GAIA

[報徳記＆二宮翁夜話] カテゴリの記事

全9982件 (9982件中 3551-3600件目)

< 1 ... 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 >

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その26

  　是(これ)に由(よつ)て之(これ)を観(み)るに、其(そ)の禍(わざわひ)の根(こん)元(げん)も亦(また)必(かなら)ず深(ふか)し。彼(かれ)代々(だいだい)米穀(べいこく)を以(もつ)て渡(と)世(せい)とすと、然(しか)らば天明(てんめい)卯(う)辰(たつ)両(りやう)年(ねん)の凶(きやう)荒(くわう)に当(あた)り、多(た)分(ぶん)の米(べい)粟(ぞく)を高(かう)価(か)に鬻(ひさ)ぎ、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その25

  　予(われ)孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)一家(か)の事(じ)跡(せき)を知(し)らずと雖(いへど)も、其(その)富(とみ)を致(いた)すに必(かなら)ず自(し)然(ぜん)の道(みち)を失(うしな)ひたることあらん。凶(きやう)荒(くわう)の年(とし)に及(およ)び破(は)却(きやく)の禍(わざわひ)に遇(あ)ふ者(もの)往々(わうわう)有(あ)りと雖(いへど)も、此(こ)の如(ごと)き災難(さいなん)輻輳(ふくそう)するもの稀(まれ)なり。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その24

  　先生(せんせい)歎(たん)じて曰(いは)く、豈(あに)是(これ)一朝(てう)一夕(せき)の故(ゆゑ)ならんや、其(そ)の禍(わざわひ)由(よつ)て来(きた)る所(ところ)遠(とほ)し。世上(せじやう)富家(ふか)の滅亡(めつばう)すること往々(わうわう)斯(かく)の如(ごと)し。何(なん)ぞ人(じん)力(りよく)を以(もつ)て之(これ)を存(ぞん)することを得(え)ん。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その23

  　孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)の家(いへ)破(は)却(きやく)禁(きん)獄(ごく)三年、禍(くわ)災(さい)並(なら)び至(いた)ることを歎(なげ)き、百計(けい)之(これ)を救(すく)はんと欲(ほつ)すれども其(そ)の道(みち)を得(え)ず。遥(はるか)に野州(やしう)桜町(さくらまち)に来(きた)りて、困難(こんなん)を陳述(ちんじゆつ)し涕(てい)泣(きふ)して教(をし)へを請(こ)ふ。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その22

  　官(くわん)弥(いよ)々(いよ)之(これ)を許(ゆる)さず入獄(にふごく)三年(ねん)に及(およ)べり。 　伊勢原駅(いせはらえき)宗兵衛(さうべゑ)なるもの曽(かつ)て先生(せんせい)の至(し)教(けう)を得(え)て其(そ)の家(いへ)を全(まつた)くせり。孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)の妹(いもうと)某(それ)を娶(めと)り妻(つま)となす。宗兵衛(さうべゑ)性(せい)温柔(をんじう)にして慈(じ)心(しん)あり。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その21

  　且(かつ)官(くわん)の乱人(らんじん)を捕(とら)へずして破(は)却(きやく)の禍(わざわひ)を受(う)くるものを禁獄(きんごく)すること豈(あに)公平(こうへい)の処置(しよち)といふべけんや。今(いま)に我(われ)此(こ)の獄(ごく)を出(い)でなば、身(み)を粉(こ)に砕(くだ)くといへども怨(うらみ)を駅人(えきじん)に報(はう)ぜざるべけんやと。日(にち)夜(や)憤(ふん)涙(るゐ)を流(なが)して切(せつ)歯(し)すること殆(ほとん)ど狂人(きやうじん)の如(ごと)し。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その20

  　二児(じ)枕(ちん)上(じやう)に在(あ)りて泣(な)く。伊(い)三(さぶ)郎(らう)夫妻(ふさい)共(とも)に心(こゝろ)を尽(つく)し、医(い)を招(まね)き之(これ)を療(れう)すれども遂(つひ)に起(おき)ず。病(やむ)こと数月(すうげつ)にして死(し)す。孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)獄(ごく)中(ちゆう)に在(あ)り、此(この)災(さい)害(がい)を聞(き)く毎(ごと)に噴悶(ふんもん)甚(はなはだ)しく益々(ますます)駅人(えきじん)の暴(ぼう)を怒(いか)り、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その19

  　大(おほ)いに涕泣(ていきう)す。伊(い)三(さぶ)郎(らう)言(げん)を尽(つく)して之(これ)を慰(ゐ)し、主人(しゆじん)罪(つみ)なきが故(ゆゑ)に今(いま)帰(かへ)り給(たま)はん、然(しか)らば諸事(しよじ)共(とも)に談(だん)じて、必(かなら)ず憂(うれ)ひなからしめんと云(い)ふ。妻(つま)が心(こゝろ)何(なに)を以(もつ)て解(かい)せん、憂(いう)心(しん)の余(あま)り遂(つひ)に病(やまひ)に臥(ふ)して食(しよく)進(すゝ)まず。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その18

  　家(か)屋(をく)は人(ひと)の為(ため)に毀(こぼ)たれ、良(りやう)人(じん)之(これ)が為(ため)に罪(ざい)人(にん)と為(な)りて獄屋(ごくや)の苦(く)を受(う)け、今(いま)又(また)大(たい)風(ふう)烈(れつ)火(くわ)残(ざん)物(ぶつ)を焼(や)く、災害(さいがい)の頻(しき)りに至(いた)ること何(なん)ぞ此(こ)の如(ごと)きや。二子(し)を抱(いだき)て曰(いは)く、以(い)後(ご)何(なに)を以(もつ)て子(こ)を育(いく)せんやと、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その17

  　同(どう)年(ねん)某(ぼう)月(げつ)暴(ぼう)風(ふう)砂(しや)石(せき)を巻(ま)き、一天(てん)之(これ)が為(ため)に暗(くら)し。時(とき)に駅内(えきない)失火(しつか)忽然(こつぜん)として火(ひ)盛(さかん)に風(かぜ)烈(はげ)しく、孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)破家(はか)散乱(さんらん)の米(べい)粟(ぞく)器財(きざい)悉(ことごと)く焼亡(せうばう)す。妻子(さいし)の悲歎(ひたん)既(すで)に極(きはま)る。妻(つま)歎(たん)じて曰(いは)く、嗚呼(あゝ)如何(いかに)せん、

