ボーヌのお祭り「栄光の3日間」訪問記
さて、昨日はパリのマルシェの様子をお伝えしましたが、今日は今回の旅行の目的であるボーヌのお祭りです。11月の第3日曜日、まだ薄暗い朝7時過ぎにパリのホテルを出発、メトロを乗り継いでパリ・リヨン駅に向かいます。そこからTGVに乗りディジョンへ・・・以前は列車の予約を取ろうとすると、フランスについてからSNCFの駅まで行き、窓口に並んでやっと切符を購入って感じでしたが、最近は日本からインターネットでTGVの予約ができるなんて、何と便利な世の中になったことか。リヨン駅を出た時は、まだ夜明けといった感じでしたが、列車が郊外に出て畑の中をスピードを上げる頃にはすっかり日も昇り・・・と行きたいところですが、この季節のフランスに特有などんよりした雲が一面に広がりちょっと残念。ディジョンまでは1時間40分。まあTGVは速いと言えば速いのですが、特に新しい車両でもなく以前と変わらない様子で、駅の売店で買った料理雑誌のエル・ア・ターブルを読みながらウトウトしている合間にディジョンへ到着。次にローカル線に乗り換えボーヌへ向かう訳ですが、こちらはとにかく車両がきれい!先ほど乗ったTGVなど比べものにならないほどで、サロン・カーのようなスペースも!!確か、今回と同じ時期にブルゴーニュを訪れたのはもう10年も前になるでしょうか、その頃はまだ車両も汚くて昔風・60年代の流線型のままといった作りで、穴の空いたシートはあたり前、窓はこすったような落書きのだらけのけ古い列車だったことを考えると隔世の感があります。と言う訳で列車に乗り込むと反対側の窓側には日本人3人組・・・世の中狭くなったかな?なんて思いながらボーヌまでの40分間、進行方向右側にブルゴーニュの丘を見ながら、各駅停車の列車はジュヴレ・シャンベルタンとか、ニュイ・サン・ジョルジュといったワイン好きにはたまらない名前の駅に停まっていきます。(まあ、駅の近くには何もないのですが・・・)そしていよいよ目的地ボーヌに11時前に到着!自分達もそうなのですが、いかにも”この日のために来ました”といった感じの人が沢山・・・きっとみんなワイン好きなんだろうなぁ。きっと同じ列車を乗り継いでパリから来たのでしょう、日本人も結構います。駅前は、以前と変わらず、ホテルとビストロぐらいで、まるで観光地らしい雰囲気はないのですが、ここからお祭りのある街の中心部までは歩いて数百メートル程ありますので、列車から降りた一群がぞろぞろと歩いて行きます。さて、この「栄光の3日間」と呼ばれるボーヌのお祭り、オテル・デュー(施療院/オスピス・ドゥ・ボーヌ)で行われるオークションが有名ですが、ワイン好きとしては、いつかは訪れたいと思っていました。実は10年程前に来た時も、このお祭り目当てだったのです。今でこそインターネットで情報を集めることができますが、その頃はまだガイドブックの数行の記載のみ、そんなに有名なお祭りなら、現地に行ってみれば何かしら情報があるだろうと出かけてきた訳ですが、なんと1週間前に終わってしまい(今年のように1日が日曜日だった)、街は閑散・・・吹きさらしの風がとにかく寒くてといった思い出があり、今回の訪問はその時以来の念願がかなったものです。さて、ボーヌの街の中心地、石垣の塀の内側に入ってきました。この地方に特徴的な屋根模様(モザイク模様)が見えます。そして、だんだん人混みが多くなってきて、お祭りらしい雰囲気の中に吸い込まれていきます。中心街の通りにきました。両側に露天が並んでいます。この地域の特産品、農産物や織物などなど・・・食いしん坊の私の目にまず留まったのが、パン・デピス。いわゆるスパイスのきいたパウンドケーキなのですが、結構お気に入りなので、ちょっと試食。そしてフォアグラ!これも日本に持ち帰りたい衝動にかられますが、ぐっと我慢してカケラを試食。さらにトリュフ!さすがにいつも使っている中国産冷凍物に比べると良い香りですが、高すぎて買いたくても買えないので香りだけ・・・さらに街の中心部にすすむと、今度は飲食店街に入ります。ビストロの店先ではヴァン・ショー(ホットワイン)を売っています。気温は7度ぐらいなので暖まるには良いかもしれませんね。