マーサ、あるいはマーシー・メイ〜自由気ままに映画日記
今回の一言
エンターテイメントとしては最悪ですが、映画自体の出来はかなり良いという変な作品。笑
2011 アメリカ
サイコ
監督
ショーン・ダーキン
Cast
エリザベス・オルセン
サラ・ポールソン
ジョン・ホークス
ヒュー・ダンシー
ストーリー
とある山の中に農場があった。
そこでは見ず知らずの沢山の人達がまるで家族かの様に仲良く暮らし、仕事は皆で分担しながらなるべく自給自足で生活していた。
ここに住んでいたマーシー・メイはある日、農場を抜け出した。
麓の町で農場から追いかけてきた男性に見つかったが、マーシー・メイはそれでも農場には戻らず姉に電話を掛け、迎えに来てもらった。
マーシー・メイは姉にマーサと呼ばれた。
彼女の本名はマーサ。
マーシー・メイは、農場主のパトリックが付けた名前だった。
姉のルーシーは今、コネチカットの湖畔の別荘に旦那テッドと休暇に来ており、そこにマーサを連れ帰った。
マーサとルーシーは2年も音信不通だったが、マーサはこの2年の事を「恋人と山で暮らしていた、携帯は無くした」としか話さなかった。
ルーシーも無理に問い詰める事はしなかったが、突然全裸になって湖に飛び込んだり、ほとんど食事を食べなかったり、夫婦の営みの最中にも関わらず突然寝室に入ってきて何事もなかったかの様に寝ようとしたり、あまりにも常軌を逸した行動を取るマーサの事を不審に思っていた。
マーサ自身もルーシーと一緒に平穏に暮らしたかったが、農場で暮らした2年間の記憶が彼女を蝕んでいくのだった...。
感想
(ネタバレしない様には書けないです。笑)
まるでヨーロッパか日本の作品かの様に静かで音楽も少なく台詞も少なく、役者の表情や映像で魅せる作品で、アメリカ作品とはとても思えませんでした!
ストーリー構成は過去の描写と現在の描写を交互に描き、徹底的に対比させています。
たいした荷物のないマーサにルーシーは自分の服を貸しますが、農場でも服は全員共有でしたし、全裸で泳ぐ事をルーシーに怒られましたが、農場では逆に全員が全裸で泳いでいます。テッドにボートの操縦を教わりますが、農場ではパトリックに銃の扱い方を教わります。
居候の分際で好き勝手に振る舞うマーサに対してテッドは「仕事はどうするんだ?」と言いますが、パトリックも「役割を見つけろ」と言っています。
ルーシーはガーデニングをやっていますが、マーサもガーデニングを「役割」としてやる事が出来ます。
ここで面白いのは「普通」の定義です。
まぁネタバレすると農場はカルト教団ですが、カルト教団の中で平和に暮らした2年というのはマーシー・メイにとって「普通」の暮らしだったと思うのです。
それなりに幸せだったと思います。
で、ルーシー達から見たマーサは明らかに「普通」ではありません。
マーサがなぜカルト教団を訪れる事になったか?は描かれてませんが、母と父を早くに亡くし叔母に面倒を見てもらったとかなんとか(あまり覚えてませんが)とにかくちょっと複雑な家庭事情があった様なので、たぶんマーサにとっては居心地が良くなかったのだと思います。
なので「普通」の幸せを求めていったら辿り着いたところがカルト教団だったという事になりますね。
さてここでマーサにとって「普通」に幸せに暮らせるところはどこなのか?
言い換えれば、農場での暮らしとルーシー達との暮らしと何が違うのか?
ある事件が起きた事で、マーサが我々の感覚でいう「普通」を少し取り戻したから逃げ出したのかもしれませんが、ぶっちゃけマーサにとって居場所なんてないです。
だってもう「普通」じゃないんですもの。笑
しかし過去と現在を交互に観せられ、対比させる事によってどちらが「普通」の暮らしなのか分からなくなってくるんですね。
いや、倫理的に考えれば明らかにカルト教団はヤバイですがね。笑
この技術的な構成は素晴らしかったのではないかと思います。
またマーサ役のエリザベス・オルセンはこの難しい作品をとても見事にやっていたと思います。
マーサの攻撃的な言葉やマナーの無さは本当に小さな描写ですし、マーシー・メイが禁酒禁煙なのも小さな描写です。
このマーサとマーシー・メイの使い分けが見事でしたし、マーサの攻撃性はSOSである事をちゃんと感じる事が出来ます。
階段でマーサとルーシーが喧嘩した時「ひどい母親になるよ」と言うシーンなんか、かなり印象的で良かったです。
エリザベス・オルセンの肢体もとても美しく官能的に映ってましたし、良かったです。
しかし映画を楽しむという観点から考えると一言で言えばちょーつまらないです。笑
とにかく退屈。
音楽も台詞も少なく、過去と現在を交互に観てるだけで、突然マーサはパニック起こしたりしますからただの基地外になっちゃってます。笑
それにカルト教団に自分も入ってみないと全く1mmも理解出来ないであろうと心から感じるので、その辺も「つーかまじで基地外以外の何者でもないね」で終わってしまいます。笑
さらにルーシー達がお手上げになるのは、子育ての邪魔、働かない居候、夫婦生活の妨げ、だから追い出したいという気持ちとこれは専門家じゃないと治せないという判断の両方があったと思いますが、どちらの感情に対しても否定は出来ませんし。
ルーシー達は結局マーサがなぜ彼らの考える「普通」ではなくなってしまったのかすら分からないまま病院へ連れて行く決断をするのも面白いポイントっちゃポイントですけど。
まぁ好きな人は好きでしょうが、誰にでもオススメ出来る作品ではありません。
内向的な作品ですし、暗いです。
またあからさまな描写は少ないので想像力はかきたてられますが、よくあるアメリカ作品の様な派手さやダイレクトな描写を好む方には受け付けないと思います。
エンターテイメントとしては最悪ですが、映画自体の出来はかなり良いという変な作品なので点数の付け所が難しいですが、素直に「つまらなかった」というところを重視した点数です。笑
my評価2点(10点満点中)
概要
アメリカで1987年~1995年の間放送されていたTVシットコム「フルハウス」のオルセン姉妹、アシュリー・オルセンとメアリー=ケイト・オルセンの妹、エリザベス・オルセンの劇場映画デビュー作品。
2011年1月に行われたサンダンス映画祭でプレミア上映されると大絶賛となり、同映画祭で監督賞を受賞。
さらに第64回カンヌ国際映画祭、第36回トロント国際映画祭で上映され、一般公開は2011年10月21日のたった1日のみ限定で劇場公開された。
にも関わらず今作はかなりの高評価を受けており、様々な映画祭で約50もの賞に受賞、ノミネートされた。
批評家達のレビューサイト「ロッテン・トマト」でも支持率90%の高評価を受けている。
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マーサ、あるいはマーシー・メイ [ エリザベス・オルセン ]
マーサ、あるいはマーシー・メイ