十月十日が耐えられない!
妊娠していて一番辛かったのは、月刊誌サイクルじゃない出来事が身の上に降り掛かって来たことかもしれない。妊娠中の十月十日、確認されてから数カ月経たないと出産に至らないというのは、当時の私にとっては信じられないほどに長い長い時間だった。社会人になってから、ずっと月刊誌サイクルで暮らして来た。もちろん、月刊誌だけじゃなく、季刊誌やパンフレット、ムックなど、さまざまなものに関わって来たんだけれど、常に某かの月刊誌に関わっていたので、物事を立ち上げてから出来上がるまでのスピードが、月刊誌サイクルというのが身に染み付いている。理詰めでものを考えるタイプだったので、理屈が通らない相手というだけで小さな子どもを避けて来た。自分だって子どもの頃は想定外の行動ばかり起こして、周囲のおとなたちをさんざん手こずらせたのにね。百歩譲って十月十日でいいから、せめて高校生ぐらいに成長してから私のところに来てくれないかな。そんなことを考えてもいた。だって、おとなの会話が出来るでしょ。多少は哲学的な話も出来て、それなりに手応えがある。そんなだったから、言葉もろくに話せない状態で来てもらってもこっちが困るよという感じでいた。母体のほうでそんなことを考えていたからかどうか、結局29週で妊婦生活は終わる。お腹の子どものほうも、ずっと胎内にいて、母の思いを感じ取っていたからなのかもしれない。父方の伯母によると、彼女が妊娠した子どもは全員逆子だった。それが故のトラブルで、死産を経験したこともあるという。逆子であるが故に起こりうるトラブルはいくつもあって、私の娘も、そのトラブルが原因で予定を大幅に繰り上げる形でこの世に生まれて来た。