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[クロムウェル　カーライル著＆天路歴程] カテゴリの記事

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• 余が非戦論者となりし由来 内村鑑三

  余が非戦論者となりし由来（明治三七年九月二二日『聖書の研究』56号）私も武士の家に生まれた者でありまして、戦争は私にとりましては祖先伝来の職業であります。それでありますから私が幼少の時より聞いたり、読んだりしたことはたいていは戦争に関することでありました。源平盛衰記、平家物語、太平記、さては川中島軍記というように戦争にかかわる書を多く読んだ結果として、私もついこの頃まで、戦争の悪いということがどうしても分からず、キリスト教を信じて以来ここに二十三、四年にわたりしも、私も可戦論者の一人でありました。現に日清戦争の時においては、今とは違い、欧文をとって日本の正義を世界に向かって訴えんとするがごときものはごくごく少数でありましたゆえに、ヨセばよろしいのに、私は私のまわらぬ鉄筆をふるいまして「日清戦争の義」を草してこれを世に公にした次第であります。カーライルの『クロムウェル伝』を聖書につぐの書とみなしました私は正義はこの世においては剣をもって決行すべきものとのみ思いました。しかるに近頃にいたりまして、戦争に関する私の考えは全く一変しました。私は永の間、アメリカにあるクエーカー派の友人の言葉に逆らいて可戦説を維持してきました。しかるにこの二、三年前よりついに彼らに降参を申し込まねばならなくなりました。ある人はこれがために「変説」をもって私を責めますが、ドーモいたしかたがありません。私は戦争問題に関しては実に変説いたしました。西洋のことわざにも「智者は変ずる」ということがありますから、私のごとき愚かなる者も、もし充分なる適当の理由がありますれば、かかる問題に関しては説を変じてもよろしかろうと思います。さて何が私をついに非戦論者となしたかというに、それにはだいぶ理由があります。私は今ここではその主なるものだけを述べようと思います。一、私を非戦論者にしたものの中でもっとも有力なるものは申すまでもなく聖書であります、ことに新約聖書であります。私は段々とその研究を続けてついに争闘なるもののその総ての種類において避くべきもの、嫌うべきものであることを覚るにいたりました、新約聖書のこの句かの句を個々にとらえないで、その全体の精神を汲み取りまして、戦争はたとえ国際間のものでありとするも、これを正しいものとしては見ることができなくなりました。十字架の福音がある場合においては戦争を可（よ）しとするとは私にはどうしても思われなくなりました。二、私をしてほとんど極端なる非戦論者とならしめし第二の原因は私の生涯の実験であります。私は三、四年前にある人たちの激烈なる攻撃にあいました。その時ある友人の勧告にしたがいまして、私は我慢して無抵抗主義を採りました結果、私は大いに心の平和を得、私の事業はその人たちの攻撃により、さしたる損害をこうむることなく、それと同時に多くの新しい友人の起こり来りて私を助けくれるのを実験しました。私はその時に争闘のいかに愚かにしていかに醜きものであるかをしみじみと実験しました。私は確かに信じて疑いません。私がもしその時に怨みをもって怨みに報い、暴をもって暴に応じましたならば、多少の愉快を感じましたろうが、私の事業は全く廃（すた）れ、今の私は最も憐れな者であったろうと思います。ローマ書十二章にあるパウロの教訓を充分に覚りましたのは実にその時でありました。この事はもちろん私事ではありまするが、しかし私はそれによって総ての争闘の愚にしてかつ醜なることを覚りました。何人でも己れ自から無抵抗主義の利益を実験したる者は必ず彼の国に向かっても同一の主義の実行を勧めるであろうと思います。三、私をして非戦論者とならしめし第三の動力は過去十年間の世界歴史であります。日清戦争の結果は私にツクヅクと戦争の害あって利のないことを教えました。その目的たる朝鮮の独立はかえって危うくせられ、戦勝国たる日本の道徳は非常に腐敗し、敵国を征服し得しも故古河市兵衛氏のごとき国内の荒乱者は少しもこれを制御することができなくなりました。これは私が私の生国なる日本において見た戦争（しかも戦勝）の結果であります。もしそれ米国における米西戦争の結果を想いますればこれよりもさらにはなはだしいものがあります。米西戦争の結果によりて米国の国是は全く一変しました。自由国の米国は今や明白なる圧制国とならんとしつつあります。現役兵僅かに二万をもって足れりとし来たりし米国は今や世界一の人のこの思想の変化に武装国とならんと企てつつあります。そうして米国人のこの思想の変化に連れてきた彼らの社会の腐敗堕落というものは実に言語に堪えないほどであります。私は私の第二の故国と思い来たりし米国の今日の堕落を見て言い尽くされぬ悲嘆を感ずる者であります。そうしてこの堕落を来しました、最も直接なる原因は言うまでもなく米西戦争であります。その他英杜戦争の結果についても多く言いたいことがありまするがそれは他日に譲ります。四、私を非戦論者になした第四の機関は米国マッサチューセット州スプリングフィールド市において発行せらるるThe Springfield Republicanという新聞であります、私は白状します、私は過去二十年間のこの新聞の愛読者であります、かくも永く私が読み続けた新聞はもちろん日本にもありません、私の世界智識の大部分はこの新聞の紙面から来たものであります、この新聞は私の見た最も清い最も公平なる新聞であります。これを読んで頭脳（あたま）が転倒するような思いは少しもありません。常に平静で常に道理的で、実に世界稀有の思想の清涼剤であると思います、そうしてこの新聞は平和主義者であります、絶対的非戦論者というわけではありませんが、しかし常に疑いの眼をもって総ての戦争を見るものであります、彼はかの国人の世論に反対していたくフィッリッピン群島占領に反対しました、、彼は常に英国帝国主義の主道者なるチャンバレン氏の反対者であります。そううしてこの新聞を二十年間読み続けまして、私もついにその平和主義に化せられました。その紙上において世界有名の平和主義者の名論卓説を読みまして、私の好戦的論城も終に全く壊されました。ある人がこの新聞を評して「その感化力に新約聖書のそれに似たるものあり」と言いましたが、実にそうであります。『スプリングフィールド共和新聞』はその二十年間の説教の結果、終に私をもその信者の中に加えました。この外にもまだ私を非戦論者になした勢力はありましょう、しかしこの四つのものがその重なるものであります、ことに近頃私をして非戦論に関する私の確信を固めしめましたものは哲学者故スペンサー氏の戦争に関する意見であります。氏の戦争論については他日別にお話しいたしたく思います。　私は終に非戦論者となりました。しかし非戦論とはただ戦争を非とし、これに反対するということばかりではありません、非戦論の積極的反面は言うまでもなく平和の克復並びにその耕修であります、私は神に祈り、神もし許したまわば、国民の与論に逆らって、この時に際して非戦論を唱えた賠償として、微力ながらも、でき得るだけの力を尽くして、平和克服の期を早め、敵国との行意交換の基を作りたく思います。ドウゾ本誌読書諸君においてもこのためにお祈り下さらんことを願います。

  2014年11月23日

• 日清戦争の義　内村鑑三　その２

  ここにいたりて法律論者は吾人を擁して言わん。日本の朝鮮に干渉する権利を有せざるは支那と異なることなし。曰く日本の出兵は、支那の出兵と同じく譴責すべきものなり。曰く、平和の破裂は日本より来たれりと。吾人はこれに答えて言う。一、干渉そのものは悪事にあらず。経済学にいわゆる放任主義(Laissez-faire)なるものは、ある区域内にのみ真理なりとす。吾人は吾人の隣人が吾人と異なる宗教を信ずればとて、吾人と異なる商業に従事すればとて、吾人と異なる嗜好を有すればとて、吾人は彼らに干渉する権利を有せず。然れども隣人が餓死に貧する時、強盗隣人を犯す時、明白なる吾人の常識が隣人が非常の速度をもって滅亡の絶壁に向って走りつつありと示す時は、吾人は干渉の権利を有し、また実に干渉せざるべからず。もし放任主義あるものにして隣人のすべての苦厄に対する無情無感覚を意味するものとせんか、これ悪主義なり、直ちにこれを放棄して可なり。もしこの意味の放任主義にして永遠の天則なりとせんか、キリスト釈迦の世に存せし理由、リビングストンやジョン・ハワードの世に来たりし理由はいずくにあるや、放任の終わるところと干渉の始まるべきところを定むるに一定の法則はなかるべし、しかれども世に放任すべきの境遇と干渉すべきの境遇あるは何人も疑うことあたわざるところなり。スウェーデン王グスタフ・アドルフがドイツ政治に干渉し、フェルナンド、バレンスタインの輩をして彼らの邪意を彼土に逞（たくまし）うすることあたわざらしめしは、高尚義侠の干渉と言わざるを得ず。ルッセン戦場の勇者は、人類中最も聖きものの一人なりき。新教主義のドイツが、今なお崇拝に近き尊敬をこめて彼の威名を慕うのは、宜（う）べなり。イギリスのクロムウェルが、イタリア政治に干渉し、彼の威力を扶助なきピードモント人に貸し、残忍なサボイ公をして無辜（むこ）の民に害を加え得ざらしめしは、高尚なるキリスト教的の干渉なりしなり。英人の推察心は、実にその時実に絶頂に達し、歴史は盲詩人の言葉を録し、「アルプス山上に凍死せる聖者の散骨」を慰いて止まず。世が今日の経済的時代に入りしより、かくのごとき高尚なる干渉は全く跡を絶つにいたれり。しかれどもその西洋政治において廃弛に帰せしは東洋政治において用ゆべからざるの理由にあらず。吾人の朝鮮の政治に干渉するは、彼女の独立今や危殆に迫りたればなり。世界の最大退歩国がその麻痺的蟠屈の中に彼女を抱懐し、文明の光輝すでに彼女の門前に達するにも関せず、惨虐妄行のなお彼女を支配すればなり。吾人は隣人の健全なる平和を妨げるの権利を有せず。しかれども彼女を救わんがためには、白々日を見るよりも明らかなる弊害より彼女を脱せしめんがためには、吾人の強く彼女にに干渉するは、吾人の有する神聖なる隣友の権利なりと信ずるなり二、朝鮮出兵は明治十八年の天津条約の明文によれり。ゆえに何人もこれに関して吾人に批難を加えざるべし。しかれどもなお吾人にただすに我が邦派遣の兵数はかの地在留の帝国臣民を保護のためには、あまりに多きにすぎるをもってするものあらば、吾人は論者に向い、些細なる反乱鎮圧のために送られし支那派遣の兵数と、明治十五年における支那兵の暴状を委細に調査されんことを望むのみ。しかして清兵幕を牙山に張るに際して、我が兵の直に京城に入りしの弁明を求める者あらば、吾人は過去の経験によりて、清国政治家の信用すべからざるを知りたれば、ここに偽騙（ぎへん）の徒に対する正当防御に備えしなりと答うるのみ。もし、我が邦の処置は、とうてい疑惑を免るる、あたわざるものなりと言う人あらば、吾人はかくのごとき批評家に問いていわんのみ。「足下もし我の位置にあらばいかに処置したもうや」と。吾人はいまだ吾人の朝鮮出兵に関して、吾人の過失のいずこにあるかを知るあたわざるなり。三、豊島近海における最始の海戦において日清いずれが先に発砲せしかは、今日いまだ判決するを得ざるべしとせん。吾人は彼より発砲せしと信ず。しかれども愛国的偏心がこの事に関する吾人の判決を誤らしめんことを恐る。しかれどもこれ彼我の義を決するにおいては小問題に過ぎず。いずれが戦争を促がし、いずれが戦争を避けんとせしや、これ最要問題なり。　ここに吾人の論者に注意すべきことあり。すなわち今回葛藤（かっとう）の始まりしより平和の破裂にいたりしまで、ほとんど満二か月の長きにわたりしこと、これなり。吾人は終始一徹朝鮮の独立と保安とを維持し、北京政府を促がすに、我と協力して半島政治の改良に従事せんことをもってせり。いかに吾人の平和的議案が横柄にもしりぞけられしか。いかに京城朝廷にあるその使役者が吾人の改良的方針に妨害を加えんとせしか。いかにかくなしつつあいし間、彼はさかんに兵備を整え、海陸共に我に当らんと用意せしかは、何人も疑うべからざるところ、もし外人を欺くの支那人の偏僻の最も著しき実行を見んと欲せば一八九四年八月一日以前八週日の間における彼らの日本国に対せし所置においてするを得べし。吾人は固く信ず、彼らはいまだかつて、かくも自由に外国人を欺きしことはあらじと。もし彼らの対敵にして彼らの温良なる東洋の隣人にあらずして、西洋強国の一なりとせんか、彼らは長時日を待たずして鉄丸すでに彼らの身に及び、詐欺と虚言の価値をば、早やすでに十分に学びおりしならん。孔子を世界に供せし支那は、今や聖人の道を知らず。文明国がこの不実不信の国民に対するの道はただ一途あるのみ。鉄血の道なり、鉄血をもって正義を求むるの途なり。しかれども今、法理的弁論を去りて(吾人は、これを軽視するにあらず)、歴史的考察に移らんに、日支の衝突は免がるべからざるものならずや。新文明を代表する小国が、旧文明を代表する大国と相隣して二者終に必死の衝突の来たらざることは、歴史面上いまだかつてその例を見ず。ギリシャ対ペルシャ、ローマ対カルタゴ、エリザベス女王の英国対フィリップ二世のスペイン、―これらは吾人がここに記載する双対の著しき例なり。しかして、両者衝突してマラソン激戦となり、ザマ血闘となり、常勝艦隊（インビンシブルアルマダ）の入寇（にゅうこう）となりしことは、両主義の和合すべからざるがごとく避くべからざることなりき。しかして人類の進化歴史において摂理は常に小をして新を代表せしめ、大をして旧を代表せしめたり。これけだし肉に対して霊を試み、量に対して質を練らんがためなるべし。しかして二者衝突するや幾多の運命循環の後に勝利の冠は常に小にし新なるものの上に落ちたり。これけだし人類が活ける霊を貴び、死する肉に頼らざらんがためなるべし。今や再び世界絶東の地において同一の大教訓は人類に示さんとす。新にして小なる日本は、旧にして大なる支那と衝突せり。朝鮮戦争の決するところは、東洋は西洋とひとしく進歩主義に則るべきや、あるいはかつてペルシャ帝国の保護するところたりしカルタゴの方針たりし、スペインの奨励せし、いかして十九世紀の今日、満州的支那政府が代表する退歩の精神は東洋全体を指揮すべきやにあり。日本の勝利は、東洋六億人の自由政治、自由宗教、自由教育、自由商業を意味し、日本の敗北と支那の勝利は、その結果たる吾人の言をわずらわすして明らかなり。この重大なる関係を有する戦争において、何人か人類の友をもって任ずる者にして日本の味方たらざるものあらんや。北米合衆国をしてこの衝突に関するその去就を決せしめよ(―合衆国は始めに吾人を文明の光輝に導きしもの、あたかも今日吾人が朝鮮を誘導しつつあるがごとし)。そのピューリタン祖先の精神、そのリンカーン、サムナー等、その数知れざる勇者の霊は、異口同音こぞって日本主義に賛せんのみ。英国をして同一問題を決せしめよ。その自由の率先者なるモントフォート公サイモンを始め、そのハンプデン、クロムウェル、そのピューリタン時代の聖人、そのウィルバフォス、コブデン、ブライト等自由と正義を愛せしそのすべての高潔の士は、みなことごとく日本の味方たらんのみ。フランスをして同一の問題を決せしめよ。そのラファイエットやミラボー、その近世のユーゴーなり、そのコリニーとユグノー党なり、その義侠に富める圧制政治の激烈なる反対者は、こぞって小にして新なる日本にくみせんのみ。ドイツをして同一の問題に答えしめよ。そのルターとシラーとレッシング、光を求めし不滅のゲーテ、その忠実な「父国」の保護者は、東洋における日本の勝利を望んで止まず。イタリアをして同一の問に答えしめよ。そのダンテとサボナローラ、リエンジとアルノルド・ガリバルディ、ビクトル・エンマヌエル、その吾人の仰慕する熱誠のすべての士は、無学と圧制の下に東洋をつながんと欲する支那にくみするものならんや。終に吾人の善良なるスラブ的隣人をしてこの問に答えしめよ。その獄刑の厳に過ぎるに関せず、その印刷条例の寛ならざるを問わず、人類の開明はその偉大なる建国者の精神ならずや。ピョートル大帝のロシアは、吾人の親友なり。アジアの文化を促さんとする吾人今日の行為に対して彼は協賛せざるを得ず。しかり。宇宙をしてこの問にに答えしめよ。造化は人類の半数を満州的政治の下に置き、支那的文明の惰眠のうちに、永く沈淪せしめんとするか。ハンガリーの愛国者故ルイ・コシュートかつていえるあり。「余の見るところをもってすれば十九世紀の二大英雄とは、ドイツのビスマルク公と日本皇帝陛下なり」と。彼をしてこの言を発せしめしものは、吾人の尊戴する皇帝がその臣下に施せし偉大の事業にとどまらずして、アジアの億兆がまさにその余沢(よたく)に浴せんとしつつあればなり。日本は東洋における進歩主義の戦士なり。ゆえに我と進歩の大敵たる支那帝国を除くの外、日本の勝利を望まざるものは宇内（うだい）万邦あるべきにあらず。　吾人がここに世界の国民に向って、吾人のの義を明らかにするの理由は、吾人目前の衝突において彼らの援助をこわんがためにあらず、吾人はこの栄光を他の国民に分与するを欲せず、吾人は単独終極まで戦わんことを欲す。今日吾人の欲するところは彼らの推察的中立をもって足れり。今は日本が世界に尽くす時なり。日本すでに世界の恩沢をうくるや久し。　吾人は朝鮮戦争を義戦なりと論定せり。それしかるは戦争局を結して後に最も明白なるべし。吾人は貧困に迫りし吾人の隣邦の味方となりたり。その物質的に吾人を利するところなきはもちろんなり。また支那といえども壊滅は吾人の目的にあらず。彼らをして吾人流血の価値を贖（あがな）わしむれば足れり、吾人の目的は支那を警醒(けいせい)するにあり。その天職を知らしむるにあり。彼をして吾人と協力して東洋の改革に従事せしむるにあり。吾人は永久の平和を目的として戦うものなり。天よ、この義戦にたおるる我が同胞を憐れめよ。日本国成りてより国民はいまだかつて今日のごとき高尚なる目的をもって燃えず。今や吾人は一団となり吾人の仇敵に当たらんと欲す。　　　たとえ絞台の上にするも、　　　たとえ戦陣の頭にするも、　　　死するに高尚なる場所は、　　　世を救わんが為め死する場所なり。

