本当は子ども嫌いなおとなたち。
この地域には、子ども向けのイベントがいくつもある。特に、毎年ゴールデンウイークの初めに行われるガーデンパーティーは、一年がかりで準備する一大イベント。区内数カ所で行われ、各町会・自治会およびエリア内の小中学校PTAが実行委員を務める。娘も中学時代は部活動の一環として参加、幼児さんから小学生までを相手に、しおりづくりなどを行って来た。元々は、集団就職でこの地域にやってきた若い職工さんたちのレクリエーションのために始まったと言う。それが、いつ頃、現在のようなより年齢の低い子ども向けイベントに変わっていったのかは実のところ、よくわかっていない。記録を取っていないのだ。PTA時代から主催者として参加、現在では青少年委員として参加し続けている友人が、いくつかの会場を巡回しながら、こんなことを言った。「年に一度のイベントで燃え尽きちゃって、 日頃の子どもへの関わりが手薄になっちゃってるのって、 どうよ」イベントを盛り上げることで日頃の無関心の免罪符になってると、言いたいらしい。それでも、中学校区単位で組織している青少年向け対策委員会には、地元町会とPTA、主任児童委員さんなどが参加、季節ごとの行事にも力を入れている。もっとも、地元主催の運動会だって一生懸命動員がなされて成立していることは事実。キャンプやバス・ツアーともなると、ごくごく限られた子どもたちしか参加しない。地域活動のリーダー養成も、ジュニアから行われているけれど、こちらへの参加となると4、5名がせいぜい。自己満PTAと揶揄される以上に、地域での子ども向け行事は先細りの感あり。ガーデンパーティーともちつき以外はどうにも人気がないんだよね。もっとも、中学校を会場にして、地域の幼児さんを対象としたイベントとなると、盛り上がる。中学生たちが、地域の小さな人たちのために、サッカーやバスケットに興じたり、こまごまとした工作物を一緒に作ったり。最後に供される豚汁も、中学生の手作り。つまりはこういうことだろうな。対象は小学生や幼児さんとその親。で、主催する側は中学生以上。地域でのイベントを求めているのは小学生以下で、それ以上になると、趣味や嗜好が異なって来るので、地元のおじさん・おばさんたちの感性ではとても対応出来ない。元々数が少ない中高生向けのイベントで、やはり盛り上がったのは、ある児童館でのライブ。中学生が授業をきっかけに行った講演会もまあまあの盛況だったと聞く。単なるお客さんだけでは、最早無理。企画から運営まで、自分たちで行うか、もしくは、自分たちの意見を取り入れながら、自分たちも運営に関わらせてもらえるものじゃないと、動かない。わずか12年で、そこまで成長しているんだね。で、先ほどの友人のぼやきの理由は、「普段は中学生や高校生には目もくれないくせに」という、おとなたちの10代への冷たい態度も反映されている。娘が地元の中学に入学した頃、制服姿というだけで、冷たい視線を感じたという。中身は全然変わっていないのに、制服を着たとたんに相手の見る目が変わる。「あんた、何か変なことしでかしやしないだろうね? 」それって、本当はおとながふがいないだけじゃん。中学生って存在が正体不明で怖いんだ、きっと。そのあたりは理解出来なくはないけれど、変だと思わないか?直に付き合ってみると、彼らってかなりいい奴だよ。本当は知ってるんだよね。誰もが、かつては中学生だったし。体も大きくなって、集団で歩いているだけでかなり威圧感がある。腕っぷしも強そうだし、ちょっと太刀打ち出来ないかも。そんなふうに見られていることに気づくのは、自分がおとなになってからだろう。小さな子どもは、誰が見ても可愛い。小さいというだけで大事にされる。それが大きくなっていくと、今度は避けられる。それも充分におかしいのだけれど、昨今は幼児さんの笑い声でさえ、「うるさい! 」と疎んぜられる。「ねえ、僕たちって嫌われてるの? だって、どこへ行っても文句を言われるよ」保育園や幼稚園のお散歩や、遠足で、幼児さんが、こんなことを聞いてくる。「きっと子どもが嫌いなんでしょうね」かなり情けない。年に一度、大きなイベントを行って多くの子どもたちが参加したから、大成功。打ち上げでビールを飲んでるはしから、まだ盛り上がっている子どもたちに文句を言う。「大人しくしていろ! 」「静かにしろ! 」「子どもは帰って寝なさい! 」おそらく、その一部始終を見て来たから、友人はつぶやいたのだろう。おとなに対しては、「当事者性」とかなんとか、あれこれ気を使ってくれる子育て支援のみなさまも、ちょっと大きくなった子どもたちとその親には冷たい。「イベントにパワーを使い果たすくらいなら、 イベントは縮小していいから、 もっと日頃のことに目を向けてよね」子どもたちのために、違うアプローチの仕方を考えよう。地域のおとなが出来ること、もっともっとあるでしょ?行政の長期計画審議委員と地域の人との意見交換会で、もっとも時間が割かれたのが産業振興と高齢者対策で、子どもを取り巻く環境については防犯対策やバリアフリー対策の一環として、ちょっぴり触れた程度っていう地域性だからなあ。子どもの権利を持ち出したら、どんな対応をされたんだろう。アンケートには書いておいたけれどね。