  2015年12月24日

• 鳥取県立短期大学図書館が「報徳記を読む第２集」と「ボーイズ・ビー・アンビシャス第３集」を蔵書とし、３件所蔵館となった、感謝！

  鳥取県は永らく本会刊行物の空白県であった。鳥取県立短期大学が初めて所蔵とし、ローラー寄贈したにもかかわらず、現在でも公共図書館では倉吉市立図書館に１冊「ボーイズ・ビー・アンビシャス第５集」を蔵書としているばかりである。そういうこともあって、このたび鳥取県立短期大学が３件所蔵館となって感謝である。  平成27年12月24日現在 「報徳記を読む第２集－報徳は精神変革である」　（2014年11月発行） 蔵書図書館一覧　全　１５０図書館 国立国会図書館 都道府県立図書館　２３図書館 北海道立図書館　山形県立図書館　栃木県足利図書館　群馬県立図書館　茨城県立図書館　埼玉県立図書館　東京都立図書館　神奈川県立図書館　長野県立図書館　新潟県立図書館　富山県立図書館　石川県立図書館　愛知県立図書館　和歌山県立図書館　兵庫県立図書館　岡山県立図書館　徳島県立図書館　香川県立図書館　長崎県立図書館　佐賀県立図書館　熊本県立図書館　鹿児島県立図書館　沖縄県立図書館   市区町村立図書館　７８図書館 帯広市立図書館　北広島市立図書館　恵庭市立図書館　江別市立図書館　富良野市立図書館　佐呂間町立図書館　別海町立図書館　京極町立図書館　比布町図書館　八雲町立図書館　美幌町立図書館　様似町立図書館　八戸市立図書館　十和田市立図書館　五戸町立図書館　盛岡市　二戸市立図書館　石巻市立図書館　遠野市立図書館　大槌町立図書館　金ヶ崎町立図書館　南会津町立図書館　いわき市立図書館　郡山市立図書館　本宮市立図書館　喜多方市　三春町　新地町立図書館　加美町立図書館　日光市立図書館　鹿沼市立図書館　築西市立図書館　八千代町立図書館　那須烏山市立図書館　館林市立図書館　渋川市立図書館　新発田市立図書館　燕市立図書館　相模原市立図書館　秦野市立図書館　小田原市立図書館　伊勢原市立図書館　大和市立図書館　二宮町立図書館　袋井市立図書館　浜松市立図書館　御殿場市立図書館　菊川市立図書館　掛川市立図書館　静岡市立図書館　三島市立図書館　森町立図書館　新城市立図書館　富山市立図書館　滑川市立図書館　黒部市立図書館　加賀市立図書館　羽咋市立図書館　大野市立図書館　岡崎市立図書館　新城市市立図書館　南丹市立図書館　姫路市立図書館　赤穂市立図書館　三田市立図書館　松江市立図書館　人吉市立図書館　水俣市立図書館　上天草市立図書館　宮崎市立図書館　都城市立図書館　小林市立図書館　姶良市立図書館　日置市立図書館　薩摩川内市立図書館　指宿市立図書館　与論町立図書館   大学図書館　４９図書館 東京大学、京都大学、北海道大学、東北大学、九州大学、弘前大学、岩手大学、福島大学、宇都宮大学、福井大学、高知大学、徳山大学、愛媛大学、長崎大学、大分大学、鹿児島大学 敬和学園大学　玉川大学 同志社大学 青山学院大学　高崎経済大学　北海道教育大学 宮城教育大学 大阪教育大学　京都教育大学　東洋大学　駒澤大学　拓殖大学　関西国際大学　酪農学園大学　東京農業大学　東京農業大学オホーツク校　鹿児島純心短期大学　鹿児島県立短期大学　水産大学校　聖隷クリストファー大学　日本女子大学　静岡産業大学 関東学院大学　北星学園大学　京都工芸繊維大学　法政大学 東北福祉大学　沖縄国際大学　獨協大学　活水女子大学　桐蔭横浜大学　鳥取短期大学　大倉山精神文化研究所 知られざる鳥取県の3つの不思議！ 鳥取県といえば、鳥取砂丘とらっきょうが有名ですが、鳥取の魅力はそれだけにとどまりません。そんな鳥取県の不思議な魅力を3つご紹介しましょう。魅力その1．ユニクロの販売高が全国トップ平成25年に行われたユニクロの1店舗あたりの年間売上高のランキング結果によれば、第1位はなんと鳥取県の10億円で、第2位の東京都の9億円を上回っています。砂漠に強い素材など理由を推察したくなりますが、その本当の理由は未だ謎に包まれています。魅力その2．ご当地キャラ「ネギマン」への力の入れようが半端ない鳥取県米子市のご当地名物「白ネギ」をモチーフにしたネギマンは、ウルトラマン張りの特撮映画が撮られています。しかも業界では著名な制作会社、監督、造型師を迎えての取り組みだそうで、なぜそこまで力を入れているのかは、謎が深まるばかり。魅力その3．スタバ、タリーズ、ドトールがやっとオープン2015年5月にスターバックスが、そして10月にはドトールが鳥取県に初上陸。あまりに遅すぎるこの店舗展開も、謎といえば謎である。　鳥取県にはこのような不思議な魅力が満載。ぜひ次の旅行先候補として考えてみてください！

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その16

  　汝(なんぢ)聊(いさゝ)か慈(じ)心(しん)有(あ)らば何(なに)を以(もつ)て此(こ)の動乱(どうらん)を開(ひら)かんや、其(そ)の罪(つみ)汝(なんぢ)の身(み)にありと云(い)ふを以(もつ)てす。孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)救(きう)助(じよ)の道(みち)を行(おこな)はんとせしに、其(その)発(はつ)するを待(ま)たずして破毀(はき)の乱暴(らんばう)に及(およ)べりと言上(ごんじやう)すれども、官(くわん)益々(ますます)其(そ)の等閑(なほざり)の罪(つみ)を責(せ)めて之(これ)を許(ゆる)さず。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その15

  　駅人(えきじん)を諭(さと)し或(あるひ)は戒(いまし)め、然(しかる)後(のち)孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)を捕(とら)へて之(これ)を禁獄(きんごく)し、詰(なじ)るに飢饉(ききん)の憂(うれ)ひに罹(かゝ)り駅人(えきじん)危(き)亡(ばう)に瀕(ひん)せり、汝(なんぢ)財(ざい)に富(と)み粟(ぞく)を積(つ)み曽(かつ)て憐愍(れんみん)の心(こゝろ)なく、遂(つひ)に此(この)乱暴(らんばう)を起(おこ)せり。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その14

  　愕然(がくぜん)として其(そ)の無道(むだう)を怒(いか)り、憤怨(ふんゑん)骨髄(こつずゐ)に徹(てつ)し、速(すみやか)に官(くわん)に訴(うつた)へ乱(らん)暴(ぼう)の者(もの)を罪(つみ)し、此(こ)の怨恨(ゑんこん)を散(さん)ぜんとするの外(ほか)他事(たじ)なし。既(すで)に此(この)事(こと)官(くわん)に聞(ぶん)せり。官(くわん)属(ぞく)吏(り)を遣(や)り、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その1３

  伊(い)三(さぶ)郎(らう)も大(おほ)いに驚(おどろ)き走(はし)り去(さ)る。諸(しよ)人(にん)毀(こぼ)ち終(をは)り、又(また)他(た)に往(ゆ)きて富(ふ)家(か)一二戸(こ)を破(やぶ)り、愉快(ゆくわい)を呼(よ)びて各(かく)家(いへ)に帰(かへ)れり。　 孫まご右う衛ゑ門もん卒忽そつこつとして家いへに到いたれば、家か屋をく悉ことごとく毀こぼたれ米べい粟ぞく器き財ざい土ど泥でいに散乱さんらんせり。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その12

  　同音(どうおん)に怨恨(ゑんこん)の情(じやう)を呼(よば)はり、力(ちから)を極(きは)めて家(いへ)蔵(くら)を破(やぶ)り器財(きざい)を砕(くだ)き、米(べい)粟(ぞく)金銭(きんせん)を散(さん)乱(らん)す。道(だう)路(ろ)之(これ)が為(ため)に壅(よう)塞(そく)し、往(わう)来(らい)のもの通行(つうかう)することを得(え)ざるに至(いた)れり。器(うつわ)として破(やぶ)らざるはなく、物(もの)として毀(こぼた)ざるはなし。　妻つまは子こを負おふて逃のがれ、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その11