  2014年11月23日

• エピローグ（二刷）国家主義に対する民主主義、全体主義に対する個人主義及び戦後日本の「不戦」の固い礎石は内村鑑三にある

  エピローグ（二刷）　二〇一四年六月二九日「袋井市で内村鑑三を読む会」を開催し、袋井市の4人に参加頂き、内村鑑三の「予の見たる二宮尊徳翁」を輪読した。九月一三日消印の○○氏からの礼状に「先生のご研究は偉大ですね」とあった。○○氏からは「佐伯理一郎氏のことがよく分り嬉しい」とメールを頂いた。○○氏は英文校正に協力頂き、「佐伯理一郎小伝」も氏に資料を提供頂いた。併せて感謝する。二刷の目的は英文等の校正と五日市剛氏築地講演収録にある。五月一八日、本会の○○と青山士の荒川放水路見学の道々話した。○○が「二宮尊徳の会」が「ボーイズ・ビー」を刊行するのは適当かと提起する。「内村鑑三は二つのＪ、日本とイエス・キリストを説いた。楕円は二つの中心を持つ。真理の探究には一つではなく二つの中心が必要なように思う。本会も報徳の精神と札幌農学校精神の二つの中心を持つ。日本の近代化に二宮尊徳の「報徳」は大きな役割を果たしたと考える。「報徳」を日本の近代産業に適用し、成功させた鈴木藤三郎の「報徳の精神」と「荒地開拓法」は、世界に発信する価値があると考える。日本の近代化を考える上で札幌農学校精神も見過ごせない。日本で近代資本主義が自生するかのように発展したのは札幌農学校精神と報徳の精神にある。一、マックス・ウェーバーは、ピューリタニズムの倫理が資本主義における資本の原始蓄積を形成し、経営者、労働者側双方に資本主義に最も適合的なエートス（倫理的生活態度）を生み出したと論証した。ウェーバーは、それが西欧とアメリカで発展したとする。しかし「ピューリタニズムの倫理」は日本にも札幌農学校にもたらされ発展したというのが、ボーイズ・ビー・アンビシャスの主張にほかならない。二、ウェーバーは、「集団的事象」としてのプロテスタントの倫理を強調する。「ボーイズ・ビー」では、二期生の四人の若者の人生を手紙等によって彼らがいかに学び、世に働いたか、また彼らを継ぐ系譜を明らかにし、現代の私達を益しているかを語らせる。三、「ピューリタニズムの倫理」で重要なのは合理化で、召命を土台とした合理的な生活態度にある。内村の本質は科学者であり、「合理の世界を合理の心で理解しよう」（第二集p.203）、自分の人生を実験と考え（同p.213）、「良心と理性でテストし、これこそという確信に従うしかない」（同p.113）とした。「報徳の精神」至誠・勤労・分度・推譲の倫理的生活態度は、「ピューリタニズムの倫理」に相似する働きをした。ただ報徳はそれを受け継ぐ者が報徳の普及のため時の権力に追従する一面があった。内村は権力への追従を拒絶し、常にノーブルを求める。内村鑑三の視点、富田高慶の「道徳が本である」という二宮尊徳の思想に基づく必要がある。内村のノーブル（鈴木藤三郎の「報徳の精神」でもある）を「報徳」に注ぎこまなければならないのではないか。「二宮尊徳の会」で「ボーイズ・ビー」と「報徳記を読む」を並行して刊行する意味はそこにある」と。内村鑑三は「英人はシェークスピアその人を生じたるをもって光栄となす。日本は二宮尊徳先生を有するというにおいて至大の光栄となすべきか。」という（第一集p.65）。同様に「現代日本は内村鑑三を有するにおいて光栄となす」というべきであろう。カーライルはいう。「近世の読者よ、願くは此書翰を精読し了解せんと努めよ。茲に人が霊魂を有せしこと、神と共に歩みしことの証がある。（略）一度神の道に従う、苦難窮乏何かあらん、既に足る、只己れを殺して神の許に投ずる、生くるも死ぬるも主の思いままである。これがクロムウェルの信仰であった。読者よ、かかる経験を有するか。もし有せずば、現世の行路は平安ならんも、天の光を宿すことは出来ぬ、天の光を放つことは出来ぬ」と。内村鑑三も「神と共なる闘い」において天の光を宿し、天の光を放ったのだ。そして国家主義に対する民主主義、全体主義に対する個人主義及び戦後日本の「不戦」の固い礎石は内村鑑三にある。　十月四日

  2014年10月03日

• 佐伯は「与える人」、「祈祷の人」であった。

  ○○さま今日はありがとうございました。今、帰りの電車です。○○さまに会えて、佐伯理一郎という人の「与うは受くるより幸いなり」の人となりが感得できました。感謝します。最後の　「愛の挨拶」　のヴァイオリン　など　〇〇薫が弾いていた音の調べに子供の幼いころも想い合わされて感無量でした。『阿蘇が嶺のけむり 佐伯理一郎小伝』より　佐伯理一郎は一八六三年四月三日熊本県阿蘇郡内ノ牧宮地（現阿蘇市）で当時の薩摩藩阿蘇神社付宮司、佐伯清次郎、母志津の長男に生まれた。理一郎の祖父は山の狩猟で誤って下男に鉄砲に打たれ亡くなった。当時加害者の首を届け出ないと家督相続出来なかった。下男は「この首をお公儀に」と自害したが、長男は実行せず、次男の清次郎が佐伯家の宮侍の資格をついだ。　理一郎は宮川経連に習字を学び、本島四郎に漢学を学んだ。十三歳の時、母から二十銭貰い、鶏卵の行商を始めた。カゴ一個を買い、月の一、六の日を売出日とし、鶏卵を一時から五時まで巡回販売した。巡回中つまずいて鶏卵は割れ家の門口で嘆いていると、母に「それほどの事で男は泣くものであってよいか」と叱られたという。理一郎は、後に、母を京都に迎える。　十五歳の時、親族会議で理一郎を医者とすることが決定し、久富玄静の弟子として入門した。明治十年（一八七七）理一郎は熊本洋学校に勉学中、西南戦争が起こり、熊本城も焼け落ち、宮地に帰った。一八七八年、十七歳の時、県立熊本医学校に入った。当時熊本バンド（徳富蘇峰、海老名弾正、宮川経輝、小崎弘道等）と呼ばれる熊本洋学校でジェーンズの感化によりキリスト教に入信し、奉教趣意書に署名し、キリスト教による人民の啓蒙教化を誓った運動があった。彼らの多くは同志社に移った。理一郎は二十歳で医師試験に合格した。一八八三年宮川経輝の講演を聞き感動し、小崎弘道に紹介された。この年上京し、第一基督教会、ルーテル記念会、聖書の友の会など参加した。一八八四年各派連合祈祷会に参加し、内村鑑三と懇談を杉田玄端方で行っている。また新島襄と知り合い、日記に「新島襄氏ノ熱心ナル説教に感ズ」と記す（「佐伯理一郎―同志社医学の支柱―」本井康博）。同年三月第一基督教会で小崎弘道から洗礼を受けた。同年四月海軍軍医を志願し、横須賀海軍病院に勤務し、翌年五月東京海軍病院に転勤した。一八八五年米国留学の許可があった。海軍省最初の留学生である。ヘボンの紹介でペンシルバニア医科大学に入学する。一八八五年十月三十日横浜港を出帆し十一月十四日サンフランシスコに到着。二十三日フィラデルフィアに着、フィラデルフィア大学の傍聴生となる。一八八六年三月、新渡戸稲造、広井勇と出会い、親交を深めた（第三集p.124）。六月新渡戸のドイツ留学の際は、ニューヨークに見送った。当時内村鑑三はアムホルスト大学神学部にあり、三島弥太郎と訪問する。一八八八年四月ペンシルバニア医科大学を卒業した。政府の留学年数は三年で、米国及び欧州に留学すべしという命令であり、ドイツのボン大学に留学した。五月七日ケルンに到着時、新渡戸が出迎える。その後エルランゲン大学に入学し、新渡戸の誘いでハレ大学に転学した。新渡戸からミス・エルキントンとの結婚について「君と広井だけ」と相談を受け、「君も向こうもクリスチャン。終りまで変わらないならば賛成する」と答えた。新渡戸は「広井も同意見だった。僕も男だ、決して中途で別れない」と結婚を決心した。一八九一年一月フィラデルフィアの新渡戸の結婚式に日本人で立会ったのは、後に理一郎の妻となる土倉小糸の姉妹の土倉政子一人であった（第三集p.124「四十五年間渝らぬ友情」佐伯理一郎）。一八九一年四月帰国し、阿蘇に帰郷後、同志社の病院長ペリー氏の招きを受け京都に向かう。京都で開業し、生涯一町医者だった。同志社病院にも勤務した。一八九二年同志社ミス・デントンの紹介で土倉庄三郎の四女小糸と婚約し翌年結婚した。日清戦争の際軍医として長崎・佐世保に勤務し、召集解除後、京都に佐伯病院を創設した。佐伯病院は産科、内科、外科があり、佐伯は関西産婦人会を開催、佐伯産婦人科病院を設立する等活躍した。小伝に「明治三十三年に内村鑑三を京都瓢亭に迎えて以来、又内村が不敬事件に逢い一八九七年以来京都に来て彼の借家に不遇の身としてあった時、彼のため大いに尽力を惜しまなかった」とある。また佐伯の回想によると「鑑三君とは、私が麻布中町の教会を小崎弘道君等と創設した時分の同教会員であったが、米国留学をも共にし、親友で、常に彼の指導を受けているが、殊に妻の最大の愛読者は、彼の『聖書の研究』で、同誌を手に入れると幾度も幾度も繰り返し耽読している」（「我家庭における宗教教育」『基督教世界一九一二年七月』」）とある。内村鑑三から佐伯理一郎にあてた以下の手紙はこうした事情を踏まえて理解できる。佐伯理一郎は昭和二八年五月没した。往年九二歳。佐伯邸跡に「受るよりも與ふるは福也」の石碑が建つ。佐々木二郎氏の回想（「小伝」p.4）に、佐伯理一郎の信仰と祈祷をうかがわせるエピソードが載っている。「余はかつて上京区中長者町室町西入に仮寓した。チフスで大学病院に入り、退院後この仮寓で静養中、急に心臓が苦しくなり、先生に往診を乞うた。老先生は『狭心症かもしれない、しかし心配するな、私が祈っているから、神は祈祷に応答する神だから。』といってくれた。佐伯翁は祈祷の人であった。その後余の病も佐伯翁のいわれた如く癒えて、余は本聖公会京都主教となるや、翁は非常に喜んでくれた」（「佐伯老先生の思い出」佐々木二郎、傍線編者）。佐伯は「与える人」、「祈祷の人」であった。

