リング (1927)〜自由気ままに映画日記
今回の一言
サイレント映画でもヒッチコックは凄い!!
1927 イギリス
ドラマ、ラブストーリー、コメディ
監督
アルフレッド・ヒッチコック
Cast
カール・ブリッソン
リリアン・ホール=デイヴィス
イアン・ハンター
ゴードン・ハーカー
ストーリー
見世物小屋で働くジャックは「ワン・ラウンド・ジャック」の異名を持つボクサーだった。
観客の中から対戦相手を募り、希望者全員と闘う。
もしもワン・ラウンド以上試合が続けば賞金を払う事になっていたが、誰もワン・ラウンド以上続かなかった。
そんな時、同じ見世物小屋の受付嬢ネリーに一目惚れをした男性ボブはネリーに声を掛ける。
ネリーもボブに好感を抱いたが、実はネリーとジャックは結婚の約束をするほど親密な恋仲だった。
ネリーに色目を使うボブが気に入らなかったジャックは、ボブに対戦相手になってほしいと声を掛ける。
ネリーはからかいながら、ボブは勇気がないみたいと話す。
ボブはネリーに良いところを見せようと対戦希望し、見世物小屋で対戦が決まった。
しかしいざ蓋を開けてみると、なんと試合は4ラウンドまで進み、挙句にジャックは倒されてしまった。
興行主は渋々賞金を払い、意気揚々とネリーの前に再び現れたボブだったが、ネリーは結婚の約束をしているのに無職になったと怒り出してしまう。
ところがボブはボクシングヘビー級チャンピオンで、興行主と共に練習相手のスカウトに来ていたのだった。
その日の夜、再び2人の前に現れたボブとボブの興行主。
ジャックは興行主にスカウトされ新しい就職先が決まったが、一方でボブは先程の賞金で、ネリーにリング型のブレスレットをプレゼントする。
そして2人はこれが運命だと言わんばかりに惹かれ合い、熱い抱擁とキスを交わすのだった...。
感想
まさかの人生初のちゃんとしたサイレント映画が大好きなヒッチコックになるとは思いませんでした。笑
1927年とヒッチコックの中でもまだイギリス時代の初期の作品で、しかもそーとー古いので、技術的な事はよく分かりませんがリマスター版じゃなかったからか、それとも古すぎて修復不可能なのか、とにかく映像が最悪に悪いです。
当時のやつをそのままDVDに収録したっぽい感じです。
屋外の夜のシーンなんかは暗くってほぼ見えない時とかもあります。
またネガが古いからか、突然明るくなったり暗くなったりします。
それでもかなり面白いです!!
ちなみに一般的にスリラー作品と認知されていますが、個人的にはラブコメだと思います。
またヒッチコックお得意の「男女間の差」もバッチリ描かれていますし、初期の作品なので映像にはまだそこまでヒッチコックらしさが見えませんが、皮肉っぷりはすでに完成系だと感じます。
「リング」というのはボクシングのリングと、ジャックとの結婚指輪、そしてボブがプレゼントしたリング型のブレスレットの3つにひっかけています。
そして別々の3つのリングは、すべて同じ因果の渦の中。
ジャックとボブとネリーという三角関係の中のものです。
これが非常に粋で面白いです!!
ネリーは一見悪女に見えますが、実はそうでもありません。
男と女が惹かれ合うのは仕方のない事で、誰にも止められないものです。
そしてジャックがネリーを取り戻そうとするのは分からなくもないですが、その舞台がなぜボクシングなんですかねぇ?笑
ここが男女間の差だと思います。
なぜ、あえて、ボブと同じ土俵に挙がる必要があったんですかね?笑
男のプライドってゆーか、なんてゆーか。
興行主やらスポンサーやらは勝って人気が出てくれればそれでいいわけですから、うまい事丸め込まれてるのに、ひたすら「チャンピオンになれば彼女を取り戻せる」と思うあたり「男って単純だよね」と呆れつつ笑えます。
一方女側の感性からすると、何言ってんの?そんな事私望んだかしら?って感じですね。
むしろチャンピオンになるまでの努力、練習、これが増えれば増えるほどこっちは相手してもらえてないと思うし、暇な時間は増えるし、そんな中で素敵な不倫相手がいるとなればまぁそっちに段々と夢中になっていくのも当然ではないかと。
つーか途中で気付けし!笑
途中で文句言えし!笑
誰がどう見てもあからさまに2人が不倫関係なのが明白なのに、なぜチャンピオンへの挑戦権を得るまで黙っていたのか?笑
このあたりの男性であるがゆえの気持ち、女性であるがゆえの気持ち、プライド、人間関係をヒッチコックは本当に見事に表現してくれるのでサイレント映画ですら感情移入出来ちゃうんですよね~。
やっぱり天才っ!!
不満だったのはラストでしょうかねー。
ラストの手前は最高だったんですよ!
ネリーの居る居ないが、試合の結果に直結するあたり!!
でも私の知ってるヒッチコックのイメージだと、ラストは全て「ネリーの思惑通りの元通り」だと思ったのですが...。
「スミス夫妻」なんかはそういうラストだったしなー。
ところが今作はほだされちゃって、まぁ~残念であります。
いずれにしてもヒッチコック好きにはぜひオススメしたい作品です。
映画好きの方にもオススメです。
my評価7点(10点満点中)
概要
アルフレッド・ヒッチコック監督の第6作目の作品であり、またヒッチコックが初の原案、脚本も担当したサイレント映画。
またサスペンス界の神様と言われるヒッチコック作品の中でもサスペンス要素のない数少ない作品のひとつである。
ヒッチコックはこの時若干28歳であり、第4作目の「下宿人」で映画がヒット、同年に作られた3本のうちの一本が今作である。
また監督デビュー作の「快楽の園」、2作目の「山鷲」、そして3作目についてはそれぞれの理由で観る事は不可能である。
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