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[イギリス史、ニューイングランド史] カテゴリの記事

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• 報徳博物館に鈴木藤三郎百年記念講演会のポスターを掲示していただくようお願いしてきた

  森町教育委員会からの講演会案内の封筒にポスターが入っていたので、せっかくだから　多くの人の目に触れてほしいとチラシとともに　報徳博物館に持っていって　張り出していただくようお願いしてきた。帰り、小田原の古本屋をいつものように覗くと札幌農学校の　寮史　があった。非常に分厚いものだが、「小史」に宮部金吾の回想録が載っていたので買ってきた。 新渡戸稲造は、エルキントン家の一人の女性の召使がなくなるとき、その遺産をメリーに使ってもらうよう遺言した。その基金を使って　札幌に遠友夜学学校を作るが、その遠い友　とは　フラデルフィアのその召使の女性を意味するのだという。あるいは　クエーカー教徒は　フレンズ会　すなわち　友会　というからその「友」の意味も　含有されていたのかもしれない。後期のなかで、編集者の一人が　この「寮史」を読むより、内村鑑三の一冊を読むほうがいいかもしれないという挫折感に何度も襲われたという述懐が面白かった。 新渡戸稲造は　後に戦後、東京大学総長になる教え子から　キリスト教について問われ「わしのは正規の門から入ったのじゃないからなあ・・・」といったという。このところ、天路歴程のクリスチャンとホウプフルの対話を読み進めていると、まことに　内村鑑三のエルウィンからアマスト大学への道筋がこの第二の聖書といわれた　プログレス　の道筋と相似することに着目する。内村鑑三は　日本に　自らの体験を通して　イギリスのピューリタン革命を推し進めたクロムウェルやミルトンやバニアンに代表される正統のピューリタニズム　を　日本に定着せしめたのだといってよいのかもしれない。   

  2013年07月28日

• 　　新島襄と内村鑑三とアーモスト大学　オーティス・ケーリ　その１

  　　新島襄と内村鑑三とアーモスト大学　　　　　　　　　　　　　オーテス・ケーリ（Otis Cary）It rained. Pres. Gilman’s turn to attend the morning prayer, in a small chapel. He read it a little. Repeated Lord’s prayer. It was attended by only 3 students. I thought it a pretty slim affair. A Religious influence can be very strong.新島襄（1843-1890）は、一八八四年から一八八五年にかけての世界一周旅行の途上、アメリカを旅行していた際に、ジョンズ・ホプキンズ大学での彼の経験を、これらの言葉でもって、英語でつけていた彼の日記に記している。太田（後の新渡戸）稲造はジョンズ・ホプキンズ大学で勉強中であったが、その出来上がったばかりのジョンズ・ホプキンズ大学に、新島を案内してまわった。新島の同志社と、ジョンズ・ホプキンズ大学とは、たった一年違いで創立されたのだった。この二つの大学は共に真理探究の為に捧げられていたのではあるが、真理へのその対照的な接近のしかたは、共に当時の知的風潮を特徴づけるものであった。ジョンズ・ホプキンズ大学は、ドイツの大学に対するアメリカなりの答えなのであって、科学や大学院教育を強調し。いわばアメリカ最初の大学院を持つ大学となったものである。同志社はニュー･イングランドの正統的組合教会派の中にその根拠を置き、そしてことに新島が一八七〇年に西欧の大学の最初の正式な日本人卒業生として卒業したアーモスト大学に範をとっていたのである。新島がジョンズ・ホプキンズ大学の超世俗主義を軽蔑していたことは理解しにくくないが、一層広く云えば、これらの言葉は日本人自身がますます科学対宗教という当時の西欧における主だった知的問題の影響を、ますます受けつつあった時に、日本の非凡な西欧知識面の一観察者によって書きとめられた当時への瞥見なのであった。新島が代表し、新島が同志社を通して日本に移植しようとした伝統は、厳密には一五〇年前に一つの乾燥堆の蔭で持たれた祈祷会から始まったと云ってよい。そこで数名のウィリアムズ大学の学生が、海外の異教国に福音を伝えるために、その生命を捧げることを神の前に誓ったのであった。これが十九世紀のプロテスタントの広大な宣教運動の始まりとなったのである。ニュー・イングランド組合教会派意の中で動いていた分裂的な諸力は、十九世紀のはじめには、とりわけ一八〇三年のユニテリアンの分裂で、非三位一体論者がハーヴァードの神学の講座担当に任じられたこと―その講座に任命される者は「健全な正統的原理」を持たねばならないにもかかわらず―にみられるように、抑制することが出来なくなったのである。これらの型を跡づける一つの方法はこの当時におけるニュー・イングランドの学園の発展のしかたを通してである。ハーヴァードのユニテリアン主義への変節から、指導的な勢力の間に知的にも恥ずかしくない、深い和解が成立するまでには、ちょうど一世紀半かかったのである。この和解は、ネーサン・M・ピュージー総長の選出と、彼の一九五三年におけるハーヴァード神学校始業式に寄せての注目すべき演説、そしてまた、カール・バルトを英訳し、紹介した最初の人である正統組合教会派のダグラス・ホートンをその新学部長に任命したこと、なおオアウル・ティリッヒをユニヴァシティ・プロフェッサーに任じたことによってなされたのである。このようなハーヴァードの歴史は他の学園に対するその影響を通して跡づけられうる。

  2013年06月21日

• ブルースのクモ

  現在、「帰雁の蘆」をブログに搭載中だが、おとついから　そこから一、二　取り出して２人の人に差し上げている。「これは新渡戸稲造が書いたもので、海外で留学したときの土産話を帰国した雁が口にアシの一葉を持ち帰ったのにたとえたものだ。新渡戸稲造は国際連盟事務局次長を勤め、もっとも愛された外交官と言われた。日本が世界に誇る国際人だ。この人の文章は　非常にバランス感覚にとんでいて、上質のユーモアがあり、国際化の感覚が必要なこれからの日本人にとっても味わい深い内容を持っている」熟読してもらえれば　魂の栄養となろうと思うが　いかがあいなることであろうか。 冒頭の「自序」に　「ブルースの蜘蛛」とあり、のっけからよく理解できない。 「 自序　垂柳（すいりゅう）の枝に飛ぶ蛙は書道開祖発心の動機となり、賎（しず）が伏屋に巣を造る蜘蛛（くも）は敗将をして再挙の勇を励ました。道風〔小野道風〕の蛙もブルースの蜘蛛も、大きさをもって論ずれば、とても児雷也の蟇（がま）や頼光の土蜘蛛に及ばぬこと遠い。これで観れば事物は必ずしも大なるをもって貴しとしない。」この「ブルースの蜘蛛」の話は　昔の英語の教科書に載っていたものだという。　ロバート・ブルースは14世紀初頭のスコットランドの王様で、当時イングランドから圧迫されていたスコットランドを解放独立させた国民的英雄である。　ロバート・ブルースが戦いにやぶれ、身ひとつで逃げた。ある一軒のあばら屋にたどりついて、そこで休んでいた。綿のように疲れ、意気消沈し、絶望しかかっていた彼の目にふと一匹のクモが映った。そのクモは天井の一本のハリから別のハリへ糸をかけ渡そうとして、時折吹きこんでくる隙間風に乗って何度も試みるのだが、なかなか届かず、そのたびに失敗してしまう。けれどもクモは一向にやめようとしないで、同じことを続け、そしてついに糸をはるのに成功した。それを見たロバート・ブルースは「そうだ、自分も１度や２度の敗戦でくじけたり、あきらめたりしてはいけない。このクモのように、自分の目的を達成するまでやりぬこう」と新たな勇気を奮い起こし、幾多の困難を乗り越えてスコットランドの解放に成功した。

  2013年05月28日

• 新島襄「スコットランドで泥酔する聖職者が腹立たしかった」

  英国人が見た 明治の京滋　京大名誉教授 日本旅行記を完訳 明治初期の京滋などを訪れた英国の女性旅行家イザベラ・バード（１８３１～１９０４年）による「日本奥地紀行」の完訳を、京都大名誉教授、金坂清則さん（６５）＝人文地理学＝が完成させた。全４巻で寺社などの専門家の協力も得て従来の翻訳の誤りを正し、省略されていた関西方面の記述を訳出した。「訳本を手に彼女の歩いた場所に足を運び、明治の日本を体感して」と話す。 　バードは、精神的不調の治療の一環として医師に旅を勧められ、極東やチベットなど辺境を含む世界各地を訪問した。１８７８（明治１１）年５～１２月、４７歳での旅を基に日本旅行記を刊行し、英国で版を重ねた。　通訳の日本人男性１人と東北、北海道など東日本を縦断し、西日本にも足を延ばした。旅の目的を金坂さんは「あふれる好奇心」とし、「大英帝国の国民として正確な情勢を伝えたかった。開国間もない日本がキリスト教国家になる可能性も考えていた」とみる。　駐日英国公使パークスをはじめ人脈が相当広く、キリスト教関係者らも訪ねた。第４巻は、同志社の成立経緯と現状を収録。学校創立者・新島襄から「スコットランドで泥酔する聖職者が腹立たしかった」との思い出を聞き出し、同志社女学校では２週間、襄の妻・八重の母に世話になった。同志社社史資料センターは「記述はほぼ正確。スコットランドの思い出は襄の日記にもない」と評価する。　開校間もないころの京都の番組小学校の性格や授業内容を記すほか、４巻は▽西本願寺で英国渡航経験のある僧侶との哲学談義▽宇治の茶屋▽琵琶湖周辺の地理▽大津祭の曳山（ひきやま）や露店の詳述－など、身近な京滋も正確な見聞録にまとめている。

  2013年05月01日

• サッチャー　人生は心に描いたとおりになる

  きのう、サッチャー元イギリス首相の特集をやっていて面白かった。お父さんは雑貨屋を営んでいた。サッチャーに多大な影響を与えた父アルフレッドというのは、おそらくはピューリタンであろうか。少女サッチャーがみんながやっているからと父に言うと「人がやっているからというのではいけない、自分の意思を貫きなさい実現するために努力し続けなさい」とたしなめたという。アルフレッドは勉強が好きだったが、家庭の事情で上級学校にいけず、懸命に働いて自分の店を持った。そうした父の姿を見て、決してあきらめず常に努力しつづけることの大切さを身をもって学んでいく。政治家になりたいと弁護士の資格をとって、保守党に身を投じるも、当時のイギリスの男女差別は絶望的で、サッチャー自ら、「私の生きている間に女性の首相は無理でしょう」と演説で話したほどである。しかし教育相をひきうけ、その力強い単純な訴えは保守党のなかで次第に重きをおくようになり、ついには保守党党首に選出され、労働党に選挙で勝利し、女性首相が誕生する。その間、保守党のソビエト連邦に妥協的な政策を批判し、対決姿勢を打ち出しソ連の新聞で「鉄の女」と評されると、それを逆手にとって「私が鉄の女です」とその揺るぎのない断固たる政策に国民の支持を訴える。これもおそらくは　クロムウェル　の鉄騎兵のイメージが想起され、ビクトリア時代のイギリスの繁栄を築く礎ともなったピューリタン革命を連想させる。まさに、「心に描いたとおり」の人生となったのである。  発信箱:サッチャーさんの睡眠＝小倉孝保（欧州総局）毎日新聞　2013年04月24日　00時51分　真面目で冷たいイメージの強い英国のサッチャー元首相だが、ユーモアのセンスはなかなかだった。長年、政治顧問を務めたニコラス・マクレーンさん（６７）がこんな話を紹介してくれた。首相就任直後、彼女はある会議でこうスピーチした。「首相になりました。しかも、......」。誰もが「初の女性首相」と続くと思ったが、予想に反し、「二つの学位（化学と法学）を持つ首相です」と続いたという。　元首相の睡眠時間が短かったことも有名だ。首相時代の広報担当者は、彼女の睡眠は平均４時間と証言している。マクレーンさんもこんな経験をしている。野党党首として中東を歴訪したときだ。帰国した彼女は、自宅に入るとマクレーンさんらを集めて夜１１時から３時間、勉強会を開いた。その後、約２時間眠り、また仕事を始めたという。「帰りの飛行機で眠ったのだろうと思ったのですが、機内では礼状を書いていたそうです」　第二次大戦を勝利に導いたチャーチル元首相は戦時中、４時間睡眠だった。戦時指導者という極度の緊張や責任感のためだろう。思えばサッチャー氏も野党時代から政権奪取の闘い、その後はフォークランド紛争、炭鉱労働者との闘いと「戦闘」続きだった。国内評価は割れているが、彼女が強い危機意識を持って生きたことは間違いない。　「鉄の女」の死去からしばらくして、サッチャー氏の選挙区だったロンドン北部の保守党事務所を訪れた。壁には元首相の肖像画、机上には２冊の記帳ノートがあった。ページをめくると多くの支持者がこう書いていた。「レスト・イン・ピース（安らかに眠ってください）」。闘い続けた女宰相が永遠の眠りに就いた。 

