モンゴルベンチャー企業が日経で紹介される。
先日の日経新聞に、モンゴルのベンチャー企業が紹介されていました。OTやTTなどの鉱山会社、MCSなどの大手企業などは日本の新聞でも見たことありますが、モンゴルのベンチャー企業が日本で紹介されるというのは非常に珍しいんじゃないかと思います。会社の名前はアンドグローバルで、スマートフォンを使った小口金融「レンドMN」を手掛けるとあります。恐らくレンドは貸す、MNはモンゴルという意味でしょう。この金融事業会社をモンゴルの証券市場で上場させたのだそうです。アンドが先に来るという名前はちょっと不思議な感覚です。英語のandを意識しているそうですが、もう一つモンゴル語の友人という意味もあるそうです。恐らくチンギスハーンの時代にもあった「アンダの誓い」と言われるものでしょう。お互いに傷をつけ、血を流して一生の友情を誓うという儀式です。まあ、日本でいえば血判同盟みたいなものでしょうか。創業者でCEOはアナラ・チンバートルCEOとあります。アナラはもしかしてモンゴルではアナルと呼ばれる名前のことかなと思います。ローマ字でAnarとありますから、日本語的にはアナルの方が近いでしょう。レンドMNの特徴はスマホで小口金融をやるということです。小口というのは、5万トゥグルグからだそうで、日本円で2200円ほど。これを無担保で貸し、借り入れ期間は30日だそうです。なるほど、これは確かに給与所得者が「ほんのちょっと借りたい」「給料日まで数週間だけ」というニーズに応えているのでしょう。驚くのは利用者数です。2017年4月にサービスを開始して今年2月の時点、つまり10か月で利用者は35,000人だそうです。これが延べ人数なのか、実顧客人数なのかは不明ですがそれでも大したもんです。なぜならモンゴルの人口は300万人ですから、ざっと1%です。もし日本なら・・・100万人以上という計算になります。この顧客の広がり方は日本では想像できないでしょうね。さて、ここからが私の余計な解説です。想像でしかありませんが、こんなところだと思います。「たった2200円の貸し出しで儲かるの?」という疑問についてです。これは日本の感覚からすると随分少額に見えます。物価水準が違うという点もありますが、もう一つの最大の違いはスプレッドです。当たり前ですが、金貸し業の利益は資金コストと貸し出しコストの差、いわゆる利ザヤ(スプレッド)にあります。日本は低金利が続いており、メガバンクから大企業が借りるときは利ザヤが1%もなく、0.5%とか0.3%などというとんでもなく低いスプレッドになります。個人向けも、住宅ローンも競争が激しく、スプレッドは1%未満です。モンゴルの場合は、こうした法人向け貸し出し金利自体が非常に高く、年利20%とか25%とかで貸し出すのです。1年間の定期預金金利が15%近くもあり、その他の普通預金は6-7%もあります。詳細はわかりませんが、調達コストを10%程度とみると、大手銀行でも貸し出し時のスプレッドが10%とか15%と、日本の銀行の20倍とか50倍になるのです。ちょっと信じられない差ですが、本当にモンゴルのスプレッドは非常に大きいのです。これが澤田さんをして「ハーン銀行はものすごく儲かる」と言わせたのでしょうね。これが個人向けの小口となると、もっと大きい。質屋みたいなのがモンゴルには多いのですが、私が聞いた範囲では短期(1か月以内)小口で年利35%というのもあるようです。というか、モンゴルでは金利は年利では言いません。月利とでも言うのでしょうか、月単位です。例えば定期預金も「今ですと、1.2%です」などと言います。最初聞いたときは「ああ、モンゴルでもそんなもんか」と思ったのですが、なんと月単位でした。複利を無視した単純計算では14.4%とうことです。小口消費者金融では2%どころか3%やそれ以上もあります。つまり年利36%からそれ以上ということです。上限は怖くなるほどでしょう。定期預金並み調達コストとしても、スプレッドが20%にもなります。日本の銀行と比べると、10倍どころか100倍。カードローンなどと比べても、5倍から10倍くらいはあるんじゃないでしょうか?5倍とすると、2200円の貸し出しのスプレッドと同じだけ稼ぐには、11,000円貸さないといけません。10倍なら22,000円。しかもスマホで無店舗貸し出しであれば管理コストも低いです。モンゴルで1万円の貸し出しなら、日本では5万や10万貸さないと利ザヤが取れないということです。モンゴルのこの会社は、将来東南アジアでも事業展開したいそうです。日本の常識(低スプレッド)では、こうした小口金融のベンチャーは出てこないのではないでしょうか?モンゴルのベンチャーがどんどん出てくることを期待します。