  2014年10月01日

• アメリカ留学中に内村はケルリン博士とアマスト大学のシーリー学長という師父と出会い知己を得た。二人の「真情」と「愛情」に内村は常に感謝する

  内村、腸チフスで入院（一）ケルリンの葉書　内村は一八九〇年三月腸チブスにかかり一時、危篤状態に陥った。弟達三郎はケルリン博士に葉書を出した。ケルリンは内村の容態を気遣う葉書を寄越し、後に内村は「ドクトル　ケルリン氏よりの書翰」として、「東京独立雑誌」四九号に載せた。（7-469）内村は「信書とは真情の発表をいう」「心の奥底に貯蔵する温き愛情を伝ふる事なり」として紹介する。「ドクトル　ケルリンは余が在米四年間師父の恩を蒙りし人にして、この書は余が腸チフスにかかりしを聞いて、余の弟達三郎に送り来たりしものなり。　内村達三郎君、　　貴下よ、　本年三月二〇日出の貴下のはがきを受け取りたり。余は鑑三の危篤なる病にかかりしを聞いて実にはなはだ悲しむなり。余ら一同は彼が安然に快復するを聞くまで心安からざるべし。彼に余並びに全家の愛心よりする慰藉を伝えられよ。我ら一同は彼並びに彼の家族に対して友愛的同情を懐くものなり。」アメリカ留学中に内村はケルリン博士とアマスト大学のシーリー学長という師父と出会い知己を得た。二人の「真情」と「愛情」に内村は常に感謝する。

  2014年09月28日

• 「内村鑑三　神と共なる闘い」は、国家主義・軍国主義に対する民主主義・平和主義について現代の私たちにある意味、永遠の今日的課題を提起している

  プロローグ　第五集二刷に当って　編集者　地福進一　ボーイズ・ビー・アンビシャス第五集「内村鑑三　神と共なる闘い」は、内村鑑三の米国留学帰国後の北越学館事件、一高不敬事件を、カーライルの「クロムウェルの手紙と演説」にならって、内村の手紙と講演を「順序正しく」整理することによって、内村自身に語らせようという試みである。二〇一九年九月二一日付で前○○大学教授○○氏から第五集贈呈の礼状をいただいた。「この度は『ボーイズ・ビー・アンビシャス』第五集を御恵贈たまわり、いつもながらの御厚誼の程、感謝致します。学習会の成果を精力的にまとめられ公刊され、敬服の至りです。本集は内村鑑三研究のよき資料集になる御労作と存じます」「内村の不敬事件は決して過去の出来事ではなく、今日においても顧みるべき、国家と個人の信条をめぐる普遍的なテーマを提起していると思います。その意味できわめて時宜を得た企画です」「今後とも学習の御成果を期待します」先生はいつも丁寧に本会刊行本を読み込まれ、的確なコメントと励ましをいただき感謝している。「内村鑑三　神と共なる闘い」は、国家主義・軍国主義に対する民主主義・平和主義について現代の私たちにある意味、永遠の今日的課題を提起している。敬愛する○○先生から「あなたは『地の塩』です」と言われたことがある。『地の塩？？？』内村鑑三は「鹽が食物の味を保蔵する如くに、真理を保存し、且つ発揮する」（裏表紙裏面）という。「ボーイズ・ビー・アンビシャス」及び「報徳記を読む」で、後の世代に「真理を保蔵し発揮できる」のであれば、先生の言葉を成就するといえようか。内村は広井あての手紙で「聖徒の島が、現実に我が日本の国にあらわれた時を夢想している。しかし思う。真にこの夢想を実現しようと欲するには、まずこの我が身も財も、すべてのものを燔祭の燃える火に焼かなければならない」（表紙）と告げた。まことに人は、自ら発した言葉どおりに生きるのである。

  2014年09月28日

• 大状師(Solictor General)　Solicitor i が抜けています

  大状師(Solictor General)　Solicitor i が抜けています。第二編　第一内乱の記　一六四二年―一六四六年　　（一）前記　一六四二年二月から一六四三年一月までは書簡が残っていないために、また年代記を記そう。なぜ平和好きの英国が剣を以て事件を解決しようとするのに至ったのか―これは読者の考えるべき問題である。　チャールズ王は、一月には国民意向の赴くところを察して、ピム、ハムデン、ホールズ等ピューリタンの首領を自己の大臣として紛乱を解決しようと計った。彼らは王に背く心がほとんど無かった人々であるゆえ、もし出来たらよかったかも知れない。　この交渉は始まったけれども、うまくまとまらなかった。もちろんこうなると王は自己の願いと正反対の企画に允許（いんきょ）を与えなければならないこととなるから、うまく行くはずがない。もう王の傾向と英国民の傾向とが相反してしまっているのだから、王がこの国を治めることはできない。それゆえ交渉は中止された。ただセント・ジョンが大状師(Solicitor General)に任命されたばかりである。　それならと王は別の手段に訴えた。すなわちピューリタンに反対する手段を取った。ひそかに軍隊の士官と謀り、軍隊は議会を邪魔にするような陰謀をやった。議会が味方にならないなら、いっそ軍隊をもって威嚇しようというわけだ。この軍隊の陰謀は一六四一年の夏秋の間、人心をしておそれさせた。これが議会に遂に自ら軍隊を造って自分を護らなければならないという決心を起さしめたゆえんである。

  2014年09月21日

• 思えば、私ほど神のために尽さなければならないものはありません。これまでの恩寵は数えることができません、来たった愛と憐れみも少なくはいません

  「Covenannters」 n が2つ重なって、変だと思います。古語の為、辞書ではわかりませんでした。クロムウェルは一六三八年エセックスのウィルアム・マシャム氏方にいる親戚セント・ジョン夫人に次の手紙を送った。サー・ウィリアム・マシャムはピューリタンで、政治上活動し、遂にクロムウェルの下に大官となった人。その家は今は残っていない。まずこの手紙が同家を記念する材料となるくらいのものである。私はこの書簡の綴字法を現代のものに改めたゆえ、読者も現今のように思って読んでもらいたい。セント・ジョンはハムデン事件の有名な弁護士、その夫人がクロムウェルの従妹（いとこ）に当るのである。すなわち伯父ヘンリーの娘である。多分夫婦でこの家を訪問中であったのであろう。親愛なる従妹（いとこ）よ。愚劣な私に対して変わらない愛情を寄せ給うこと、ただただ感謝の至りです。　主が私の霊魂のために慮りたまうこと大なるは私の確信するところで、将来もまたそうでしょう。神は水のない荒野に泉を湧かしたまうもの、私の足遅く昏迷であっても、決して棄てることは無いでしょう。遅くても主は私を幕屋まで招くと信じます。ああ我が霊と我が体とは既に安らかです。神の栄光を表わすには、働くもよし、苦しむもよし、常に歓喜に溢れています。　思えば、私ほど神のために尽さなければならないものはありません。これまでの恩寵は数えることができません、来たった愛と憐れみも少なくはいません。主はみ子キリストの中に私を受け入れ、光明の中に歩ませたまう。私たちの暗きを輝かすのは彼である。私のような暗黒の心を照らしたまう主の有難さよ。あなたが知りたまうように私は暗黒を愛した者、罪人のかしらでした。しかるに主は慈悲を垂れたまうた。ああ大なる愛よ。願わくは主を讃美し、「善きわざを始めし者、これを主イエスキリストの日までに全う」することを祈ってください。マシャム家の人々にお声をかけてください。愛情のほど、有難く、また私の息子もお蔭で健在です、と。願わくは私の息子のために祈り、また教えてください。ご主人へも、お子様へもよろしく。いよいよ筆をおきますが、主があなたと共にあらんことを祈っています。以上。一六三八年一〇月一三日、エライにてオリバー・クロムウェル　　エセックス、サー・ウィルアム・マシャム方　　　　愛する従妹、セント・ジョン夫人様「私の息子」というのはディックであったらしく察せられる。クロムウェルがこの書簡を発する少し前、ディックをフェルステッドの学校へ連れて行き、この家へも立寄って人々に会ったらしく思う。しかし、今や時の流れに洗い流されサー・ウィルアムもセント・ジョン夫人も皆過去の人となってしまった。すべて消えてしまった―年老いたナイチンゲールの歌のごとく、古バラの香のごとく。ああ死よ、ああ時よ！マーク・ノーブルは、この手紙でクロムウェルが若い時、素行がおさまらなかったことが分るなどと言っている。ああ、心霊の苦闘を知らない憐れな男の誤解にも困ったものである。近世の読者よ、願わくはこの書簡を精読して了解しようと努力されたい。ここに人が霊魂を有すること。神と共に歩んだことの証しがある。彼は「上へ召して賜う所の褒美を得ようと標準（めあて）に向いて進」んだのである。ひとたび神の道に従えば、苦闘・窮乏何かあらん。恩恵既に足る。ただ己れを殺して神のもとに投ずる。生きるも死ぬも主の思いのままである。これがクロムウェルの信仰であった。読者よ、このような経験を有するか。もし有しなければ、現世の行路は平安であろうが、天の光を宿すことはできない。天の光を放つことはできない。（三）二年間　次の二年間の手紙は現存しないため、年代記を記す。　　　一六三九年五月―七月。スコットランド人は厳粛な誓約書を造り正に公然と反抗したため、彼らを誓約派(Covenanters)と称する。王は彼らを懲らしめるため、議会の協賛もなく勝手に軍隊を派遣し、一六三九年五月八日にはニューカッスルに達した。スコットランド人は義兵を以てこれに応じ、ダンスローを占拠したが、ひとまず休戦することになって、ほぼ軍を解いた。

  2014年09月21日

• 何ということでしょう。先週土曜日に送付した　内村鑑三　神と共なる闘いが　一週間たたないうちに　江別市立図書館の蔵書となりました

  ビフォー・アフター風にいえば「何ということでしょう。先週土曜日に送付した　内村鑑三　神と共なる闘いが　一週間たたないうちに　江別市立図書館の蔵書となりました」というところか。加速の法則が働きだいしているのか、反応が早い平成26年９月１２日現在ボーイズ・ビー・アンビシャス第５集 :内村鑑三　神と共なる闘い市区町村立図書館　２図書館江別市立図書館　大槌町立図書館

  2014年09月12日

• 「報徳記を読む第２集」の入ったデータを収めた記憶媒体にアクセスできなくなった

  ほぼ完成していただけに非常にショックな出来事であった「後世への最大遺物」の中で、カーライルが心血を注いだ「フランス革命史」の原稿を友人が借り、その大事な原稿を友人の召使いが燃やしてしまった事件を思い出した、これで立ち上がれないようであれば、もともと世に問うほどのものではないということであろう。ああ・・・フランスの革命を書いたカーライルの生涯の実験を見ますと、この本よりかまだ立派なものがあります。その話は長いけれどもここにあなたがたに話すことを許していただきたい。カーライルがこの書を著あらわすのは彼にとってはほとんど一生涯の仕事であった。チョット『革命史』を見まするならば、このくらいの本は誰にでも書けるだろうと思うほどの本であります。けれども歴史的の研究を凝こらし、広く材料を集めて成った本でありまして、実にカーライルが生涯の血を絞って書いた本であります。それで何十年ですか忘れましたが、何十年かかかってようやく自分の望みのとおりの本が書けた。それからしてその本が原稿になってこれを罫紙けいしに書いてしまった。それからしてこれはモウじきに出版するときがくるだろうと思って待っておった。そのときに友人が来ましてカーライルに遇あったところが、カーライルがその話をしたら「実に結構な書物だ、今晩一読を許してもらいたい」といった。そのときにカーライルは自分の書いたものはつまらないものだと思って人の批評を仰ぎたいと思ったから、貸してやった。貸してやるとその友人はこれを家へ持っていった。そうすると友人の友人がやってきて、これを手に取って読んでみて、「これは面白い本だ、一つドウゾ今晩私に読ましてくれ」といった。ソコで友人がいうには「明日の朝早く持ってこい、そうすれば貸してやる」といって貸してやったら、その人はまたこれをその家へ持っていって一所懸命に読んで、暁方あけがたまで読んだところが、あしたの事業に妨さまたげがあるというので、その本をば机の上に抛ほうり放はなしにして床とこについて自分は寝入ってしまった。そうすると翌朝彼の起きない前に下女がやってきて、家の主人が起きる前にストーブに火をたきつけようと思って、ご承知のとおり西洋では紙をコッパの代りに用いてクベますから、何か好い反古ほごはないかと思って調べたところが机の前に書いたものがだいぶひろがっていたから、これは好いものと思って、それをみな丸めてストーブのなかへ入れて火をつけて焼いてしまった。カーライルの何十年ほどかかった『革命史』を焼いてしまった。時計の三分か四分の間に煙となってしまった。それで友人がこのことを聞いて非常に驚いた。何ともいうことができない。ほかのものであるならば、紙幣さつを焼いたならば紙幣を償つぐなうことができる、家を焼いたならば家を建ててやることもできる、しかしながら思想の凝こって成ったもの、熱血を注いで何十年かかって書いたものを焼いてしまったのは償いようがない。死んだものはモウ活いき帰らない。それがために腹を切ったところが、それまでであります。それで友人に話したところが、友人も実にドウすることもできないで一週間黙だまっておった。何といってよいかわからぬ。ドウモ仕方がないから、そのことをカーライルにいった。そのときにカーライルは十日ばかりぼんやりとして何もしなかったということであります。さすがのカーライルもそうであったろうと思います。それで腹が立った。ずいぶん短気の人でありましたから、非常に腹を立てた。彼はそのときは歴史などは抛りぽかして何にもならないつまらない小説を読んだそうです。しかしながらその間に己おのれで己おのれに帰っていうに「トーマス・カーライルよ、汝は愚人である、汝の書いた『革命史』はソンナに貴いものではない、第一に貴いのは汝がこの艱難かんなんに忍んでそうしてふたたび筆を執とってそれを書き直すことである、それが汝の本当にエライところである、実にそのことについて失望するような人間が書いた『革命史』を社会に出しても役に立たぬ、それゆえにモウ一度書き直せ」といって自分で自分を鼓舞して、ふたたび筆を執って書いた。その話はそれだけの話です。しかしわれわれはそのときのカーライルの心中にはいったときには実に推察の情溢あふるるばかりであります。カーライルのエライことは『革命史』という本のためにではなくして、火にて焼かれたものをふたたび書き直したということである。もしあるいはその本が遺っておらずとも、彼は実に後世への非常の遺物を遺したのであります。たといわれわれがイクラやりそこなってもイクラ不運にあっても、そのときに力を回復して、われわれの事業を捨ててはならぬ、勇気を起してふたたびそれに取りかからなければならぬ、という心を起してくれたことについて、カーライルは非常な遺物を遺してくれた人ではないか。