  2013年04月26日

• 麻生、石破、山谷えり子ら安倍政権にクリスチャンが多い理由

  麻生、石破、山谷えり子ら安倍政権にクリスチャンが多い理由2013.02.02 麻生太郎・副総理、石破茂・自民党幹事長、山谷えり子・政府開発援助特別委員長……いずれも安倍政権の中枢を担う保守政治家たちである。実は、彼らにはある共通点があることをご存じだろうか。　答えは、「クリスチャン」だ。国内の1％に満たないキリスト教徒が、なぜ政界にこれほど多いのか。その謎を追った。　キリスト教年鑑によれば、日本国内のキリスト教信者や聖職者は107万人で、人口比にしてわずか0.845％に過ぎない（2012年）。政治家のクリスチャンは、この比率からすると明らかに多い。　クリスチャンの文芸評論家、富岡幸一郎・関東学院大学文学部教授が分析する。「人口ではわずか1％に満たなくても、高等教育を受けたエスタブリッシュメントにクリスチャンが多いからです。明治期にキリスト教が解禁された後、札幌農学校に赴任したクラーク博士の門下で内村鑑三氏や新渡戸稲造氏がクリスチャンとなり、彼らが後に旧制一高（東京大学教養学部の前身）で教職に就いたことで、旧帝大のエリート層にはキリスト教が定着します。　一方、関西ではNHK大河ドラマ『八重の桜』の主人公・新島八重の夫となる新島襄氏が同志社大学を設立してキリスト教を布教します。戦後、アメリカ文化とキリスト教が密接に結びつく中、そこで高等教育を受けた人々が政界に進出し、その結果としてクリスチャン政治家が増えていった」　麻生氏の祖母、雪子さんは牧野伸顕・元外相の娘にあたるが、牧野氏は新渡戸氏を旧制一高の校長に推薦した人物だ。石破氏の曾祖父、金森通倫氏は同志社で新島氏からキリスト教の洗礼を受けた。麻生、石破両氏は、明治期に広がった“東西のエスタブリッシュメント系クリスチャンの本流”に属しているといえよう。　また、新渡戸門下だった南原繁氏、矢内原忠雄氏というクリスチャン教育者が、戦後立て続けに東京大学総長に就いたこともあり、東大出身者、とりわけ官僚にはいまでもクリスチャンの割合が高い。　民主党のクリスチャン議員はいう。「国会では、米国でクリスチャン議員がやっている『朝の祈りの会』を日本でやろうということで始まった会を月一回で開催しているが、ここには議員だけではなく、財界人や官僚OBも集い、かなり幅広い情報交換をしている。　財務省OBが事務局のような役割を担い、聖書の勉強だけではなく、政策の議論もするし、大震災のときは支援についても話し合いました。クリスチャンではないが谷垣さんもこの会の中心で、キリスト教をきっかけにした一種のサロンのようになっています」※週刊ポスト2013年2月1日号

  2013年02月11日

• ＮＹ市長、母校へ寄付１千億円　４９年間かけ

  ☆ジョンズ・ホプキンス大学というと、札幌農学校第一期生の佐藤昌介（後に北海道大学総長）、第二期生新渡戸稲造の母校でもある。　これもまたピューリタニズムがつくりあげ、鍛え上げた　慈善の精神であろうか。 ＮＹ市長、母校へ寄付１千億円　４９年間かけ2013年1月28日　【ニューヨーク共同】米ジョンズ・ホプキンス大は２７日までに、卒業生のブルームバーグ・ニューヨーク市長（７０）による寄付が４９年間で１１億１８００万ドル（約１０２０億円）に達したと発表した。同大は「米高等教育機関に１０億ドルを寄付する初めての人物とみられる」と説明している。　ブルームバーグ氏は卒業の翌年の１９６５年に初めて５ドルを寄付。その後、８４年の１００万ドルなど寄付を積み重ねた。　今回は３億５千万ドルを約束。このうち２億５千万ドルは水資源などの研究に、１億ドルは奨学金に充てられる。　米誌フォーブスによると、同氏の保有する資産は約２５０億ドルブルームバーグ市長、母校に計11億ドル寄付吉原真里2013年01月27日2007年の金融危機以来とくに、アメリカの大学では、政府の教育予算が大きく削られた州立・市立大学でも、また寄付や基金がかなり減少した私立大学でも、財政難に苦しんでいるところがほとんどです。そんななかで、昨日のニューヨーク・タイムズに載って話題になっているのが、ニューヨークのブルームバーグ市長が、母校のジョンズ・ホプキンス大学に3億5千万ドルの寄付をすると発表したこと。これまでの40年間にブルームバーグ氏が同大学に寄付した額は、これを含めるとなんと11億ドルになるとのこと。ひょえ?。マサチューセッツで育ったブルームバーグ氏は、高校生のときは、成績もそれほどよくなく、大きな野心を抱いているわけでもない、普通の青年だったのだが、アルバイト先の会社の社長がジョンズ・ホプキンスの卒業生で、その人物に同大学に応募することを強く勧められ、運よく合格してしまったとのこと。小さな町の生活に退屈していたブルームバーグ青年は、荘重な建物の並ぶキャンパスで、世界のリーダーを目指している若者たちが、さまざまな思想を論じている大学の空気に魅了され、成績も優秀で、さまざまなキャンパス活動においてリーダーシップをとる人物へとめきめき成長していった。そうやって自分の意識や知力を育ててくれた母校への感謝の念を表すために、卒業の翌年に5ドルを寄付したのに始まって、ブルームバーグ氏の財力が膨らむにつれ、氏の母校への寄付もどんどん増えていった。氏の寄付に支えられた同大学は、ここ数十年のあいだに、大学の知名度やランキング、教授陣や学生を集める力、キャンパス施設など、すべてにおいて飛躍的な成長をしてきた、とのこと。とくに、政策にかかわる公衆衛生の分野に興味をもったブルームバーグ氏は、公衆衛生関連の研究増進に多額の寄付をしてきた、とのことです。医学など以外の分野では、ジョンズ・ホプキンス大学は日本ではそれほど知名度が高くないかもしれませんが、政治学や歴史学などにおいてもたいへん伝統と定評のある、名門大学です。ちなみに、ジョンズ・ホプキンズ出版局もたいへん立派な学術出版局で、私の分野の学術誌、American QuarterlyそしてJournal of Asian AmericanStudiesはともに同出版局が刊行しています。それにしても、11億ドルはすごい。これは、個人が存命中に教育機関に寄付した額としては、アメリカ史上最大のもので、ロックフェラー、カーネギー、メロン、そして現代においてはビル・ゲイツやウオーレン・バフェットと並ぶフィランソロピストとしてブルームバーグ氏が名を残すことは間違いありません。氏は、自分の財産250億ドルを死ぬ前にすべて寄付すると宣言しており、そのための財団を設立してもいます。アメリカではフィランソロピーが第三セクターといわれるくらい経済において大きな影響力をもっている国なので、財産のある人たちには是非ともこのような形で寄付をしていただきたい。そして、大学への寄付は、その大学の教授や学生だけでなく、研究や教育の成果を通じて長期的には社会全体へのメリットをもたらすので、おおいに結構。ブルームバーグ氏にも拍手だけれど、卒業生のなかにこれだけの愛校心を育んだジョンズ・ホプキンス大学に拍手を送りたい気持ちにもなります。それと同時に、財政難に苦しむ州立大学に勤めるものとしては、こういった形で名門私立大学の財産が増大することで、裕福な私立大学と、一般の州立・市立大学の格差がますます拡大していく、ということに一種の苛立ちを感じることも確かです。実際、私立大学と公立大学のあいだには、さまざまな意味で雲泥の違いがあります。名門私立大学で教育を受けた人と、ハワイ大学のような州立大学で教育を受けた人が、社会に出ると同じ土俵で競争しなければいけないということ自体、納得がいかないくらいです。そもそも、公立大学に通うだけでも巨額の学資ローンを抱えたり、学費を払えず進学や卒業をあきらめる若者がたくさんいるいっぽうで、ひとりの個人が250億ドルもの財産を成す社会自体に、なにか大きく歪んだものがあるようにも思えます。この記事に投稿されている読者コメントのなかにも、ブルームバーグ氏の寄付を讃える人たちがたくさんいるいっぽうで、格差社会への疑問を提示している人たちがけっこういるのが面白いです。

  2013年01月28日

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  幻のタマネギ「札幌黄」を味わう！　じわじわ浸透、「ふぁんくらぶ」の会員も拡大

   幻のタマネギ「札幌黄」を味わう！　 2013.1.20 明 丸ごと１個の札幌黄がごろんと入った特製ビーフカレーは季節限定のメニューだ＝１月１１日、札幌市東区の温故知新ブルックスカレー食堂（藤井克郎撮影）治のころから連綿と栽培されてきた札幌特産のタマネギ「札幌黄（さっぽろき）」を盛り上げていこうという動きが活発化している。昨年８月に発足した「札幌黄ふぁんくらぶ」の会員は、昨年末に５００人を突破。今年は一定量の札幌黄を予約で購入できる「札幌黄オーナー制度」がスタートするなど、「幻のタマネギ」と呼ばれる名品種を口にする機会も増えそうだ。札幌黄の魅力とは－。（札幌支局　藤井克郎） 　年の瀬も押し詰まった昨年１２月２８日、札幌市東区役所で、「札幌黄ふぁんくらぶ」会員５００人突破を記念して、５００人目の会員への関連商品贈呈式が開かれた。５００人目となったのは、同市北区に住むタクシー乗務員の芝吹孝（しばふき・こう）さん（６２）。札幌黄１０キロ入りの箱などを手渡された芝吹さんは「タクシーのお客さんに、札幌黄というおいしいタマネギがありますよ、などと話すこともあり、何か情報が得られるかなと会員に応募したのですが、まさかこんなことになるなんて...」と笑顔を見せた　札幌黄は札幌特産のタマネギとして、明治のころから札幌で栽培されてきた。もともと日本のタマネギ栽培は明治４年、欧米から輸入した種子を現在の東区で試作したことが始まりとされる。その後、この辺りの肥沃（ひよく）で乾燥しやすい環境が適していたことから、札幌農学校のウィリアム・Ｐ・ブルックス博士が米国から持ち込んだ品種を起源とする札幌黄の作付けが急増。だが昭和５０年ごろから、病気に強く品質の安定した新種に取って代わられ、現在は札幌市のタマネギ作付面積の約３％、年間３００～６００トンの生産にとどまっている。その一方で、平成１９年には「食の世界遺産」といわれるスローフード協会国際本部の「味の箱舟」に認定されるなど、国際的にも貴重な食材として認識されている。「片方で食べたいという声があり、でももう一方で生産量が少なくて買えないという現実がある。それをどうにかしないといけない」と話すのは、「札幌黄ふぁんくらぶ」代表を務める天使大学看護栄養学部教授の荒川義人さん（６０）だ。 　生産者、事業者、消費者が一体となって札幌黄を盛り上げていこうとこの会が発足したのは昨年８月のこと。札幌黄を扱っている飲食店や加工業者、野菜ソムリエ、フードライターなどが運営委員に名を連ね、メールマガジンで情報を発信するなど、札幌黄の普及促進に努めている。　「札幌黄には物語があるし、札幌の農業をしょって立つリーダーになれる。それが生産性や病気に弱いといった理由で消えてしまってはいけない。品種改良されたタマネギと比べると味はからいが、それは本来の作物が持っているもので、残すべきものなんです」と荒川さんは強調する。　何とか生産量を増やしたいと、今年から導入するのが「札幌黄オーナー制度」だ。会員が事前に予約することで優先的に一定量の札幌黄を購入できる制度で、消費量が安定すれば生産者も計算が立つ。２月末ごろのスタートを検討しているが、荒川さんは「そんなに量は多くなくても、知名度アップに結びつけば」と期待する。だが札幌黄は品種改良されたタマネギと比べて使いづらいのも事実だ。会の運営委員長を務める土居賢太郎さん（３７）はその味にほれ込み、３年前から札幌黄を使ったカレー店「温故知新ブルックスカレー食堂」を開いているが、「２０キロ購入すると、１割程度は腐っている」と手間がかかることを認める。 　「でも味がいいのはみんなが言っていることです。生だとからいのに、加熱したら甘くなる。うちのカレーは、２０時間、１０時間、２時間と３段階に分けて煮込んだ札幌黄をソースにしている。デメリットを補う技術を持って初めて料理人といえると思っています」　札幌黄の生産地に近い東区伏古（ふしこ）にある土居さんの本店を訪ねた。この季節限定の「特製ビーフカレー」はゆでた札幌黄が丸ごと１個入ったぜいたくなカレーで、素材そのものの札幌黄の甘みとソースに溶け込んだ札幌黄の芳醇（ほうじゅん）さがじわっと口の中に広がり、しっかりタマネギを食べたという実感を味わえる。　料理長の池田美香（はるか）さん（３０）に話を聞くと、ベースソースはみじん切りにした１０キロの札幌黄を鶏肉などと一緒に２日間煮込んで作っており、カレー以外にもハンバーグやシャリアピンソースなどさまざまな料理に活用するという。一方の丸のままの札幌黄は「傷みやすくて芽が出やすいので、特製ビーフカレーは４月ごろまでの限定です。水だけでゆでていますが、味付けしなくても甘みが出るんです」と池田さん。客が書いたブログなどを見て、遠く東京などから訪ねてくる人もいるそうだ。土居さんも「うちの店はタマネギを食べにきた、というお客さんが多く、それってすごいことだと思う。できれば家庭の主婦が、今日はカレーだからスーパーに札幌黄を買いにいく、となったらいい。ファンクラブでも、札幌黄の認知度が少しでも広がっていくような活動ができればと思っています」と語る。 　会では、オーナー制度以外にも、自宅で苗を育てて出来を競う「我が家の札幌黄コンテスト」を実施するほか、札幌黄を練り込んだラーメンや調味液などの開発も進んでいる。できれば生産者との接点も図っていけたらと考えている。　「全く知らないものを食べるのではなく、メルマガで生育状況を発信するなどして、生産者との距離が近いところで展開していきたい。全国シェアの６割を占める北海道のタマネギの原点がここにある、ということはきちんと押さえておかないといけないと思っています」と荒川さんは意欲を見せていた。

