『噂』 荻原 浩
「レインマンが出没して、女のコの足首を切っちゃうんだ。でもね、ミリエルをつけてると狙われないんだって」。香水の新ブランドを売り出すため、渋谷でモニターの女子高生がスカウトされた。口コミを利用し、噂を広めるのが狙いだった。販売戦略どおり、噂は都市伝説化し、香水は大ヒットするが、やがて噂は現実となり、足首のない少女の遺体が発見された。衝撃の結末を迎えるサイコ・サスペンス。 (「BOOK」データベースより)以前、ホンヤガヤマダさんから教えていただいた作品。荻原さん作品は『愛しの座敷わらし』『なかよし小鳩組』に続いて3作目になりますが、3作に共通して持った感想は、荻原さんが描く「お父さん」が好きだなぁ、ということ。けっこうくたびれた中年だったりするんだけど、子供のことをすごく大事に思っていて、ちょっと空回りもしちゃうけど、なんか一生懸命で、どこかユーモラスな感じがとても微笑ましくて。この作品に登場する小暮刑事も、そんなお父さん。小暮は5年前に妻を亡くし、高校生の菜摘と二人暮し。時々さむい親父ギャグで菜摘を呆れさせているが親子関係はおおむね良好といえる。刑事という仕事柄、帰宅時間が不規則で家事を菜摘に任せてしまうことが多いためせめて菜摘のお弁当だけは自分が作ってやろうと毎朝台所で奮闘している。ある日、小暮の勤務する目黒署管内の森の中で少女の全裸の変死体が発見された。遺体は足首を切断されていて、足首から先がなかった。捜査本部が設けられ、小暮は自分より年下で階級が上の本庁の女性警部補、名島とコンビを組むことになった。殺人事件の捜査は初めてだという名島に対して内心不安を抱いていた小暮だったが、思いもよらぬ名島の機転や洞察力に感心する。独身女性だと思っていた名島が、実は2年前に夫を亡くし5歳の息子と二人暮しという、同じ境遇だったこともあり二人は次第に息の合ったコンビとなっていく。そんな中、同じ手口の第2の殺人事件が起きてしまう。足首のない無残な姿で発見された少女は、菜摘の親友だった。聞き込みを重ねるうち、事件以前から女子高生たちの間で少女の足首を切り取る「レインマン」という殺人鬼の噂が広がっていたことを知った小暮と名島。その噂が事件となにかしらの関連があると睨んだ二人は「レインマン」の噂の出所を探っていく・・・。陰惨な事件の話なのに、ちょっとユーモラスな雰囲気があり小暮、名島、菜摘といったキャラクターたちが魅力的でかなり感情移入しながら読み進めていました。それだけに、読み終わった瞬間の驚きは尋常でなく、頭の中が真っ白になり、しばらく硬直状態に…。紹介文は誇張ではなく、まさに「衝撃の結末」でした。読後感がいいとか悪いとか、そんな単純な判断もできないほどすごく複雑な思いが残る、今まで体験したことのない読後感。ラストについては賛否両論あるかと思いますが、個人的には、やっぱりすごい作品だな、と思いました。絶対に忘れられない作品になりそうです。