23 今駅に向かっています
9時を少し回ったでしょうか。不安が絶頂に達したときに、携帯にメールが入りました。「今駅に向かっています。」おお、加奈子さんはちゃんと約束を果たしてくれるようです。急いで車で新幹線の駅に向かいました。こいうときに限って道が混んでいます。車を駐車場に入れて改札の前に出るエスカレーターを上って行きました。あちこち見回すけど、加奈子さんは見当たりません。電話します。「どこですか?」「改札のすぐそばの毛氈を敷いた腰掛に座っています」改札のあたりを見てもそんなものはありません。ふと改札を入ったところを見ると、毛氈を敷いた腰掛があり、本を読んでいる女性が居ました。加奈子さんです。厚手の白っぽいコートにブーツを履いていました。切符を買って改札を抜けて、彼女の前に。笑顔がはじけそうでした。「こだま」に乗って1時間足らずの旅に出かけます。新年早々の新幹線はガラガラでした。二人の話は異常なほどにはずみ、あっという間に目的地に着いてしまいました。