絆を断ち切るな。
諸々が落ち着いて来て一段落という感じになってきたら、今度はだんだん落ち込んできてしまった。知らないうちに緊張して暮らしているんだね。この足下の不確かな感じは、何とも言えず不安で寂しい。寂しさの大本について久しぶりに触れてみたら、落ち込みは、さらに深くなって行きそう。メールを送るたびに、「わっ、あのひと言を添えるのを忘れていた!」とさらに落ち込む。優しい言葉がけができないまま、ずっと事務的にやり取りを続けていることに、そろそろくたびれてきたのかしら。ただ、そういう負の感情のようなものは、必ず自分自身に跳ね返ってくるのだ。跳ね返って来て、結局自分自身をも傷つけている。暖かいやり取りを見ていると、心がだんだんほぐれて来て、「何をそんなに頑になっているんだ」と自分自身に苦笑してしまう。ラストのひと言がなくても、別に支障はないよ。こんなとき、思い出すのは、人種差別の悲劇について描かれた映画「アメリカン・ヒストリーX」で、エドワード・ファーロンが暗唱させられていた言葉だ。We are not enemies, but friends.We must not be enemies.Though passion may have strained,it must not break our bonds of affection.The mystic chords of memory will swellwhen again touched, as surely they will beby the better angels of our nature.- Abraham Lincoln我々は敵でなく友人である。敵になるな。激情に溺れて……愛情の絆を断ち切るな。仲良き時代の記憶をたぐり寄せれば……良き友になれる日は再びめぐってくる。エイブラハム・リンカーン10年前、あることで取り返しのつかないことが起き、それがもとで、第一線の仕事からしばらく身を引くことにした。そのときに、ちょうど恵比寿ガーデンシネマで上映していた「アメリカン・ヒストリーX」を観た。観ながら、このリンカーンの言葉を聞いて、思わず嗚咽してしまった。当時とは事情が違うけれど、諍いのようなことが起こるたびに思い出す。絆を断ち切るのは、お互いの思い。ふとした言動のすれ違いや気持ちの行き違いによる、ディスコミュニケーション状態。もう一度、この映画を観ながら、何ができるか考えてみようか。