  　彼(かれ)を始(はじ)め宿(しゆく)内(ない)の富(ふ)家(か)を悉(ことごと)く破(は)却(きやく)して、彼等(かれら)が肝(きも)を冷(ひや)さしめん。何(なん)ぞ是非(ぜひ)を論(ろん)ずるに及(およ)ばんやと。一人(ひとり)之(これ)を唱(とな)ふれば諸(しよ)人(にん)之(これ)に同(どう)じ、数(すう)百人(にん)耒(らい)耝(し)又(また)は鳶(とび)口(ぐち)と唱(とな)ふる物(もの)を振(ふる)ひ、夜(よる)に入(い)り一時(じ)に乱(らん)入(にふ)し、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その10

  　伊(い)三(さぶ)郎(らう)答(こた)ふるに前言(ぜんげん)を以(もつ)てす。駅(えき)内(ない)弥(いよ)々(いよ)憤(ふん)怒(ど)し、彼(かれ)平(へい)生(ぜい)貪(どん)吝(りん)にして曽(かつ)て慈悲(じひ)を知(し)らず。今(いま)家(いへ)にあらずして江(かう)都(と)に出(いづ)るは、利(り)を貪(むさぼ)らんが為(ため)なり。哀(あい)を請(こ)ふと雖(いへど)も何(なん)の益(えき)あらん。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その９

  　番(ばん)頭(とう)伊(い)三(さぶ)郎(らう)なるもの答(こた)へて曰(いは)く、今(いま)主人(しゆじん)江戸(えど)にあり、某(それがし)の得(え)て処(しよ)する所(ところ)にあらず。近(きん)日(じつ)主(しゆ)人(じん)必(かなら)ず帰(かへ)らん、然(しか)らば其(そ)の望(のぞみ)に応(おう)ずべしと云(い)ふ。或(ある)もの去(さ)り、別人(べつじん)又(また)来(きた)りて再(さい)三(さん)之(これ)を請(こ)ふ。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その８

  　其(そ)の恵(めぐみ)少(すくな)からずと云(い)ふ。 　此(この)時(とき)に当(あた)り孫(まご)右(う)衛(ゑ)門(もん)江(かう)都(と)に出(い)で、穀価(こくか)を尋(たづ)ね、其(その)高下(かうげ)に随(したが)ひ諸人(しよにん)の為(ため)に価(あたひ)を減(げん)じ之(これ)を売(う)り出(だ)さんか、将(はた)救助(きうじよ)の為(ため)に粟(ぞく)を散(さん)ぜんかと、思(し)慮(りよ)未(いま)だ決(けつ)せずして家(いへ)に帰(かへ)らず、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その７

  　大磯(おほいそ)宿(しゆく)は平年(へいねん)猶(なほ)貧(ひん)困(こん)を免(まぬが)れざるもの多(おほ)し。況(いはん)や此(この)大飢(だいき)をや。或(ある)もの孫右衛門(まごうゑもん)に請(こ)うて曰(いは)く、計(はか)らざりき飢(き)饉(きん)の患(うれひ)此(こ)の如(ごと)きに至(いた)らんとは。冀(こひねが)はくは宿内(しゆくない)の困苦(こんく)を憐(あはれ)み、当年(たうねん)の相場(さうば)定(さだ)めより一斗(と)丈(だけ)の価(あたひ)を減(げん)じ売(うり)給(たまは)らば、

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その６

  　寧(むし)ろ彼(かれ)が不仁(ふじん)の家(いへ)を破却(はきやく)し、其(そ)の握(にぎ)る所(ところ)の粟(ぞく)と財(ざい)とを踏散(たうさん)し、一旦(たん)の愉快(ゆくわい)を取(と)つて死(し)せんには如(しか)ざる也(なり)と。素(もと)より死亡(しばう)に瀕(ひん)するもの往(わう)々(わう)之(これ)に雷同(らいどう)し群起(ぐんき)して、富豪(ふがう)を毀(こぼ)ち其(そ)の器財(きざい)米(べい)粟(ぞく)を微塵(みじん)になすもの数(かぞ)ふるに暇(いとま)あらず。

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その５

  　此この如ごとくにして日ひを送おくらば、空むなしく飢き亡ぼうに及およばんこと言語げんごを待まつべからず。夫それ富家ふか多た分ぶんの米べい財ざいを握にぎり一家かの憂うれひなきを以もつて、他たの困こん迫ぱく死亡しぼうを憐あはれむの心こゝろなく安あん坐ざして傍ぼう観くわんす。悪にくむ可べきの至いたりにあらずや。徒(いたづら)に死(し)を待(ま)たんよりは

  2015年12月24日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その４

  　諸国(しよこく)有志(いうし)のものも多(た)少(せう)各(かく)其(そ)の分(ぶん)に応(おう)じ、飢(き)民(みん)救助(きうじよ)をなすもの少(すくな)からず。然(しか)れども救(すく)ひを出(だ)すもの限(かぎ)りあり、飢(うゑ)を病(や)むもの益(ます)々(ます)多(おほ)く、月(つき)を経(ふ)るに随(したが)ひ飢(き)亡(ばう)弥々(いよいよ)多(おほ)し。平生(へいぜい)無頼(ぶらい)の者共(ものども)、衆(しゆう)を煽動(せんどう)して曰(いは)く、

  2015年12月23日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その３

  　関東(くわんとう)奥州(あうしう)尤(もつと)も甚(はなはだ)し。諸民(しよみん)百計(ひやくけい)食(しよく)を求(もと)むといへども得(う)る処(ところ)なく、或(あるひ)は離散(りさん)し、或(あるひ)は道路(だうろ)に斃(たふ)る。生(せい)民(みん)の悲(ひ)歎(たん)何(なん)ぞ之(これ)に加(くは)ふるものあらんや。幕府(ばくふ)深(ふか)く万民(ばんみん)の飢渇(きかつ)を憐(あはれ)み、巨多(きよた)の米(べい)財(ざい)を散(さん)じ、江(かう)都(と)の飢(き)者(しや)を救(すく)ひ玉(たま)ふ。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その２

  　其(そ)の所行(しよぎよう)一僻(へき)にして他(た)の言(げん)を用(もち)ゐず、財(ざい)優(ゆた)かなりといへども他(た)を憐(あはれ)まざるを以(もつ)て、世上(せじよう)不(ふ)通(つう)用(よう)なりと譬(たと)へしなるべし。 　于時(ときに)天保(てんぽう)七申年(さるどし)夏(なつ)冷気(れいき)大(おほ)いに行(おこな)はれ、日(にち)々(にち)曇(どん)天(てん)にして晴(せい)日(じつ)稀(まれ)なり。是(これ)を以(もつ)て五穀(こく)実(みの)らず、歳(とし)大(おほ)いに飢(う)う。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の４【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す　その１

  　報徳記　　巻之四 【一】先生大磯駅川崎屋孫右衛門を教諭し廃家を再復す 　茲(こゝ)に東海道(とうかいだう)大磯(おほいそ)宿(しゆく)川崎屋(かはさきや)孫右衛門(まごうゑもん)なる者あり。先祖(せんぞ)より穀(こく)商売(しやうばい)を以(もつ)て渡世(とせい)とし、頗(すこぶ)る豪(がう)富(ふ)の名(な)あり。性(せい)吝嗇(りんしよく)にして慈(じ)仁(じん)の心(こゝろ)薄(うす)く、専(もつぱ)ら利(り)益(えき)のみに心(こゝろ)を尽(つく)せり。人(ひと)之(これ)を呼(よ)びて仙台(せんだい)通宝(つうはう)と云(い)ふ。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その９

