天武の天下、持統の執念、天武系の断絶
この流れの視点で奈良時代を眺めると多くの政変劇の意味がよくわかる。これが、昨日の帰宅途上から読み始めた「奈良朝の政変劇(皇親たちの悲劇)」倉本一宏1998年1700円(アマゾンの中古市場で送料込み500円で取得)を本日昼前までに読み終えての感想である。壬申の乱で大友皇子を倒さなければ皇位に就けなかった天武天皇。その直系である文武(天武の孫)-聖武(曾孫)へ皇位を継承させるために、皇位に就いた持統天皇(天武の奥さん)の執念。ここからすべてが始まるのである。さらに、中継ぎとして元明(持統の妹で息子の嫁)-元正(元明の娘)と、女帝を量産してまで天武直系にこだわった果てに登場した未婚の女帝。この孝謙(称徳)にとっては、天武系のすべての王子たちが、自分の皇位を脅かす存在に見えたことだろう。この天武直系の皇位継承にこだわる王家の思惑と、外戚として権力の座を狙う藤原家の思惑が重なり、あまたの天武系の皇親たちが次々と粛清されいく。未婚の女帝に後継者が生まれるはずもなく、道鏡を皇位に就けようとする突拍子もない企てとなる。そして気がつけば、天武系の皇親は誰もいなくなっていた。この流れで、奈良時代を見ると、長屋王の変、塩焼王配流、安積親王暗殺、橘奈良麻呂の変、恵美押勝の乱、淳仁天皇廃位、和気王の謀反、不和内親王呪詛事件、他戸親王廃太子、氷上川継の謀反、これらがすべて同じ脈絡の上にあることが鮮明になる。最後は、光仁天皇という天智系に皇位が移り、その息子の桓武天皇で平安遷都となり奈良時代は幕を閉じる。そして、この陰謀や殺戮の記憶が次の時代の怨霊跋扈の原因となるのである。