川上訓で読む佐藤一斎236;言志後録184-理想的生活
鶏鳴而起、人定宴息。門内粛然、書声満室。道行妻子、恩及臧獲。家無酒気。凛に余粟、豊不至奢。倹不至嗇、俯仰無愧、唯守清白、各有其分。如是亦足。鶏鳴いて起き、人定にして宴息す。門内粛然として、書声室に満つ。道は妻子に行われ、恩は臧獲に及ぶ。家に酒気なく、廩(くら)に余粟(よぞく)有り。豊かなれども奢に至らず。倹なれども嗇(しょく)に至らず。俯仰(ふぎょう)愧(は)づる無く、唯だ清白を守る。各(おのおの)其の分有り。是くの如きも亦足る。鶏が鳴いて起き、夜10時になれば打ち寛いで休む。門内はきちんと整理され、読書の声が部屋に満ちている。自分が奉じる道は妻子によって行われ、恵みは使用人にまで及んでいる。家には酒気が無く、米蔵には余分の穀物が蓄えてある。物は豊であるが贅沢ではなく、倹約はするがけちではない。仰いで天に恥じず、俯いて地に恥じず、ただ、清廉潔白を守っている。人、各々その分がある。こういうようであれば足りるというべきである。○人定―人が寝締まる午後10時。 ○宴息―打ちくつろいで休む。○臧獲―下男と下女。