妹の結婚
妹モモの結婚式に行ってきました。 日にちが決まったときからすごく楽しみで、前の晩は眠れないほどだった。 朝、まだ暗いうちに家を出て、ちびくま初めての新幹線。 万全を期して、授乳スペースに近いグリーン車を確保。 ぐずらないか心配だったけど、おちちをあげたらすとんと寝てしまい、目的地まですうすう眠ってくれた。ほっ。 少し早めに式場に着いたら、廊下にモモの絵を並べたミニギャラリーが。 ちびをあやしながらゆっくり見ていると、bis家の親族が到着。 小さいころかわいがってくれた伯母たちに初めてちびくまを見せる。 「bisがママなんて信じられない!」とにこにこしながら、ちびをたくさん抱っこしてくれた。 めんこいめんこいとほめられているのがわかるのか、ちびも「うー」「らうー」と熱心に話しかけている。 いよいよ式が始まって、バージンロードを歩いてくる父と妹のすがたにうるっとしかけた瞬間、ちびくまが伯母の礼服に、さっき飲んだミルクをけぽっと! 伯母の服と自分の涙を交互に拭きながら、カメラのシャッターも切る。大いそがし。 モモが描いたモノクロの木のイラストに、出席者が拇印で色とりどりの花を咲かせる結婚証明書の演出がすてきだった。 ちびくまの指にもインクをつけて、ぽちっと小さなしるしをのこす。 フラワーシャワーのため式場の外に出るタイミングを計ったように、それまで静かにしていたちびがうわーんと泣き出した。 くまがずっとあやしていてくれるので、わたしは思う存分妹をながめたり、写真を撮ったり。 ちょうど差してきた日の光が、ウェディングドレスすがたのモモと旦那さんをスポットライトみたいに照らして、姉ばかだけど綺麗で涙が出た。 神経質で弱気な姉をいつでもかばってくれた、のんびり屋で強気なモモ。 わたしの頭の中ではいつまでも小さい妹のままなのに、隣にいるだけでそんな幸せな顔で笑える相手を見つけたんだね。 式と披露宴の間にちびくまにたっぷりおちちを飲ませ、パーティ会場へ。 親族に代わる代わる抱っこされて「きゃー!」と絶叫していたちび、来賓祝辞が始まったら、くまの腕の中でぐうぐう寝てしまった。 もしかして空気読んでる? その後もちびくまが「ふえ」とぐずるたびにくまが立ってあやしたりおむつを替えたりしてくれた。 モーハウスの授乳フォーマルを着ていったので、授乳もケープを使って席でそのまま。 おかげでほぼ中座せずに披露宴を見ていられたし、お料理も堪能できた。 みんなのおかげで、世界にたったひとりしかいない妹の、一度きりの花嫁姿を見のがさずにすんだ。 本当にありがたい。 披露宴の締めくくり、花嫁から両親への手紙で涙腺決壊。 わたしから見た家族の歴史と、妹が経験したそれは、同じ時間でも別の物語だ。 モモにはそんなふうに見えていたのね、と思いながら自分の記憶と重ね合わせて聴く。 あのころ、永遠に続くみたいな気がしていた「子ども」の時間は、今振り返るとあっという間で、わたしたちは、なんて贅沢な時間を両親からもらっていたんだろうと思う。 わたしも、あんなふうに豊かな時間を、ちびに贈ることができるかな。 結婚式の後、なかなか会えない友が片道一時間半の道のりを会いにきてくれて、くまにちびをまかせゆっくり時間を過ごす。 話ができたことはもちろん嬉しいのだけど、顔を見てお茶を飲んだら何だかすごくほっとした。 ちびくまとの暮らしは楽しくて幸せだけど、日々のあわただしさにまぎれて、鏡で自分の顔を見ることも忘れていた。 友と向かい合うことで、母でも妻でもない自分の顔を取り戻したみたい。 日が落ちてから、北へ向かう新幹線に乗るのが、以前はちょっと苦手だった。 車窓はどんどん暗くなるし、お客さんも次々降りてものさびしい気持ちになる。 だけど今日、くまとちびくまの寝顔を横目に見ながら揺られる新幹線は、いつもよりあたたかい乗り物みたいに思えて、ちっとも寂しくなかったのです。