百年の品格 クラシックホテルの歩き方
富士屋ホテル、日光金谷ホテル、万平ホテル、奈良ホテル。ホテルの黎明期から存在し、今も宿泊客を魅了する4つのホテル。日本文化を基盤としながら、西洋との融合により、独特の世界を作り出す場所。著者は富士屋ホテルの創立者の一族の末裔であり、その母はホテルの中で育った人。それゆえに、客としてだけではなくホテルを維持する側の思いをも伝えてくれる。何事も継続するのは大変だ。現状維持のみではなく、常に時代に沿った工夫も必要だ。だが時代に迎合するあまりに、ホテルの財産である伝統を失っては本末転倒である。これらのクラシックホテルズも、この先はどうなるか分からない。富士屋ホテルは、箱根を訪れた際に何度か食事をした事がある。風雅な建物にビールの立て看板が残念でたまらなかった思い出がある。雑多で隅々に目が行き届いていない印象だった。最近は老舗を全面に押し出して、そのあたりは改良されたらしいが。奈良ホテルは2度程泊まった。良い時間を過ごせた。奈良を歩く途中で立ち寄り、タクシーを呼んでもらったり、お茶を飲んだりもした。奈良の都の古き空気の中にぴたりとおさまる風情がいい。万平ホテルは何度か前を通った。寝泊まりは別荘であったので、利用する機会がなかったのだ。意外と小ぶりな建物だった印象がある。様々な伝説だけは街中で聞いていた。両陛下の話、ジョン・レノンの話・・・避暑に訪れた古の優雅な方々の話。伝説を持つホテルが好きだ。物語のある場所にいると、自分のその中の一員として、何かを演じている気分になれる。日常から離れる場所のみが持つ空間の中で、しばし別の自分になれる。この本の中のあれこれ、実際に宿泊して確かめたいものだ。奈良ホテル2階にて