  　宗(そう)兵衛(べゑ)平(へい)兵(べ)衛(ゑ)大(おほ)いに感(かん)じ、先(せん)生(せい)の深(しん)慮(りよ)且(かつ)恩(おん)恵(けい)の厚(あつ)きを謝(しや)し、家(いへ)に帰(かへ)り具(つぶ)さに父(ちゝ)に告(つ)ぐ。父(ちゝ)も亦(また)大(おほ)いに感(かん)動(だう)して為(ため)蔵(ぞう)に告(つ)ぐ。為(ため)蔵(ぞう)大(おほ)いに悦(よろこ)び此(こ)の道(みち)を以(もつ)て一家(か)平(へい)安(あん)を得(え)たりと云(い)ふ。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その８

  　一人(り)の力(ちから)を以(もつ)て家(いへ)を興(おこ)さば、本(ほん)末(まつ)何(なに)の憂(うれ)ひをか生(しやう)ぜんや。自(じ)力(りき)に事(こと)を為(な)すべき為(ため)蔵(ぞう)に一家(か)を分(わか)ち与(あた)へ、代(だい)々(だい)の憂(うれ)ひを残(のこ)さんとするは目(もく)前(ぜん)の愛(あい)に泥(なづ)みて慮(おもんぱか)り足(た)らざるの過(あやま)ちなり。然(しか)れども今(いま)分(ぶん)家(け)せんとするに働(はたら)きありといへども為(ため)蔵(ぞう)一金(きん)を得(え)ずして売(うり)物(もの)の元(げん)資(し)とすべきものあるべからず、是(これ)故(ゆゑ)に我(われ)二十金(きん)か三十金(きん)を無(む)利(り)息(そく)にて貸(かし)与(あた)へ、一家(か)を興(おこ)さしむべし。必(かなら)ず一物(ぶつ)も生(せい)家(か)の財(ざい)を分(わか)つべからず、汝(なんぢ)の父(ちゝ)愛(あい)情(じやう)により財(ざい)を分(わか)てと云(い)はゞ、予(よ)が言(げん)を以(もつ)て之(これ)を諭(さと)すべし、必(かなら)ず其(そ)の心(こゝろ)を安(やす)んぜんこと疑(うたが)ひあらずと教(けう)誨(くわい)す。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その７

  　凡(ぼん)夫(ぷ)にして凡(ぼん)夫(ぷ)の情(じやう)に随(したが)ひ一方(はう)困(こん)窮(きゆう)に及(およ)ばゞ是(これ)より怨(ゑん)望(ぼう)相(あひ)争(あらそ)うに至(いた)らん、甚(はなはだ)しきは之(これ)が為(ため)に本(ほん)末(まつ)共(とも)に家(いへ)を覆(くつが)へすに及(およ)ばんか、今(いま)汝(なんぢ)の意(い)の如(ごと)くして必(かなら)ず世(よ)々(ゝ)此(この)憂(うれ)ひなき時(とき)は幸(さいはひ)ならん。若(も)し斯(か)くの如(ごと)き禍(わざはひ)とならば今(いま)の慈(じ)愛(あい)は子(し)孫(そん)の大(だい)害(がい)にあらずや。子(し)孫(そん)の害(がい)を防(ふせ)がんと欲(ほつ)せば必(かなら)ず家(か)財(ざい)を分(わか)つ事(こと)なかれ。為蔵(ためぞう)なる者(もの)に一金(きん)を与(あた)へずして、独(どく)手(しゆ)に家(いへ)を起(おこ)さしむるとも一身(しん)の丹(たん)誠(せい)を以(もつ)て之(これ)を為(な)さんこと難(かた)きに非(あら)ず。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その６

  　為(ため)蔵(ぞう)の子(こ)たる者(もの)之(これ)を聞(き)かば従(じゆう)弟(てい)の所(しよ)行(げふ)の足(た)らざる事(こと)を云(い)ひて、其(そ)の怨(ゑん)望(ぼう)を憤(いきどほ)るの心(こゝろ)あらん。然(しか)らば其(そ)の憂(うれ)ひ遠(とほ)きにあらず。一旦(たん)互(たが)ひに怨(ゑん)心(しん)を発(はつ)することあらば、子(し)孫(そん)代(だい)代(だい)怨(ゑん)望(ぼう)の心(こゝろ)而(の)巳(み)増(ざう)長(ちやう)し、本(ほん)末(まつ)の好(よし)みを失(うしな)ひ、祖(そ)先(せん)までも非(ひ)とするに及(およ)ばんか。是(これ)凡(ぼん)情(じやう)取(と)るに足(た)らざる事(こと)と雖(いへど)も、買(ばい)利(り)を以(もつ)て主(しゆ)とする商(しやう)家(か)何(なん)ぞ代(だいだい)々互(たが)ひに相(あい)譲(ゆづ)るの賢(けん)人(じん)を生(しやう)ぜんや。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その５

  　今(いま)宗(さう)兵(べ)衛(ゑ)家(か)財(ざい)田(でん)地(ち)を分(わか)ち与(あた)へ、弟(おとゝ)為(ため)蔵(ぞう)の家(いへ)貧(ひん)にして分(わか)ちたるものをも子(し)孫(そん)に存(ぞん)することあたはざる時(とき)は無(ぶ)事(じ)なるに近(ちか)し、然(しか)るに為(ため)蔵(ぞう)の人(ひと)となりを聞(き)くに篤(とく)実(じつ)にして財(ざい)を費(ついや)さず、売(ばい)買(ばい)の才(さい)は却(かへつ)て兄(あに)に増(まさ)れりと。左(さ)あれば彼(かれ)必(かなら)ず一家(か)を富(とま)さんか、若(も)し宗(さう)兵(べ)衛(ゑ)の子(こ)なるもの為(ため)蔵(ぞう)に如(しか)ずして家(か)事(じ)窮(きゆう)することあらば、家(いへ)の財(ざい)を分(わか)ち分(ぶん)家(け)せし故(ゆゑ)に此(こ)の家(いへ)衰(おとろ)へたりと叔(しゆく)父(ふ)を怨(うらむ)るの心(こゝろ)を生(しやう)ぜん。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その４

  宗さう兵べ衛ゑなる者もの来きたれるか。曰いはく然しかり。 是(こゝ)に於(おい)て宗(そう)兵衛(べゑ)先生(せんせい)に見(まみ)ゆ。先(せん)生(せい)曰(いは)く、嗚(あ)呼(ゝ)汝(なんぢ)過(あやま)れり、父(ちゝ)の末(ばつ)子(し)を愛(あい)して之(これ)に財(ざい)を分(わか)たんとするは、是(これ)目(もく)前(ぜん)の愛(あい)情(じよう)而(の)已(み)にして後(こう)年(ねん)の憂(うれ)ひを知(し)らざるが故(ゆゑ)なり。今(いま)は父(ふ)子(し)なり兄(きやう)弟(だい)なり。一家(か)を譲(ゆづ)りたりとも、家(か)財(ざい)を分(わか)ちたりとも、父(ふ)子(し)兄(けい)弟(てい)何(なん)の子(し)細(さい)かあらんや。後(こう)世(せい)子(し)孫(そん)に至(いた)る時(とき)は本(ほん)末(まつ)の名(な)而(の)已(み)にて他(た)人(にん)の情(じやう)に彷(ほう)彿(ふつ)たるべし。世(せ)上(じやう)の本(ほん)末(まつ)小(せう)利(り)の争(あらそ)ひより事(こと)を生(せう)じ、互(たがひ)に仇(きう)讐(しう)の思(おも)ひをなすもの少(すくな)からず。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その３

