二宮先生語録巻の3 【379】その1 巻の4 終り
二宮先生語録巻の3 【379】その1【三七九】古(いにしへ)より以(い)来(らい)、英(えい)豪(がう)俊(しゆん)傑(けつ)多(おゝ)しと雖(いへど)も、治(ち)国(こく)安(あん)民(みん)の功(こう)を成(な)す者(もの)、蓋(けだ)し鮮(すくな)し。或(あるひ)は道(だう)体(たい)の高(かう)妙(めう)を覚(さと)れば、則(すなは)ち塵(ぢん)世(せい)を厭(いと)ひ、閑(かん)寂(じやく)を楽(たのし)み、以(もつ)て身(み)を終(おは)る者(もの)有(あ)り。或(あるひ)は事(じ)業(げふ)を興(おこさ)んと欲(ほつ)して、意(い)の如(ごと)くならざれば、則(すなは)ち時(じ)世(せい)を憤(いきどほ)り、詩(し)歌(か)を弄(もてあそ)び、以(もつ)て生(せい)を送(おく)る者(もの)有(あ)り。或(あるひ)は進(しん)取(しゆ)を欲(ほつ)して、進(すゝ)む能(あた)はざれば、則(すなは)ち時(じ)政(せい)を誹(そし)り、飲(いん)酒(しゆ)に耽(ふけ)り、以(もつ)て世(よ)を没(ぼつ)る者(もの)有(あ)り。是(こ)れ皆(みな)其(そ)の才(さい)余(あま)り有(あり)て、治国安(ちこくあん)民(みん)に益(えき)無(な)きなり。豈(あに)惜(おし)まざるべけんや。故(ゆゑ)に余(よ)、治(ち)国(こく)安(あん)民(みん)の法(ほう)を創設(そうせつ)す。邦(はう)君(くん)之(これ)を用(もち)いば、則(すなは)ち諸(しよ)封(ふう)内(ない)に行(おこな)ふべく、諸(しよ)民(みん)人(じん)に施(ほどこ)すべし。邦(はふ)君(くん)之(これ)を用(もち)ひざれば、則(すなは)ち諸(しよ)朋(はう)友(ゆう)親(しん)戚(せき)の間(あひだ)に施(ほどこ)すべし。位(くらい)無(なけ)れば、則(すなは)ち位(くらい)無(な)きに行(おこな)ひ、禄(ろく)無(な)ければ、則(すなは)ち禄(ろく)無(な)きに施(ほどこ)し、市(まち)に在(あ)れば、則(すなは)ち市(まち)に行(おこな)ひ、野(の)に在(あ)れば、則(すなは)ち野(の)に施(ほどこ)す。