  2014年08月24日

• クロムウェル伝抜粋「諸君はここにクロムウェルが真実を語っていることを信ぜよ、かつ諸君もまたこのような言葉を発する人となれ」

  　（二〇）書簡第三一　ブリストルの襲撃九月二一日（安息日）に議会の命に出て、クロムウェルから来たブリストル占領の報告書がロンドンの各教会において読まれ、大能者（神）に対する感謝の声は高く挙がった。貴君よ、フェアファクス将軍の命によって、ここにブリストル占領の報告を行う。シャーボーンの事終わった後、我らは西部に進入するべきか、あるいはブリストルをつくべかについて暫く軍議をこらしたが、種々利害を考えた結果、ブリストル攻撃を決した。このようにしてブリストルに達し、激戦奮闘はようやくにして敵塁近くに押し寄せた･･････ところが敵は市の三か所に火を放って、我らはこれを消すことができず、大きな困惑を感じて、有名な市の全部が灰燼（かいじん）に帰するしかないのかと気遣った。そしてこの悲愴な光景を眺めつつ、どのようにして進撃するべきかを審議していると、敵将ラパート親王は我がフェアファクス将軍まで開城の意を表して協定を求めて来た。将軍はこれに応じて、モンラーグ、レーンズバロー、ピカリソングの三大佐を派遣して談判の任に当たらしめ、遂に別紙の協定を結んだ。その実行のために将軍は人質を交換した。木曜日午後二時頃親王は協定に応じて城を出て、オクスフォードに進んだ。大砲百四〇門、火薬箱百、小銃二、三千挺―これ我が軍の捕獲品である。市長の語る所によれば、敵は歩兵二千五百、騎兵千とより成り、外に市の民兵と予備兵千（あるいは千五百）とを有していたということ、我が軍は疾病の流行地に来たが、一人としてこれに犯されたものもなく、戦闘に死んだ者も二百を超えることはなかった。これはすべて神の為したまうところに外ならないというのは、この報告を読む人の認めるところであろう。このように認めない人は無神論者であろう。この戦役に働いた我が勇士が諸君に願うところは、すべての讃（ほまれ）を神に帰し自分たちが称賛されないことである。神の栄光と国の利益とのために使われることが彼らの希望である。信仰と祈祷とがこの市を占領するようになったと彼らが信じるところであり、また全イングランドの、神により頼むものの信ずるところである。我らはただ神の讃（ほ）められることをのみ願う。すべての称賛は彼に帰すべきものにこそ、長老派も独立派もここに同一の信仰と祈祷の精神を持ち、ここに一致し、異なる所はない。もしそうでないならば禍いである。信ずる者は真の一致結合を持し、その内的霊的で結ばれてキリストを首領とすることゆえに最も美しい。キリスト信者は共に結合して、良心の許す限りにおいて平和のため、勤めることができよう。同胞には、精神上の事については光明及び理性以外には何ら強制を加えることを望まない。その他の事については、神は武力を議会の手中に置いた。これは悪者の恐れるところ、善者の褒めるところである。これを諸君の手より奪わんとするものがあるならば、その成功しないことを望む。神がこの力を諸君の手に長く置かんこと、これが私の祈願である。以上。一六四五年九月二四日、ブリストルにて　　　　　　　　　　　　　　　　　　　オリバー・クロムウェル下院議長ウィリアム・レンサル殿もし近世の読者でこの書中にあらわれた信念を偽善と思うならば、それこそが根本的な間違いである。私は近世の読者に忠告する。諸君はここにクロムウェルが真実を語っていることを信ぜよ、かつ諸君もまたこのような言葉を発する人となれと。

  2014年08月09日

• カーライルの「クロムウェル伝」第４編　最終章「死刑執行令状」

  （以下「第三編　第二内乱以前の記」は省略する。「第四編　第二内乱の記」の最終章「（五）死刑執行令状」を掲載する。　編集者）　　（５）死刑執行令状チャールズ・スチュアートの審問はここに詳述しない。その中に横たわる深き意味はここで窺うことすらできぬ。オリバー･クロムウェルは一回を除くの外、高等法院に出席し、フェアファクスは初めの一回出たのみである。ラドロー、ホォレー、オルトン等読者既知の人々も、一六四九年の一月という記憶すべき月中、高等法院に出席したのである。王は三度引き出されたが弁明を拒み、その「神権」を確信してあくまで王の威厳と傲慢をもって振舞った。軽蔑的微笑をもらし、あるいは峻厳の顔付きをした。―終りまで。まさか彼らが刑の宣告を下そうとは信じなかった。されど王よ、誤まっている。彼らに敢行の決意はそなわる。彼らは天の審判を行なおうとして、大能者の前に立つ者である。どうして地の人、地の物を恐れようか。裁判長ブラッド・ジョーは厳として王にいった。「貴下よ、貴下は抗論をなすことを許されない。この法廷は十分の権能をそなえる。いずれの法廷とてもそのように権能を問われることを許されない」と。そしていった。「書記よ、判決文を読め！」と。ああ終に判決は下されたのであった。そして一六四九年一月二九日（月曜日）この峻厳なる執行令状は発せられた。オリバーの草したものではないが、オリバーの確信を能く表わすものである。英国王チャールズ・スチュアートは叛逆その他の重罪をもって罪があると定められ、去る土曜日、斬罪に処する旨の判決があった。そしてその執行はなお残っている。ゆえに明三〇日、午前一〇時より午後五時までの間において、ホワイトホールの前の街路において、その執行が十分に行われることを貴下等に求む。この書はそのための執行令状である。かつ、すべての士官兵卒及び英国良民のこの事において貴下等を助けんことを求む。一六四九年一月二九日　英国王チャールズ・スチュアート審判のための高等法院において　　　　　　　　　　トーマス・ブラッドショー　　　　　　　　　　トーマス・グレー（グロビー卿）オリバー・クロムウェル　　　　　　　　　　（その他５６人）大佐フランシス・ハッカー殿大佐ハンクス殿中佐フェーヤー殿　その他「猛犬よりも狂暴獰猛（どうもう）なる怪物よ」と全世界はこれに対して批難叫号の声を発した。（幸いにも今日はごく微かになった）、近世の人はこの処刑の狂猛惨酷の極であることを感じ得ないのだが、当時にあっては実にこのように思われたのである。キリストの処刑よりも悪虐な事のように思われた。今日ヨーロッパ中の国王が一時に斬殺されてセント・マーガレットの墓地に一団（ひとかたまり）に重ねられたとしても、この事ほどには感触を起きないであろう。実にこのような事がまたとありようはずがない。これは史上かつて一団の人が、明らかな自覚を持ち、十分の熟慮をもって行った最も大胆な行為である。著者はかつてある書でこういう記事を読んだ。昔、ある南海の島の女王がキリスト教信者となったが、彼女は直ちに人民を集めていった。「あの燃える山には神はいない。あれはただの火山である。あの山には真の神はいない。だから自分はあの山に登り、履物でも投げつけ、山を嘲って結果がどうであるかを見よう」と。このようにしてこの女英雄は驚き恐れる民を率いて、山に至って、この試験をなしたという話―この後、この島民の神観はあらたまったということである。南海において偽の神を排した勇者にも、北方において偽の王朝を除いた勇者にも、それに大いなる名誉あれ！まことにこのレジサイヅ〔王を処刑せし人々〕の行為は、全世界の屈従主義に一大痛撃を加えたものである。屈従主義、偽信、外衣崇拝はこのためにいやすべからず衰え、そして今や瀕死の状態にある。このような大行為は数千年の間は再び要しないであろう。しかし新しい純偉人崇拝が起こって完成され、そしてその再び堕落して屈従主義、外衣崇拝になる時はまたこれを要するのである。しかしそれは数千年後のことであろうか。＊　　＊　　＊　　＊　　＊　　＊このようにして第二内乱は終った。王の処刑、共和政（英国自由の保持者）、違反者の刑罰、虐政の磨滅、でき得るのであれば義勇真実の政府、少なくとも反屈従主義、反偽信、而して義勇真実を得んという努力―これが第二内乱の始末であった。

  2014年08月03日

• 第5集編集者後書　内村も実を結ぶのに数百年を要する仕事をした。彼は不敬事件後の苦闘の中で「神と共にある」と信じた。

  編集者後書「ボーイズ・ビー・アンビシャス第５集　内村鑑三　神と共なる闘い」は、内村鑑三が米国留学帰国後に「キリスト信徒としていかに働きしか」の本である。「余は如何にして基督信者となりし乎」の続編を、ベルへの手紙を中心に本人の言葉で語らせようという試みである。山本泰次郎氏が既に「内村鑑三の生涯」でベルへの手紙を年代ごとに編集されている。本集は鈴木範久氏の「内村鑑三日録」を参考にその他資料を載録し、北越学館、不敬事件が理解できるよう構成した。またカーライルの『クロムウェル伝』畔上訳上巻を現代語表記で載録した。これが最大の特徴であろう。『クロムウェル伝』が内村とその文体に与えた影響は大きい。「クロムウェルは私の理想の英雄です。否、崇拝の的といって過言ではありません。クロムウェルに関しては大部分カーライルで読みました。十七世紀はキリスト教史上最も偉大な時代と思います。その頃の人は皆一生懸命でした。口に言い表す所をそのまま心に固く信じていたのです。」（ベル10）、「我々の必要とする人物は、クロムウェルのようなその働きがこの地上に実を結ぶのに数百年を要したような人物です」（ベル16）、「カーライルの『クロムウェル伝』を諸預言書の次に貪り読む者」（ベル19）とある。内村も実を結ぶのに数百年を要する仕事をした。「読者よ、この手紙を精読し理解するよう努められよ。ここに人が霊魂を有すること、神と共に歩んだことの証がある」（p.141）これは内村の生涯にもいえよう。彼は不敬事件後の「幾度かエリ、エリ、ラマ、サバクニタ！の十字架上の神の独子の最後の叫びの無限の意味を考える」（ベル16）苦闘の中で「神と共にある」と信じた。　五日市先生に第五集が完成した旨連絡すると返信頂いた。「今、札幌にいます。第四集に引続き、第五集もほぼ完成とはびっくりです。底知れぬ創作パワーに脱帽です。素敵な『余録』の文章もありがとうございます。光栄です。」本書の構想は先生の言葉（第二集）から始まった。先生に感謝します！　八月三日編集者

  2014年08月03日

• ボーイズ・ビー・アンビシャス第5集「内村鑑三神と共なる闘い」の年表を整理してほぼ完成した。

  「不敬事件は内村鑑三にとり、妻の死のほか、母の死や弟の離反といった深刻な状況を生み出す。妻の死は『基督信徒の慰め』「第一章愛するものの失せし時」で叙情的に描写される。父は一読して『この書成りて今や汝死すとも可なり、後世、或いは汝の精神を知る者あらん』と涙を流して言った。ところが、不敬事件の世の非難囂々の中で母は棄教を口にし、内村は激怒し、母は鑑三を恐れ亡くなる。それは、ベル第六信と宮部への手紙で伺われる。内村を知るには手紙を読まなければならない。内村の作品では最初の妻や母などの家庭内の出来事は口を閉ざす。内村の母への思慕は、亡き娘への愛として昇華したように思える。内村研究の一課題かもしれない。」〇〇先生に第5集ほぼ完成しました。余録に一部エピソードを入れましたと発信したら、返信をくださった。感謝します。メールありがとうございます。今、札幌にいます。第四集に引き続き、第五集もほぼ完成とはびっくりです。底知れぬ創作パワーに脱帽です。素敵な「余録」の文章もありがとうございます。光栄です。「第５集を読む人の思いと魂をきよらかにし、勇気づけ、ノーブルにし、生命と光に満たされるように願いをこめた。」

  2014年08月03日

• 　内村鑑三不敬事件と「クロムウェル伝」

  １　内村鑑三不敬事件と「クロムウェル伝」内村はメッタにこの事件を口にしなかったが、稀に青年に「君達に話しておこう」と語る事があった。「恐ろしい時だった。面倒になりそうだという事は前から分っていたので、クリスチャンの同僚は当日ワザと休んでしまった。僕も休もうかと思ったが、出来なかった。いよいよ僕の番が来た時、ずいぶんためらった。余程オジキしようかと思った。しかし当時すでに僕に頼っていた学生が十数名いて、ジット僕を見ているのだ。それを思った時、ドーしてもオジキは出来なかった。僕はチョット頭を下げた。それからアンナさわぎになった。何しろ僕も若かったし、それにちょうどカーライルの『クロムウェル伝』を夢中で読んでいた時だったからね。」「旧友内村鑑三氏を偲ぶ」に新渡戸が米欧留学を終え、帰朝後内村宅を訪問した様子が描かれている。「我輩の訪ねた時は小さい室に発熱して寝ておった。（略）『近頃は僕のことを反逆といって、文部省やら同僚やらがしきりに排斥し、世間も非常な反感を抱いて、毎日のように脅迫状やら暴力者みたいな者が来たり、家の中に石を投げる者があったり、実に世間というものは物の解らぬものだ』といいながら、彼は上、陛下に対して飽くまでも忠良な臣民であることを延べながら、いかにご真影とはいいながら、肖像を神のごとくに礼拝することはできないと加えた。話が終って、我輩彼の枕元にあった書物を取り上げてみた所が、カーライルのクロムウェルの伝記であった。そこで我輩は『君がカーライルを読むのか』というたら『ウム、こんな本読んでいるから、心にもない敬礼などはできない、陛下御自身の為なら命も捨てるが、上っ面の礼式などはできないネ』と笑ったことがある。」（第二集p.278）内村鑑三不敬事件を知るには、カーライルの『クロムウェル伝』を読まねばならない。クロムウェルに心魂奪われ、礼拝的低頭ができなかったのだから。畔上訳の上巻を現代語表記で資料編に収録した。