もうそろそろお昼の時間なので、みんなメニューで品定めといった感じです。さらに進んで横道を見ると、人の出入りが激しい集会場のような建物を発見。引き寄せられるように中に入ってみると、そこは探していた試飲会場でした。中はすごい熱気と人ごみで、入り口近くには牡蠣、エスカルゴ、フォアグラといったつまみを売っているのですが、前に進めないほど混雑しています。その奥には先ほどのつまみをワイン樽のテーブルにして飲んでいる人たち。みんな和気あいあいといった感じで、この人たちはいつまででも飲み続けているんじゃなの?といったようす。その人垣をかき分けるようにして進むと、ありました!1グラスあたり3~7ユーロぐらいのお値段でワインの試飲できるコーナーです。安いところでは白はアリゴテ、オー・コート・ド・ニュイ、に始まり、モンラッシュ、ムルソー、赤はポマール、シャンボール・ミュジニー、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュといった感じです。迷ったあげく選んだのがコスパの良いオー・コート・ド・ニュイとムルソー、赤はポマールとヴォーヌ・ロマネを。だいたい6.5~7ユーロでした。まぁ安いのではないでしょうか。だいたい一杯は約100mlといったところ、6杯の価格でボトルの価格。多人数で1~2本を開けているグループもありました。さて念願かなって試飲できたので、もう一度繁華街にもどると、ちょうど12時、ブラスバンドの音が広場の方から聞こえてきます。きっとパレードが始まったのだろうと、駆けつけると騎士団のような格好をした一団と、ブラスバンドが行進してきます。まさに祭りはクライマックス・最高潮といった感じです。正直、ボーヌにはこれまで何回か訪れたことがあるのですが、いつも”ここがブルゴーニュの中心地?”と思うぐらいひっそりとした町というイメージでした。でも今回はさすが「栄光の3日間」と言われるだけあって、ビックリするほどにぎわっていました。それに日本人も”まれに”ではなく、”ちらほら”見かけますから、結構な人数が来てるんでしょうね。中には子供連れの家族もいます。うちも娘を連れてますので人のことは言えませんが、この家族も相当ワイン好きなんだろうなと(苦笑)。さて、パレードが出発したこの場所は広場になっているのですが、その周りにはワインショップが沢山!冷やかし程度のつもりで、そのうちの1件に入ってみましたが、あらら、やっぱりここはブルゴーニュワインの中心地、あるところにはあるんですね、いいワイン。それにお値段も日本に比べるとかな~り割安!今回はあまり日本には持ち帰らないようにと思っていたんですが・・・と言う訳で、結局数件のショップをまわり、1本だけ購入しました。その後、エスカルゴや、カエルの唐揚げ(これは本当に食べようか悩みました)の屋台を冷やかしながら、オークションが行われている施療院の前まで行ってみましたが、ちょうどお昼過だったせいか、開催されている様子もなかったので、結局中には入らず、屋台で買った軽食で一休み。その後、最後にもう一度、心残りだったワインが試飲したく、試飲会場に再度向かいました。さて、そろそろ2時。雨がぱらぱらと降り始めましたが、レストランは外のテーブルを含めてほぼ満席。昼過ぎから飲み始めた人たちはそろそろほろ酔い加減のようで、盛り上がっています。そう言えば列車で出会った日本人3人組、飲食関係の人たちのようで、お昼はどこどこのレストランにいって・・・なんて話をしていたので、きっとどこかにいるんだろうな、なんて思い出しながら、帰り列車の時間がせまって来たので、駅に戻る道に向かいました。街の中心地をはずれると、先ほどの喧噪がうそのように静まりかえっていて、朝はお祭りに向かう人がぞろぞろと歩いていたこの道もひっそりとして、いつもの街に戻った感じです。でもきっと、あの試飲会場のフランス人は、お祭りの間中飲み続けているんじゃないでしょうか・・・なんたって「栄光の3日間」なんだし。さて、この話後日談がありまして・・・そう、この時買ったワイン、日本に戻るとき、航空会社の不手際で行方不明。未だに戻ってきません(涙)。