  　故(ゆゑ)に一家(か)を中(ちゆう)分(ぶん)し、其(その)一を与(あた)へんとするは、至(し)当(たう)の道(みち)に似(に)たりといへども全(ぜん)一家(か)の大(だい)事(じ)なり。余(よ)が如(ごと)き不(ふ)才(さい)のものゝ可(か)不(ふ)可(か)を決(けつ)すべきにあらず。子(し)未(いま)だ知(し)らずや、野(や)州(しう)桜(さくら)町(まち)に二(にの)宮(みや)先(せん)生(せい)あり。既(き)往(わう)を考(かんが)へ未(み)発(はつ)を悟(さと)り、身(み)に仁(じん)義(ぎ)の道(みち)を行(おこな)ひ、口(くち)に聖(せい)賢(けん)の大(だい)道(だう)を説(と)き、衰(すゐ)廃(はい)再(さい)興(こう)の道(みち)を以(もつ)て旧(きう)復(ふく)安(あん)堵(ど)を得(え)たる者(もの)幾(いく)千万(まん)家(か)なるを知(し)らず。予(よ)會(かつ)て教(をし)へを受(うけ)たり。子(し)此(こ)の先(せん)生(せい)に就(つい)て其(そ)の是(ぜ)非(ひ)を問(と)はゞ必(かなら)ず兄(きやう)弟(だい)共(とも)に道(みち)に至(いた)らんこと必(ひつ)せり、若(も)し予(よ)が言(げん)に随(したが)はんと欲(ほつ)せば予(よ)と共(とも)に野(や)州(しう)に往(ゆ)き教(をし)へを受(う)けよと云(い)ふ。宗(そう)兵衛(べゑ)聞(き)きて大(おお)いに悦(よろこ)び、父(ちゝ)に告(つ)げて野(や)州(しう)桜(さくら)町(まち)に来(きた)れり。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その２

  　一時(じ)宗(そう)兵衛(べゑ)平(へい)兵(べ)衛(ゑ)に語(かた)りて曰(いは)く、我(わが)兄(きやう)弟(だい)三人(にん)あり、兄(あに)を芳(よし)助(すけ)と云(い)ふ。故(ゆゑ)ありて他(た)家(け)を継(つ)ぐ。弟(おとゝ)を為蔵(ためぞう)と云(い)ふ。篤(とく)実(じつ)にして能(よ)く父(ふ)母(ぼ)に事(つか)へ、某(ぼう)にも悌(てい)たるの行(おこな)ひあり。老(らう)父(ふ)甚(はなは)だ之(これ)を愛(あい)す。某(それがし)父(ちゝ)の意(い)を察(さっ)し、弟(おとゝ)をして此(こ)の家(いへ)を継(つが)しめんことを請(こ)ふといへども父(ちゝ)之(これ)を許(ゆる)さず。分(ぶん)家(け)となし永(なが)く本(ほん)末(まつ)の親(したし)みを厚(あつ)くせよと云(い)ふ。是(こゝ)に由(よつ)て我(わが)家財(かざい)金(きん)銀(ぎん)悉(ことごと)く其(そ)の半(なかば)を分(わか)ち、又(また)田(でん)圃(ほ)も均(ひと)しく之(これ)を別(わか)ち与(あた)へ、新(あらた)に家(いへ)を作(つく)り之(これ)を分(ぶん)家(け)せんと欲(ほつ)す、可(か)ならん歟(か)、平(へい)兵(べ)衛(ゑ)之(これ)を聞(き)き沈(ちん)吟(ぎん)すること良(やゝ)久(ひさし)うして曰(いは)く、父(ちゝ)の愛(あい)せるを以(もつ)て家(いへ)を譲(ゆづ)らんとすれども父(ちゝ)之(これ)を許(ゆる)さず。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む その１

   【七】相州伊勢原駅加藤宗兵衛先生の教を受け一家を治む 　斯(こゝ)に相(さう)州(しう)大(おほ)住(すみ)郡(ぐん)伊勢原(いせはら)宿(しゆく)宗(そう)兵衛(べゑ)なるものあり。茶(ちや)を売(う)りて、渡(と)世(せい)とせり。田(でん)圃(ぼ)数(すう)町(ちやう)歩(ぶ)を有(いう)し、之(これ)を農(のう)夫(ふ)に耕(かう)作(さく)せしめ、其(そ)の田(でん)徳(とく)を得(え)、頗(すこぶ)る家(いへ)富(と)めり。其(そ)の性(せい)柔(にゆう)和(わ)にして慈(じ)愛(あい)の心(こゝろ)あり。是(こゝ)を以(もつ)て駅(えき)内(ない)も宗(そう)兵衛(べゑ)の言(げん)を信(しん)ず、曾(かつ)て心(しん)学(がく)を好(この)めり。心(しん)学(がく)の友(とも)たる駿(すん)州(しう)御(み)厨(くりや)竃(かまど)新(しん)田(でん)村(むら)、平(へい)兵(べ)衛(ゑ)なるものあり。善(ぜん)人(にん)にして人(ひと)の憂(うれ)ひを聞(き)く時(とき)は身(み)を顧(かへりみ)ず之(これ)に赴(おもむ)き信(しん)義(ぎ)を尽(つく)せり。平(へい)兵(べ)衛(ゑ)以前(いぜん)小田原(おだはら)に於(おい)て先生(せんせい)に見(まみ)え、教示(けうし)を受(う)け、大(おほ)いに感動(かんどう)して益々人(ますますひと)の為(ため)に心(こゝろ)を尽(つく)し、善(ぜん)を行(おこな)はんことを欲(ほつ)す。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その34

  　今(いま)其(そ)の過(あやまち)を悔(く)い、之(これ)を返(かへ)さんとならば、前(ぜん)功(こう)を賞(しやう)して別(べつ)に加(か)禄(ろく)あるべし。左(さ)もなくば菅(すが)谷(や)烏(からす)山(やま)に帰(かへ)るも何(なん)の益(えき)かあらん。帰(き)参(さん)を止(や)め、仕(し)法(はふ)の再(さい)興(こう)を廃(はい)するに如(しか)ざる也(なり)との理(り)解(かい)あり。某(なにがし)大(おほ)いに感(かん)じ、此(こ)の言(げん)を以(もつ)て君(きみ)に告(つ)ぐ。是(これ)に於(おい)て五十石(こく)の禄(ろく)を加(くは)へ旧(きう)禄(ろく)に合(あは)せ、二百石(いし)を以(もつ)て帰(き)参(さん)せしめたり。　 菅すが谷や国くにに帰かへり、再ふたたび良りょう法ほうを開ひらかんとす。時ときに天てん保ぽう十三壬みづのへ寅とら年とし幕ばく府ふ命めいありて先せん生せいを登とう用ようす。公こう用よう繁はん多たにして諸しよ侯こうの国こく家か興こう復ふくのことに心しん力りよくを労らうするの暇いとまあらず。弘こう化くか某それ年とし菅すが谷や疾やまひに罹かゝりて歿ぼつせり。遂つひに烏からす山やま再さい興こうの道みち廃はいせり。国くに人びと其その時ときを失うしなひたることを歎なげきたりと云いふ。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その33

