『チーム・オベリベリ』乃南 アサ
超長編で、ぶ厚い本です。明治の初めに北海道開拓に入った人たちの物語。会社というものが耳慣れない時代に「晩成社」という実在した株式会社が出資者を募り、伊豆の農民を集めて、オベリベリ(現在の帯広)へ入植した。入植者の一人、鈴木カネは武士の娘で維新後に横浜の共立女学校で学び、卒業後は教師をしていた。つまり、高学歴のお嬢様。カネは武士だった父と兄、兄の友人でやはり武士だった渡辺勝と結婚し、一緒にオベリベリへ渡った。明治維新により、武士でなくなった人たちが、農民と共に鍬を持ち畑を拓く。当時のオベリベリは道路もなく、移動手段はアイヌの丸木舟で川を上る。人力ではなかなか畑は拓けないし、冬は土が凍るので農作業はできない。収穫が見込めないのに、2年目からは株主に返済義務が生じる。女学校で西洋風の生活をしていたカネは本土へは戻らない覚悟で農作業をしながら、夜は子供たちに勉強を教える。蚊に刺されると、おこり(マラリア)に感染し、高熱が出るので、アイヌの知恵で、ヨモギを燻しながら畑仕事をする。マラリアと言えば、熱帯地域の感染症かと思ったら明治期は北海道でも流行していたそうだ。薬草や、冬の保存食など、色々なことをアイヌの力を借りながら北海道の過酷な自然の中で生き抜いていく。秋の夜長に最適な小説です。この長さだと、上下巻にすれば読みやすいのに、と思いながら、本の重さに耐えました。チーム・オベリベリ [ 乃南 アサ ]