  2013年01月22日

• 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」批判　メモ　

  アムステル大学の宗教改革史ハミルトンが結論的に言うには、ウェーバー論文を歴史学的に評価するのは実り多いものではない。「ヴェーバーが自己の裏づけに用いる引用は、文脈から無理やり切り離されたもので、とても結論的な論証と受け取ることはできない。歴史家はそれ以上納得できるものを思いつくこともできない。・・・・・・プロテスタンティズムが経済的進歩や近代的な思想的発展となんらかの関係があり、ヴェーバーがその関連の研究に貢献したこと、多くの歴史家がこれに同意しているとしても、実際には、ヴェーバー・テーゼのさまざまな部分の記述には、検証に耐えるものは多くないのである」（「ヴェーバーとピューリタニズム」p22） コーエン「プロテスタンティズムと資本主義－影響のメカニズム」でコーエンは社会学者として、ヴェーバー・テーゼを整理したうえで検証を試みた。たとえばヴェーバーは「労働倫理」について次の４つ仮設を述べているという。１　禁欲的プロテスタンティズムは信者たちをそれぞれの職業において勤勉に働くよう指導した２　禁欲的プロテスタンテュズムは信者たちを労働が義務であると考えさせた３　禁欲的プロテスタンティズムの現世的な視点は、信者たちの関心を経済活動に向かわせた４　西洋文化の労働倫理はプロテスタンティズムの教義に由来するコーエンはこれらの仮説の一つ一つが妥当であるか、ピューリタン文献から論証を試みる。コーエンはさらに「貯蓄と投資」「資本主義の精神」「生活の合理化」など、９つの主題を挙げ、それぞれについて、ヴェーバーが数個の仮設を立てていると考える。コーエンの結論は、この「労働倫理」に関するヴェーバー仮説は基本的に支持されるが、「富と利潤」に関するヴェーバー仮説は、そのままでは受け取れないとするものであった。「プロテスタンティズムは富を是認した」「プロテスタンティズムは富を神の祝福と考えた」といっているが、ピューリタン指導者たちは同時に富の危険性を強調しており、積極的な資本主義的行動を促進しているとはいえないというのである（p26）〔ちなみにこれはコーエンの仮説の立て方が悪いように思われる。ヴェーバーは冨の危険性を指摘しており、テーゼそのものが限定的あるいは条件的に建てられるべきであろう〕「

  2012年12月03日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その８　自分の内なる楽園を、遙かに幸多き楽園を、お前はもつことができる

    3. ルッターの天職概念３　ルッターの天職観念－研究の課題　さて、ドイツ語の「ベルーフ」《Beruf》という語のうちに、また同じ意味合いを持つ英語の「コーリング」《calling》という語のうちにも一層明瞭に、ある宗教的な－神からあたえられた使命という－観念がともにこめられており、個々の場合にこの語に力点をおけばおくほど、それが顕著となってくることは見落としえぬ事実だ。しかも、この語を歴史的にかつさまざまな文化国民の言語にわたって追究してみると、･･････プロテスタントの優勢な諸民族の場合にはかならずそれが存在する、ということだ。さらに知りうるのは、その場合何らか国語の民族的特性、たとえば「ゲルマン民族精神」の現れといったものが関与しているのではなくて、むしろこの語とそれが持つ現在の意味合いは聖書の翻訳に由来しており、それも原文の精神ではなく、翻訳者の精神に由来しているということだ。（P95）　また、語義の場合と同様に、その思想も新しく、宗教改革の産物だった。･･････次の一事はさしあたって無条件に新しいものだった。すなわち、世俗的職業の内部における義務の遂行を。およそ道徳的実践のもちうる最高の内容として重要視したことがそれだ。これこそが、その必然の結果として、世俗的日常労働に宗教的意義を認める思想を生み、そうした意味での天職《Beruf》という概念を最初に作り出したのだったつまり、この「天職」という概念の中にはプロテスタントのあらゆる教派の中心的教義が表出されている･･････神によろこばれる生活を営むための手段はただ一つ、各人の生活上の地位から生じる世俗内的義務の履行であって、これこそが神から与えられた「召命」《Beruf》にほかならぬ、と考えるというものだった。（P109-110）　どんな場合にも世俗内的義務の履行こそが神に喜ばれる唯一の道であって、これが、そしてこれのみが神の意志であり、したがって許容されている世俗的職業はすべて神の前ではなったくひとしい価値をもつ、ということがその後指摘されつづけたばかりではなく、ますます強調されるようになっていった。（P111）　16,17世紀に少数の大商事会社のもつ法律上あるいは事実上の特権的地位に対してなされた闘争は、何よりもまず近代における反トラスト運動に比較されうるもので、ともにそれ自身としては決して伝統主義的心情の現われでないからだ。ピューリタンやユグノーたちもまたそうした人々、つまり金融業者や「両替する者」、イギリス国教会やイギリス・フランスの国王、議会に庇護された独占業者、大投機業者、銀行業者に対して激烈な闘争をおこなった。クロムウェルはダンバーの戦闘（1650年9月）ののち長期議会に宛てて「乞う、一切の職業（コーリング）の濫用を改革せられよ。もし少数者を富ますために多数者を貧困にするものがありとせば、かかることはコモンウェルスにとってふさわしからぬことである」と書き送っている。-その反面、クロムウェルの場合は、特殊「資本主義的」な思考様式を十分に備えていたことも明らかだ。（P116）　カルヴィニズムとプロテスタン諸信団（ゼクテ）とが資本主義発達史の上で顕著な役割を演じたことは先にも一言したとおりだ。･･････〔ダンテの『神曲』の末尾と〕「ピューリタニズムの神曲」と呼ばれているミルトンの『失楽園』の末尾と比較してみるがよい。ミルトンはその最終篇で楽園からの追放を描写したのち、このように結んでいる。－「彼らは、ふりかえり、ほんの今先まで自分たち二人の幸福な住まいの地であった楽園（パラダイス）の東にあたるあたりをじっと見つめた。その一帯の上方では、神のあの炎の剣がふられており、門には天使たちの恐ろしい顔や燃えさかる武器の類が、みちみちていた。彼らの眼からはおのずから涙があふれ落ちた。しかし、すぐにそれを拭った。世界が、－そうだ、安住の地を求め選ぶべき世界が、今や彼らの眼前に広々と横たわっていた。そして、摂理が彼らの導き手であった。二人は手に手をとって、漂白の足どりも緩やかに、エデンを通って二人だけの寂しい路を辿っていった。」（岩波文庫、平井正雄訳による。）」また、少し前では、天使ミカエルはアダムにこう言っている。「必要なことは、ただひたすらお前の知識に、それにふさわしい行為を加え、信仰を加え、美徳と忍耐と節制を加え、さらに、やがて聖き愛（チャリティ）という名称で呼ばれるはずの、そして他の一切のものの塊でもある愛を、加えることだ。そうなれば、お前もこの楽園（パラダイス）から出てゆくことを嫌とは思わないであろう。自分の内なる楽園を、遙かに幸多き楽園を、お前はもつことができるからだ。」（同上）　ピューリタニズムの現世に対する厳粛な関心というか、あるいは世俗内的生活を使命として尊重する態度の、こうしたこの上もなく力づよい表現は、中世の著述家の筆ではとうてい不可能だったことが、誰でもただちに感得できるだろう。（P129-131）

  2012年11月17日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その７　天職概念の非合理的要素はどこからきたのか

    かつて資本主義は、形成期の近代的国家権力と結合することによって、はじめて古い中世的経済統制の諸形態を破砕しえたように、宗教的権威との関係についても、おそらくそうしたことが起こりえたのではなかろうか。それが現実に起こったのか否か、また現実に起こったとすればそれはどのような意味をもったのか。それを究明することこそが本書におけるわれわれの仕事となるのだ。なぜなら、貨幣の獲得を人間に義務づけられた自己目的、すなわちBeruf(天職)とみるような見解が、他のどの時代の道徳感覚にも背反するものだということは、ほとんど証明を要しないからだ。教会法にも採用され、当時は（福音書の利子に関する個所と同じく(1)）商人の活動にも正当なものとして適用された《Deo placere vix potest》「神によろこばるるは難し」の教条や、利潤の追求をturpitudo（醜いこと）とよんだトマスの考え（止むをえないこととして倫理上容認されている利潤の獲得さえもこのように非難された）のうちにも、教会と政治的に密接に結びついていたイタリア諸都市の金融勢力の利害への、カトリック教理の迎合がすでにかなり見られるが、そうした態度はなおそうとう広汎な人々の抱く徹底した反貨殖者的な考え方と対立していた。･･････ベンジャミン・フランクリンのようにそれを「道徳的」と見るようなことは、およそ考えも及ばぬことだったと思われる。こうした考えが、わけても資本主義の当事者だった人々自身が抱いていたものであった。･･････このような道徳的にはせいぜい寛容されるにすぎなかった利潤の追求が、どうして、ベンジャミン・フランクリンの意味における《Beruf》「天職」にまでなっていったのだろうか。･････辺境の小市民的な１８世紀のペンシルヴェニアで、しかもこの地方では貨幣の不足のためだけでややもすれば物々交換経済に逆転する恐れさえあり、大規模な産業経営はほとんど影さえなく、銀行といえば僅かにその萌芽しか見られなかったのに、利潤の追求が道徳上賞賛に値するに止まらず、義務であるような、そうした生活態度の内容と考えられたという事実は、いったいどうすれば歴史的に説明しうるだろうか。外面的には利潤の獲得を指向するにすぎない活動が、個々人に義務として意識されるような、そうした《Beruf》「天職」という範疇にまで構成されるにいたったという事実は、どのような思想世界にその源泉をもっただろうか。けだし、ほかならぬそうした思想こそが「新しいスタイル」の企業家の生活態度に倫理的下部構造と支柱を与えることになったのだからだ。(P78-80） P91　近代経済の基調として一般に「経済的合理主義」が指摘されている。もしこの語が、生産過程を科学的観点の下に再編制し、それによって人間の身体にからみついている自然の「有機的」限界から解放する、そのような仕方での労働生産性の増大を意味するのであれば、それはもちろん誤りではない。技術および経済の領域でのこうした合理化過程が近代市民社会の「生活理想」の中で大きな部分を占めていることは明らかで、人類の物質的財貨の調達の合理化のために働くことは、つねに全生涯にわたり勤労の方向を示す目標として、「資本主義精神」の抱懐者たちの念頭を去ることがなかった。このきわめて明白な事実を理解するには、たとえばフランクリンがフィラデルフィアの市政改善のために費やした労苦について、彼自身が記していることを読むだけで十分だろう。多数の人々に「労働をあたえ」て故郷の都市の経済的「繁栄」のために、それも資本主義がまさしくそれに結びつけたあの人口や商業の数量を目指す、そうした意味での経済的「繁栄」のために尽力したという満足と誇りーこうしたものすべてが、近代の企業家層にとっては独自の人生の喜びであり、かつ「理想主義的」な意味をもつものだったことは明瞭だ。また、厳密な計数的予測の基礎のうえにすべてを合理化し、経済的成果を目標として計画的かつ冷徹に実行にうつしていくことが、資本主義的私経済の根本的特徴の一つとなっているということももちろんで、その点で手から口への農民の生活や、手工業の古い特権化された慣習や、また政治上の利権とか非合理的投機を生命としていた「冒険商人的資本主義」とはまったく異なっている。　こうして一見、「資本主義精神」の発達は合理主義の巨大な発展の部分現象として見るのがもっとも簡明であって、究極的な人生問題に対する合理主義の原理的立場から導き出すことができるかのように思われる。･･････１８世紀に純粋に現世的な合理主義哲学が盛んであったのは、決して資本主義の最高度に発達した国々ばかりではなく、またとりわけそうした国々であったというわけでもなかった。ヴォルテール主義はむしろロマン系カトリック諸国の広汎な上層と中間層のあいだで今日でもひろく共通財となっている。それのみでない。もし「実践的合理主義」なるものを世界の一切を意識的に個人的自我の現世的利益に関係させ、その観点から判断するような生活態度だと解するならば、こうした生活スタイルはまさしくイタリア人やフランス人のような《liberum arbitrium》「自由裁量・放縦」が血となり肉となっている諸民族の特色であったし、今日でもその特色となっている。ところで、こうしたものが、決して、人間を資本主義が必要とする《Beruf》「天職」の思想へ結びつけていく、豊かな地盤でなかったことはすでにわれわれの確かめえたところだ。･･････われわれの究明すべき点は、過去及び現在において資本主義文化のもっとも特徴的な構成要素となっている《Beruf》「天職」思想と職業労働への献身とを生み出すに至った、あの「合理的」な思考と生活の具体的形態は、いったい、どんな精神的系譜に連なるものだったのか、という問題でなければならない。それも、この場合、とくにわれわれの興味を惹くのは、この概念の《Beruf》「天職」概念のうちに存在する、この非合理的要素はどこからきたのか、ということなのだ。(P90-94）

  2012年11月16日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その６　「天職の遂行」という非合理的な感情

