眉山〜自由気ままに映画日記
今回の一言
母親の偉大さを感じ、親子の愛を感じ、さらに世界に誇れる日本文化を融合させた傑作!!
2007 日本
ヒューマン
監督
犬童一心
Cast
松嶋菜々子
大沢たかお
宮本信子
円城寺あや
山田辰夫
ストーリー
東京の旅行代理店で働くキャリアウーマン、河野咲子。
ある夜、知人の松山(愛称まっちゃん)から携帯に連絡が入り、咲子の母、龍子が入院したと報せを受け、咲子は生まれ故郷の徳島へと向かう。
龍子の病室へと急ぐ咲子は、部屋から聞こえてきた龍子の声に耳を澄ます。
龍子は看護婦に説教をしており、叱られた看護婦は思わず病室から飛び出して行ってしまう。
咲子が病室へ入ると、龍子はまるで病人ではないかの様にきちっと着物を着こなし凛とした佇まいでベッドに座っていた。
龍子は他の患者達が思っていてもなかなか口に出して言えなかった事をハッキリ言い、かつ叱咤激励の意を持って説教をした事で他の患者達から尊敬の眼差しで見られていた。
昔から一本筋の通った凛とした人だった龍子は「神田のおりゅう」の通称で地元でもよく知られ、尊敬されていた人物だった。
しかし咲子は母のそうした態度に反発心を感じていた。
大した病気ではなさそうだと感じた咲子だったが、担当医から告げられた母の症状は末期がん、この夏いっぱい持つかどうか分からないほどに深刻だった...。
感想
すんばらしい!!
す~~~~んばらすい~~~です!!笑
日本映画もやるじゃないか!!
「進撃の巨人」やら「テラフォーマーズ」やら人気漫画を原作に興行収入目的でCGたっぷりたっぷり、イケメン男優やら人気モデル女優やらを使った作品が多い中、こういった秀逸な作品もまだちゃんとあった事が私は嬉しいです。
ハリウッドさえアメコミ原作の映画ばっかりで、つまらねー世の中になったなと憂いていた私は本当に嬉しいです!!
母、龍子はまるで極妻!!
正義感溢れ一本筋の通ったかっこいい女性で、でも優しさもきちんと持ってる、私は彼女の様な人にとっても憧れます。
しかも女手一つで娘を育て、咲子の父との事は「墓場まで持っていく覚悟」をしており、こんなに強くて素晴らしい女性になりたい!!
看護婦への説教シーンですが「貴方は若くて賢くて聡明な人」とちゃんと言っていて感情に任せて言っているわけではない事をきちんと表しており、「怒る」と「叱る」の違いが明確に表現されています。
こーゆーところも憧れるわ~。
しかし看護婦側からすると、ブツクサ言いたくなる気持ちもまぁ理解出来ます。
ある意味、接客業でもありますしね。
そんな看護婦の愚痴とそれを聞く医師、寺澤の会話内容もまぁ理解出来ますが、それが聞こえちゃって食ってかかる咲子も面白いです。
血は争えないではないか。笑
そして龍子はさらにその上をいく皮肉な物言いをしつつも、丁寧に頭を下げ、「私達は尊敬して命を預けている」と伝え、「だから尊敬出来る人であってほしい」という含みを持たせているところが凄いかっこいいですね!