  2014年08月01日

• ああ神の恵みは大なるかな、願う余のために神を讃美せよ、願う余の心の中に善きわざを始めし者これをキリストの日にまっとうせられんことを余のために祈れよ

  ５　「求安録の」中のピューリタニズム〇かつて聞く、ジョン・バニヤンはしばしば犬猫の境遇を羨みて止まざりき。そは犬猫は人の戦うべき戦いを有せざればなりと。人各々不満あり、彼は思へらく、我に富あらしめば我足らんと。しこうして富彼に来りて彼なおやすきを得ず、我に善良なる妻ありせば我足らんと、彼に幸福なる家族あるありて彼なお足らず、人は内部の欠乏を認めずしてこれを外部に認め、内を満たさんとして外に得んとす。我の敵は我なる事を知らずして、内に存する苦痛は外に漏らさんとす。なんじらの内の戦いと争いはいずこより来りしや。なんじらの百体の中に戦う所の欲より来たりしにあらずや。然り、世の始めより今に至るまですべての闘い、すべての争いの原因を究め見よ、皆ことごとく欲の戦いにして、自己の不満を他人の上に洩せしものなり。･･･ウェスレー[十八世紀メソジスト運動を指導]の言を重複せしめよ、何よりもよき事は神我らと共にいます事なり。〇ジョン・バニヤンかつて形場に引きゆかれる罪びとを指して曰く、「もし神の恵みに依らざりしならば彼の罪人はジョン・バニヤンなり」と。〇天路歴程の記者ジョン・バニヤンいまだ宗教上の事に関して雲霧の中に彷徨するや、一日懐疑止むあたわずして近隣の一牧師を訪い彼の心事を吐露して牧師の慰めを得んとせり。バニヤン曰く「余の心中に悪念かぎりなく湧出するは正しく余が神に捨てられ悪魔の奴隷となりし兆候ならん」と。牧師これを聞きて嘆じて曰く、「多分然らん」と。過敏なるバニヤンは失望の上になお一層の失望を加え、ほとんど立つあたわざるの位置に至れりと。彼、年を経てキリストにおける平和を得し後、彼の友人に告げて曰く、彼の牧師は神学にはくわしき人なりしなれども未だ悪魔との経験においては乏しかりし人なりしと。〇カーライル曰く、「人生の最終問題は人その隣人の胸ぐらをつかみ、汝我を殺すかあるいは我なんじを殺さんか」と言うにありと。〇ワシントンなりコロムウェルなりルーテルなりウェスレーなり彼らの偉大なりし最大理由は彼らが真面目に普通道理を信ぜし故なり。もし我が国人にして彼らが今日すでに知るところの真理を信ずるに至らば彼らの教化はすでに九分通り実行せられしなり。〇「神は精神なれば拝する者もまた精神と真実とをもてこれを拝すべきなり」、すなわちカーライルの称するEternal Verity （永遠の真実）なり。･･･我の救わるるは我が誠実をもって誠実の神を信ずるによるなり。〇無冠王コロムウェルが未だイリーの農夫たりし頃、彼のいとこのセント・ジョン夫人に送りし書簡として保存せられたるものの中に左の語あり。　前略･･････余の霊は長者ともの教会にあり、余の身は希望の平安に居る、而してもしこの世において余の神の為めに働らき又は忍ぶを得、以て彼の栄光を顕すを得ば、余の幸いこれより大なるはなし。実に神の味方となりて、身を捧ぐべき人の中に、この卑しき余の如きものはあらじ。余はすでに前以て多分の給料を受けたり、･･････ああ神の恵みは大なるかな、願う余のために神を讃美せよ、願う余の心の中に善きわざを始めし者これをキリストの日にまっとうせられんことを余のために祈れよ、うんぬん、カーライルこの書簡を評して曰く、　ああ近世の読者よ、この書簡解しがたく見ゆるなれども余は汝がその意を解せんがために勉めん事を汝に勧む。万金の価値ある人魂存在の確証その内にあり、･･････これ実に英雄の起り得べき時代ならざりしや、実に英雄たるは難からざりしなり。と。英国を改造し欧州を洗浄せし彼の功績も彼の救い主が彼を罪より救はんが為め十字架上に流せし宝血の報恩として見る時は、彼に取りては糞土の価値もあらざりしなり。「主よ、たとえ余は凄惨卑賤なる罪びとなりと雖も恩恵によって契約のうちにあり」とは彼の最終の祈祷なりき。･･･神我らと共にあり。

  2014年08月01日

• 第五集の最大の特徴は「クロムウェル伝」の現代語表記を提供し、それが内村鑑三不敬事件に与えた影響を資料自らに語らせることである

  ボーイズ・ビー・アンビシャス-内村鑑三　神と諧なる闘い　目次　序　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　内村鑑三　神と諧なる闘い　プロローグ　第一章　日本へ―アメリカ留学を終って１　内村鑑三、日本に帰る２　内村鑑三、自宅に帰る３　内村鑑三がアメリカ留学から持ち帰ったもの４　帰国翌日に北越学館教頭招請を受ける第二章　北越学館事件１　続「内村鑑三と新島襄」オーテス・ケーリ　　　　　２　ベル（アメリカの実業家）への手紙　その一　　　　　３　新島襄から内村竹（内村の前妻）への手紙４　内村北越学館教頭の演説５　内村鑑三から新島襄への最後の手紙６　内村鑑三バーサス（V.S.）宣教師団・追従者７　新島襄から加藤勝弥あての手紙８　ベルへの手紙その二　内村のみた北越学館事件９　北越学館における内村鑑三の授業10　宣教師からみた内村鑑三11　学友ストラザースへの手紙12　内村鑑三の北越学館事件の回想第三章　北越学館教頭から第一高等学校講師となるまで１　内村鑑三水産伝習所の教師となる。２　浅田タケとの離婚と横浜かずとの結婚３　内村鑑三の講演（一八八八年～八九年）４　禁酒講演５　神田吉右衛門との出会い　　　　　　６　内村、腸チフスで入院（一）ケルリンの葉書７　内村、腸チフスで入院（二）モリス夫妻との再会８　内村、腸チフスで入院（三）ケルリンの書簡９　西部婦人矯風会講演10　ベルへの手紙その三（一）富士山・桜の如き11　ベルへの手紙その三（二）一高講師に就職12　ベルへの手紙その三（三）基督の為め国の為め13　ストラザースへの手紙にみる内村の授業　　　14　内村不敬事件の前兆、一高教員との不和第四章　内村鑑三不敬事件―火の洗礼―１　一高不敬事件プロローグ　２　宮部金吾への手紙（不敬事件前日）３　官報の伝える「勅語奉読式」と北条時敬の意見書４　妻かずの死と「愛する妻を失いし時」 ５　ベルへの手紙その四（一）不敬事件６　ベルへの手紙その四（二）木下校長の手紙７　ベルへの手紙その四（三）神と共に８　ベルへの手紙その四（四）国家対キリスト教９　ベルへの手紙その四（五）主が共にいて下さる10　ベルへの手紙その四（六）純潔で高貴に11　妻かずの死―看病する為に生れた　12　ベル氏への手紙第五信　愛妻の死13　ストラザース書簡　政治的自由と信教の自由14　ベル氏への手紙第六信　妻の死と不敬事件15　ベル氏への手紙第七～一〇信　抜粋　16　ベル氏への手紙第一一信～一二信　抜粋　17　文学博士井上哲次郎君に呈する公開状第五章　カーライルの「クロムウェル伝」と内村鑑三１　内村鑑三不敬事件と「クロムウェル伝」２　読書余録３　『時勢の観察』抜粋（明治二九年）４　余が学びし二大政治書（明治三三年）５　カーライルの「クロムウェルの手紙と演説」

  2014年07月30日

• ピューリタニズムの倫理は日本にもたらされた、それが札幌農学校精神にほかなりません

  二〇一四年七月二六日〇〇センター参加者は四名。「ボーイズ・ビー・アンビシャス　札幌農学校教授・技師広井勇と技師・青山士」ができたので、一冊ずつ渡す。最初に荒川放水路補修工事の箇所を輪読する。青山士の文章は技術者らしく、降水量二〇〇ミリリットルなどと、数字とデータに満ちている、その後、クロムウェル伝を輪読する。途中から畔上訳『クロムウェル伝』を輪読したが、倫敦、蘇国など地名や精神磅礴、何處邊など、旧漢字や手紙の候文につまずきつつ輪読する。本会会員は「報徳記」原文を読んできただけに、そのまま読み切る力がついている。「現代人には、もはや明治の後期の文章は読めなくなっています」「これは明治何年の本？」「この本自体の後付きには、大正２年とあります。明治四二年、鈴木藤三郎は醤油醸造にサッカリンを使用した事件で社長を退任し、謹慎していました。その時、留岡幸助が、小名木川の鈴木の自宅に自転車でかけつけ、「鈴木君、イギリスのクロムウェルは多年奸雄とされてきたが、カーライルが出て、クロムウェルこそは、英国の真の愛国者であると、その雄勁な筆で描き出した、鈴木君、君のことも、将来きっと濡れ衣をすすいでくれる人があらわれるであろう」と励ましたとあります。そこで、この『クロムウェル伝』に興味をもって読みだしたのです。」「鈴木藤三郎とボーイズ・ビー・アンビシャスは、関係がないと思っていたけど、関係があったんだ」「内村鑑三は不敬事件の前に　イギリスのロンドンで発行された英文の五巻本を買って読んで、その精神に感動した、それが事件が起こる背景にあります。内村鑑三不敬事件を知るには、カーライルの『クロムウェル伝』、正式には『クロムウェルの手紙と演説』ですが、これを読む必要があります。ですから、今作成中の第五集は、これまでコラム的な解説と資料編が別であったのを融合させて、資料編としては、畔上賢造訳『クロムウェル伝』を現代語表記に直したものを載せようと思います。」「全部をのせるの？」「畔上訳は三巻本ですが、その上巻はクロムウェル率いる議会が王の処刑を決定し、断頭台で王の首を落とすまでです。中巻まで現代語表記は終わっているのですが、全部を入れると二百頁を大きく超えます。メール便で発送の際に、厚さ一センチを超えると、発送代が倍かかってしまう。第四集も　すでに三百以上の図書館に発送しましたが、さすがに送料が大きな負担になることと、内村鑑三も『クロムウェル伝』を半ばほど読んでいた時、不敬事件を起こしたので、上巻を読みやすくして第五集に収録できればよいかな、と思っているわけです。」予定の上巻第一章「衒学者の愚」から第五章「オリバーの書簡及び演説」さらに書簡第二までを読み終わって、読書会を終了し、全員で駅前の居酒屋へと赴き暑気払いする。会場に向かう道々話す。「太平洋戦争で、日本は神風を期待した。元寇で神風が吹いて元軍が滅んだように、最後に神風が吹き日本が勝利すると信じた。しかし神風は吹かなかったと。今日こんなふうにも思われました。神風は吹いた。それはアメリカを滅ぼすのではなく、日本を覆っていた狂熱的国粋主義、偏狭な国家主義、軍国主義を吹き飛ばした。日本を覆った暗雲は吹き飛ばされて、内村の不戦主義、小日本主義（植民地の放棄）、新渡戸稲造の国際協調主義、教養主義が日本に蘇ったと。戦後日本の平和国家の歩みは、内村・新渡戸の考えが基になっているのだと。」「面白い考えだね」「マックス・ウェーバーは、近代資本主義はピューリタニズムの倫理から起こり、西欧とアメリカで生起したとした。しかしクラークを通じ、ピューリタニズムの倫理は日本にもたらされた。札幌農学校精神が日本の近代化・合理化の一源流であることを、資料で明らかにするのが本シリーズであり、報徳の至誠・勤労・分度・推譲はピューリタニズムの倫理同様、資本主義が日本に自生する役割を果たしたと」