    　  ところで、われわれはつぎにもう一度現代に目を向け、こんどは特に企業家について「伝統主義」の意義を明らかにしていくことにしたい。･･････　経済の「資本主義的」形態とその経営上の精神とは、たしかに一般に「適合的」関連（《adaquate》Beziehung）の関連に立ってはいるが、決して互いに「法則的」な依存（《gesetzliche》Abhangigkeit）の関係にあるわけではない。それにもかかわらず、さきにベンジャミン・フランクリンの例に見たような、正当な利潤を《Beruf》「天職」として組織的かつ合理的に追求するという心情を、われわれがここで暫定的に「（近代）資本主義の精神(3)」と名づけるのは、近代資本主義的企業がこの心情のもっとも適合的な形態として現われ、また逆にこの心情が資本主義的企業のもっとも適合的な精神的推進力となったという歴史的理由によるものだ。(P70-72） 　ベンジャミン・フランクリンは、彼の印刷工場が形態の上で手工業経営と少しも異なるところがなかったころすでに「資本主義精神」にみたされていた。･･････われわれが本書で「資本主義の精神」とよんできた心情の担い手たちは、もっぱら都市貴族の資本主義的企業家だったとか、また彼らの間にとくに多かったというわけではなかった。むしろ、向上しようと努力しつつあった産業的中産者身分のなかにかえって遥かに多く見られたのだ。１９世紀になってさえ、この心情の典型的代表者は祖先伝来の商業財産をもつリヴァプールやハムブルクの上流紳士ではなくて、しばしば零細な境遇から身を起こしたマンチェスターやライン=ヴェストファーレン地方の成り上がり者だった。１６世紀にもすでに事態はそれと同じだったのであり、当時成立しつつあった産業は主として成り上がり者の手で作り出されたものだった。(P72-73） 　銀行や輸出貿易やまた比較する大規模や小売業、あるいはまた家内工業によって作られる商品への大規模な問屋制前貸などの経営は、資本主義的企業の形態によらずには営みえないことは明白だ。にもかかわらず、これらすべては厳密に伝統主義的な精神によって営まれることもありうる。大発券銀行の業務はそうした精神によらずに営むことは許されない。また海外貿易もあらゆる時代を通じて伝統主義的性格の強い独占と統制を土台として行われてきた。小売業ではーここにいう小売業とは現在しきりに国家の援助を求めている小規模で無資力な怠け者のことではないー古い伝統主義を終らせる革命がいまなお進行中だ。－かつて旧い形態の問屋制度を破砕したのもこれと同一の革命だった。現代の家内労働はただ形の上で旧い問屋制度に類似しているに過ぎない。･････こうしたものがあらゆる点で「資本主義的」な形態の組織だったことは、その企業家たちの純粋に商人的で事務的な性格についてみても、またその事業の運転のために資本の介在を不可欠とした事実についてみても、また経済過程の客観的な側面や簿記の方法についてみても、明瞭なことだ。しかし、企業家たちの魂を動かしていた精神から見ると、それは「伝統主義的」な経済だった。事業経営を支配していたのは、伝統的な生活標準や伝統的な利潤量や伝統的な労働量、また伝統的な事業経営を支配していたのは、伝統的な生活水準や伝統的な利潤量や伝統的な労働量、また伝統的な事業経営の様式、労働者や本質的に伝統的な顧客層との伝統的な関係、顧客の獲得や販路などの伝統的な様式であって、これこそがそうした経営者層の「エートス」-と言ってまさしくさしつかえない-の基礎をなしていたのだ。(P74-76） 　さて、あるとき突如このなごやかな生活の撹乱されるときが来た。･････問屋制度前貸を営む家族出身の一青年が都市から農村に出かけ、自分の要求に合致する織布工たちを注意深く選び出し、彼らに対する支配と統制を強化して、農民的な彼らを労働者に育成する。また他方では、最終購買者との直接の接触すなわち小売業を通じて販売をすべて自分の手におさめ、顧客を自分で獲得し、毎年規則的に各地を訪れ、またとくに製品の品質を改良して買い手の必要や希望に適合させ、その「好みに合う」ようにするとともに、「薄利多売」の原則を実行し始めるのだった。そうすると、どの時どの場所でもこうした「合理化」過程の結果として見られることが、そこにも生じた。つまり向上しえないものは没落せねばならなかったのだ。激しい競争が始まるとともに牧歌は影をひそめ、巨額の財産は獲得されても利息目当ての貸付には向けられずに、後から後から事業に投資され、のんびりした、気楽な生活は失せはてて、厳しい冷静さがこれにかわった。他の人々に遅れずに繁栄に向かう人々の場合には、消費を欲せずに営利を欲したからだし、古い様式に踏み止まる人々の場合には生活を切り詰めならなければならなかったからだ。しかもそうした場合このような変革を惹き起こしたものは、通常新たな貨幣の流入などではなくてむしろ新たな精神、すなわち、「近代資本主義の精神」の侵入だった。近代資本主義の拡大の原動力はなにかという問題は、まずもって資本主義的に利用しうる貨幣がどこから来たかではなくて、むしろ何にもまして資本主義精神の展開ということなのである。この精神が生気を得て活動しうるところでは、活動の手段である貨幣も自分で調達していくのであって、その逆ではない。･･････そうした「新しいスタイル」の企業家が醒めた自己抑制を維持し、経済上・道徳上の破滅に陥らぬためには、きわめて堅固な性格が必要であり、また明確な観察力と実行力とともに、とりわけ決然とした顕著な「倫理的」資質をそなえていなければ、この革新に必要な顧客と労働者からの信頼を得ることはできないし、また、無数の抵抗に打ち勝つ緊張力をたもちつづけ、企業家に必要な、とくに安易な生活とは両立しがたいおそろしく強度な労働に堪えることもできないが、そのような事情を公平に観察することは誰人にも決して容易ではなかったのだ。というのもただただそうした倫理的資質が、過去の伝統主義に適合的なものとは異なった、独自なものであるためだった。(P76-78） 　また他面、経済生活における新しい精神の貫徹という、外観上は目立たないが、しかしこうした決定的な転換を生み出したのは、通常、経済史上どの時代にも見られる命知らずの厚顔な投機家や冒険者たち、あるいは端的に「大富豪」などではなくて、むしろ厳格な生活のしつけのもとで成長し、厳密に市民的な物の見方と「原則」を身につけて熟慮と断行を兼ねそなえ、とりわけ醒めた目でまたたゆみなく綿密に、また徹底的に物事に打ちこんでいくような人々だったのだ。･･････そうした企業家たちは見栄や不必要な支出を好まないばかりか、故意に権勢を利用することを嫌い、また現に自分の得ている社会的名声に対して外側の褒賞をうけることさえ喜ばずに避けるのだ。言い換えると、その生活態度はしばしば、さきに引用したフランクリンの「説教」に明らかに現われているような一定の禁欲的特徴を具えている。ことに、こうした企業家には適度に冷静な謙虚さの認められることが少なくない、というよりも、きわめて多いのだ。こうした謙虚さはベンジャミン・フランクリンの「説教」に明らかに現われているような一定の禁欲的特徴を具えている。ことにこうした企業家には適度に冷静な謙虚さの認められることが少なくない、というよりも、きわめて多いのだ。こうした謙虚さはベンジャミン・フランクリンの推賞する巧智にたけた自制よりも、本質的に誠実なものだ。こういう企業家は、巨富を擁しながら、自分のためには「一物をも持たない」、－ただ良き「天職の遂行」《Berufserfullung》という非合理的な感情をもっているだけなのだ。(P78-80）

  2012年11月16日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その５　民衆は貧しい間だけ、貧しいからこそ労働するという信条

    「倫理」の衣服をまとい、規範の拘束に服する特定の生活のスタイル、そうした意味での資本主義の「精神」が、何はさておき遭遇しなければならなかった闘争の敵は、ほかならぬ伝統主義とも名づくべき感覚と行動の様式であった。･･････近代の企業家が「自分の部下の」労働者たちから可能なかぎり最大限度の労働を獲得する、すなわち労働の集約度を高めるために通常利用する、技術的方法の一つに出来高賃金（Akkordlohn）がある。たとえば、農業では収穫時が通常、労働の集約度を最大限度に高めることのもっとも必要となる場合とされている。収穫をできるだけ早く終らせるか否かによって、しばしば利潤が莫大となったり損失が生じたりするからで、天候の不順な場合はとくにそうだ。したがってほとんど例外なく出来高賃金制が採用されている。しかも、収益が増加し経営集約度が高くなってくると、収穫をいち早く終わろうとする企業家の関心も概して増大するから、彼らは当然に繰り返し、手あたりしだい労働者に対して出来高賃金の率を高くし短期間に得られる報酬を桁はずに多くすることで、労働の増大に関心をもたせようと試みたものだ。しかしその場合、特殊な困難が生じた。すなわち、出来高賃金率を引き上げる結果として期待したように一定期間内の労働が増大せず、それどころか、むしろ減少するという場合が目立って多かったのだ。というのは、出来高賃金率の引き上げに対して、労働者たちが一日の仕事を増加させずに、むしろ減少させるという反応を示したからだった。 (P63-64）報酬の多いことよりも、労働の少ないことの方が彼を動かす刺激だったのだ。彼が考慮にいれたのは、できるだけ多く労働すれば１日にどれだけの報酬が得られるか、ではなくて、これまでと同じだけの報酬-２．５マルクヲ得て伝統的な必要を充たすには、どれだけの労働をしなければならないのか、ということだった。まさしくこれは「伝統主義」とよばれるべき生活態度の一例だ。人は「生まれながらに」できるだけ多くの貨幣を得ようと願うものではなくて、むしろ簡素に生活する、つまり、習慣としてきた生活をつづけ、それに必要なものを願うにすぎない。近代資本主義が、人間労働の集約度を高めることによってその「生産性」を引き上げるという仕事を始めたとき、到る所でこの上もなく頑強に妨害し続けたのは、資本主義以前の経済労働のこうした基調（ライトモティーフ）だった。現在でも、資本主義の土台となっている労働者層が「立ち遅れ」（資本主義の立場からみて）ていればいるだけ、この障害がよけいに強い。･･････ところでーもう一度、前掲の例に立ちかえってみるとー賃金率を引き上げて労働者の「営利心」に訴える方法が成功しないならば、その逆の方法、すなわち賃金率を引き下げて労働者が以前と同額の報酬を得るためには前よりもよけいの労働を余儀なくされる、という方法が試みられたのは当然だった。でなくても、低賃金は高利潤と関連しており、賃金を多く払えばそれだけ利潤は減少すると考えるのは、公平な目からみて、一応もっともなことだし、今日でもそうだと言えよう。事実、資本主義は最初から絶えまなくこの方法をとってきており、低賃金は「生産的」、すなわち労働を増大させるものだということ、つまりは、ピーター・ド・ラ・クール（Pieter de la Cour）-後にみるように、この点では、彼は完全に古カルヴィニズムの精神でものを考えている-がすでに言っていたとおり、民衆は貧しい間だけ、貧しいからこそ労働するのだということは、幾世紀を通じて信条となっていたのだ。 (P64-66）  　しかし、一見はなはだ確実に見えるこの方法の効果にも限界がある。たしかに資本主義が発展しうるためには、労働市場で発展しうるためには、労働市場で低廉な代価で雇用できる過剰人口の存在が必要だ。けれども、そうした「予備軍」があまり多きにすぎる場合には、資本主義の量的な拡大は促進されることがありえようが、その質的な発達、とりわけ労働を集約的に利用しつくせるような経営形態への移行はむしろ阻害される。賃金が低いということと労働が安いということは、決して同じではない。単に量的にみても、生理的に不十分な賃金だと労働力は必ず減少し、それが長期にわたれば、まさに「最不適者の選択」を意味するような結果となることも少なくない。･･････こうした場合には端的に高度の責任感が必要であるばかりか、少なくとも勤務時間の間は、どうすればできるだけ楽に、できるだけ働かないで、しかもふだんと同じ賃金がとれるか、などということを絶えず考えたりするのではなくて、あたかも労働が絶対的な自己目的-《Beruf》「天職」-であるかのように励むという心情が一般に必要となるからだ。しかし、こうした心情は、決して、人間が生まれつきもっているものではない。また、高賃金や低賃金という操作で直接作り出すことができるものでもなくて、むしろ、長年月の教育の結果としてはじめて生まれてくるものなのだ。今日では資本主義は堅固な基礎がすでにでき上がっているから、どの工業国でも、またそれらの国々のどの工業地帯でも、またそれらの国々のどの工業地帯でも、労働者の調達は比較的安易だ。しかし、昔は、いつでもきわめて困難な問題だった。今日でも資本主義は、少なくとも場合によっては、成立の時代に（のちに見るように）助力を受けた有力な事情にたよることなしには、この目的を達することはできない。(P66-67）思考の集中能力と、「労働を義務とする」この上もなくひたむきな態度、しかも、これに結びついてこの場合とくにしばしば見出されるのは、賃金とその額を勘定する厳しい経済性、および労働能力のいちじるしい向上をもたらす冷静な克己心と節制だ。労働を自己目的、すなわち《Beruf》「天職」と考えるべきだという、あの資本主義の要求にまさしく合致するところの考え方は、このような場合いちばん受け容れやすく、伝統的慣習を克服する可能性も宗教的教育の結果最大となる。このように現在の資本主義に関する観察からしても、資本主義への適応能力と宗教的要因の関係が資本主義の成育期にはどうなっていたか、それを問題とすることがとにかく無駄ではないということが分かるだろう。その頃にもこの両者の関係がこれとほぼ同様のものだったことは、多数の個別的事実から推論することができるからだ。たとえば、18世紀のメソジスト派労働者たちが仲間からうけた嫌悪や迫害の原因は、彼らの労働用具がたえず破壊されたことが報告されているのでも知られるように、主としてあるいはもっぱら宗教的な常軌を逸した行動だったのではなくて-イギリスではそのような事例が多数あり、かなり目立ったものも見られたが-むしろ今日風に言えば、彼ら独自の「労働意欲」に関連していたのだった。(P68-69）

