他生の縁
袖すりあうも他生の縁。酔っぱらっていたからだと思う。楽しいお酒だった。池袋の駅を歩いていた。相変わらず人が多い。一人ひとりの顔が気になる。「この人とすれ違う確率ってどれくらいなんだろう?」同じ時代に生きて、この時間に池袋駅のここを歩いている人。そして、ぼくがその人の存在を視野にとらえる。数え切れないほどたくさんの人がいるけど、たとえば、東京に住んでいる人を分母にしても、とても低い確率でのすれ違いだと思うし、日本全体を考えればもっと低いし、世界全体、あるいは、人類が誕生して以来のすべての人たちを対象にすれば、限りなくゼロに近いだろうと思う。酔った頭でそんなことを考えていたら、出会う人たちが、何だか愛しくなってきて、さすがに声には出さなかったが、心の中で、「ご苦労様」「がんばっているね」「ありがとう」と声をかけていた。そうすると、顔がゆるんでくる。ニコニコと笑顔が出てくる。「変な酔っ払いだ」と思われていたかもしれないな。袖擦り合うも他生の縁。こうやって池袋の駅ですれ違うのも、何か縁があってのこと。そう思うと幸せな気分になってくる。懐かし人と会えたからか。来世はもっと深い関係での出会いがあるかも。よろしく。