北岳~その2、八本歯のコル
分岐した大樺沢の左股をたどり、八本歯のコルの稜線を目指して登って行きました。左股の雪渓アイゼンは持ってこなかったのですが、シャーベット状の斜面につま先を蹴りこみながら、特に問題はありませんでした。それでもこの辺りからガスがかかってきて、次第に視界が悪くなってきました。斜面には花畑が広がっていて、きつい登りの間にふと目を向けると、少し休まります。南アルプスの天然水でひと息つきます。視界が悪くて先が見えない上に、次第に足場もガレてくるようになりました。行けども行けども先は続く感じです。ようやく視界が開けてきた頃、八本歯の尾根線が見えてきました。さらに稜線をひと登り、植生が変わってきて、森林限界も近いことがわかります。そしてようやくの思いで八本歯のコルに到着しました。八本歯のコルの標高は2,920m、広河原(標高1,510m)から計算すると、標高差1,400mを登ってきたことになります。(要した時間は5時間です)「雨の南アルプス」「雪の北アルプス」の名前の通り、北アに比べると森林限界の高度が高い南アですが、ここまで来ると森林限界を超えて、視界が開けていました。これまで登ってきた大樺沢は再び雲に覆われていました。八本歯のコルはその名の通り鞍部になっていて、東の稜線上には「ボーコン沢ノ頭」、西の稜線上には北岳があります。ボーコン沢ノ頭名前は変ですが、なかなかインパクトのある山容です。ボーコン沢ノ頭の向こう側には、雲海の上に富士山頂が見えています。(画像にすると小さいですが、富士山もどっしりと大きく見えていました)北岳これまで画像でしか見たことなかった北岳バットレス、実際に目にするとすごい迫力です。八本歯のコルからは、富士山・北岳と標高の第1位・2位を望むことができますが、南側に目を向けると、標高第3位の間ノ岳の姿がありました。間ノ岳(標高3,190m)2位の北岳(標高3,193m)との差は3mあまり、富士山が断トツの第一位です。この日は北岳には登らず、南側をトラバースして、間ノ岳の稜線へと向かいました。北岳のトラバースルート斜面にへばりつくような恰好で、かなりの高度感とスリルがあります。北岳をトラバースし終わると、稜線上に赤い屋根の建物とカラフルなテント群がはっきり見えてきました。この日の目的地、北岳山荘です。