  2012年11月16日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その４　内面的障碍のうち最強のものの一つ

    　今日われわれによく知られてはいるが、本当はその意味が決して自明でない、職業義務という独自な思想がある。･････各人は自分の「職業」活動の内容を義務と意識すべきだと考え、また事実意識している、そういう義務の観念がある。－そうした思想は、資本主義文化の「社会倫理」に特徴的なもので、ある意味では、それにとってたしかに構成的な意味をもっている。この思想はすでにでき上がった資本主義を土台としてのみ発生しえたというようなものではない。･･････今日の資本主義的経済組織は既成の巨大な秩序界（コスモス）であって、･･････この秩序界は彼の経済行為に対して一定の規範を押しつける。製造業者は長期間この規範に反して行動すれば、必ず経済的淘汰を受けねばならないし、労働者もこの規範に適応できず、あるいは適応しようとしない場合には、必ず失業者として街頭に投げ出されるだろう。 (P50-51）このように、経済生活の全面を支配するにいたった今日の資本主義は、経済的淘汰によって、自分が必要とする経済主体-企業家と労働者-を教育し、作り出していく。しかしまた、ほかならぬこの点で、歴史的現象の説明の手段としては、この「淘汰」概念が限界をもつこともわれわれは確認することができる。資本主義の特性に適合した生活態度や職業観念が「淘汰」によって選び出されるーすなわち、その他のものに対して勝利を占めるーことが可能であるためには、そうした生活態度や職業観念があらかじめ成立していなければならず、しかも、それが個々人の中にばらばらにではなく、人間の集団によって抱かれた物の見方として成立していなければならない、ということは明瞭だろう。だからこそ、そうした職業観念の成立がまずもって解明されなければならないのだ。 (P51-52）「資本主義精神」（われわれが想定しているような）は、ベンジャミン・フランクリンの生地（マサチューセッツ）では、とにかく「資本主義の発達」より以前に明白に存在していた（すでに1632年ニューイングランドではーアメリカの諸地方に比べてー人々がとくに利益計算に長じていることに非難が加えられている）のに、たとえば隣接の植民地-のちの合衆国南部諸州-などではそうした精神は比べものにならぬほど未成育の状態にあったこと、しかも、その南部の植民地は、営利を目的として大資本家の手でつくられたものだったのに、ニューイングランドの植民地は、牧師・知識人と小市民・職人・ヨウマン(自営農民)たちの結合によって宗教的な理由にもとづいて生まれてきたものだった。 (P52）資本主義の「精神」と資本主義以前の「精神」の差違はそのような点にあるわけではない。中国の官人（マンダリン）や、古代ローマの貴族、近代では農場地主たちの貪欲は比較に絶したものだ。また、ナポリの馬車屋や船乗り、それに同様の仕事に従っているアジアの人々、いや、南ヨーロッパやアジア諸国の職人たちの金銭欲は、誰でも経験した人は知っているように、イギリスの同様な人々に比べて遥かに徹底的だし、ことに厚顔だ。市民的資本主義の発達が「立ち遅れ」ているー西洋における発展を尺度で計ってのことだがーそうした国々では、営利に際して利己的に振舞う、その絶対的な厚かましさが到るところに見られるというのが、まさしくその独自な特徴だったのだ。工場主は誰でも知っているように、こうした国々(例えばドイツに比べてイタリア)では、労働者の「良心的であること」(conscienziosita)のなさが、資本主義の発達を妨げる主要な原因の一つとなっていたし、今日でもある程度までそうだ。資本主義には、訓練のない《liberum arbitrium》「自由意志」の実行者たちは労働者として役立たないし、また、フランクリンの教訓もはっきり教えているように、およそ厚顔な態度に終始する実業家も役に立たない。だから貨幣を渇望する「衝動」の強弱といったものに資本主義とそれ以前の差異があるわけではない。金銭欲はわれわれの知る限り人類の歴史とともに古い。あとで見るように、金銭欲への衝動にかられて一切をなげうった連中はーたとえば「金儲けのためには地獄へも船を乗り入れて、帆の焼け焦げるのもかまわなかった」あのオランダの船長のようにー決して、近代独自の資本主義「精神」が大量現象としてーこれが重要な点であるー出現する、その源泉となった心情の持ち主ではなかったのだ。どんな内面的規範にも服しようとしない、向こう見ずな営利活動は、実際それが可能でありさえすればどこであれ、歴史上いつの時代にも存在していた。戦争や海賊とおなじく、規範に服することのない自由な商業も、他部族や共同体外の人々との関係では差し支えないものとされていた。「共同体内部」unter Brudern の関係では禁じられていたことも、そうした場合は「対外道徳」Aussenmoralのこととして許されていたのだ。こうして、外面的には、貨幣に類する財貨が知られていて、それをーコムメンダ、徴税請負、国家への貸付、戦争・宮廷・役人たちへの金融などにー使って利潤を獲得する機会が存在しているかぎり、どんな経済組織の場合でも「冒険」としての資本主義的営利活動が見出されたように、内面的にも、倫理の限界をものともしない冒険者的心理が到るところ存在していた。意識的に何のはばかるところもない、利潤追求の無制限かつ意識的厚かましさが、伝統による厳格な拘束と、密接して並存していたことも稀ではなかった。さらに、伝統が破壊され自由な営利活動が多かれ少なかれ社会諸集団の内部にまで浸透しつつあるような場合でも、そうした、新しいものの倫理的肯定や定型化は行われずに、ただ倫理上問題にならぬ、あるいは、喜ぶべきではないがやむを得ないこととして、事実上寛大に扱われているに過ぎないというのが普通だった。これは、あらゆる倫理学説がとっていた通常の立場だったばかりでなく、－この方が本質的には一層重要なのだがー資本主義以前の時代に平均的な人々が実際にとっていた態度でもあった。この場合「資本主義以前」というのは、合理的経営による資本増殖と合理的な資本主義的労働組織がまだ経済行為の方向を決定する支配的な力とはなっていなかった、という意味である。ところで、こうした態度こそ、市民的資本主義経済成立のための前提諸条件に人々が適応しようとするさい、到るところで遭遇することになった内面的障害のうち最強のものの一つだったのだ。 (P53-55）

  2012年11月15日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その３ 道徳のアルファでありオメガとなっているのだ

    　ヤーコプ・フッガー(Jakob Fugger)は、すでに隠退生活に入っているある同業者から同じように隠退するようすすめられ、もう十分に儲けたのだし、他の人々にも儲けさせてやるべきだと言われたとき、この忠告を「無気力」だとしりぞけ、「私はまったく違った考えで、できるあいだは儲けようと思う」と答えたというが、このヤーコプ・フッガーの言葉に表われている「精神」は明白にフランクリンのものとは異なっている。フッガーの場合には商人的冒険心と、道徳には無関係の個人的な気質の表明であるのに対して、フランクリンの場合には倫理的な色彩をもつ生活の原則という性格をおびている。本書では、「資本主義の精神」という概念を、このような独自の意味合いで使うことにしよう。また、その場合、資本主義が近代資本主義であることは言うまでもない。なぜなら、本書で論じようとしているものがもっぱらこの西ヨーロッパおよびアメリカの資本主義だということは、問題の立て方に照らしても自明なことだからだ。「資本主義」は中国にも、インドにも、バビロンにも、また古代にも中世にも存在した。しかし、後にみるように、そうした｢資本主義｣にはいま述べたような独自のエートスが欠けていたのだ。(P44-45）自伝に現われているベンジャミン・フランクリン自身の世にも稀なる誠実な性格だとか、さらには善徳が「有益」だということが分かったのは神の啓示によるので、それによって、神は自分に善をなさしめようとしておられるのだと考えていることに照らしても、そこに示されているものがひたすらな自己中心的な原理の粉飾などでないことは明療だ。そればかりか、この「倫理」の「最高善」（summum bonum）ともいうべき、一切の自然の享楽を厳しくしりぞけてひたむきに貨幣を獲得しようとする努力は、幸福主義や快楽主義などの観点を全く帯びていず、純粋に自己目的と考えられているために、各個人の「幸福」や「利益」といったものに対立して、ともかく、まったく超越的な、またおよそ非合理なとして立ち現われている。営利は人生の目的と考えられ、人間が物質的生活の要求を充たすための手段とは考えられていない。これは、とらわれない立場から見れば、「自然の」事態を倒錯したおよそ無意味なことと言えようが、また資本主義にとっては明白に無条件の基調（ライトモティーフ）であって、その空気に触れない者にはちょっと理解しえないものだ。がまた、同時に、それがたたえている雰囲気は一定の宗教的観念と密接な関連を示している。つまり、なぜ「人からは貨幣をつくら」ねばならないのかと問われれば、ベンジャミン・フランクリンは自伝で、彼自身どの教派にも属しない理神論者であったにもかかわらず、聖書の句（この句は、彼のいうところによると厳格なカルヴィニストの父が青年時代にくり返して教えたものだ）を引用しながらこう答えている、「あなたはそのわざ(Beruf)に巧みな人を見るか、そのような人は王の前に立つ」と。貨幣の獲得は-それが合法的に行われるかぎり-近代の経済組織の中では、職業（Beruf --後段で詳細な説明があるように、この原語は職業の意味と神から与えられた使命という意味とを含んでいる-訳者）における有能さの結果であり、また現われであって、こうした有能さこそが、もう容易に分かるように、フランクリンの前掲の文章だけではなく全著作に一貫して見られる。彼の道徳のまさしくアルファでありオメガとなっているのだ。 (P47-48）

  2012年11月15日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その２

      「イギリス及びアメリカにおけるピューリタニズム」の『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』（大塚 久雄 訳，岩波文庫）からの摘出（以下、ページは岩波文庫による）『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』からイギリス及びアメリカにおけるピューリタニズムと資本主義の精神について引き続いて摘出する。  2. 資本主義の精神 この研究の表題には、「資本主義の精神」というやや意味深げな概念が使われている。この言葉はいったい、どういう意味に解すべきなのか。（P38）われわれは、問題の「精神」をものがたっている一史料をとり、説明の手がかりにしようと思う。この史料は、さしあたってそのような資本主義の「精神」を、ほとんど古典的と言いうるほど純粋に包含しており、しかも同時に宗教的なものとの直接の関係をまったく失っているためにーわれわれの主題にとってはー「予断が入らない」という長所をもっている。「時は貨幣だということを忘れてはいけない。一日の労働で１０シリングをもうけられる者が、外出したり、室内で怠けていて半日を過すとすれば、娯楽や懶惰のためには６ペンスしか支払っていないとしても、それを勘定に入れるだけではいけない。ほんとうは、そのほかにも５シリングの貨幣を支払っているか、むしろ捨てているのだ。　信用は貨幣だということを忘れてはいけない。だれかが、支払い期日が過ぎてからもその貨幣を私の手もとに残しておくとすれば、私はその貨幣の利息を、あるいはその期間中にそれでできるものを彼から与えられたことになる。もし大きい信用を十分に利用したとすれば、それは少なからぬ額に達するだろう。　貨幣は繁殖し子を生むものだということを忘れてはいけない。貨幣は貨幣を生むことができ、またその生まれた貨幣は一層多くの貨幣を生むことができ、さらに次々に同じことがおこなわれる。５シリソグを運用すれば６シリソグとなり、さらにそれを運用すると７シリング３ペンスとなり、そのようにしてついには１００ポンドともなる。貨幣の額が多ければ多いほど、運用ごとに生まれる貨幣は多くなり、利益の増大はますます速くなっていく。一頭の親豚を殺せば、それから生まれる子豚を１０００代までも殺しつくすことになる。五シリングの貨幣を殺せば、それでもって生みえたはずの一切貨幣-数十ポンドの貨幣を殺し（！）つくすことになるのだ。　支払のよい者は他人の財布にも力をもつことができる-そういう諺があることを忘れてはいけない。約束の期限にちゃんと支払うのが評判になっている者は、友人がさしあたって必要としていない貨幣を何時でもみな借りることができる。　これは時には大変役に立つ。勤勉と質素は別にしても、すべての取引で時問を守り法に違わぬことほど、青年が世の中で成功するために役立つものはない。それゆえ、借りた貨幣の支払いは約束の時間より一刻も遅れないようにしたまえ。でないと、友人は失望して、以後君の前では全く財布を開かぬようになるだろう。　信用に影響を及ぼすことは、どんなに些細なおこないでも注意しなければいけない。朝の５時か夜の８時に君の槌(つち)の音が債権者の耳に聞えるようなら、彼はあと６カ月延ばしてくれるだろう。しかし、働らいていなければならぬ時刻に。君を玉突場で見かけたり、料理屋で君の声が聞えたりすれば、翌日には返却してくれと、準傭もととのわぬうちに全額を請求してくるだろう。　そればかりか、そのようなことは、君が債務を忘れていない印となり、また、君が注意深いだけでなく、正直な男であると人に見させ、君の信用は増すことになろう。　自分の手もとにあるものがみな自分の財産だと考え、そんなやりかたで生活しないよう気をつけなさい。信用を得ている人々が多くこの間違いをやる。そうならぬように、長きにわたって支出と収入も正確に記帳しておくのがよい。最初に骨折りを惜しまず小さなことまで書き記すようにすると、こういうよい結果が生まれるだろう。どんなに小さな支出でも積み重なれば巨額となることに気づくし、また何を節約できたか、将来は何を節約すべきかが分かるようになる。･･････　君の思慮深さと正直が人々に知られているとすれば、年々６ポンドの貨幣を１００ポンドにも働かせることができるのだ。毎日１０ペンス無駄使いすれば１年では６ポンド以上無駄使いすることになり、ちょうど１００ポンドを借りるための代価となるのだ。自分の時間を毎日１０ペンスの価値に当たるだけ（おそらく数分に過ぎぬだろう）無駄にすれば、１年には１００ポンドも使える特権を無駄にしてしまったことになる。５シリングの価値に当たる時問を無駄便いすれば５シリングを失い、５シリングを海に投げ捨てるのと少しも変わらない。５シリングを失えば、その５シリングだけではなくて、取引にまわして儲けることができたはずのその金額も全部失ってしまったことになる。-そうした額は、青年が年配となるまでには、そうとう大きいものになるだろう。」　以上のような言葉･･････で、われわれに説教しているのは、ベンジャミン・フランクリンなのだ。彼の口から特徴ある話法で語られているものが「資本主義の精神」だということは、･･････やはり誰も疑いを挟まないだろう。（P40-43） そこでわれわれはもう少しこの文章について考えてみることにしたい。･･････その顕著な特徴だと感ずるものは、信用のできる立派な人という理想、とりわけ、自分の資本を増加させることを自己目的と考えるのが各人の義務だという思想だ。実際この説教の内容は単に処世の技術などではなくて、独自な「倫理」であり、これに違反するものは愚鈍というだけでなく、一種の義務忘却だとされている。しかも、このことが何にもましてことがらの本質をなしている。･･････そこには一つのエートス(Ethos)が表明されているのであって、このエートスこそがわれわれの関心をよび起こすのだ。 （P43-44）