  　罪(つみ)なくして之(これ)を放(はな)たば、今(いま)帰(き)参(さん)せしむるは君(きみ)自(みずか)ら過(あやまち)を改(あらた)め玉(たま)ふにあらずや。君(きみ)過(あやまち)を改(あらた)めて菅(すが)谷(や)を呼(よ)ばんに、何(なん)ぞ十口(じふにんぶち)の扶(ふ)助(じよ)を以(もつ)てするや。元(もと)百五十石(こく)なる者(もの)は世(せ)禄(ろく)なり。申(さる)の大(だい)凶(きよう)に当(あた)り、一身(しん)を抛(なげう)ちて我(われ)に撫(ぶ)育(いく)の道(みち)を求(もと)め、飢(き)民(みん)を救(すく)ひ、爾(じ)來(らい)仕(し)法(はふ)を以(もつ)て国(こく)益(えき)を挙(あ)ぐること少(すくな)からず。是(これ)皆(みな)菅(すが)谷(や)なくんば我(われ)之(これ)に応(おう)ぜんや。然(しか)らば菅(すが)谷(や)の功(こう)豈(あに)浅(せん)少(せう)ならん。罪(つみ)なくして功(こう)あり。之(これ)を放(はな)てるは烏(からす)山(やま)君(くん)臣(しん)の過(あやまち)なり。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その32

  　先(ま)づ仕(し)法(はふ)を再(ふたた)び興(おこ)さんとせば菅(すが)谷(や)より始(はじ)むべし。我(われ)其(そ)の他(た)を知(し)らざる也(なり)と、大(おほ)いに之(これ)を誡(いまし)む。某(なにがし)唯(ゐ)唯(ゝ)として退(しりぞ)き、先(せん)生(せい)の言(げん)を以(もつ)て君(きみ)に言(ごん)上(じやう)す。君(きみ)曰(いは)く、誠(まこと)に然(しか)り。速(すみや)かに夫(そ)れ菅(すが)谷(や)を帰(き)参(さん)せしめよと。是(これ)に於(おい)て衆(しゆう)吏(り)之(これ)を議(ぎ)し、帰(き)参(さん)せしむるに月(げつ)俸(ぽう)十口(じふにんぶち)を以(もつ)てせんとす、大(おお)久(く)保(ぼ)某(ぼう)来(きた)り先(せん)生(せい)に告(つ)げて曰(いは)く、我(わ)が君(きみ)先(せん)生(せい)の言(げん)を聞(き)き、速(すみや)かに菅(すが)谷(や)を帰(き)参(さん)せしめ、之(これ)に与(あた)ふるに俸(ほう)十口(じふにんぶち)を以(もつ)てせんとす。　 先せん生せい曰いはく、是これ我わが聞きくべき言げんにあらず、真しんに罪つみありて菅すが谷やを放はなたば、本もとより帰き参さんの道みちあるべからず。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その31

  　大(おほ)久(く)保(ぼ)某(なにがし)答(こた)へて曰(いは)く、彼(かれ)罪(つみ)ありて放(はな)たれたり。先(せん)生(せい)曰(いは)く、君(きみ)其(そ)の初(はじめ)に菅(すが)谷(や)をして道(みち)を請(こ)はしむ。予(われ)之(これ)に道(みち)を伝(つた)へて以(もつ)て君(くん)意(い)を達(たつ)せんとせり。其(そ)の人(ひと)罪(つみ)あらば何(なん)ぞ某(それがし)に一言(ごん)を通(つう)じて然(しか)る後(のち)放(はな)たざるや、道(みち)の為(ため)に力(ちから)を尽(つく)せしものを如(い)何(か)に家(か)臣(しん)なればとて、某(それがし)に告(つ)げずして進(しん)退(たい)し玉(たま)ふこと、其(そ)の意(い)を得(え)ざる処(しよ)置(ち)といふべし。加之(しかのみならず)今(いま)又(また)国(こく)家(か)の仕(し)法(はふ)を再(ふたた)び興(おこ)さんとするに、方(ほう)法(はふ)の本(ほん)末(まつ)を知(し)らざる人(ひと)に談(だん)ずるとも何(なに)を以(もつ)て其(そ)の事(こと)を挙(あ)ぐるを得(え)んや。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その30

  　先(せん)生(せい)人(ひと)に接(せつ)する毎(ごと)に其(そ)の誠心(まごゝろ)斯(かく)の如(ごと)し。 　烏(からす)山(やま)良(りやう)法(はふ)を廃(はい)し、菅(すが)谷(や)を放(はな)ち、謀(はかりごと)を得(え)たりとし、専(もつぱ)ら負(ふ)債(さい)を以(もつ)て目(もく)前(ぜん)の不(ふ)足(そく)を補(おぎな)はんとす。国(こく)民(みん)之(これ)を怨(うら)み、人(にん)気(き)亦(また)大(おほ)いに衰(おとろ)へ、荒蕪(くわうぶ)の地(ち)再(ふたた)び生(しやう)じ、貢(こう)税(ぜい)も亦(また)減(げん)ぜり。上(じやう)下(げ)の困(こん)窮(きゆう)弥(いよいよ)迫(せま)り如何(いかん)ともすべからず、某(それがし)の年(とし)に至(いた)り烏(からす)山(やま)侯(こう)仕(し)法(はふ)を廃(はい)し、菅(すが)谷(や)を放(はな)ちたることを悔(く)い玉(たま)ひ、大(たい)夫(ふ)大(おほ)久(く)保(ぼ)某(ぼう)を以(もつ)て再(ふたゝ)び仕(し)法(はふ)を先(せん)生(せい)に請(こ)はしむ。先(せん)生(せい)曰(いは)く、烏(からす)山(やま)の仕(し)法(はふ)菅(すが)谷(や)に始(はじま)れり、今(いま)何(なに)国(くに)にか在(あ)るや。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その29

  菅(すが)谷(や)の過(あやまち)今(いま)其(そ)の惑(まどひ)開(ひら)けたりといへども、盲(まう)弟(てい)を諭(さと)すに金(きん)を持(も)ちて教(をし)へざれば艱(かん)難(なん)に迫(せま)りし弟(おとゝ)何(なに)を以(もつ)て道(だう)理(り)を解(かい)せん、我(われ)是(これ)を以(もつ)て金(きん)を贈(おく)れり。然(しか)れども菅子(くわんし)能(よ)く大(たい)義(ぎ)を諭(さと)すや否(いな)や、将(はた)再(ふたゝ)び姑(こ)息(そく)に流(なが)れ、道(みち)を失(うしな)ふの処(しよ)置(ち)なきを必(ひつ)し難(がた)し。人(ひと)々(びと)道(みち)を踏(ふ)むの難(がた)きこと斯(か)くの如(ごと)し。二三子(し)夫(そ)れ之(これ)を鑑(かんが)み、一身(しん)の進(しん)退(たい)を過(あやま)つこと勿(なか)れ。一身(しん)過(あやま)つ時(とき)は一国(こく)の憂(うれ)ひとなり、一身(しん)道(みち)を踏(ふ)む時(とき)は一国(こく)の幸(さひはひ)となる。一身(しん)の進(しん)退(たい)亦(また)大(だい)ならずやと。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その28

  　且(かつ)子(し)我(わ)が言(げん)を聞(き)かざるの前(まへ)に当(あた)り盲(まう)弟(てい)を諭(さと)さば可(か)なり。既(すで)に心(こゝろ)を同(おなじ)くし、相(あい)約(やく)して共(とも)に我(われ)に借(か)らんとす。江(かう)都(と)に於(おい)て日(ひ)々(ゞ)に之(これ)を期(き)して待(ま)たんこと明(あきら)かなり。今(いま)子(し)大(たい)義(ぎ)を知(し)るといへども何(なに)を以(もつ)て俄(には)かに弟(おとゝ)の惑(まどひ)を解(と)かんや。惑(まどひ)解(かい)せざる時(とき)は兄(きやう)弟(だい)の約(やく)変(へん)じて怨(うらみ)の心(こゝろ)を生(しやう)ぜん。是(これ)も亦(また)不(ふ)可(か)なり。それ速(すみや)かに盲(まう)弟(てい)に送(おく)れ。　 　菅子(くわんし)止(や)むことを得(え)ずして之(これ)に随(したが)ひ金(かね)を持(も)ちて去(さ)る。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その27

