『猫を棄てる 父親について語るとき 』村上 春樹
台湾出身の高妍(ガオイェン)の挿絵がノスタルジックで村上春樹の文章と合っています。父との思い出で一番に思い出すのが一緒に猫を捨てに行ったこと。小学校低学年の村上少年にとって、特に印象に残っているらしい。その猫がすぐに戻ってきてしまったから。父はお寺の次男として生まれた。毎朝仏壇に向かってお経を唱えていた。誰のためにお経を唱えているのかと尋ねたら、「戦争で死んでいった人たちのため、亡くなった兵隊や、敵であった中国の人たちのためだ」と答え、それ以上は語らなかった。あとがきには「戦争というものが一人の人間の生き方や精神をどれほど大きく深く変えてしまえるかということだ」父は3回も召集され、戦地へ行った。もし、戦死していたら自分は存在しない。「歴史は過去のものではない。意識せずとも次の世代へと否応なく持ち運ばれていく」過去の歴史をなかったことにして、人も国家も先に進むことはできない。と、しみじみと感じました。猫を棄てる 父親について語るとき [ 村上 春樹 ]