ゆっこのこと -10- ブルートレインの中で
ゆっこは駅まで送ってくれた。列車に乗るときにふり返って手を振ると、彼女は改札から身動きもせずにこちらを見ていた。座席に座って改札を見るともう彼女の姿はなかった。乗客のほとんどいない列車で1時間あまり、大きな駅で乗り換えてブルートレインに乗った。ブルートレインのベッドは個室になっていた。ゴミ箱にボタン鍋やフルーツパフェのレシートを捨てる。ベッドに横になってきょう起こったことを思い出してみるが、どうも現実離れしていてうまく整理ができない。最後はゆっこという娘の不思議さを考えるしかなかった。もうあの町に行くことはないだろうし、彼女会うこともないかもしれないと漠然と思った。帰ったら彼女へのメールをどう書こうかなどと考えていたが、そもそも返事が来ないかも知れない。しかし、それは杞憂だった。