  　某(ぼう)愚(おろか)にして大(たい)義(ぎ)を失(しつ)せり。先(せん)生(せい)の至(し)教(けう)に因(よ)りて過(あやまち)を知(し)り改(あらた)めんとす。何(なん)ぞ過(あやまち)を遂(と)ぐるをなさんや。先(せん)生(せい)曰(いは)く、子(し)の惑(まど)ひ散(さん)ずといへども盲(もう)弟(てい)何(なに)を以(もつ)て解(かい)せん。且(かつ)子(し)我(わ)が言(げん)を聞(き)かざるの前(まへ)に当(あた)り盲(まう)弟(てい)を諭(さと)さば可(か)なり。既(すで)に心(こゝろ)を同(おなじ)くし、相(あい)約(やく)して共(とも)に我(われ)に借(か)らんとす。江(かう)都(と)に於(おい)て日(ひ)々(ゞ)に之(これ)を期(き)して待(ま)たんこと明(あきら)かなり。今(いま)子(し)大(たい)義(ぎ)を知(し)るといへども何(なに)を以(もつ)て俄(には)かに弟(おとゝ)の惑(まどひ)を解(と)かんや。惑(まどひ)解(かい)せざる時(とき)は兄(きやう)弟(だい)の約(やく)変(へん)じて怨(うらみ)の心(こゝろ)を生(しやう)ぜん。是(これ)も亦(また)不(ふ)可(か)なり。それ速(すみや)かに盲(もう)弟(てい)に送(おく)れ。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その26

   菅子漸やうやく汗あせ衣ころもを沾うるほし再さい拝はいして曰いはく、嗟あ呼ゝ過あやまてり、某ぼう愚おろかなりといへども甞かつて道みちを聞きけり。是これ何なんの心こゝろぞや、思おもはざりき道みちを失うしなふの斯こゝに至いたらんとは。今いま先せん生せいの至し教きやうを得えて姑こ息そくの惑まどひ尽ことごとく開かい散さんせり。愚ぐ蒙まうなりといへども豈あに服ふく膺ようせざらんや。劣れつ弟てい窮きゆうするは固もとより其その分ぶんなり。何なんぞ之これを憂うれふるの暇いとまあらんや。願ねがはくは先せん生せい某ぼうの失しつ言げんを恕じよし玉たまへ。是こゝに於おいて先せん生せい二十金きんを出だして曰いはく、子しの志こゝろざしの差たがふが故ゆゑに烏からす山やまの道みちの絶たえんことを歎なげき、当然たうぜんの道みちを告つぐる也なり、今いま子し発はつ明めいせば幸さひはひなり。則すなはち二十金きんを持もちて去され。菅すが子や驚おどろき辞じして曰いはく、是これ何なんの事ことぞや。某ぼう愚おろかにして大たい義ぎを失しつせり。先せん生せいの至し教けうに因よりて過あやまちを知しり改あらためんとす。何なんぞ過あやまちを遂とぐるをなさんや。先せん生せい曰いはく、子しの惑まどひ散さんずといへども盲まう弟てい何なにを以もつて解かいせん。

  2015年12月23日

• 宮崎大学が「ボーイズ・ビー・アンビシャス第５集」を蔵書とし、３件所蔵館となった、感謝！

  宮崎大学1　新渡戸稲造 (にとべいなぞう) の留学談・帰雁 (きがん) の蘆 (あし)新渡戸稲造 [談]; 二宮尊徳の会 -- 2014 -- 2 内村鑑三神と共なる闘い 二宮尊徳の会 -- 2014 -- 3 内村鑑三神と共なる闘い -- 二宮尊徳の会 -- 2014 --英文を校正、「二〇一四年八月三〇日築地本願寺五日市剛氏講演会」 (p192-197)を追加 (編集者後書 (2刷に当って) による)新国立競技場の設計が決まった隈 研吾氏インタビューオルタナ 12月22日(火)2020年に開催される東京オリンピックの会場として、審議中だった「新国立競技場」が、大成建設と建築家の隈研吾氏が提案するA案に決まった。隈氏は国産材を使用するなど「サステナブル」を意識した建築を手がける。「21世紀は木の世紀」と話す隈氏のインタビューをオルタナ42号（2015年9月発売）から紹介する。世界的な建築家である隈研吾さんは「21世紀は木の世紀になる」と考える。木材の技術開発は進み、耐火・耐久性能が上がった。隈さんは、「木材が最先端な材となった今、世界の建築家は、サステナブルな木造建築で競い合っている」と話す。（聞き手・吉田 広子＝オルタナ副編集長、池田 真隆＝オルタナS副編集長）――日本に流通している約7割の木材は外国産で、証明書はあっても、違法伐採された可能性が残る「グレーな木材」と言われています。国産材の利用は3割ほどですが、この割合を増やしていくためには、建築家やデザイナーの意識から変えていく必要があると思っています。　木材とコンクリートなどのハイテクノロジー素材は対比されて語られてきたが、今はその対比はなくなっている。技術開発によって木材は、欠点とされていた耐火性能も高まり、最先端な材となった。世界中の建築家にとって、木材は誰もが関心を持たざるを得ないものとなり、木造建築の分野で競い合うようになりだした。■「傷が分かる」が耐久性――建築家が木材に関心を持ち出せば、21世紀は「木の世紀」になっていくということでしょうか。たぶん、最終的にはそうなると思う。1995年くらいから、「木造ルネッサンス」の時代だと感じている。――建築において、環境やサステナブルへの意識はどうでしょうか。　正しい建築とは何かと考えるときの基準で、最も重視するものが、「サステナブル」である。木は、中に二酸化炭素を取り入れることができる。燃やしてしまったら、また二酸化炭素が出てしまう。大事に長く使うことが一番、地球温暖化の防止につながる。――隈さんはこれまで、木を組んだ建築物を設計されてきましたが、木造とコンクリートでは、耐久性の違いはあるのでしょうか。素材だけの性能でいうと、木のほうが優れている。コンクリートは、弱ってきたときに見た目では分からない。木は、傷んできたときに、「あ、腐ってきたな」ということが分かる。分かるということが、実は耐久性だと思っている。法隆寺が世界のどんな建築よりも長持ちしているのは、傷んでいる木を取り替えてきたから。古くなったものを取り替えることは、人間社会においても健全だと思う。コンクリートだと、弱っているか分からなくて、突然壊れて、みんな怪我してしまう。システムとして不完全だ。――国産材を使えば、地球温暖化の防止につながるのですが、流通の課題は山積みです。外国材に比べて価格が高く、国産材を取り扱う製材所も多くありません。それに、国産材を選びたくても、消費者が見た目で国産材かどうか判別することも難しい。社会全体で、「国産材を使う」というコンセンサスが取れれば、価格や流通も変わっていくでしょう。国産材に舵を切る役目として、ぼくら建築家や材選びに携われる人が意識を持たないといけない。　民間業者の技術開発によって木の最大の欠点をカバーでき、政府としても国産材の使用を促すようになってきた。建築家もその流れに追いついていかないといけない。建築のデザインが追いつければ、脱コンクリートへと時代を動かせる。木のデザインは、もともとは日本人が一番先端だったのだから、ぼくらは頑張らないといけない。■「建築の民主化」が起きる――隈さんが建築家を目指すきっかけは、子どもの頃に夢中になったつみきにあるとのことですが、つみきのどのようなところが好きになったのでしょうか。　つみきはぼくの人生にとって、非常に重要なもので、子どもの頃はつみき少年だった。子どもの頃、畳の部屋に寝転びながら、一人でずっとつみきで遊んでいた。母からは、「つみきを与えれば、手が掛からない子」と言われていたよ。――森林の保全活動を行うmore Trees（モア・トゥリーズ）と協力し、隈さんがデザインしたつみきの開発費をクラウドファンディング「Makuake（マクアケ）」で集めました。このつみきは、どのように楽しんでほしいと思っていますか。　子どもの頃から、自分のつみきをいつかは作りたいと思っていた。だから、今回のモア・トゥリーズからの提案は願ってもないものだった。モア・トゥリーズの森林保全活動は、もともと知っていた。今回は、つみきをデザインしてほしいという提案を受けて、即座にやろうと思った。ぼくがデザインしたこのつみきは、宮崎県諸塚村のスギを使っていて、軽いが、積み上げていけば、家も家具も公園も作れる。クラシックなつみきは礎石像タイプで、積み上げていくと、重くなっていく。これは、その形から抜け出していて、積むという行為をするうえでは、同じなのだけど、礎石像が持っている「中が詰まっている感じ」をなくした。隙間があるので、風や光が抜ける構造になっている。高くしても重量が掛からない。大きくなって崩れても怪我する心配はない。軽やかさと格調性があり、現代に適していると思う。　現代のモノづくりは、ITでもファッションでも「消費者も参加する」という動きが起きている。建築は、その意味では遅れていて、建築家ではないとかかわれないと思われている。消費者は建築家やデザイナーの「崩れないアイデンティティー」を楽しんできた。でも、今は作るたびにガラっと変わるような、「アイデンティティーの揺らぎ」を楽しむ時代ではないかと思っている。　このつみきで多くの人が、自分の空間をそれぞれ作れば、建築に興味を持ち出し、「建築の民主化」が起きてくるのではないかと思っている。設計に多くの人が参加して、揺らぎを楽しめるようになれば面白い。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その25

