『謎の転倒犬』 柴田よしき
謎の転倒犬― 石狩くんと(株)魔泉洞 ―就職が決まらない大学四年の僕は、アルバイトを終えた早朝厚化粧の女性・摩耶優麗と出会った。こんなバイトをすることになった要因をズバリ言い当てた優麗は、占いの力で時を遡り僕の過去を覗いてきたという。さらに僕が遭遇したスリ事件を鮮やかに解決した優麗のもと、(株)魔泉洞に就職することになった僕。果たして、優麗の力は占いなのか? それとも推理なのか? カリスマ占い師・麻耶優麗の名推理と、優麗に翻弄される石狩くんの受難をユーモラスに描いた、本格ミステリ連作集。 (東京創元社HPより)今年の5月に出たばかりの柴田さんの新作です。『謎の転倒犬』っていう妙なタイトルを見て、「どんな話じゃい!?」と興味津々でおりましたところ、目次を見た途端、「プッ!」って吹いちゃいました。この作品、連作短編集なんですけど、各話のタイトルが、「時をかける熟女」「まぼろしのパンフレンド」「謎の転倒犬」「狙われた学割」「七セットふたたび」・・・って、これ全部、筒井康隆さんと眉村卓さんの小説のタイトルのパクリじゃん!(爆)いや、パクリっていうか、パロディですね、これは。一応ご説明しておきますと、こういうことです。「時をかける熟女」→「時をかける少女」筒井康隆「まぼろしのパンフレンド」→「まぼろしのペンフレンド」眉村卓「謎の転倒犬」→「なぞの転校生」眉村卓「狙われた学割」→「ねらわれた学園」眉村卓「七セットふたたび」→「七瀬ふたたび」筒井康隆話の内容は、ご本家の作品とは全く違うのでたぶん柴田さんは、まず「タイトルありき」でそれぞれの話を作ったんでしょうね。うーん。なんだか楽しそうです♪そんな遊び心満載のこの作品ですが、これまでの柴田さんの作品の中でいうと『猫探偵・正太郎シリーズ』と系統が近いかも。殺人のように物騒な事件はまったく起きません。ジャンル的にいうと「日常ミステリ」かな?デート中に突然失踪してしまったパン好きの男がテーブルの上に残していったクリームパンの謎。散歩中に何もないところで転倒してしまう犬の謎。そんな謎の数々をカリスマ占い師・摩耶優麗(まやゆうれ)が、鋭い観察眼で次々と解明していくというお話です。この作品、キャラクターがすごく楽しいです。摩耶優麗さんは、強引でわがままで大食いですっぴんの時と厚化粧の時のギャップが激しくて推定年齢20代半ばから50代、と年齢不詳(笑)(株)魔泉洞の屋台骨を支える「ウサギちゃん」こと宇佐美儀一郎さんは、有能で腕っ節も強いのになぜかおネエ言葉を使うオカマチックなおっさん。そんな二人にこき使われ、振りまわされるのがちょっと気の弱い主人公・石狩くん。それぞれいい味出してるんですよね。シリーズ化して欲しいなぁ、これ・・・