龍子と孝次郎のくだりは人によっては嫌悪感があるかもしれませんが、今作はそーゆー事を伝える作品ではありませんので悪しからず。
しかも2人の関係はあくまで過去のものであって、主人公である咲子はもちろん全く悪くないですし。
この龍子と孝次郎のストーリーと龍子と咲子、咲子と寺澤、そして龍子の愛した土地徳島と眉山、阿波踊り。
全てが見事に融合されており、重厚なヒューマンドラマながらも日本が世界に誇る伝統文化をエンターテイメントとして楽しめる側面もあります。
私事ですが、私は阿波踊りを15年以上踊ったまぁベテランと言っても大丈夫なレベルの人物だったりします。
まぁ私は東京生まれ東京育ちなので、本家徳島の人から言わせると「エセ踊り子」なのかもしれませんが、それでも阿波踊りに情熱を持っておりました。
ちなみに東京で最大の阿波踊りといえば高円寺の阿波踊りですが、高円寺でももちろん踊りました。
徳島へお呼ばれした事も実はあります。
結局お断りしたんですが、その辺はめんどくさい大人の事情があるので割愛。
阿波踊りの素敵なところは踊り手も笑顔、見る人も笑顔なところです。
阿波踊りと言えば「踊る阿呆に見る阿呆、同じ阿呆なら踊らにゃ損、損」という言葉通り、私が子供の頃は飛び入り参加OKで酔っ払ったおじさんが突然踊りだしたり、踊りたいけど勇気が出ないっぽい人を無理やり踊らせたり。
そうするとそんな人達も皆、笑顔になって。
大人も子供もジジイもババアも上手いも下手もなく、皆で笑顔で踊る、子供の頃の私はそれが本当に楽しかったんですよね~。
とても魅力的な伝統文化だと思います。
今はうるさい世の中ですから、飛び入り参加OKな風習は東京では廃れてしまいましたが、本来なら魅せる踊りではなく、皆んなで踊る踊りだと思います。
だから簡単なんですよね、振り付けが。
盆踊りよりも簡単なんですよね。
映画を観ながら、思わず体がリズムに乗ってしまう辺り「私って生粋の日本人だわ~」と思ってしまいますし「私って本当に阿波踊り好きだわ~」としみじみしてしまいます。笑
決して阿波踊りが嫌いになったわけではなく、めんどくさい大人の事情で辞めざるを得なくなったとでも言っておきます。笑
そんな阿波踊りの魅力がたっぷりつまっているところも作品の素晴らしいところです。
さらに伏線では「献体」というあまり聞き慣れない話も出てきます。
その辺についてはそれぞれありますから、まぁ本人が望むのならそれはそれで良いんじゃないかと思いますが、自分の母親に置き換えて考えてみるとやはり複雑な気分です。
確かに未来の為には必要ですが、医学生にいじくり回されるわけですし、母親の裸体を何人もの人が拝む事になりますしとても良い気分ではありません。
そこには大きな大きな決断があり、とても語りきれない深い親子の愛が描かれているのだと感じます。
これについては「自分がその立場になってみないと分からない」ものかもしれません。
宮本信子はさすがベテランの大女優です。
どんな演技もとにかく素晴らしく、本当に自分の母親の様に見える時さえあります。
松嶋菜々子もこれまた素晴らしいですが、設定が32歳という事で「そんな32はいねーよ!」とツッコミたくなるぐらい大人の色気と大人の落ち着き、凛としたところがあります。笑
特に美しかったのは山場での着物姿ですが、しなやかで真っ白なうなじに汗でほつれ毛が張り付いています。
男性目線で言うなら「大事なところは全く見えないけど、どエロ!」ってやつですかね。
着物姿も様になってるうえにどエロで、かつて龍子が孝次郎を待ったシーンもフラッシュバックしてくるような素敵なシーンです。
さらに日本の夏感もあって良いです。
また孝次郎と会うシーンもとても良いです。
大人としての振る舞いと医師と患者としての振る舞いの上で、色々と言葉に出来ない想いが交錯する何とも言えないあのシーン。
これはなかなかポンコツ役者には出来ない素晴らしいシーンだったと思います。
松嶋菜々子、宮本信子を始め、故人となってしまいましたが山田辰夫、夏八木勲と素晴らしい役者陣が揃っているので、作品はさらに素晴らしいものになっています。
もうこれはぜひ観て頂きたい!!
個人的に日本映画NO.1かもです。
ちょーオススメです。
my評価10点(10点満点中)
概要
原作は日本人シンガーソングライター、小説家、ラジオパーソナリティとマルチに活躍するさだまさしの同名小説。
NHK-FMでラジオドラマ化され、その後今作が公開され、翌2008年にはフジテレビ系列で常盤貴子主演でテレビドラマ化。
同年、石田ゆり子主演で舞台化もされ、翌2009年には黒谷友香主演で再舞台化された。
さだまさし原作の映画化はこれまで「精霊流し」「解夏」とあるが、どちらもさだまさしの生まれ故郷・長崎を舞台としており、今回なぜ徳島の眉山を舞台としたのかについてさだまさしは「長崎にも稲佐山というのがあって、ロープウェイで上まで登れるが、徳島に行って初めて眉山を見た時、稲佐山にも似ているが大きな感動を覚えた。さらに上まで登って見た街の風景や海や川、人々の姿が心の中に残った。」と語っている。
さだまさしはかつて「グレープ」というグループでデビューしており、その頃、日本のグループサウンズ、ザ・ピーナッツの前座としてザ・ピーナッツと共に全国ツアーに参加しており、そのツアーで徳島を訪れたのだという。
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