  2014年07月28日

• 読者よ、このような経験を有するか。もし有しなければ、現世の行路は平安であろうが、天の光を宿すことはできない。天の光を放つことはできない。

  青山士の言葉　生死共にＶｏｘ　Ｄｅｉ　を聞き　　　　　　　Ｖｏｘ　Ｄｅｉ　を放射すこれは、このクロムウェル伝の「読者よ、このような経験を有するか。もし有しなければ、現世の行路は平安であろうが、天の光を宿すことはできない。天の光を放つことはできない。」というカーライルの言葉に由来するのかもしれない。（二）書簡第二クロムウェルはエライに移転して伯父の業を継いだ。やはり農業である。後、一六四七年頃長期議会が容易に終わりそうもないので、家族一同ロンドンに移転することに決したが、その時までエライに住居した。彼の母もエライ（自分の故郷）の家に同居した。エライの家は今でものこっている。セント・メリー寺院の傍らに立つ老屋である。今年（一八四五年）はビール店になっている。広大な邸宅ではないが、三、四百年前は、楽々と一家族で住むことができたろう。二階建てで、窓多く、煙突や破風は不格好（ぶかっこう）である。勿論彼の母はこの家で生まれたことであろう。クロムウェルの第二の現存する手紙は、一六三八年十月エライで書かれた。さて我らの筆はまた歴史を記す。一六三七年六月三十日、三人の人がロンドンで首かせ(Pillory)にかけられて、さらし者にされた上、耳をきり取られ、頬にＳ．Ｌ．(Seditious Libeller動乱を起こす誹謗者)と焼印をされた。これはバリスターのウィリアム・プリン（※）、医者のジョン・バストウィク、牧師のヘンリ・バートンである。※一六三四年、ピューリタンの作家ウィリアム・プリンは、著作中で王と王妃を中傷したかどでロンドン塔に一年間拘留後、星室裁判所によって「日を替えて首かせ台に二度かけ、各執行時に片方ずつ耳を切り落とせ」という判決を受けた。その後プリンは監獄の中で執筆を続け、一六三七年に他の作家らとともに再び首かせ刑に処された。このときは、もう失うべき耳がなかったため、両頬に S と L （sedious libellerの頭文字）の焼き印を押されている。彼らは新信仰の戦士で、ローマ教に反対し大監督ロオドを排撃したため、官僧の怒りに触れたのである。プリンは耳を切られたというよりはむしろノコギリでひかれたのである。その時彼は叫んだ。「斬れ、裂け、余は汝を恐れぬ。余は地獄の火を恐れる。汝を恐れぬ」と。ピューリタンの熱情は次第に高まった。七月二十三日には、エジンバラの教会で、大監督ロードに任命されたある牧師が、ロオドの定めた祈祷書によって儀式をやろうとした時、ジェニー・ゲッズという婦人はイスかなにかを牧師に投げつけた。ために満場の騒ぎは言語に絶し、礼拝を続けることができなかった。ここにおいて、三十年間忍耐したスコットランドは奮然として起った。否、全英国が起ったのだ。かくてチャールズ王以下いくたの頭は終に地に落ちたのだ。一六三八年十月クロムウェルがこの手紙をエライで書いていた頃は、スコットランド人は誓約書（カヴェナント）に署名し、翌月グラスゴウで開くべき大総会の準備に全力を尽くしていた。上述のエジンバラの騒ぎのあった一六三七年の末には、ハムデン事件が英国の世論の焦点となった。ハムデンの船舶税納入拒絶の裁判が十一月六日から始まったのである。セント・ジョン氏は三日間にわたる大弁護をなし、続いてホルボウルもまた三日間雄弁を振るった。反対側の弁護士も弁じ、裁判官も論告し、公判は二十四日間続いた。人々は鳴りをひそめて事件の結果を待ったが、遂に翌年四月判決下り、ハムデンの敗北に帰した。この事件が天下の注意をひいている間に、クロムウェルの土地にも一州の注意の焦点となった事件が起こった。それは排水工事のことで、ハンチンドン付近一帯は「沼地（フェンズ）」と呼ばれているほど、湿潤な、沼の多い土地である故、オーズ河の流れを二十マイルもまっしぐらに海に落として、河水の遅滞を防ぎ雨期の氾濫を避けようとの工事である。ところがこの工事の進行中何か政府の無法な要求があったため、クロムウェルは奮然起ってこれに抗したのである。彼は静かで穏やかな農民であるが、あまりの非道には黙っていられない男である。彼は排水工事には大賛成であったが、かかる事情の下に、やむなく、中止することにしたのである。この事件で、主導者の位置に立ったため、「沼地（フェンズ）の殿様」という異名を頂戴した。故郷には地方の騒乱があり、外には英国の大騒乱があるに際し、クロムウェルは一六三八年エセックスのウィルアム・マシャム氏方にいる親戚セント・ジョン夫人に次の手紙を送った。サー・ウィリアム・マシャムはピューリタンで、政治上に活動し、遂にクロムウェルの下に大官となった人。その家は、今は残っていない。まずこの手紙が同家を記念する材料となるくらいのものである。私はこの書簡の綴字法を現代のものにあらためたゆえ、読者も現今のように思って読んでもらいたい。セント・ジョンはハムデン事件の有名な弁護士、その夫人がクロムウェルの従妹（いとこ）に当るのである。すなわち伯父ヘンリーの娘である。多分夫婦でこの家を訪問中であったのであろう。親愛なる従妹（いとこ）よ。愚劣な私に対して変わらない愛情を寄せ給うこと、ただただ感謝の至りです。　主が私の霊魂のために慮りたまうこと大なるは私の確信するところで、将来もまたそうでしょう。神は水のない荒野に泉を湧かしたまうもの、私の足遅く昏迷であっても、決して棄てることは無いでしょう。遅くても主は私を幕屋まで招くと信じます。ああ我が霊と我が体とは既に安らかです。神の栄光を表わすには、働くもよし、苦しむもよし、常に歓喜に溢れています。　思えば、私ほど神のために尽さなければならないものはありません。これまでの恩寵は数えることができません、来たった愛と憐れみも少なくはいません。主はみ子キリストの中に私を受け入れ、光明の中に歩ませたまう。私たちの暗きを、輝かすのは彼である。私のような暗黒の心を照らしたまう主の有難さよ。あなたが知りたまうように私は暗黒を愛した者、罪人のかしらでした。しかるに主は慈悲を垂れたまうた。ああ大なる愛よ。願わくは主を讃美し、「善きわざを始めし者、これを主イエスキリストの日までに全う」することを祈ってください。マシャム家の人々にお声をかけてください。愛情のほど、有難く、また私の息子もお蔭で健在です、と。願わくは私の息子のために祈り、また教えてください。ご主人へも、お子様へもよろしく。いよいよ筆をおきますが、主があなたと共にあらんことを祈っています。以上。一六三八年一〇月一三日、エライにてオリバー・クロムウェル　　エセックス、サー・ウィルアム・マシャム方　　　　愛する従妹、セント・ジョン夫人様「私の息子」というのはディックであったらしく察せられる。クロムウェルがこの書簡を発する少し前、ディックをフェルステッドの学校へ連れて行き、この家へも立寄って人々に会ったらしく思う。しかし、今や時の流れに洗い流されてサー・ウィルアムもセント・ジョン夫人も皆過去の人となってしまった。すべて消えてしまった―年老いしナイチンゲールの歌のごとく、古バラの香のごとく。ああ死よ、ああ時よ！マーク・ノーブルは、この手紙でクロムウェルが若い時、素行がおさまらなかったことがわかるなどと言っている。ああ、心霊の苦闘を知らない憐れな男の誤解にも困ったものである。近世の読者よ、願わくはこの書簡を精読して了解しようと努力されたい。ここに人が霊魂を有すること。神と共に歩んだことの証しがある。彼は「上へ召して賜う所の褒美を得ようと標準（めあて）に向いて進」んだのである。ひとたび神の道に従えば、苦闘・窮乏何かあらん。恩恵既に足る。ただ己れを殺して神のもとに投ずる。生きるも死ぬも主の思いのままである。これがクロムウェルの信仰であった。読者よ、このような経験を有するか。もし有しなければ、現世の行路は平安であろうが、天の光を宿すことはできない。天の光を放つことはできない。

  2014年07月27日

• 「正しかれ、而して懼るるなかれ」

  ３　余が学びし二大政治書 　　　カーライルのクロムウエル伝「雑誌の雑誌」記者ステッド氏曰く「余を補益せし書は第一にキリスト教の聖書なり、第二にカーライルの著コロムウエル伝なり、第三に米国詩人ローエルの詩集なり」と。而してステッド氏と同一の経験を持ちしものは他にも多からん。　今日まで地上に顕れし最も大なる国家は英国なり。しかして英国の二大政治家とは一はエリザベス女王にして、他の者はオリバー・コロムウェルなり。二者共に政治を学ばざる天然的政治家なり。政治の術、豈これを政治書においてのみ学ぶべきものならんや。　カーライルの「コロムウェル伝」は彼の五十歳の時の作なり。これ実に彼の著述中最も大なるものなり。「フランス革命史」はそのドラマ的修飾において、「フレデリック大王伝」はその歴史的考証においてこれに優る所あらん。然れどもカーライルの精神はすべて彼のコロムウェル伝にこもれりといわざるべからず。彼の崇敬を呈せし人、彼が真誠に崇拝せし人はオリバー・コロムウェルその人なりし。　二百五十年間大逆無道の臣として英国人の脳裏に存在せしこの人を恥辱の墓の底より発掘し来り、彼を英国第一の愛国者として、再び世界に紹介せし歴史家カーライルの功は偉大なるかな。余はおもう、もしカーライルがコロムウェル伝を以て彼の著述事業を中止せしならば、彼は益のみを後世に遺して害を伝えざりしならんと。彼のフレデリック伝はあらずもがな。彼の「末世の冊子」は彼の公にすべからざりしものならん。彼の英雄崇拝論は多くの不健全なる思想を青年に供し、ことにその我が日本に伝わりてより以来、この書により生涯を誤りし青年少なしとせず。これカーライルの不平時代に成りし書にして、これを読んで多少不平病に侵されざる者なし。　然れどもコロムウェル伝に至りては全く然らず。これカーライル氏の「愛の著述」なりという。彼をしてこの書をなさしめし動機は彼の母より受けしものなりという。彼女の深き宗教心と強健なる常識とはこの誤解されし偉人において真正のキリスト教的ヒーローを発見せり。而して彼の幼時において彼女より注入されしこの思想はこの大著述となりて世に現れしなり。カーライルのコロムウェル伝は実に一平民が一大平民を弁護せし書なり。　オリバー・コロムウェル、彼は英国セントアイブスの一農夫なりし。家は富めりとは称すべからざりしも、さりとて貧しからざりき。畜類の飼育を以て業とし、大いにその道に熟達せりという。歳二十にして結婚し、清き幸福なるホームを作るを以て彼の唯一の目的となせり。かくて彼は政治家に成るの必要なく、またその野心もなかりしなり。彼は心に神を拝し、手に正業を取り、以てこの曲がれる世にあって罪なき生涯を送らんとせり。　彼が政治に入りしは四十歳の時なりし。しかも彼は大政治家となりて名誉を天下に博せんとて政治に入らざりしなり。彼は時の圧制を憤慨せり。ことに彼と同郷の人なるジョン・ブラインなる者が治安妨害的文書を頒布せりとて獄に投ぜられしを憤り、彼のために弁ぜんとて国会に入りしという。茅屋（ぼうおく）の下にて在て静かなる生涯を送らんと企だてし彼コロムウェルは人類的観念に迫られて止むを得ず国会議員と成れり。　然れども彼に政略なるもの一つもあらざりしなり。ありのままなる実に彼の如きはあらざりし。彼に丈夫の勇気ありて、また処女のそれの如き涙と愛情とありし。敵と戦いてかつて敗を取りし事なき彼は友人の反逆に会しては悲歎痛哭に憂き日月を送れり。朝にダンバーに敵の大軍を敗（やぶ）って夕に家郷の妻女に送るに心情溢るるばかりの恋文を以てせり。人は彼を以て大偽善者なりとみなせり。然れども彼は偽善者にはあらざりしなり。彼は余りに感情の人なりしなり。故に彼は偽善者の如くに見えしのみ。　彼の政策とは何ぞ。他なし。英国を以て地上における天国となし、終に英国をとおして全世界を天国と成さんとするにありき。故に俗人の眼を以て評すれば彼の行為は狂的なりしなり。彼はなし得べからざる事をなさんとせり。しかも彼はこれをなし得べからずとは信ぜざりしなり。彼はもし英国人にしてことごとく彼の信仰を懐きなば、英国を以て真正の聖人国となし得べしと確信せり。しかしてミルトンは彼の書記官として彼のこの偉想を賛し、ブレークは彼の海軍を指揮して海上に彼のこの理想を実にせんとせり。世の智者はいう「幸福なるは無学なり」と。特別に政治学を究めざりしコロムウェルと彼の補助者とはこのイムポスビリチーを実行せんとせり。政治家の手を束（たば）ね彼の足を縛るものにして実に彼の政治学の如きはあらざるなり。「正しかれ、而して懼るるなかれ」。正義に因りて進む、大国何か懼るるに足らん。コロムウェル時代の英国はヨーロッパ第三等国に上らざりし。第一等国はスペインにして、フランスとオーストリアとはこれに次ぎ、オランダ、また新たに勢力を得たり。イギリスと対比すべき国とては、北欧のスウェーデンかドイツ連邦の一二に止まりしなり。然れどもコロムウェルその主権を握りてより、イギリスは一躍してヨーロッパ大強国の一として算（かぞ）えらるるに至れり。意志と信仰とに富める一偉人の勢力もまた大ならずや。　時の大強国はすべてカトリック国なりし。しかして英国は新教国にしてコロムウェルは新教徒中の新教徒たりし。しかして彼は強国に媚びんために彼の信仰を曲げんとはなさざりし。否、彼は彼の信仰に基きて、弱き新教国を統一して強きカトリック国を挫（くじ）かんとせり。彼の外交政略なるものは、ただこの一事に存せり。彼が提督ブレークをして海上にスペインの船舶を捕獲せしめ、西インドにその領土をもとめ、テスリフ島にその海軍を殲（ほろぼ）さしめしは皆「大教敵スペイン」を挫かんとの方法に外ならざりし。彼がサボイ山中にある新教徒の虐殺を聞くや、直にフランスに通牒してむこの血を償わせしも、また彼のこの信仰に基づけり。彼は小にして新教国なるスウェーデンと同盟して大にして旧教国なるスペインに当らんとせり。彼の宗教的信仰は吾人の問うべきところにあらず。然れども彼の勇気と大胆とに至りては、実に余輩の嘆賞して措（お）くあたわざる所なり。　進歩的保守家、ハンガリーの愛国者ルイ・コスートの如き人、米国のワシントンの如き人、然りリンカーンの如き、グラッドストンの如き人、彼らは皆はなはだしく国人に誤解された人なり。しかしてコロムウェルはその最もはなはだしき者なり。彼の情性に貴族的分子ありたると同時にまた平民的分子ありたり。彼は天稟（てんぴん）の貴族が平民として生まれ来たりし者なり。彼の同情は平民にありし。然れども彼の平民なるものは凡俗の謂（いい）にはあらざりし。彼の平民とは彼並びに彼の書記生たりしジョン・ミルトンの如き者なりし。すなわち人たるの品性を具え、位階と勲章によらずして高貴なる人なりし。彼がついに彼の国人の棄つる所となりしはまた故なきにあらず。世の平民は多数者にして貴族は少数者なりと思う者は誤れり。貴族は実に多数者にして、平民は実に少数者なり。世にいわゆる平民なる者は実は貴族にして、彼らが平民的運動なるものを起こすゆえんのものは彼らが現在の貴族に代わりて自ら貴族と成らんがためなり。近くは東洋日本国の維新歴史においてこの事実を目撃するを得ん。薩長の族（やから）にして名なく位なき者、民の声なればとて四民平等を主張し、時の政府を倒し、而して自身権威の位置に立つや、直ちに新華族の制度を定め、己れ自ら貴族となりて天下に臨む。彼らは昨日の平民にして今日の貴族なり。四十年前の伊藤博文侯は渺（びょう）たる一平民にしてまた平民主義を唱え、時の貴族制度を憤りし者なり。今の平民主義者また然らざらんや。今の民間の政治家なる者も、一朝勢力の人となれば、直に貴族の中に列せん事を願う。彼らは貴族を嫌うにあらず。彼らは貴族を嫌うと称するのみ。彼らは実は生来の貴族にして、貴族たらんと欲して政海に乗り出せし者なり。言を休めよ。日本国の貴族は三千人にしてその平民は四千万人なりと。その平民四千万人の最大多数は貴族根性を以て生まれ来たりし者にして、彼らは機会あれば貴族たるを辞せざる者なり。吾人少しく歴史をひもときし者は彼らの平民主義なるものに欺かるべきにあらず。平民は平民を迫害す。これ隠語のごとく見えて実は明白なる事実なり。英国がついにコロムウェルを嫌悪するに至りしは、彼コロムウェルは余りにまじめなる平民なりしが故なり。彼らは彼が少しく殿様然として天下に臨み、少しく国民の弱点に乗じ、その名誉心を充たし、その利欲心を満足せんことを求めたり。然れどもコロムウェルは厳として彼の平民的態度を守りたり。故に彼らはついに大偽善者として彼を記憶の外に葬り去らんとせり。彼らは再び彼の如き政治家をもたざらん事を望めり。彼らはコロムウェルに勝り、暗主チャーレス第二世を愛したり。然れども少数なりといえどもこの宇宙は平民の属（もの）なり。コロムウェルは死後三百年の今日英国人の理想的政治家となれり。彼の肖像は、今は英国国会議場の前に建てられたり。「コロムウェル再び出でよ」とは今は英国人の声となれり。英国永久の光栄はコロムウェルの理想を実行するにありとはその多数の政治家の所信となれり。「コロムウェル出でよ」。英国においてのみならず、支那においても、朝鮮においても、ビルマにおいても、ベトナムにおいても、すべて腐敗せる政治家の横行する国はコロムウェルの現出を要す。上、貴族を挫き、下、衆愚を抑え、少数者なる平民の勢力を地上に扶植せんためには、コロムウェルは幾回かこの世に来たらざるべからず。カーライルのコロムウェル伝はかくのごとき事を教うる書なり。