  2012年11月15日

• ピューリタニズムの倫理　「プロ倫」抜粋　その１

    「イギリス及びアメリカにおけるピューリタニズム」の『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』（大塚 久雄 訳，岩波文庫）からの摘出（以下、ページは岩波文庫による）『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』からイギリス及びアメリカにおけるピューリタニズムと資本主義の精神について摘出してみよう。「第１章　問題　1. 信仰と社会層分化」カルヴィニズムは16世紀にはジュネーブとスコットランドを支配し、16世紀末から17世紀にかけてはネーデルランドと、一時はイギリス本国も支配した。（P18）経済的発展の進んでいた国々の人々、･･････とくに当時経済生活において興隆しつつあった市民的中産階級がピューリタニズムの、かつてその比をみないほどの専制的支配を受け入れたのは、いったいなぜだったのか。しかも彼らが･････カーライルが"the last of our heroisms"（わが英雄主義の最後のもの）といったのが誤りでないように、市民的階級そのものにとってほとんど空前絶後ともいうべき英雄的行動を示したのは、いったいなぜだったのか。（P19）事実は次のとおりだ。プロテスタント（なかでも後に論及する信団（ゼクテ）のあるもの）は支配的社会層であるときにも被支配的社会層であるときにも、また多数者の地位にあるときにも少数者の地位にあるときにも、特有な経済的合理主義への愛着を示してきたが、カトリック信徒のばあいは、前者の立場にあるときにも後者の立場にあるときにも、そうした経済的合理主義への愛着を見ることができなかったし、今日でも見ることができないのだ。そうだとすると、こうした生活態度の上に見られる相違の原因は、主として、それぞれの信仰の恒久的な内面的特質の中に求められるべきであって、その時々にそれらがおかれている外面的な歴史的政治的状況だけに求められるべきではないということになる。（P24-25）イギリス・オランダ・アメリカのピューリタンたちは周知のように、「世のたのしみ」とはおよそ正反対の特徴をおびていた。しかも、その「世のたのしみ」とは正反対のものこそが、実は後に説明するように、彼らの諸特徴のうちでわれわれの問題にとってもっとも重要なことがらのひとつとなってくるのだ。（P27-28）一方の非現世的、禁欲的で信仰に熱心であるということと、他方の資本主義的営利生活に携わるということと、この両者は決して対立するものなどではなくて、むしろ逆に、相互に内面的な親和関係にあると考えるべきではないか（P29）練達な資本主義的事業感覚と、全生涯を貫き支配する、この上なく強烈な形態の信仰とが、同一の個人ないし集団のうちに同時に存在する場合で、しかも、このような事実が決して孤立したものではなくて、むしろ、歴史上重要な役割を演じたプロテスタントの教会や信団（ゼクテ）、それらの集団のすべてにわたってまさしく顕著な特徴となっているのだ。とりわけカルヴィニズムは、その登場した一切の場合に、こうした結びつきを示している。（P30）一層はっきりしているのはーこれも一応記憶にとどめておくだけでよいがープロテスタント諸派のうちでもとくに「非現世的なこと」が富裕なこととともに諺のようになっている信団（ゼクテ）、わけてもクウェーカーとメノサイトの場合に、宗教的な生活規制が事業精神の高度な発達と結合しているということだ。（P32）次の一事は明瞭に示されているからだ。すなわち、「労働の精神」とよぶにせよ、「進歩の精神」とよぶにせよ、名称はともかくとして、通例プロテスタンティズムによって喚起されたと考えられているそうした精神は、今日一般に考えられているように「現世のたのしみ」を意味するとか、その他およそ「啓蒙主義的」な意味合いに理解されてはならない。（P33）モンテスキューはイギリス人についてこう言っている（「法の精神」第20巻第7章）、彼らは「信仰と営業と自由、この三つの重要なことがらについては世界のいかなる国民よりもはるかにまさっている」と。思うに、彼らが営利活動の領域で卓越していたということはーまたこれとは別の関連に属するが、彼らが政治上の自由な諸制度を作り上げていく資質をもっていたということもまたーモンテスキューが彼らに認めた信仰の最高記録とおそらく関連をもっていたのではないのか。（P33）

  2012年11月15日

• フランクリン自伝　その21

  この小さい手帳には題句としてアヂソンの「カトー」の一節を書いておいた。　　我はここを守らん。　　造化の妙なるによりて　　ものみなの高らかに告ぐること、　　われらが上に、まこと、　　神のましまさば、　　神は徳をこそよみしたわめ。　　さて、神のよみしたまうもの、　　幸いならざらんや。もう一つはキケロの言葉からとった。　　「おお、人の世の道しるべなす学問よ！徳を求めて倦まず、諸々の悪徳を駆逐する学問よ！汝の国に従い有徳に過ごせる一日は、罪に包まるる永生に勝れり」This my little book had for its motto these lines from Addison's Cato:"Here will I hold. If there's a power above us (And that there is all nature　cries aloud Thro' all her works), He must delight in virtue; And that which　he delights in must be happy."Another from Cicero,"O vitae Philosophia dux! O virtutum indagatrix expultrixque vitiorum! Unus　dies, bene et ex praeceptis tuis actus, peccanti immortalitati est　anteponendus."Another from the Proverbs of Solomon, speaking of wisdom or virtue:"Length of days is in her right hand, and in her left hand riches and　honour. Her ways are ways of pleasantness, and all her paths are peace."iii. 16, 17.

  2012年09月09日

• フランクリン自伝　その20 一隅ずつ片付け、その隅が終わってから次に移る

  私は次々にこれらの徳の一つをその週の課題として厳重に注意することに決めた。で、最初の１週間は、いやしくも摂生に反する行為のないように、深い注意を払うことにし、他の徳は平常通りにしておき、ただ毎晩その日の過失を書き込むことにしたのである。このようにして、もし第１週中、摂生と記した第一行に黒点がつかなければ、この徳の習慣は非常に強められ、反対に不摂生の癖は弱められたので、こうなれば注意を広げて他の徳に及ぼし、次の週には両方の行とも黒点なしにすることも出来ると私は考えた。こうして最後まで進んで行くと、１３週間で全コースを一回りし、一年には４回繰り返すことが出来る。庭の草むしりをする男は、雑草を一度にとり尽くそうなどとはしない、というのは力及ばぬことだからで、一回に一隅づつかたづけ、その隅が済んでからつぎ次へと移るものであるが、私もこの男のように、順々に黒点を各行から消して行って、各ページに現れる徳の進歩の跡を見て、心を励まし、何回も繰り返しているうちに、遂には１３週間日々検査しても手帳には黒点一つつかないというようになりたいものだと思った。I determined to give a week's strict attention to each of the virtues　successively. Thus, in the first week, my great guard was to avoid every the　least offence against Temperance, leaving the other virtues to their　ordinary chance, only marking every evening the faults of the day. Thus, if　in the first week I could keep my first line, marked T, clear of spots, I　suppos'd the habit of that virtue so much strengthen'd and its opposite　weaken'd, that I might venture extending my attention to nclude the　next,and for the following week keep both lines clear of spots. Proceeding　thus to the last, I could go thro' a course compleat in thirteen weeks, and　four courses in a year. And like him who, having a garden to weed, does not　attempt to radicate all the bad herbs at once, which would exceed his reach　and his strength, but works on one of the beds at a time, and, havingaccomplish'd the first, proceeds to a second, so I should have, I hoped, the　encouraging pleasure of seeing on my pages the progress I made in virtue, by　clearing successively my lines of their spots, till in the end, by a number　of courses, I should he happy in viewing a clean book, after a thirteen　weeks' daily examination.☆「庭の草むしりをする男は、雑草を一度にとり尽くそうなどとはしない、というのは力及ばぬことだからで、一回に一隅づつかたづけ、その隅が済んでからつぎ次へと移るものである」というのと同じようなことを尊徳先生が言われている。いわゆる天理を人事に応用し適用する方法である。 【２８】翁曰く、何事にも変通といふ事あり、しらずんばあるべからず、則ち権道（けんだう）なり、夫（そ）れ難きを先にするは、聖人の教へなれども、是は先づ仕事を先にして、而して後に賃金を取れと云ふが如き教へなり、爰（ここ）に農家病人等ありて、耕し耘（くさぎ）り手後れなどの時、草多き処を先にするは世上の常なれど、右様（みぎやう）の時に限りて、草少く至つて手易き畑（はた）より手入して、至て草多き処は、最後にすべし、是尤も大切の事なり。至て草多く手重（ておも）の処を先にする時は、大いに手間取れ、其の間に草少き畑も、皆一面草になりて、何（いづ）れも手後れになる物なれば、草多く手重き畑は、五畝（せ）や八畝は荒（あら）すとも侭（まゝ）よと覚悟して暫く捨て置き、草少く手軽なる処より片付くべし。しかせずして手重き処に掛り、時日を費す時は、僅の畝歩の為に、総体の田畑、順々手入れ後れて、大なる損となるなり、国家を興復するも又此の理なり、しらずんばあるべからず。又山林を開拓するに、大なる木の根は、其侭差し置て、回りを切り開くべし、而して三四年を経れば、木の根自ら朽ちて力を入れずして取るゝなり、是を開拓の時一時に掘取らんとする時は労して功少し、百事その如し、村里を興復せんとすれば、必ず抗する者あり、是を処する又此理なり、決して拘（かゝ）はるべからず障（さは）るべからず、度外に置（お）きてわが勤を励むべし。【２８】尊徳先生はおっしゃった。何事にも変通という事がある。知っておかなくてはならない。すなわち権道（けんどう：正しいとはいえないが目的達成のために便宜的にとる手段。方便）である。困難であることを先にすることは、聖人の教えであるけれども、これはまず仕事を先にして、それから後に賃金を取れというような教えである。ここに農家に病人等があって、耕し草刈りが手後れになった場合、草が多いところを先にすることが世上の常であるけれども、このような時に限っては、草が少なく、かえって手をつけやすい畑から手入れをして、草が多いところは、最後にするべきである。これが最も大切な事である。いたって草が多く手重のところを先にする時には、大変手間取ってしまい、その間に草の少ない畑も、皆一面草になって、どちらも手後れになるものであるから、草が多く手重い畑は、五畝（せ）や八畝（せ）は荒してしまっても「ままよ」と覚悟をして暫く捨ておいておき、草が少なく手軽なところからかたづけるべきである。そうしないで手のかかるところにかかって、時日を費やす時は、僅かの畝歩のために、全体の田畑が、順々に手入れがおくれて、大変な損となるのである。国家を復興するのもまたこの理である。知っていなくてはならない。また山林を開拓するのに、大きな木の根は、そのまま差し置いて、回りを切り開くがよい。そして３，４年を経るならば、木の根が自ら朽ちてしまい力を入れないで取れるものである。これを開拓の時に一時に掘り取らんとする時は労多くして功は少ない、百事そのようである。村里を復興しようとすれば、必ず抵抗する者がある。これを処する、またこの理である。決してかかわってはいけない。障（さは）ってはいけない。度外において自分の勤めを励むがよい。　

