22

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花とアートと酒場の休日

先週の土曜は久々のパウエルの会で、花見で一杯。「パウエル」はオヤジ達が集って見物して飲むというだけの会。みんな経歴の異なる異業種の人たちで、(私以外は皆）美術作品を作っているので、交わされる話題や見解がユニーク。面白く勉強出来ます。今回は花見とギャラリー下見と飲み会。代々木公園～竹下通り～裏原宿のデザインフェスタギャラリー～渋谷の酒場快晴の原宿駅あたりのコンビニは花見客で大混雑。山積みの花見セットからツマミやビールを適当にチョイスして代々木公園へ。若い人と外人が多い。外国の人は花見が大好きだと言う。あちらにはバーベキューやピクニック以外に花を見ながら酒を飲むと言う習慣がないらしい。ただ、桜にとっては根を踏まれるのは大変なダメージだそうです。してみるとこの公園の桜の将来は危ないようです。のどかでにぎやかな芝生で、しばらく輪になって飲んでましたが、春風は冷たく、早々と席を移動。パウエルの個展会場候補のギャラリーへ。途中の竹下通の混雑を抜けて明治通りを渡るとやっと落ち着いた街へ。その一筋目を左に曲がると住宅街。少し進むと真っ赤なパイプが絡み合う奇妙な建物が。これは古いアパートの廊下や部屋の壁をぶちぬいて展示空間としたギャラリー。風呂のタイルを残したままで強引に白くペイントしたり、押入れや床の間のスペースも残してそれを展示コーナーとしたりと大変ユニーク。壁面にペイントしても、元通りにさえすればOKという自由さ。大小いろんなスペースがありました。規制が少なく、集客条件が良く、安価なギャラリーとして、若い人達に人気のスポットだそうです。客は若い人達と外人さん達。トレンディな観光コースにもなっているようです。建物は２つあり、その間にお好み焼きカフェがあるので、学園祭的な雰囲気です。こんなの、すきだなあ。この建物、名前は「デザインフェスタギャラリー・WEST」。http://www.designfestagallery.com/index.html（今ビッグサイトでやってる「デザインフェスタVol.29」と関係あるのかな？）そこでパウエルの個展を開くかどうか、いろいろ議論しながら、一向は渋谷方面へ。開店準備中の渋谷のんべ横丁の風情を見物しながら、道玄坂の古そうな飲み屋へ。途中で退散する予定が、ついつい最後まで付き合ってしまいました。

2009/04/02

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切り詰められた名画

私たちが日頃眺めている名画は、描かれたオリジナルのままであるとはいえない、ということはなんとなくわかっていたつもりでした。長い遍歴の中で、変色、破損、加筆、そして切断などの被害を免れた作品は少ないというか、ありえないというか。この作品の場合も、とんでもないトリミングがあったということに驚きました。先日TVで見た「美の巨人達／レンプラントの夜警」。正しくは「フランス・バニング・コック隊長とウィレム・ファン・ラウテンブルフ副隊長の市民隊」という作品。昔のスケッチと比較すると「夜警」の場合は、左端と上が大幅に切り取られ、主役たる２人の人物が中央に来てしまったために、左に進もうとする動きがなくなってしまっています。それに高く掲げられた旗の先も、絵のフレームと重なっているのは普通なら許されない構図です。不自然と言えば不自然ですが、画集に乗ってるのがホンモノという意識があったためにそんなものだと受け止めていました。絵画を学ぶ人は名画のエッセンスを分析するためのに、構図も細かく研究しています。その比率が後世にかえられていたというのは寂しい話です。これは、かざろうとした王宮の壁の大きさに合わせて切断された為だという。とんでもない話ですが、権力者にとっては作品よりインテリアのほうが大切だったということですか。ところでこの絵が制作される経過とその後のいきさつにもいろいろあったようで、それを描いた「レンブラントの夜警」という映画が作られ、昨年封切られたようです。面白そうですね。

