Arbeitszeugnis
月曜日に2週間ぶりに出勤した。朝、事務所の呼び鈴を押しても反応なし。隣に住む長男宅の呼び鈴を押しても反応なし。しばらくしてもう一度長男宅を押したらようやく建物の中に入れてもらえた。しかしゆっくり階段を3階まで上がったにもかかわらず事務所のドアは開いていなかった。ドアの前でしばらく待っていたら隣の長男宅のドアが細めに開き、手だけを伸ばして私に鍵を渡してくれた。とりあえず私がいなかった間にたまっている雑用を片付けた。いつまでも誰も来ないので、彼らの予定表を見たら、次男は2週間の休暇中で、社長は外出の予定があった。結局社長が事務所に来たのは2時過ぎ。私の顔をみるなり「で、(筆記)試験の結果はどうだったの?」と聞いた。社長は以前私とメリちゃんに「試験に受かるのは当たり前。いい成績で合格しなさい。」言った。社長がいういい成績とは1点台のことだと解釈した。しかし私の成績は1点台のものもあったが、平均では2.2という平凡な結果だった。「そこまでいい成績ではなかったのですが・・」と言い訳しながら見せたら、「あら、すごいじゃない。十分いい成績よ。これなら口頭試験でも落ちることはないはず。」と言ってくれた。どんな毒舌を吐かれるかと思っていたが、お互い大人だし、もうすぐおさらばする関係だから、あえて否定的なことは言わなかったのかもしれない。とにかく何か月の間も、私と社長の間には必要最低限の会話しかない。社長からのダメ出しもなければ、褒められることもない。私も地雷を踏まないように、なるべく話しかけない。しかし、来週の水曜日に賢浩が鼻のポリーブの手術をすることになり、金曜日に検査と麻酔医との面談があるので、どうしても仕事を休む必要があった。賢浩も今月末にはアメリカに戻るので、手術を先延ばしにすることはできない。来週の月曜日で私の「ご奉公」はおしまいになるので、休みを申し出づらかったが、とりあえず伝えた。社長は「わかったわ。」とすぐにOKしてくれた。すでに有給休暇はすべて使い切ったが、本人及び子供の病気が理由で休む場合は「病欠」として有休とは別カウントで、有休扱いになる。つづけて、「Arbeitszeuginis(勤務評価)」を書いて下さいとお願いした。「Arbeitszeugnis」というのは学校でもらう成績表とは違い、数字で評価されるわけではない。2種類あって、いつからいつまでどういう職種で働いたかという単なる記録が書かれた成績表(Einfaches Zeugnis)と、もうひとつはそれに評価が文章で加わる成績表(Qualifiziertes Zeugnis)。たとえば仕事ぶりについての評価は、「stets zu unserer vollsten Zufriedenheit(常にこの上なく満足)」「stets zu unserer vollen Zufriedenheit (常にとても満足)」「 zu unserer vollen Zufriedenheit(とても満足) 」「 zu unserer Zufriedenheit(満足) 」「 im Allgemeinen zu unserer Zufreidenheit(概して満足) 」「 hat sich bemüht, die ihm übertragenen Aufgaben zu unserer Zufreidenheit(満足するように努力をしてくれた)」と書かれる。一見どれもポジティブな評価に見えるが、微妙な言葉の違いで、読む人が読めば一発で1か6なのかわかるシステムになっている。成績表は就職活動の時に履歴書とともに必ず求められるもの。悪い成績表だと就職活動に響く。成績表をもらうのは、従業員や研修生の権利で、法律にも書いてある。しかし社長は「Arbeitszeugnisをあなたに書くの?なんて書けばいいの?普通は口頭試験に受かって、それで研修が終わりでしょ?研修生に書くなんて聞いたことがないわ。雛形があるの?」と言った。社長は今まで何人か研修生をとっていたわけで、研修生に成績表をもらう権利があることを知らないわけがない。「学校に雛形があるかどうか聞いてみなさい。私の方でも調べてみるわ。」と言った。「書きたくない」という態度がありありで、なんだかショックだった。クラスメートに愚痴ったら、「Berufsbildungsgesetz(職業訓練法)第16条を社長に見せるべきだ」「インターネットで雛形を調べて自分で成績表を書いて社長にサインだけしてもらったら?」「たとえ悪い成績表であってももらっておいた方がいい。就職活動の時にもらっていないと言って見せなければいいだけの話。」「成績表をもらうのは権利だ」と返事が来た。学校に相談したら、「研修契約書にも成績表のことはかいてあるから、あなたには権利があるし、社長には成績表を書く義務があるのよ。それでも社長がそういうなら、私が書いてあげるから、あなたの今まで事務所でやったことをすべて教えて。「Note1」の成績表をかいてあげるからね。それを社長に見せて、サインをもらいなさい。」と言ってくれた。それで大したことはさせてもらえなかったが、一応こと細かく研修内容を報告した。それが昨日の話。今日中に書いてくれるという話だったが、まだメールは来ない。最後になるのが悲しいとかそういう気持ちは全くない。クラスメートに「最後の日は社長にプレセントを持っていくべきかな?」と聞いたら、「あなたの社長のような人には、私だったら何にもしない。手ぶらで行って、「ありがとうございました。さよならー」で終わりだわ。」と言った。私が驚いていると「誰にでもいい顔をする必要はないよ。もっと割り切るべきだよ。」とアドバイスされた。あと2回しか行かなくていいと思うとうれしいのだけど、成績表のことが気がかりで、気が重い。