  2012年09月04日

• マックス・ウェーバー入門　牧野雅彦著（平凡社文庫）2 　ゾンバルト＆ベロウ

    ユダヤ人と資本主義の精神•     どこから資本主義の精神は生まれたのかについて、ゾンバルトは次のような推測は成り立つという。すなわち資本主義の精神が、本来手段であるべき貨幣を自己目的とするような、およそ人間のまっとうな経済生活のあり方からすれば倒錯した精神であるとするならば、そうした精神の持ち主は、おそらく経済活動以外に貨幣を獲得するような権力手段を持たない人々、およそ財産や身分を持たない平民的性格のものであろう。かれらは冷静な計算によって、貨幣から貨幣を作り出す本能的な感覚を備えていなければならない。そうであるとすれば、比較的上層の小商人や高利貸しといった人々のうちにそうした精神の担い手を存在するにちがいない、と。•     そこで、中世ヨーロッパで高利貸しや商業に携わることの多かったユダヤ人が資本主義の精神の生成に大きな役割を果たしたのではないか、という問いにゾンバルトは消極的に回答する。最盛期のイタリアの中世都市でもユダヤ人の数はそうれほど多くはなかった。ヴェニスはゲットーが最初に作られたが、他の都市には小規模な共同体が存在したにとどまる。資本主義の精神の形成にあたって、ユダヤ人の意義を過大に評価することはできない、と。•     ゾンバルトは「近代資本主義」初版の段階では、ユダヤ人と資本主義の精神の関連については消極に解していた。それでは何が資本主義の精神の形成に決定的な寄与をしたのかという問いに対しては明確な回答を与えていない。ただし、資本主義を推進するのに一番ふさわしい精神構造、行動様式を持った人々がユダヤ教徒たちと見ていた。 ベロウ「近代資本主義の成立」•     近代資本主義の起源をめぐるゾンバルトの問題提起に対して最初に批判したのは、ゲオルグ・フォン・ベロウの論文「近代資本主義の成立」（1903年）でした。ベロウは、歴史家として、歴史学派経済学の発展段階論について批判を行っていたが、この論文もそうした批判の一環でした。•     ベロウはまず、資本形成とその担い手をめぐるゾンバルトの議論を批判します。ゾンバルトは資本蓄積の源泉をおもに中世商人の商業利潤からではなく、封建的土地所有者の地代収入からの移転に求め、都市在住の貴族や門閥などがそうして蓄積された新たな富の担い手となると想定している。かれらは手工業的な性格をもつそれまでの中世商人の系譜から全く断絶した「新しい富者」で有るとゾンバルトいうが、そうした存在を確認する証拠を提出していない。•     ゾンバルトが注目する資本主義の精神についてもベロウは否定的で、「新たな富者」がおそらくはそれまでの商人の系譜からの断絶として出現したのではないように、かれらが担うという新しい精神なるものも、まったくの突然変異としてこの世に生まれてきたわけではなく、それまでの歴史的・精神的系譜の延長上にあると考えるべきであろう。いずれにせよ近代資本主義のような歴史的現象とその成立要因を検討するためには、おそらくそれに関与したであろう個別具体的なさまざまな条件を考慮に入れなければならない。単一の原因に帰することはできない。ゾンバルトは中世ヨーロッパにおいて第資産の形成に影響したと考えられる諸原因、人口増加、技術、政治的状況等々、そのほとんどすべてを検討している。だがそれにもかかわらず彼は「究極単一の原因」を追求するという、経済学者としての理論志向が災いして問題の核心をとらえそこねている。これが歴史家ベロウの立場からする批判点でした。 •     歴史家ベロウはこの問題に対して、中世ヨーロッパにおける大資本の形成についてはゾンバルトがあげたさまざまな原因がいわば並行して関与したとみなければならないし、そうした複合的な諸要因の間にもし軽重の度合いをつけなければならないとするならば、それがゾンバルトが下した結論とは正反対になるだろう。ゾンバルトが重視した地代収入からの移転というような要因は、むしろ関節的なものにとどまる。ゾンバルトのいうように都市在住の貴族や門閥の地代収入がかりに大きな意味を持つとすれば、それはまさに市場としての都市の商業・工業の収益がその基盤にあると考えなければならない。•     さらにベロウは問い掛ける。そもそも近代資本主義の形成のために大量の資本蓄積はどこまで必要だったのだろうか。ゾンバルトは近代資本主義の成立のためには大量の貨幣財産が中世都市とその周辺において蓄積されることが必要であると想定して、その所在をあれこれと探し求めてきたけれども、そうした前提そのものが誤っていたのではなかったのか。砂粒が積み上げられて山となることもある。たとえ最初は規模は小さくても、手工業的な小商人を担い手とする商品経済の展開の中から、資本主義的な経営とその担い手とは形成されてきたと考えるべきではないか。これがベロウの問題提起でした。

  2012年08月27日

• マックス・ウェーバー入門　牧野雅彦著（平凡社文庫） 1

    マックス・ウェーバー入門　牧野雅彦著（平凡社文庫） ７「資本主義の精神」の起源抜粋 ゾンバルト『近代資本主義』初版 • １９０２年ウェルナー・ゾンバルト（1863-1941）の『近代資本主義』の初版が出された。１９１６年の改訂版では、ウェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』に対する反論をこめて、大幅に変更を加えられ、ほとんど別の書物のようになっている。•     ゾンバルトは『近代資本主義』の序論で、その理論的立場を次のように説明する。社会現象の因果的な解明は、現実の生きた人間を突き動かしている起動力としての動機にまでさかのぼって説明しなければならない。その場合の動機の解明とは、具体的な歴史的世界におけるそれでなければならない。したがって本書の課題は、まさにヨーロッパ中世世界の中でかたちづけられる独特の資本主義精神の探求にある、と。•     ゾンバルトはまず、資本主義の源泉を問題にします。ヨーロッパ中世の都市経済は、不特定多数のための消費者のための生産ではなく、個別具体的な顧客のために生産するという手工業的な性格をもっている、というのがビュッヒャーの「都市経済」の性格規定でした。中世の商品経済がその範囲において限定されていたとするならば、商業利潤だけから十分な資本が蓄積されるということは考えられない。そうであれば、資本家はどこから経営のための貨幣を獲得したのか。•     ゾンバルトはローマ教皇の財政、君主の資産形成、イタリア諸都市の財政など、中世の大規模な貨幣財政の形成について具体的に検討した上で、近代に入って資本家となっていく都市のブルジョワジーの相当部分が、もともと都市へ居住するようになった貴族や都市門閥であり、彼らの資産の大部分は封建的な土地所有からの地代収入に依拠しているのであると。いわば都市へ移転された封建的地代が資本蓄積の源泉なのであって、中世の手工業的な商業の利潤からきたものではないとゾンバルトはいう。 資本主義の精神とプロテスタンティズム •    しかし貨幣経済はそれだけでは資本とならない。貨幣を運用して利潤を生み出してはじめてそれは資本となる。問題は蓄積された貨幣資産を資本として運用する「精神」との結合です。「資本主義の精神」とは何か？それは貨幣獲得を自己目的とする精神、つまり何らかの需要充足のための手段として貨幣を求めるのではなく、より多くの貨幣の獲得を自己目的として、しかもそれを経済の日常的な営みとして推進するという精神である。需要充足をまず第一の目的としていたそれまでの人間の経済生活からすれば、まったく倒錯したそのような観念はいったいどこからどのようにして生れてきたのか。このようにしてゾンバルトは、資本主義の精神とその起源という問題を提起したのです。•     ただしゾンバルトは厳密には「資本主義の精神」ではなく「資本主義精神」ないし「資本家的精神」にあたる言葉が使われていてこの点がウェーバーとの重要な相違であると大塚久雄氏が強調されているところです。 •     ゾンバルトが問題にしているのは、抽象的な貨幣獲得欲一般ではない。貨幣への欲望、貨幣の獲得のための営みそのものは商品経済とともに古くから存在していた。そうした貨幣獲得欲一般ではなく、中世ヨーロッパ世界という歴史的具体的環境の中で形成されてくる独特の資本主義の精神は、いったいいかなる原因によってきたのか。これがゾンバルトの問題設定でした。 •     ヨーロッパという特定の地理的・歴史的環境世界における自然的・人種的要因や文化的社会的要因がどのようにそれに関与したかが問題となります。 •    まず人種的要因について、ゾンバルトはヨーロッパ民族の人種的素質が経済の発展に大きく関与したのは間違いないとしながらも、いわゆる人種的要因にその決定的原因を求めるということについては、少なくてもこの書物の中では否定的です。そうした要因を社会現象の説明に利用するということは、本来探求されるべき原因結果の関連の捜査を途中で打ち切るような要因をまず探求しなければならない。 •     そこで次に浮かび上がってくるのが、そうした観念の成立に何らかの文化的条件、とりわけ宗教的な条件が関与したのではないかということです。ウェーバーが取り組んだプロテスタンティズムと資本主義の精神との関連についてゾムバルトはこう述べています。改革派の信徒たちが資本主義の発展を促進するにあたって重要な役割を果たしたという事実は、すでにあまりにもよく知られていることであって、それ自体は問題ではない。むしろこの点についてはさらにその理由、すなわちなぜ、いかにしてプロテスタンティズムが資本主義の精神の形成に関与したのかが探求されなければならない、と。ウェーバーの論文は、まさにこの課題に答えるものでした。 •     しかしゾンバルトは言葉を続けます。プロスタンティズムと資本主義の精神の因果関係は、自分の見る限りではまさに逆であって、プロテスタンティズムが資本主義の精神の原因になったというよりは、むしろ近代資本主義の発展の結果としてプロテスタンティズムの思想とその興隆は起こったとみるべきである、と。

  2012年08月26日

• フランクリン自伝　その19 　１３徳　1. TEMPERANCE　2. SILENCE　3. ORDER　4. RESOLUTION　5. FRUGALITY　6. INDUSTRY　・・・

  私が今までに読んだ本には、いろいろの種類の道徳が列挙してあったが、その目録に載っている徳の数は多いのもあれば少ないのもあった。それは著者によって同じ名前を用いながら、その内容する意義には広狭の別があったからである。例えば、節制の徳は、これを飲食に限っている著者もあれば、その意味を広めて、あらゆる快楽、食欲、性癖、性欲、激情、その他貪欲や野心までも含めて、これらのものを適宜に節することだとする人々もある。私自身は明確を期するために、少数の名前に種々の意味を含ませるよりも、多くの名前に分類して、その各々の含む意義は狭くしようと考えた。そこで私はその頃自分に必要でもあり、又望ましくも思われたすべての道徳を１３箇の名前に含めてしまい、その各々に短い戒律を付けたが、それにはその徳の範囲がはっきりと現れている。In the various enumerations of the moral virtues I had met with in my　reading, I found the catalogue more or less numerous, as different writers　included more or fewer ideas under the same name. Temperance, for example,was by some confined to eating and drinking, while by others it was extended　to mean the moderating every other pleasure, appetite, inclination, orpassion, bodily or mental, even to our avarice and ambition. I propos'd to　myself, for the sake of clearness, to use rather more names, with fewer　ideas annex'd to each, than a few names with more ideas; and I included　under thirteen names of virtues all that at that time occurr'd to me as　necessary or desirable, and annexed to each a short precept, which fully　express'd the extent I gave to its meaning.その徳の名前及び戒律は左の通りである。１　節制　飽きるほど食べることなかれ。酔うまで飲むなかれ。２　沈黙　自他に益なきことを語ることなかれ。駄弁を弄するなかれ。３　規律　物はすべて所を定めて置くべし。仕事はすべて時を定めて為すべし。４　決断　為すべきことを為さんと決心すべし。決心したことは必ず実行すべし。５　節約　自他に益無きことに金を費やすなかれ。即ち浪費するなかれ。６　勤勉　時間を浪費することなかれ。常に何か益ある事に従うべし。無用の行いはすべて断つべし。７　誠実　詐りを用いて人を害することなかれ。心事は無邪気に公正に保つべし。口に出すこともまたしかるべし。８　正義　他人の利益を毀損しあるいは与うべきを与えずして人に損害を及ぼすべからず。９　中庸　極端を避くべし。顧みて我に罪ありと思わば、人の非難と不法を忍ぶべし。10        清潔　身体、衣服、住居に不潔のあとを存せしむべからず11        平静　小事、日常茶飯事、又は避け難き出来事に平静を失うことなかれ。12        純潔　性交は健康や子孫を残すために稀に行うべし。鈍さや弱さになって菜ならない。自分と他人の平和や評判を傷つけることなかれ。13        謙譲　イエスやソクラテスに見習うべしThese names of virtues, with their precepts, were1. TEMPERANCE. Eat not to dullness; drink not to elevation.2. SILENCE. Speak not but what may benefit others or yourself; avoidtrifling conversation.3. ORDER. Let all your things have their places; let each part of yourbusiness have its time.4. RESOLUTION. Resolve to perform what you ought; perform without fail whatyou resolve.5. FRUGALITY. Make no expense but to do good to others or yourself; i.e.,waste nothing.6. INDUSTRY. Lose no time; be always employ'd in something useful; cut offall unnecessary actions.7. SINCERITY. Use no hurtful deceit; think innocently and justly, and, ifyou speak, speak accordingly.8. JUSTICE. Wrong none by doing injuries, or omitting the benefits that areyour duty.9. MODERATION. Avoid extreams; forbear resenting injuries so much as youthink they deserve.10. CLEANLINESS. Tolerate no uncleanliness in body, cloaths, or habitation.11. TRANQUILLITY. Be not disturbed at trifles, or at accidents common orunavoidable.12. CHASTITY. Rarely use venery but for health or offspring, never todulness, weakness, or the injury of your own or another's peace orreputation.13. HUMILITY. Imitate Jesus and Socrates.

