仙丈ヶ岳~その2(北沢峠~小仙丈岳)
心配だった天候もまずまずだったので、北沢峠から先に進み、仙丈ヶ岳山頂を目指すことにしました。北沢峠(標高2,035m)をスタート北沢峠から仙丈ヶ岳へ登るルートは2つあり、仙丈尾根から小仙丈岳を経由するルートと、南アルプス林道を少し下った太平山荘から藪沢沿いを行くルートがあります。ガイドブックなどでは、登りは藪沢沿いのルートを行き、下りは仙丈尾根ルートを行くようになっていますが、今回は仙丈尾根ルートを登ることにしました。北沢峠を出発したのが7:10、朝日の差し込む針葉樹林帯の中を、ひたすら登って行く感じです。道は思ったよりよく踏まれていて、目印もわかりやすいので迷うことはありません。北沢峠を出発して約25分、ベンチがあったので見てみると、まだ二合目でした。このペースで計算すると、あと1時間40分で山頂ということになりますが、さすがにそうは行きませんでした。この先も樹林帯が続き、五合目に近づくにつれて、傾斜もきつくなってきます。樹林帯の切れ間でひと息ついて振り返ると、木々の間に鳳凰山が顔をのぞかせていました。そして北沢峠を出発してから1時間20分、ようやく大滝の頭まで来ました。ここが五合目、標高2,520mです。五合目から先も岩の転がる急な登りが続きましたが、樹林帯も切れ始めてきて、森林限界も近いことが感じられました。やがて森林限界を超えると、一面のハイマツ帯に飛び込んでいました。そしてここから先、振り返ると南アルプスの大パノラマが広がっていました。摩利支天を従えた「南アルプスの貴公子」甲斐駒ヶ岳思えば7月に大菩薩峠を訪れた時、あいにくの天候で眺望がなく、南アの山は見えなかったのですが、仙丈尾根からは甲斐駒の向こう側に大菩薩連嶺が見えていました。甲斐駒の北西に続く鋸岳その向こうには八ヶ岳の山並みも浮かんでいます鳳凰三山地蔵ヶ岳のオベリスクもはっきりと見えていました。本当に来てよかったと思うと同時に、「自分は地球にいる」と実感できる瞬間でした。そして白峰三山の方向に目を転じると 富士山も雲の上に顔を出していました。富士山と北岳の日本1位・2位コラボを撮りたかったのですが、あいにく北岳は雲の中でした。この先山頂付近では視界が効かないと思われたので、今のうちに南アルプスの貴公子と写真を撮っておきました。大パノラマに後押しされながら、引き続き仙丈尾根を登って行ったのですが、台風の影響からか強烈な横風が尾根を吹き渡るようになりました。下山した後のバスでのことですが、北岳の方から降りて来た人の会話を聞いていると、あちらでは眼鏡が吹き飛びそうな強い風だったようです。それにしても風の強さを表すのに「眼鏡が吹き飛ぶ」とは、白峰三山ではドリフみたいなことになっていたのかも知れません。仙丈尾根の方もハイマツが横風になびいて、その先にようやく小仙丈岳が見えてきたと思ったら、ニセピークでした。ピークを越えるとさらにピークがあり、今度こそ小仙丈岳だと思います。ハイマツの中をもうひと登りです。そして北沢峠を出発してから2時間15分、ようやく小仙丈岳に到着しました。小仙丈岳(標高2,855m)山頂標識が落ちていたので、手で持ち上げてみました。小仙丈岳からはいよいよ仙丈ヶ岳山頂を目指すのですが、この大パノラマを見られたのは、ここが最後となりました。