2009/03/22

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失礼ながら裏まで鑑賞

画家の制作現場はめったに見えない世界です。画家がその絵にどのように取っ組んで制作したのかはほとんどわかりません。それを見せようというユニークな企画の展覧会がありました。汐留にあるパナソニック電工の美術館の「ルオー収蔵作品展・色の秘密」。ルオー作品の絵の具の使い方や、修復や裏面の状況を通して彼が色彩とどのように取り組んだかを明らかにしようというユニークな視点の展覧会です。ルオーは絵の具を荒々しく盛り上げた作品のイメージが強いのですが、意外にこれらはキャンバスでなく紙に描かれてます。紙に描き、その中でこれはと思うものを紙や麻布で裏打ちし、板に貼り、それにうず高く絵の具を盛り上げたり削り取ったり。ルオーは机の上に無造作に絵を積み上げ、絵の具が乾かないうちに別な絵に取りかかる。だから制作中の絵の裏には下の絵の絵の具がこびりつく。それもおかまいなく描き続ける画家。とりつかれたように絵と取り組む画家の迫力を感じます。だから絵の裏側には、絵の具や落書きや傷やシールや修復跡や釘穴など様々なものが残され、絵が描かれた後も変遷を経て今に至る歴史を語ってくれます。そんなことを思いながら作品の両面を「鑑賞」するのはなかなか興味深いものがありました。（写真のキリスト像は手持ちの画集からのお気に入りです）

2009/03/07

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私もダビンチの文字を消してみた

寒い日が続きます。仕事も減って生活時間にも余裕が出来たせいか、すっかりゆるんでしまい、何もする気がしません。長年あくせくした疲れかな？ダビンチの肖像画が見つかったそうですね。それも若い頃の肖像は現存してないので、これは世紀の大発見かもしれません。かなりイケメンだったということですからね。ところで、様々な研究家が調べつくしているので、何で今頃発見されたのか、ニュースになったのか、とsmiling drunkardさんが日記に書かれていたので、私も気になって調べてみました。確かに鳥の飛行の手稿の下に人の顔があるのは誰でも気づきます。でもそれが誰の顔かがわからなかったのでしょう。そのままになっていたのを２年前、ミラノの「レオナルド３研究所」の所長が気づいて、本人の肖像ではないかと３Ｄの画像にまで復元したそうです。しかしモデルの人物がレオナルド本人のものかどうかの確証を得るまで時間がかかったようです。そして2007年10月に書籍で発表されています。今回世界的ニュースになったのは、２月２８日にイタリアのテレビ番組で放映するのにあわせて発表されたから、という経過だそうです。私もやってみました。文字を単純に消しても誰の顔かぜんぜんわかりません。とはいえ、誰かが適当に書き加えたものではなさそうです。なんらかの科学技術によって、文字の下に隠されたチョークの濃淡を読み取ることが出来たことと、有名な自画像との骨格比較などによって、本人のものと実証されたのでしょう。それがわかるまでに500年が経ったわけです。ところで、この手稿には今まで誰も気がつかなかった飛行機械の図も隠されていたとのことです。今度は４月にイタリアの展覧会で発表されるそうです。面白そうですね。さすが世紀の大天才。＊ちなみにダ・ビンチは「ビンチ村の」の意味なので「ビンチ村のレオナルド」が彼の名前だそうです。これ、学生時代に先輩に教えてもらいました。

2009/03/07

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砧の晴れ舞台の力作

パウエルの会の個展が始まって終わりました。この会は毎月集まってあちこちを見物して飲んで語るという野次馬カルチャーの会とでも言いましょうか。そのメンバーが個展をすることになって、場所はなんと砧公園の世田谷美術館。１階のギャラリーはアマチュアでも貸してくれるそうですが、彼等の作品を見てびっくり。プロじゃん。油絵、フォト、エッチング、パソコン画像、それぞれの壁面を埋めた作品は中身の濃いハイレベルな作品で見ごたえありました。私も誘われたのですが仕事の関係で断りました。しかしこれを見て出さないでよかったと思ってます。作品といえるものなど持ってない私には、何を作ればいいのかもわかりませんし。ま、これからじっくり修行させていただきます。いつも酒を飲んでわいわいやっている人たちの凄さを垣間見る事が出来たひとときでした。みんなすごいです。

