葉っぱの蝶が飛ぶ」
娘と期間限定のりんごまるごとスウィーツを食べに行った。数年前まで、こんな時間が持てるなんて夢だった。ウェスティンホテル大阪の中庭は、真冬の木々にも輝きがある。何種類もの緑色と枯葉の茶色は、絵の具に変えてしまいたいような衝動に駆られる。一本の木に止まる葉っぱの蝶が、幻想的で見惚れた。紅玉をまるごと一個、1時間もかけて焼き上げている。底にはバスクケーキ。何層もの紙のように薄いパイに包まれている。アイスクリームはほぼ最後まで溶けなかった。たっぷりの生キャラメルソースは、まさにカラメルソースだ。苦味と控えめの甘さがクセになる。たっぷりと使っても、素材の美味しさを生かしてくれる。毎年、この時期にあるようだ。何でもないような木に少し残った赤い葉。冬の庭だからこそ、主役になれる。そういう存在感が、たまらなく愛おしい時がある。昭和の一コマ。部屋の窓から見える中庭は、贅沢な景色だ。冬の庭は一見、色づくものが何も無いように見える。けれども、繊細な色彩の存在に気づく。枯山水に通じる日本らしい静の美しさを感じる。数時間前の悲しみが、こんな景色に癒される。カメラで捉えた時のときめきが、別の形で息吹を与えてくれることもある。そして、今日…「あん」を見た。河瀬直美監督の映像は、一枚たりとも逃したく無い写真の連続のように感じる。あんの一粒までが生きている。ハンセン病療養所という重い題材に、不慮の事故で傷つけてしまった償いに縛られる人生を重ねる。絶望の中でさえ、人は光を見出して生きていく。辛さを輝きに変える魔法を、この映画が教えてくれた。 にほんブログ村別窓で開きます日常の小さなできごとを愛する生活