  2012年08月25日

• フランクリン自伝　その18 　この目的のために私は次のような方法を試みた For this purpose I therefore contrived the following method　

  私が道徳的完成への到達という不敵な、熱烈な望みを立てたのはこの頃であった。私はいかなる時にも過ちを犯さずに生活し、生まれながらの性癖や、習慣や、あるいは交友のために陥るような過ちは、すべて克服してしまいたいと思った。自分は何が善で何が悪かをは分かっている。あるいは分かっていると思っているのだから、常に善を為し、悪を避けることができない訳はないと考えたのである。しかし、やがて私は思ったよりずっと困難な仕事に手をつけたのだということに気がついた。一つの過ちに陥らぬように気をつけて用心していると、思いがけず、他の過ちに襲われることがよくあったし、うっかりしていると習慣が首を出して来るし、性癖の方が強くて理性では抑えつけられないこともちょくちょくあるという始末である。とうとう私は次のような結論に達した。即ち「完全に道徳を守ることは、同時に我々の利益である」というような単に思弁的な信念のみをもっては到底過失を防ぐことはできない。確実に不変に、常に正道を踏んで違わないという自信を得るためには、まずそれに反する習慣を打破し、良い習慣を作ってこれを不抜のものとしなければならないというのである。そこで、この目的のために私は次のような方法を試みた。It was about this time I conceiv'd the bold and arduous project of arriving　at moral perfection. I wish'd to live without committing any fault at any　time; I would conquer all that either natural inclination, custom, or　company might lead me into. As I knew, or thought I knew, what was right and　wrong, I did not see why I might not always do the one and avoid the other.But I soon found I had undertaken a task of more difficulty than I bad　imagined. While my care was employ'd in guarding against one fault, I was　often surprised by another; habit took the advantage of inattention; inclination was sometimes too strong for reason. I concluded, at length,that the mere speculative conviction that it was our interest to be completely virtuous, was not sufficient to prevent our slipping; and that the contrary habits must be broken, and good ones acquired and established,before we can have any dependence on a steady, uniform rectitude of conduct.For this purpose I therefore contrived the following method.

  2012年08月24日

• 「世界史概観」ランケ 3

   　このころイギリス人は既に東インドの大半を征服し終わっており、したがって彼らにとっては東インド会社を通じて安価な茶を得ることが容易になっていた。かくて彼らはこの茶に対して、それが以前よりは高価にならない程度の税を課し、これを北アメリカに船で送り、その際に北アメリカ人はこの茶を、それに課せられた税と共に購買すべきことを求めた。しかし、北アメリカ人は既に激増しており、ボストンの茶船襲撃事件を通じて、反乱の第一軍が切っておとされた。この事は無論イギリスにおいて極度の憤激をまき起し、王はボストン港を閉鎖し、北アメリカ人を武力で恭順状態に復せしめようと決心した。王と議会とは相互に一段とかたく結合したのであるから、今やアメリカの運動は王に対しても向けられることとなり、北アメリカ人はいよいよイギリス国憲法中の民権的諸原理に傾倒するに至った。　１７７５年戦争は勃発した。しかしこの戦争たるや、もし北アメリカ人にして依然としてイギリス主権の下にとどまるならば、それを遂行してゆくことは不可能であった。ここにおいて北アメリカ人が共和主義的傾向を顕揚し、かの記念すべき、世界史にとって最も意義深い事件は生じたのである。北アメリカ人の所信はむしろ自分たちは個人としてもはやイギリスにおいて作成された法律には拘束されないというにあった。さればこそ、彼らはイギリス憲法中それが純粋に代議的なものとして現れているところの諸契機をつかみ、各々自己の代表されないような政府には反抗する権利を有すると考えた。かかる代議観念から共和制へはただ一歩を余すのみであって、この一歩は事実踏み出された。かくして同じくイギリス国民に属する２団体間の闘争、共にイギリス国憲法に根ざす２傾向すなわち君主主義的傾向と民主主義的傾向の闘争となった。・・・　北アメリカ人がイギリス国において行われた憲法原理より離脱して、各人の個人的権利に基く新しい共和国を創設したことにより、一個の新しい勢力が世界に入って来た。けだしそれぞれの理念は、それが一定の、自己にふさわしい表現を見出した場合において最も急速に波及するものであるからである。かくていまやこのラテン風ゲルマン風世界の中に共和主義的傾向がはいってくることとなった。 ☆　台湾における日本人で現在評価されているのが八田與一である。嘉南平野に百年ダムを造り不毛の地を豊かな穀倉地帯へと変えて現在でも現地の人々に感謝されている。　その事業を調べると、何か高貴な（ノーブル）ものを感ずるのは私だけだろうか。　そしてそれは鈴木藤三郎の一生を通じての「報徳の精神」にも通ずる。　鈴木藤三郎は米欧旅行のとき、ヨーロッパの偉人になにか二宮尊徳翁と同じ空気を吸っているようにも思われるのでそれを解明したいという密かな思いを抱いてアメリカ、イギリス、ドイツと視察して回った。　藤三郎は結局それは「推譲」であるとした。　八田與一の事業については、日本人精神とか武士道とも解釈されている。　しかしその経歴を調べると、東京大学工学部教授だった広井勇にたどりつく。　広井教授は八田だけでなく、多くの優れた土木技術者を世に送り出した。　その教えは「民のためになる土木技術」である「人類のための仕事」である。　そこで広井勇の経歴をたどると、札幌農学校時代のニュー･イングランドからもたらされたキリスト教信仰にたどりつく。それはキリスト教でも教会によらず聖書によるプロテスタントの信仰であった。それはイギリスのピューリタン革命に遡る。広井勇はそのうち「善き業による福音」のキリスト教色を消して、「民に役立つ土木技術、人類のための仕事」という「精神」を日本の土木技術者に注入したようにも思われる。そこでその原点ともいうべき　クロムウェル伝と天路歴程を延々と原典に即してブログに登載しているというわけである。明治時代多くの洋書が日本語に訳された。その時代のものは現代となってはとても読みづらくなっている。手紙の文体も候文であり、まるで江戸時代のごとくである。ところが現代文に訳されていないので、すこしばかり読みやすくしてウェブ化するのもまた意味のあることだとも思う。日本の近代化を考える上で、プロテスタンティズムのキリスト者の果した役割は考えられている以上に大きいのではないか。ある意味、台湾にはその「人類のための仕事」と「報徳の精神」の記念碑的仕事が残されているといえるのかもしれないと。 英語の基本文献・史料はおおむねインターネットで検索し入手できる。ところが日本語の分野はとても遅れていて、せいぜい青空文庫と国立国会図書館のデジタル文庫が役立つくらいで、国際語となった英語のインターネット環境に比べて大変遅れている。二宮尊徳全集も全文ウェブ化するくらいのことは実現していてもおかしくはないと個人的には思う。ある意味、現代報徳人の怠慢といえなくもない。鈴木藤三郎も忘れ去られていた。報徳の観点からいうと、報徳の思想が農業だけではなく、全ての産業に適用できることをその生涯を通して証明した。しかも報徳に発明・工夫・改良を導入した点でも画期的であろう。「鈴木藤三郎伝」鈴木五郎著の後書きに言う。「楫西光速教授は『産業史の人々』の中で、『鈴木藤三郎こそは、わが国の産業革命を、庶民から出て、しかも自分の発明を基盤として本格的にやり遂げた唯一の人である』と激賞している」と。その人生と考え方を学び、生かすことは　世界と未来の人々にとって有意義なことと信ずる。  

  2012年07月15日

• 「世界史概観」ランケ ２

    P254北アメリカの革命アメリカ諸州のイギリスよりの離反に際して支配的な理念は何であったか。この理念の抽象とは一体いかなるものか。われわれは、ゲルマン的＝海上的な、そして議会的な原理がイギリスにおいて発展した後に、この国は従前よりのスペイン植民地に対抗して他の植民地を北アメリカにおいて樹立したことを想起する必要がある。これらの植民地の多くは、主として支配的なアングリカン・チャーチ（英国国教会）より排斥されたカトリック教徒や新教徒などの諸宗派により、イギリスの従来の傾向への反抗的気勢の中にその基礎を置かれたものである。しかもこのような渡来移民の数は著しき増加を示し、それらの人々の助力によって１８世紀にイギリス人はそれまでフランス領だったカナダを奪取することができたのである。このようにしてゲルマン的＝プロテスタント的原理は北アメリカにおいても優勢を示しきたり、測ることのできない重要性を獲得した。全原住民がその前に敗退した。一個のイギリス的＝プロテスタント的植民が、いわば本国に対する対立的関係において樹立された。それでもまだホイッグ党の諸原理が支配的だった間はアメリカの事態は良好だった。ところが新しいトーリー党内閣を任命したジョージ３世の治世となった。この内閣は以前ほど時務に通ぜず、またアメリカ諸州の最高機関と密接な連絡を持たなかった。内閣はイギリスの財政を再建しようとし、その目的のためますます繁栄しつつある北アメリカ諸州に課税することが最善と考えた。しかしジュージ３世は彼の議会に束縛されていて、一切の課税はまず議会の協賛を経なければならないものであった。だから北アメリカ人は主張した。議会はただその議会によって代表される人々の名においてのみ協賛し得る。しかし北アメリカ諸州は議会において代表されていない。故にそうした議会が諸州への課税に協賛することは不可能であると。したがって新課税に対してアメリカに沸きあがった反対は、王権よりも議会的憲法に向けられた。アメリカ人の主張では、議会の権限は、何人に対しても無造作にその財産の提供を強制できないという原則の上に立っている。ここから憲法はどの程度まで代表的でありまたないのか、という憲法の基礎に関する論争が開始された。アメリカ諸州は相互に堅く一致団結し、ついにイギリス人が彼らに課してきた貿易制限すら撤廃せんとするに至った。 ＊先日、S教授のブログに「忘れ得ぬ人々」という興趣深い記事があった。教授はニューイングランドに留学中、キリスト教の洗礼を受けたが、それはカトリックのもので、するとお世話になったプロテスタントの恩人夫妻からよりによってカトリックに帰依するとは何事かと非難されたのだという。しかもその後も仲良くお付き合いいただいたという話で、ニュー･イングランドの成り立ちとその後を考える上でとても興味深かった。大恩あるGさんをひどく怒らせたというか失望させた事が一度だけある。学生の頃からカトリックに関心のあった僕は、敬虔なカトリックのD氏の感化で、カトリックの洗礼を受けるはめになった。Gさんも敬虔なクリスチャンだが、プロテスタントである。どっちにしても同じキリスト教じゃん、と思ったら大間違いだ。カトリックにプロテストして生まれたのがプロテスタントである。"やっとカトリックのくびきから逃れ、メイフラワー号でたどり着いたピューリタン達が築いた神の国に学びにきて、カトリックの餌食になるとはなんと無節操な事か。"と、温厚な夫妻がかつての宗教戦争もかくやと思うほど、執拗に改心を迫ってきた。が、G夫妻もさすがに大人である。洗礼の後はもう改宗を迫ることも無く、良好な交遊は帰国まで続いた。とても興趣深いでしたとコメントするとS教授から「欧米人の根っこにはキリスト教があり、しかも其のキリスト教にも様々な顔があるので、分かり辛いが、興味深いですね。」とあった。現在、イギリスのピューリタント革命の精神→ニュー・イングランド→札幌農学校→台湾における八田與一　を資料をもって追いかけているだけにとてもタイムリーな話題だった。 

  2012年07月15日

• 「世界史概観」ランケ 1

    p231-232対談マクスミリアン２世（以下「王」）「スチュアート家は、それの陥った運命が当然の報いであると見られるほどの過失を犯したのだ、といってよいであろうか。」ランケ「チャールズ１世は、普通に言われているよりはるかに善良な人物であった。彼は少なくともなお、王権の何たるかを知っていた。しかし彼があまりに左顧右眄したこと、これが彼の第一の過失であった。これに対してジェームズ２世に関してはわれわれは、彼は自己の全立場を見誤り自身の不幸を呼び起こしたといい得る。もし彼にして広く全般的に英国中にカトリック教を導入しようなどとせずーそのような事は全然彼の任ではなかった。ー審査令廃止の適当な時期が到来するまで英国諸方をそのまま存続せしめて置いたとすれば、おそらく彼は王位を保つことができたであろう。これに比すればチャールズ２世ははるかに道徳の点において劣り、かつ不確実な人物であって、チャールズ１世のように王権の何たるかを知ることは全くなかった。しかもその彼とても、人々の言うほど悪い一方の人間ではなかった。人々は、彼は身も心もルイ１４世に売り渡し、後者より金を仰いだといって彼を責めるけれども、この非難の後の部分すなわち金を受取るということは、同じく英国議会、いな英国における最も過激な民主主義者にもあてはまるのである。享楽癖こそチャールズ２世の最大の欠点であった。 王　われわれはチャールズ１世の目指していた目標をも非難することが出来るであろうか。ランケ　その通り、彼の目標もまた間違っていた。彼は議会無しの政治を為すべきでなかった。しなわち合法的状態を回避すべきでなかった。しかしその他の点においては彼は、自国の宗教を変更しようとしたのもなく、むやみに議会廃止を強行しようと欲したものでもなく、ただ議会召集が王の恩恵に依拠するものなることを声明したに過ぎなかったのであるから、ジェームズ２世ほど極端に走ったわけではない。後に至って彼は、議会の諸権利を喜んで承認する気持ちにさえなったのであるが、その時は無論もはや遅すぎた。

  2012年07月15日

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