『夏日狂想』窪 美澄
中原中也の才能を開花させた女性作家「長谷川泰子」の生涯を描いた小説。「朱より赤く 高岡智照尼の生涯」も女性の一生を描いたものでした。ほとんど知られていない女性を小説で描いてくれることはうれしいことです。今回の長谷川泰子も全然知りませんでした。中原中也は有名なのに。作品の中では主人公は野中礼子、若くして亡くなった詩人は水本。明治から昭和にかけて登場する文人の名は芥川龍之介や川端康成は実名なのに林芙美子や小林秀雄、中原淳一は実名ではない。巻末の参考文献をみれば想像はつくが、礼子にか直接関わる人物は偽名にしたのだろう。水本(中原中也)と生活を共にし、別れた後も交流した様子から水本の純真無垢で天真爛漫な性格が現れている。長谷川泰子の「中原中也との愛ゆきてかへらぬ」を読んでみたい。夏日狂想 [ 窪 美澄 ]