  　且(かつ)子(し)聊(いささ)かも我(わ)が辛(しん)労(らう)を察(さつ)せば専(もつぱ)ら過(あやまち)を改(あらた)め、烏(からす)山(やま)の再(さい)興(こう)を祈(いの)り、至(し)誠(せい)を顕(あら)はし、再(ふたた)び道(みち)行(おこな)はれ積(せき)労(らう)空(むな)しからざる時(とき)至(いた)らば当(たう)方(はう)にも来(きた)るべし。左(さ)なき内(うち)は我(わ)が面(おもて)を見(み)るも忍(しの)びざる心(こゝろ)あるべし。何(なん)ぞ計(はか)らん、我(わ)が苦(く)心(しん)、子(し)の忠(ちゆう)孝(こう)も共(とも)に廃(はい)し、又来(きた)りて盲(まう)弟(てい)を我(われ)に救(すく)へよと請(こ)はんとは、仮(たと)令(ひ)姑(こ)息(そく)の愛(あい)を以(もつ)て子(し)の弟(おとゝ)を救(すく)ひ与(あた)ふるとも、何(なに)を以(もつ)て盲(まう)弟(てい)独(ひと)り全(まつた)き事(こと)を得(え)ん。是(こ)れ我(わ)が痛(つう)歎(たん)する処(ところ)なりと。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その24

  　斯(か)くの如(ごと)くにして歳(さい)月(げつ)を送(おく)らば、烏(からす)山(やま)再(さい)盛(せい)の道(みち)弥(いよ)々(いよ)絶(ぜつ)せんこと疑(うたが)ひなし。子(し)一旦(たん)誠(まこと)を発(はつ)する時(とき)は興(こう)国(こく)の恵(けい)政(せい)行(おこな)はれ、誠(まこと)を廃(はい)する時(とき)は再(さい)盛(せい)の道(みち)も亦(また)廃(はい)せり。烏(からす)山(やま)の安(あん)危(き)は子(し)の誠(せい)不(ふ)誠(せい)にありて他(た)にあらざること之(これ)を以(もつ)て見(み)るべし。子(し)は国(くに)の臣(しん)下(か)を咎(とが)むといへども彼(かれ)何(なん)の罪(つみ)かあらん。若(も)し彼(かれ)此(こ)の言(げん)を以(もつ)て子(し)を詰(なじ)らば、子(し)何(なん)の言(げん)を以(もつ)て弁(べん)ずるや。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その23

  　君(きみ)の挙(きよ)用(よう)弥(いよ)々(いよ)盛(さか)んに、功(こう)業(げふ)も亦(また)日(ひ)々(ゞ)に顕(あら)はる。奸(かん)人(じん)ありといへども何(いづ)れの処(ところ)に言(げん)語(ご)を費(ついや)すことを得(え)ん。仮(たと)令(ひ)讒(ざん)者(しや)言(げん)を放(はな)つといへども誰(たれ)か之(これ)を信(しん)ぜんや。此(こ)れをこれ行(おこな)はずして一旦(たん)辞(じ)せし禄(ろく)を食(は)み、身(み)の進(しん)退(たい)を優(ゆた)かにして事(こと)を為(なさ)んとせし過(あやま)ちより終(つひ)に国(こく)家(か)の大(たい)幸(かう)を失(うしな)ひ、上(じやう)下(げ)の大(たい)患(くわん)を生(しやう)ぜし事(こと)なれば、子(し)の退(しりぞ)けらるゝもの亦(また)宜(むべ)ならずや。退(しりぞ)けらるゝといへども未(いま)だその過(あやまち)を顧(かへり)みず、罪(つみ)を国(こく)家(か)に託(たく)して悔(く)ゆるの心(こゝろ)なく、又(また)憂(うれ)ふるの誠(まこと)なし。

  2015年12月23日

• 報徳記巻の３【六】烏山仕法中廃、菅谷放逐せらる　その22

  然(しか)して上(じやう)下(か)の窮(きゆう)厄(やく)既(すで)に極(きはま)り、倉(そう)廩(りん)空(くう)虚(きよ)にして千慮(りよ)百計(けい)之(これ)を救(すく)ふの道(みち)なし。子(し)断(だん)然(ぜん)として救(きう)荒(くわう)の志(こゝろざし)を発(はつ)し、心(こゝろ)に誠(まこと)に之(これ)を求(もと)めしかば、我(われ)応(おう)じて以(もつ)て数(すう)千人(にん)の飢(き)者(しや)を救(すく)ひ、続(つづ)いて荒(くわう)蕪(ぶ)を挙(あ)げ撫(ぶ)恤(じゆつ)の道(みち)を施(ほどこ)し、禍(わざわひ)を転(てん)じて国(こく)家(か)の大(たい)幸(かう)を開(ひら)きしは、全(まつた)く子(し)の誠(ま)心(ごゝろ)より発(おこ)りしにあらずや。然(しか)らば此(こ)の誠(ま)心(ごゝろ)を益(ますます)瑳(みが)き、我(わ)が言(げん)に差(たが)はず恩(おん)禄(ろく)を辞(じ)し、我(わ)が贈(おく)りし米(べい)粟(ぞく)を食(は)みて以(もつ)て忠(ちゆう)勤(きん)怠(おこた)らざる時(とき)は、

  2015年12月23日

全9982件 (9982件中 3551-3600件目)

< 1 ... 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 >