2008/10/25

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無心の創造物「アール・ブリュット」

芸術というものが何なのか、私にはわかりませんが、何か重いものを感じる美術展でした。会場にはダンボールに描いた絵やシーツいっぱいに描かれた稚拙な文様、あらゆる種類の電車をぎっしりと縦にへしゃげて詰め込んだ絵や、とげとげだらけの奇妙なオブジェ、陶器とコンクリート細工の鳥。これが公民館なら小学校の工作展？でもここはミュージアム。作品もどこか違う雰囲気。緻密さも違う。たとえば、施設で育ち年老いて亡くなったあとで発見されたおびただしい作品。それが幸運にも廃棄される前に評価され、美術館行きに。そのような、芸術家でもなければ美術教育も受けてない人の、美術作品を「アール・ブリュット」と呼ぶそうです。金のためでもなく、名誉や、社会に対するアピールでもない、描きたいというだけの純粋な動機で生まれた自分ひとりのための作品です。ある作品は家族の幸せそうな姿が赤い線で描かれています。ほのぼのして楽しそう。しかしこれはある老人の荷物から出てきました。恐らく一度も女性と付き合うことなく孤独に死んで行った男の作品です。ある作品は何枚ものノートの紙いっぱいに鉛筆で描かれた模様です。絵はそれぞれが微妙に違っています。それが何百枚も無造作に束ねられています。それは人とうまくコミュニケーション出来ない作者にとっての日記でした。そのことは長い月日をかけて接した看護人によって判明しました。しかしその時には、ほとんどの日記はすでに処分されていました。残された日記に何が記されているのかは、本人にしかわかりません。でもおびただしいこの紙の束はとても存在感があります。それが芸術的かどうかなんて事はわかりませんが、それに込められた無言の行為に何かを感じます。それだけでいいんでしょう。何かを読み取ろうと目を凝らし過ぎたたせいか作品がかすんできました。私は目をぬぐいながら美術館を後にしました。こういうものを「見る」ことは、私にとって価値ある時間でした。・「アール・ブリュット／交差する魂」展は、　　　　東京・松下電工汐留ミュージアム　にて７月２０日迄

2008/06/15

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フラゼッタワールドのフィギュア

で、ラジオ会館の別なお店の棚に並んでいたのが、おどろおどろしい武器を持った悪魔の騎士みたいなのとか、モンスターとか...。よく見ると、んー、これはファンタジーノベルズの世界じゃないか。といえばこの世界の大御所、フランク・フラゼッタ様。アメリカン・ファンタジー小説のコナンやターザン、バロウズの宇宙モノなんかの表紙を飾ったイラストレーターです。彼の絵はヘビメタとかプログレのジャケットにも使われていたようです。最近ではパソコンのＲＰＧソフトのジャケットなどに類似した絵が使われてますね。どうも北斗の拳も影響されているようです。ケンシロウの黒王号にそっくりな絵もあります。彼の影響を受けた若い人たちが沢山いるようですね。なんか嬉しくなってきました。一昔前の時代の人ですが、是非とも再評価してもらいたいですね。彼の画集はもう絶版らしいので私の愛蔵の２冊は貴重品かな？フランク・フラゼッタ公式サイトMUSEUM VIRTUAL TOUR彼のＨＰの「ミュージアムバーチャルツアー」はぐるり見まわせて素晴らしいよ。Frank Frazetta(フランク・フラゼッタ)　

2008/05/11

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たなごころ（掌）の中のミケランジェロ

やあ、いらっしゃい。まだ夜は冷え込みますね。ところでこれ、知ってますか？ミケランジェロのジュリアーノ・デ・メディチですよ。昔、石膏デッサンでよく描かされましたよ。美大受験のときにね。なんか懐かしくてね。これ友人がガチャポンでとったんですよ。バスを待ってたら目の前のガチャポンが石膏像のミニチュア！思わず100円玉つぎこんで、バスまで乗り過ごしてゲットしたんだと。マース、大画面、カラカラ、ブルータスとハズレが続き、やっと念願のビーナスをゲットしたと自慢げに話してくれました。で、ハズレのジュリアーノをくれたわけです。それにしても見るとディテールまでよく出来ています。よく見ると微妙な違いはあるにしろ、これだけリアルに作ってくれたら嬉しくなってきます。でも私はアリアスが欲しかったなあ。端正な顔立ち、究極の美。憧れました、惚れてました。いつも見とれてました。しかし或る日、友人の「あれって男だよ」の一言で私のロマンは砕け散りました。しかしアリアスが男なのか女なのか、未だに謎です。

2008/02/21

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