  2014年07月21日

• ああ、カーライルの『コロムウエル伝』よ、汝は余に取りては火の書である。

  ２　読書余録（『聖書之研究』一九〇九年一〇月）「カーライル著『コロムウエル伝』の余に及ぼせし感化については、余はこれを叙するに足るの言辞なきを歎ずる、余は英国版五冊物⑴を麻布飯倉の古本屋橋爪（はしづめ）において購い求めた。時は明治の二十三年、余が嘱託教員として雇はれた時であった。余はこれを得て何物をも忘れて読み続けた。余はこれによりて自由と独立との愛すべく貴むべきを深く教へられた。而して読んで半ばに至りし時、余は高等学校の倫理講堂においてその頃発布せられし教育勅語に向いて礼拝的低頭を為せよ、と時の校長代理理学博士某に命ぜられた。然るにカーライルとコロムウエルとに心魂を奪われしその当時の余はいかにしても余の良心の許可を得て、この命令に服従することができなかった。余は彼らの勧奨によりて断然これを拒んだ。而してそれがために余の頭上に落ち来たりし雷鳴（いかづち）･･････国賊、不忠･･････脅嚇と怒喝･･････その結果として余の忠実なる妻は病んで死し、余は数年間、余の愛するこの日本国において枕する所なきに至った。余の肉体の健康はそれがために永久に毀損せられ、余の愛国心は甚大の打撃を被りて余は再たび旧時の熱心をもって余の故国を愛するあたはざるに至った。実に余の全生涯に渉るこの世の不幸はすべてこの一瞬間より来った。然し余は今に至りこの事のありしを悲しまない。余は確かに信ずる。余の神がその時、特に余に命じて『コロムウエル伝』を購はしめ給ひしを。もしこの伝記が余に起こししこの事件なかりしならば、余の生涯は平々凡々取るに足りない者であったらふ。余は真個の洗礼をこの時に受けたのである。水の洗礼にあらずして、火の洗礼を余はこの時に受けたのである。而してこれによりて余は始めて少しく信者らしき信者となったのである。ただ取り返すあたはざるは余の憐れなる妻である。然し彼女もまたこれによりてキリストの天国において救はれたびであると信ずる。われらは国にそむいてこの事をなしたのではない。良心の声を重んじ、良心にそむくのは国を欺くのであると信じたからこの事をなしたのではない。良心の声を重んじ、良心にそむくのは国を欺くのであると信じたからこの事をなしたのである。ああ、カーライルの『コロムウエル伝』よ、汝は余に取りては火の書である。汝は余を益せしこと深きだけ、それだけ余に殃（わざわ）ひしたる書である。余は永久に汝を保存せん。而して汝の五冊が列を正しうして立つを見て、余の胸は感慨の涙に溢れ、余の思は高きかの国に遊ぶ。キリスト教の聖書を除いて汝ほど深刻に余を感化した書物はない。」⑴カーライルの『クロムウェル伝』五冊本とは、一八七一年～七二年にロンドンChapman　&　Hall から刊行の Oliver Cromwell’s Letters and Speeches 。北海道大学附属図書館内村文庫に所蔵されている（日録」p.105）。

  2014年07月21日

• 内村鑑三不敬事件と「クロムウェル伝」

  １　内村鑑三不敬事件と「クロムウェル伝」内村はメッタにこの事件を口にしなかったが、稀に青年に「君達に話しておこう」と語る事があった。「恐ろしい時だった。面倒になりそうだという事は前から分っていたので、クリスチャンの同僚は当日ワザと休んでしまった。僕も休もうかと思ったが、出来なかった。いよいよ僕の番が来た時、ずいぶんためらった。余程オジキしようかと思った。しかし当時すでに僕に頼っていた学生が十数名いて、ジット僕を見ているのだ。それを思った時、ドーしてもオジキは出来なかった。僕はチョット頭を下げた。それからアンナさわぎになった。何しろ僕も若かったし、それにちょうどカーライルの『クロムウェル伝』を夢中で読んでいた時だったからね。」「旧友内村鑑三氏を偲ぶ」に新渡戸が米欧留学を終え、帰朝後内村宅を訪問した様子が描かれている。「我輩の訪ねた時は小さい室に発熱して寝ておった。（略）『近頃は僕のことを反逆といって、文部省やら同僚やらがしきりに排斥し、世間も非常な反感を抱いて、毎日のように脅迫状やら暴力者みたいな者が来たり、家の中に石を投げる者があったり、実に世間というものは物の解らぬものだ』といいながら、彼は上、陛下に対して飽くまでも忠良な臣民であることを延べながら、いかにご真影とはいいながら、肖像を神のごとくに礼拝することはできないと加えた。話が終って、我輩彼の枕元にあった書物を取り上げてみた所が、カーライルのクロムウェルの伝記であった。そこで我輩は『君がカーライルを読むのか』というたら『ウム、こんな本読んでいるから、心にもない敬礼などはできない、陛下御自身の為なら命も捨てるが、上っ面の礼式などはできないネ』と笑ったことがある。」（第二集p.278）内村鑑三不敬事件を知るには、カーライルの『クロムウェル伝』を知り、ピューリタニズムの精神を知らなければならない。畔上訳上巻を現代語表記で本集資料編に収録した。また参考までに一部英文も掲げた。

  2014年07月21日

• １２日土曜日二人だけの読書会を「粛々」と開く　

  １２日土曜日二人だけの読書会を開く北海道の友人からトマトが送られてきたので、少しおすそわけに持って行く。会場のセンターで、資料をコピーする。またセンターのパソコンを借りて、第４集刊行後すぐに発送するために、差し込み印刷用の図書館の住所・宛名をエクセルで作成していたら、S君が来たので、会議室で資料を交互に読む。第５集の資料編にン載せるための「ピューリタニズムの精神―カーライルのクロムウェルの書簡と演説」である。内村鑑三はこの書のクロムウェルの精神に触発されて、不敬事件を起こしたといっている。また鈴木藤三郎が醤油事件で社長をやめて謹慎していたときに、留岡氏が来て慰めたのがこの書であった。「クロムウェルは長年、王の首を切った逆臣で、不忠悪辣な人間とされていたが、カーライルがその雄勁な筆をとって、そうではない、クロムウェルこそ大忠臣で、神と国のために生涯を捧げ尽した大人物だとその汚名をそそいだ。鈴木君、君のためにもきっとそういう人があらわれて君の汚名をそそいでくれよう」と励ましたとある。　それを読んでカーライルの「クロムウェル伝」とはいかなる書であるかと気になっていた。　「クロムウェル伝」は現在ほとんど読むことができない、読むことができても、畔上訳は、手紙文が候文で書かれていて、現代人には理解することが難しい。　第５集に「クロムウェル伝」の一部を載せて、ピューリタニズムとは何か、その精神を明らかにすることも意味があると思う。　集中して読書会を開きたいが、都合はどう？　そんなに急がなくても・・・　急いでいるわけではなく、粛々と進んでいるだけ・・・

  2014年07月13日

• 天路歴程673 ｿｺﾃﾞ目ｦ覚ﾏｼﾀｿﾚﾊ夢ﾀﾞｯﾀ　So I awoke, and behold it was a dream!

    そこで、私は目を覚ました。すると、それは夢であった。 So I awoke, and behold it was a dream!  （天路歴程　終わり）

  2014年03月27日

• 天路歴程672 私ﾊ天国ﾉ門ｶﾗﾓ地獄ﾆ行ｸ道ｶﾞｱﾙｺﾄｦ悟ｯﾀ　I saw that there was a way to hell, even from the gates of heaven,

    そのとき、私は「滅びの市（まち）」からと同じように、天国の門からも地獄に行く道がある、ということを悟った。 Then I saw that there was a way to hell, even from the gates of heaven,

  2014年03月26日

• 天路歴程671 彼ﾗﾊ彼ｦ拾ｲ丘ﾉ戸ﾆ入ﾚﾀ　they took him up, and carried him through the air to the door that I saw in the side of the hill, and put him in there.

    そこで、彼らは彼を拾い上げ、大気の中を通って、私が丘腹に見た、あの戸のところへ運び、そこに入れてしまった。 Then they took him up, and carried him through the air to the door that I saw in the side of the hill, and put him in there.

  2014年03月25日

• ボーイズ・ビー・アンビシャス第４集の刊行に向けて　広井勇の信仰

    広井勇の信仰（「工学博士廣井勇伝」十六信仰）「広井博士は熱心なキリスト教徒であった。けれども博士はその信仰を他人に説いた事がなかったから、永年の友人すら、これを知らなかった人も多いほどである。まことに大富は貧なるがごとく、大賢は愚なるごとしである。けれども博士の信仰はその深さとその真摯さとにおいて、何人にも譲らないものがあった。　信仰に入る動機は人によって様々である。ある人は研究の結果より、ある人は心に罪を感じたるより入る人もある。しかし博士においてはむしろ、生に対する尽きることがない懐疑によって、神の道に入ったのではあるまいか。博士は人をして凄愴の感を抱かしめるほどの懐疑者であった。その悩むところが深刻であっただけ、それだけその信仰は深かったのである。何者をも信ずることのできない無限の空虚を、神によって充たしたのである。そして全的の信頼を神にささげたのである。　博士は毎朝五時に起床し、清嗽〔せいそう・口をすすぐ〕の後、一室に籠もって錠をおろし、聖書を読み、双掌（そうしょう）を机上（きじょう）に置いて頭を垂れ、黙祷をささげること数分であった。この祈祷は四十年来変わる事なく続けられた。その錠をおろした一室の祈りこそは、博士にとって総ての力の源泉であったのである。博士はそこでただ独り、自らの魂を神に触れしめ、神の心を自らの心とすることができたのであった。そしてこの祈祷の後、机上にはしばしば熱涙の跡を認めたという。　博士の家人は四十年来、毎夜九時に祈祷の集まりを催して来た。しかし、博士だけは、自分の信仰は少し変わっているからといって、いかに勧められてもその席に連なろうとはしなかった。ただその集まりを喜んでいた。時には、もはや九時になるといって、家人を促すくらいであった。日曜には家人に教会へ行くことを勧めて、自らは独り静かに聖書を読み、安楽いすに寄って哲学・宗教・文学等の書物に読みふけるのを唯一無上の楽しみとしていた。キリストの尊厳を信ずる博士にとっては、軽々に衆とともに祈りをするに耐えないものがあったのではあるまいか。しかし博士は祈りの人であった。そして総ての人の祈りを力強く感じていた。「人間にとって祈祷は最も主要な事である、実際人間には祈祷より外に施すべきすべはないのである。自分の如き者は素質に於て、決して天才と云ふ質ではない。他人が三日にて成就する事も自分には一ヶ月もかかるのである。其点からしても、只祈りと努力があるばかりである、どうぞ自分の為めに祈ってくれる様に、祈りにました援助はない」とは、広井が繰り返し家人に語っていた言葉である。人に対して毅然たる博士の一面には神に対し幼子のごとき謙遜があり、信頼があったのである。そしてことに母と妻の祈祷をこの上もなき助力としていた。何事かをし遂げ、または何事か災厄を免れ得た場合には、いつも母と妻の祈りによる賜物であるとある心からの感謝を述べるのであった。　博士はたとえ友人であっても、学校関係や技術方面の人には、決して宗教上の問題を口にしなかったが、内村鑑三氏や新渡戸稲造氏等同信の友人に対しては、老後までもよくこの問題について論じ合い、より深く、より清くその信仰を進めるようにつとめた。これら信仰の友人間の交わりには、誠に和気藹々（あいあい）たるものがあった。『自分は死んでも天国には入られないかも知れないが、天国の門番位にはなれるつもりである。自分が天国の門番になっていると君等もやがてやって来るだろうが、君等はは天国へは入れないよ、入れないで追ひ返してやる。』と(1)、内村氏や新渡戸氏には笑談を語ることがあった。博士は平常から、遺言書を書いてこれを金庫の中に蔵していた。それがため突然永き眠りについたのではあったが、報知、葬儀、その他万般の事が書き残されてあって(2)、少しも惑うところがないようにしてあった。これは何時たりとも、召しに応じて天国への旅に出発する準備を整えていたことと察せられる。"How I became a Christian" 中に、Charles was a compound character. He was second only to Frederick in his shrewd common sense, but was more like Paul in his intellectual attitude toward Christianity. He like many other ardent youths tried to comprehend God and Universe by the aid of his intellect, and to conform himself to the very letter of God's eternal law by his own efforts ; in which failing, he oscillated to an entirely different aspect of Christianity, and .settled in his faith in the " gospel of good works." He turned to be a learned engineer, and his sympathy in substantial forms can always be relied upon when some practical good is contemplated either within or without the church. （訳文はp. ）博士がキリスト教の洗礼を受けたのは明治十一年六月二日の日曜日で、博士が札幌農学校二年生の時の事である。その日は博士ら六名の同窓にとっては永遠に忘れ得ない日であった。函館から年一回づゝ巡回して来た米国メソジスト教会宣教師エム・シー・ハリス氏によって午前十時第一回の説教があった。午後三時、第二回の説教と祈祷の後に、彼によって洗礼が施された。博士等はその前にひざまづき、水は頭にそそがれた。彼らのうちには生涯を通じてキリストの僕たるべき、かたき決心のため心自ずから戦（おのの）くものがあった。彼らはウェブスターを開いて各クリスチャン・ネームを選んだ。新渡戸氏はポーロ、藤田氏はヒュー、高木氏はフレデリック、足立氏はエドウィン、宮部氏はフランシス、内村氏はヨナタン、そして博士はチャーレスと呼んだ。今は全くキリスト教徒となった彼らは、凱歌を挙げ、新しき生涯に勇んだ。その夜更に第三回の説教と祈祷会とが催された。内村氏は、その著右は当時の博士の信仰を伝えるに最もよき資料といいえよう。当時の晩年にいたって、ある時、博士は次のごとく語ったことがある。『晴夜天空の星のまたゝきを眺めて居ると、其の悠久さと、其偉大さと其壮美さとに実際打たれる、神は悉（ことごと）く之れを統（す）べ給ふのである。其幾億光年に比べては人生は実に朝露にも例（たと）へられない。其中の人間などが、神の経綸（けいりん）の中に数へられることなどゝは考へることも出来ない･･････けれども此の人間に神に通ずる所のものが在るのだ、夫故（それゆえ）に人生が尊くあるのだ･･････政治も、権力も、名誉も、学問も、何の値もないものだ』また言ったことがある。『神は吾々の智識を祝し給ふ、学問は此の意味に於て尊くある』『若し工学が唯（ただ）に人生を繁雑にするもののみのものならば何の意味もない事である、是によって数日を要する所を数時間の距離に短縮し、一日の労役を一時間に止め、人をして静かに人生を思惟せしめ、反省せしめ、神に帰るの余裕を与へないものであるならば、吾等の工学には全く意味を見出すことが出来ない』　博士の工学が悉くその信仰中心であったことは、これによってもその一半を窺うことができる。」(1)　天国の門番は、ジョン・バニアンの『天路歴程』を踏まえる。クリスチャンと道連は苦難に満ちた巡礼を終え、一筋の川〔死〕を越えて天国に上る。一方イグノランスは〔無智〕はヴェイン‐ホウプの小舟で川を渡るも、門で証明書を持っていないため入るのを拒絶される。(2) 内村鑑三の日記において、広井勇の遺言の内容の一端を窺うことができる。「故工学博士広井勇君の遺言により聖書研究会へ寄付してくれてありがたかった」（BBAp.156）「今日広井の未亡人の訪問あり、『佐藤総長の手紙は棄てました。先生（僕を指して）の御手紙はハガキ一枚も残さず大切に保存してあります』と聞いて、涙がコボレました。」（BBAp.157）

