『善医の罪』久坂部 羊
殺人罪で訴えられた医師の裁判の話。クモ膜下出血で心肺停止した患者が意識不明のまま数日がたち、回復の見込みがないため、生前の本人の意志もあり、家族の了解を得て、尊厳死に導いた医師が3年後に殺人罪で逮捕、起訴される。医療現場を知らない刑事や検察官が本人の供述を無視して、殺人のストーリーを仕立て上げる。これで、有罪になったら医師なんてやっていられない、と思う。思い出したのは、昭和天皇が死亡する前の状態だ。毎日、「下血が何ℓでした」という報道がされていた。延命治療をしても、意識が戻る見込みはなく、機械で呼吸させられて心臓は動いているが、多臓器不全になり、全身がむくんで黒くなり、顔が変わるほどパンパンになる。鼻や目からも出血し、下血すると、すごい臭いがするそうだ。つまり、昭和天皇は尊厳死も許されなかったのか。善医の罪 [ 久坂部 羊 ]