『i(アイ)』西 加奈子
「i」という数学の虚数がタイトルになっています。自分は何者か?シリア人孤児でアメリカ人父と日本人母の養子としてアメリカで暮らしていたアイはアメリカ社会に違和感を感じていた。自分で考え、自分の意見を求められる社会で小さいころから両親からも「あなたの気持ちはどうなの?」と、自分の意見を言うように教育されてきた。中学の時に父親の転勤に伴い日本の学校に入る。みんなが同じ制服を着て、同じ行動をする。自分の意見は聞かれない。そんな日本の社会を心地よく思うアイ。シリアでは内戦で大勢の人が犠牲になっているのに、自分は不自由のない生活をしている。そこへ東日本大震災が起こり、自分が生きていることに罪悪感を持つ。西加奈子ワールドの新しい境地というか、世界情勢や自然災害もひっくるめて小説にしてしまうエネルギーに衝撃を受けました。日本人でもないアメリカ人でもないアイの気持ちに寄り添うことは簡単ではないし、結論が出る問題でもないし、見て見ぬ振りすることもできない・・・表紙の絵も本人の作で見ているだけで面白いです。i [ 西加奈子 ]【内容情報】(「BOOK」データベースより)「この世界にアイは存在しません。」入学式の翌日、数学教師は言った。ひとりだけ、え、と声を出した。ワイルド曽田アイ。その言葉は、アイに衝撃を与え、彼女の胸に居座り続けることになる。ある「奇跡」が起こるまではー。「想うこと」で生まれる圧倒的な強さと優しさー直木賞作家・西加奈子の渾身の「叫び」に心揺さぶられる傑作長編!