  2014年03月24日

• 天路歴程670　輝ｹﾙ者ﾆ命ｼﾞﾀ無智ｦ捕ｴ手足ｦ縛ﾘ片付ｹﾛﾄ　King commanded the two Shining Ones ｔｏ take IGNORANCE, and bind him hand and foot, and have him away.

    そこで、人々は「王」に告げた。しかし、「王」は彼を見に降りてこようともされず、クリスチャンとホウプフルを、都に連れてきた「輝けるもの」に命じ、外へ出て、イグノランスを捕らえ、手足を縛って、片付けてしまえ、と仰せられた。  So they told the King; but he would not come down to see him, but commanded the two Shining Ones that conducted CHRISTIAN and HOPEFUL to the City, to go out, and take IGNORANCE, and bind him hand and foot, and have him away. 

  2014年03月23日

• 天路歴程669　 人々ﾊ言ｯﾀ無ｲﾉｶ?ｼｶｼ男ﾊ一言ﾓ発ｼﾅｶｯﾀ　Then said they, "Have you none?" But the man answered never a word.

    すると、人々は言った。無いのかね。けれども、この男は一言も言わなかった。 Then said they, "Have you none?" But the man answered never a word.

  2014年03月23日

• 天路歴程668 彼ﾊｿﾚｦ捜ｼ懐ｦ捜ｼﾀｶﾞｿﾝﾅﾓﾉﾊﾅｶｯﾀ　he fumbled in his bosom for one, and found none.

    そこで、彼はそれを捜して懐の中をいじくったけれども、そんなものはなかった。 So he fumbled in his bosom for one, and found none.

  2014年03月22日

• 天路歴程667 人々ﾊ王ﾉ所ﾍ持参ｼ見ｾﾙ証明書ｦ求ﾒﾀ　they asked him for his certificate, that they might go in and show it to the King.

    すると、人々は彼に「王」のところへもって行って、見せるための証明書を求めた。 Then they asked him for his certificate, that they might go in and show it to the King.

  2014年03月21日

• 天路歴程666　私ﾊ王ﾉ前ﾃﾞ飲食ｼ王ﾊ街ﾃﾞ教ｴﾀ　He answered, "I have ate and drank in the presence of the King, and he has taught in our streets."

     彼は答えた。私は「王」のみ前で飲み食いをしたものです。それに「王」は私たちの街で教えられました。 He answered, "I have ate and drank in the presence of the King, and he has taught in our streets."

  2014年03月20日

• 天路歴程665 門ﾉ頂越ﾆﾐﾙ人々ﾆ尋ﾈﾗﾚﾀﾄﾞｺｶﾗ来ｶﾀ?用事ﾊ何ｶ? he was asked by the men that looked over the top of the gate, "Whence came you? and what would you have?"

    しかし、彼は門のいただき越しに見る人々によって尋ねられた。どこから来たのか。また、用事は何であるか、と。 but he was asked by the men that looked over the top of the gate, "Whence came you? and what would you have?"

  2014年03月19日

• 天路歴程664 彼門ｦ叩ｹﾘ入門ｦ望ﾐﾃ　When he was come up to the gate,and began to knock,supposing that entrance should have been quickly administered to him;

    門に着いたとき、彼は上にある書き物を仰ぎ、それから門を叩きにかかった。入門の許しは速やかに与えられるものと思いながら。 When he was come up to the gate, he looked upon the writing that was above, and then began to knock, supposing that entrance should have been quickly administered to him;

  2014年03月18日

• 天路歴程663 ｺﾞｸ僅ｶﾉ励ﾏｼｦﾓｯﾃ彼ｦ迎ｴﾀ者ﾓﾅｶｯﾀ　neither did any man meet him with the least encouragement.

    また、ごくわずかの励ましをもって彼を迎えた者もなかった。 neither did any man meet him with the least encouragement.

  2014年03月17日

• 天路歴程662 彼ﾊ丘ｦ登ｯﾃ行ｯﾃ門ﾆ達ｼﾀｶﾞﾀﾀﾞ彼ﾊ一人ﾀﾞｯﾀ　he, as the other I saw, did ascend the hill to come up to the gate; only he came alone,

    そこで、彼は、私の見た他の者と同じように丘を登っていって門に達したが、ただ、彼は一人であった。 so he, as the other I saw, did ascend the hill to come up to the gate; only he came alone,

  2014年03月16日

• 天路歴程661 渡守ﾉ空望ﾉ小舟ﾃﾞ渡ｯﾀ　For it happened that there was then in that place one VAIN-HOPE, a ferryman, that with his boat helped him over:

    というのは、たまたまその時、その場所に渡し守のヴェイン・ホウプ（空望）という者がいあわせ、その小舟で彼を渡したのであった。 For it happened that there was then in that place one VAIN-HOPE, a ferryman, that with his boat helped him over:

  2014年03月14日

• 天路歴程660 彼ﾊ他ﾉ二人ｶﾞｱｯﾀ困難ﾉ半分ﾓﾅｼﾆ渡ｯﾀ　he soon got over, and that without half the difficulty which the other two men met with.　

  しかし、彼は、他の二人が出くわした困難の半分のものもなしに、やがて、それを渡ってしまった。but he soon got over, and that without half the difficulty which the other two men met with.

  2014年03月13日

• 天路歴程659　ｲｸﾞﾉﾗﾝﾄｶﾞ川ﾉ辺ﾆ辿ﾘﾂｲﾀﾉｦ見ﾀ　I saw IGNORANCE come up to the river side;

  さて、これらすべてのことを見つめている間に、私は後ろを見るために首（こうべ）をめぐらしてイグノランスが川のほとりにたどりついたのを見た。Ignorance Comes to His EndNow, while I was gazing upon all these things, I turned my head to look back, and saw IGNORANCE come up to the river side;

  2014年03月12日

• 天路歴程658 人々ﾊ門ｦ閉ｻﾞｼﾀ私ﾓ彼ﾗﾉ中ﾆｲﾀｲﾄ思ｯﾀ　 they shut up the gates, which when I had seen, I wished myself among them.

     その後、人々は門を閉ざした。それを見たとき、私も彼らの中にいたいものだと思った。  And after that they shut up the gates, which when I had seen, I wished myself among them.

  2014年03月11日

• 天路歴程657「聖なるかな、聖なるかな、主は」 "Holy, holy, holy, is the Lord!"

  「聖なるかな、聖なるかな、主は」と言いながら。saying,"Holy, holy, holy, is the Lord!"

  2014年03月10日

• 天路歴程656 翼をもった人々が止むときなく答えかわして　There were also of them that had wings; and they answered one another without intermission

  そこにはまた翼をもった人々があり、この人々は止むときなく答えかわしていた。There were also of them that had wings; and they answered one another without intermission, saying,

  2014年03月09日

• 天路歴程655 頭ﾆ冠ｦ戴ｷ手ﾆｼｭﾛﾏﾀﾊｰﾌﾟｦ持ﾂ人々ｶﾞ歩ｲﾃﾀ　in them walked many men, with crowns, palms, and harps.

    そしてその中には頭に冠をいただき、手にはシュロとまた賛美歌を歌うための黄金の竪琴を持った多くの人々が歩いていた。 and in them walked many men, with crowns on their heads, palms in their hands, and golden harps to sing praises withal.

  2014年03月08日

• 天路歴程654 都ﾊ太陽ﾉﾖｳﾆ輝ｷ街ﾊ黄金ﾃﾞｼｶﾚﾃｲﾀ　the City shone like the sun: the streets also were paved with gold;

      するとどうだろう、「都」は太陽のように輝いていた。街は黄金をもってしかれていた。 and behold, the City shone like the sun: the streets also were paved with gold;

  2014年03月07日

• 天路歴程653 門ｶﾞ開ｶﾚﾀ時、私ﾊ二人ﾉｱﾄｶﾗ覗ｲﾃﾐﾀ　the gates were opened to let in the men, I looked in after them:

    さて、この人々を中へ入れるために門が開かれたちょうどその時、私は二人のあとから覗いてみた。 Now, just as the gates were opened to let in the men, I looked in after them:

  2014年03月06日

• 天路歴程652 ﾐｸﾗﾆ座ｼﾀ者ﾆﾏﾀ子羊ﾆ幸ｲﾄ誉ﾚﾄ限ﾘﾅｸ　"Blessing, honour, glory, and power, be to him that sitteth upon the throne, and to the Lamb for ever and ever"

  　    私はまた、この人々自身の声を、彼らが声高く歌うのを聞いた。「御座（みくら）に座したもう者に、また子羊に、幸いと誉れと、栄と力と、世世限りなくあらんことを」 I also heard the men themselves, that they sang with a loud voice, saying, "Blessing, honour, glory, and power, be to him that sitteth upon the throne, and to the Lamb for ever and ever"."And every creature which is in heaven, and on the earth, and under the earth, and such as are in the sea, and all that are in them, heard I saying, Blessing, and honour, and glory, and power, be unto him that sitteth upon the throne, and unto the Lamb for ever and ever. And the four beasts said, Amen. And the four and twenty elders fell down and worshipped him that liveth for ever and ever."~ Revelation 5:13, 14 ~

  2014年03月05日

• 天路歴程651 二人ﾆ向ｲ言ｳ者ｶﾞｱｯﾀ「汝ﾉ主人ﾉ喜ﾋﾞﾆ入ﾚ」it was said unto them, "Enter ye into the joy of your Lord."

    そうして二人に向かって言うものがあった。「汝の主人の喜びに入れ」と。 and that it was said unto them, "Enter ye into the joy of your Lord."

  2014年03月04日

• 天路歴程650 夢ﾉ中ﾃﾞ都ﾉ鐘ｶﾞ再ﾋﾞ喜ﾃﾞ鳴ﾙﾉｦ聞ｲﾀ　I heard in my dream, that all the bells in the City rang again for joy;

    すると私は夢の中で、都の中のすべての鐘が再び喜びをもって鳴るのを聞いた。 Then I heard in my dream, that all the bells in the City rang again for joy;

  2014年03月03日

• 天路歴程649 ﾊｰﾌﾟﾊ賛美歌ｦ歌ｳﾀﾒ冠ﾊ名誉ﾉﾀﾒﾆ　the harps to praise withal, and the crowns in token of honour.

  竪琴はそれでもって賛美歌を歌うために、冠は名誉の印に。the harps to praise withal, and the crowns in token of honour.

  2014年03月02日

• 天路歴程648 ﾊｰﾌﾟﾄ冠ｦ持ﾁ待ﾂ者ｶﾞｲﾃ二人ﾆ与ｴﾀ　There were also those that met them with harps and crowns, and gave them to them;

  そこにはまた、竪琴と冠をもって二人を迎える者があり、それを二人に与えた。There were also those that met them with harps and crowns, and gave them to them;

  2014年03月01日

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