宮日連載、友の自分史「ブラジルに五十年(抄)」-30
大学卒業と同時に渡伯した学友長友契蔵君の自分史「ブラジルに五十年」の紹介、第30回No64「果物の変遷」種類豊富で安さ魅力ブラジルの都市の発達、道路網整備、文明の利器の進歩をこの目で50年にわたって見てきた。農業面の発達も目を見張るものがある。コーヒー、綿、はもとより牛、鶏、豚肉、オレンジ、大豆、セルローズ、エタノールなども世界的な供給国。これに伴い農業機械も大型化し、アグリビジネスでは人工衛星やコンピューターを使った経営が一般化している。その弊害が完全に解明されぬままに大豆、トーモロコシなどの遺伝子組み換えが普及しつつあるが、今世紀の世界農業の担い手はブラジルであるといわれている。ブラジルでさまざまな果物の変遷を見てきた。まずマンゴー。インド原産だがブラジルによく適合しブラジルの農村を歩くとどこにでもマンゴーの大木があり樹下を歩くのに邪魔になるくらい実が落ちている。小さくて筋が多く大して美味しいものではなかった。現在のマンゴーはいかにも食べたくなるような色で、食べると筋がなく実にうまい。次はパパイア。ブラジルに着いた頃のパパイアは大きさがまちまちで、特殊な匂いがして味も物足りなかった。今はハワイマモンや台湾マモンが導入され、甘くて形も手ごろ。食卓には欠かせないデザートとなっている。スイカは最初見たのは10キロもある丸形の北米種だったが、日本種の大丸大和が出回り、今は姿を消して、少し大型の丸いスイカが出回っている。最近、日本ナシが八百屋に姿を見せるようになったが日本で食べるような汁液豊富な柔らかく甘いナシには出会えない。ブラジルの富有柿は大きさ、色つや、味といい日本では知らなかった素晴らしい味が楽しめる。ミカン類では、オレンジ、レモンのほかにポンカンが市場にあふれ、最近はデコポンや金柑も出回るようになった。ブラジルには、ほかにも珍しい果物がたくさんある。レイシ、アテモヤ、マンゴスチン、スターフルーツ、ジャガー、バンジロウ、キウイ、アボガドなど。果物の種類は豊富で値段が安いのは魅力である。No65「アマゾンの県人」新事業や栽培で功績アマゾン河は、全長6,300キロ、流域面積は705万平方キロ、ペルー、エクアドル、コロンビア、ベネズエラ、ボリビアから運んできた土砂が堆積してできた河口の町がベレンである。ベレンは人口140万人。今年2月、宮崎県からの農業研修生を案内してベレンを訪問した。サンパウロから3,200キロ飛行機でも3時間半かかる。土地は肥え、年間を通して気温は28度前後。このため植物の生育は旺盛だが病害虫の発生も多いようである。ピメンタ単作ではフザリウム菌による立ち枯れが発生しピメンタ栽培が危機に陥ったので、最近は、パラー栗、バナナなどとの混植法が普及している。戦後、宮崎県からも多くの人がベレンやトメアスーに入植してこの地方のリーダー的存在となり大きな功績を残している。下前原輝男さんはアセローラに着目、品種改良を重ねて一大清涼飲料水の原料として育て上げ、93年に第26回山本喜誉司賞を受けた。デンデヤシ栽培の吉野秀幸さん、ベレンの日本人会会長の横山秀明さんはベレン郊外に大きなレンガ工場を持ち、一帯の46工場で品質の良いレンガや瓦を出荷している。今回の訪問で一番関心のあったのは小野和親さんのテッカ(チーク)の造林であった。小野さんはトメアスーに入植し、多くの苦労を重ねカピタン・ポッソに移転して現在に至っている。チークの将来性に目をつけた小野さんはマレーシアから苗を取り寄せたドイツ人農場に何度も足を運び徹底的に研究。その後、テッカの造林を始め6万本が既に伐採期に入り、自分で製材機械を導入し、材の販売も開始している。チークはインドやマレーシアが原産地で高さが45メートル、直径3メートルになり、約15年で伐採できるようになる。伐採直後の黄色からやがて暗褐色になり、一度乾燥したら伸び縮みせず、割れたり反ったりしにくい。シロアリや病害虫に侵されることも少ないので船舶や木工用材、家具用材として東南アジアでは最重要樹木とされている。小野さんのテッカ林を見ると。生育が非常に旺盛、葉の長さは90センチ近くなり、二酸化炭素吸収量が多く環境浄化には最適な樹木と思われる。このような樹木に着目した小野さんに敬意を表したい。