『ジェンダー・クライム』天童 荒太
男性の絞殺遺体が発見され、解剖では重視されなかった男性の性被害が判る。被害男性の息子は数年前の集団レイプ事件の加害者だったことから、思いもよらない方向へ展開していく。当時の加害者大学生4人は政治家のコネを使って不起訴に。そして、もう一つの政治案件、地位のある男性ジャーナリストが女性を酔わせてレイプしたのに、逮捕状が執行されなかった。これは実話だ。正しい捜査をした警察官が左遷された。たとえ裁判にならなくてもネットで情報が流されて、個人が特定されてしまう。被害者だけでなく加害者にも一生傷が残る。性犯罪の背景。作者の謝辞に「国全体、社会全体に連綿として受け継がれてきた男女間の差別の存在が文化的背景にある」と書かれている。最近は、ジェンダーやハラスメントという言葉が浸透してきたが、まだまだ日本は遅れていると思う。そして、政治家も堕落していると思う。ジェンダー・クライム [ 天童 荒太 ]