蒸し返され、誇張される「浅田真央がオーサーにオファーした」説
4月に流れた「浅田真央がブライアン・オーサーにコーチを打診した」という噂。結論から言うと、これについては先ごろオーサー自身が「彼ら(浅田真央本人を含めた事務所)からの(オファーは)まったくなかった」と明確に否定した。http://www.nicovideo.jp/watch/sm11881670この動画の4:00あたり。「オファーはまったくなかった」。なるほど。だが、それならば4月に「噂」が流れた時点でオーサー自身が公けの場でそう言えば、今になってまたこの話が蒸し返されることはなかったはずではないだろうか?まったくなかったオファーの話が、「決別の1つの原因」などと言っているキム・ヨナ事務所が、では、一方的にデタラメを言っているのだろうか?もちろん、その可能性もある。反日感情の強い韓国で、あえて浅田選手の話を間接的に(つまり、名前を出さずに)持ち出すことで、この後味の悪いコーチ解任劇に対するキム・ヨナへの批判をかわそうとした、のかもしれない。だが、オーサーの態度も変だ。「噂」が流れた時点で公式に即座に否定しなかったこともそうだし、動画のインタビューで答えている、「噂」後のキム・ヨナに対するメールも不自然ではないだろうか?動画インタビューでオーサーは、キム・ヨナへの「噂」と題したメールで、「噂は聞いたと思うけど、アタシにはアナタが一番だから。アナタだけを優先させるから」と書いたと言っている。なぜこんなもってまわったような思わせぶりな書き方をするのか? 「噂はまったくのウソよ。オファーなんてまったくなかったわ」。これでいいはずだ。「メイン・プライオリティはヨナだから」・・・これでは、「オファーはあったのよ。でもね、アタシにはアナタが一番。アナタだけよ。だから早くアタシと練習しましょうよ」、そんなプレッシャーをかけたメールと取れないでもない。少なくとも、キム・ヨナにとって一番の関心事であろうはずの、「本当にオファーがあったのかなかったのか」について何も言わないのはおかしい。そもそも4月の時点での噂の出所はオーサーサイドなのだ。浅田選手サイドはこの噂をすぐに否定している。http://www.nikkansports.com/sports/news/p-sp-tp0-20100425-622183.html真央、ヨナの元コーチにオファー報道否定バンクーバー五輪フィギュアスケート女子銀メダリスト浅田真央(19=中京大)のマネジメント会社は24日、浅田側がカナダ人のブライアン・オーサー氏(48)にコーチ就任のオファーを出したとする23日の韓国での報道を否定した。同氏は、浅田のライバル金妍児(韓国)を同五輪金メダルに導いていた。浅田の担当マネジャーは「根も葉もない話。なぜ韓国でそのような話が出たのか分からない」と話した。 浅田陣営は、最近2シーズン師事したタラソワ氏に代わるコーチを探している。一方の金は、現役続行かプロ転向か未定。そんな状況で降ってわいた、オーサー氏へのコーチ就任打診の話に、同マネジャーは「日本スケート連盟の方からも問い合わせがあったけど『そんな日本と韓国の仲が悪くなるようなことはしない』と答えた」と話し、今後の打診の可能性についても否定した。 2010年4月25日8時42分だが、この「否定」コメントは、英語圏にはまったく伝わっていなかった。英語でプレスリリースを出さないのだから当然と言えば当然だが、このあと、米タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に、圧倒的な韓国からの組織票を得て選ばれたキム・ヨナは、ロイターとのインタビューで、「オーサーがライバル選手からオファーを受けたという話があるが」と水を向けられ、「オーサーが他の選手のコーチをするという話はウソだということを私は知っている。他の選手はコーチと多くの問題を抱えているが、私が今日あるのはオーサーのおかげだと思っているし、そうした信頼関係で結ばれている」と答えていたのだ。The stories that have been going around that Brian Orser will coach another athlete, I know to be false. Other athletes have many troubles with their coaches, but I think I was able to get where I am now because Orser and I had that relationship of trust.''円満を強調した(ついでに、浅田選手を含めたOther athletes はコーチと問題が多いなどと余計なことまで言っている)この英語圏でのインタビューは5月だったのだが、今になって「オーサー・コーチとは5月から他の選手からのオファー説でギクシャクしていた」「4年間、まったく問題がなかったわけではない」などと、態度を180度変えて非難合戦を繰り広げているのだ。するとオーサーが今度は「オファーはなかった」などと、今頃になって全面否定。まさに狐と狸の化かしあいのような話だ。もう1度、話を4月の「噂」が出た時点に戻そう。浅田選手は否定をした。だが、その後、オーサーサイドから韓国メディアに、「あれは浅田本人からの正式なオファーではなかったが、あくまで間接的な申し出だった」という話が流れたのだ。韓国紙は、今でもこの線で報道している。http://www.chosunonline.com/news/20100825000013ATスポーツによれば、キム・ヨナとオーサー氏の関係は今年5月からギクシャクしていたという。5月といえば、オーサー氏がキム・ヨナのライバル、浅田真央側から間接的にコーチのオファーを受けていたといわれる時期だ。 http://www.chosunonline.com/news/20100826000047(オーサーは)、浅田真央については「コーチのオファーを受けたことはあるが、断った。浅田を指導するつもりはない」と語った。さらに尾ひれをつけているメディアもあるようだ。http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2010&d=0825&f=national_0825_053.shtmlキム・ヨナとコーチの決別、「理由は浅田真央?」-韓国メディアそれ以上に注目を集めているのは決別の背景だ。AI SPORTSは「オーサーコーチとは5月から、他選手のコーチオファー説で関係がこじれていた」と決別の背景を説明。そして、キム・ヨナ選手は6月から一人で訓練を行っており、8月に空白期間を設けることでオーサーコーチと合意していたと主張した。 韓国メディアは、AI SPORTSの指す「他選手」とは浅田真央選手のことだと指摘。「キム・ヨナ側が示した不快な関係とは、浅田真央のコーチ提案説とみられる。真央側は、今年初めから絶えずコーチの提案を行っていた」と伝えた。複数のメディアが、キム・ヨナ選手とオーサーコーチの決別には4月に「浅田真央側がオーサー氏にコーチへの就任を提案した」と報道されたことが背景にあるという趣旨の報道が相次いでいる。 いやはや・・・ 動画で見るように、「浅田からのオファーはあったのか」という質問に対し、オーサー自身が、「まったくない」と答えているのだから、それが真実ではないだろうか? ところがいつの間にか、「間接的にオファーを受けていた」から「コーチのオファーを受けたことはあるが、断った」になり、「真央側は、今年初めから絶えずコーチの提案を行っていた」という話にまで膨らんでいる。まるでキム選手の「練習妨害」発言のときの騒ぎのようだ。キム選手の発言を、韓国メディアが大々的に、あたかも日本選手が邪魔をしているかのような動画まで編集して伝え、騒ぎが大きくなって日本のファンが怒り、連盟が重い腰をあげて抗議すると、今度は、キム選手が、「日本人とは言っていない」「メディアが勝手に報道したことだから、私はもうこれ以上コメントしない」などと言い出した。その「自己の目的のためにはスポーツマンシップをかなぐり捨てたかのような態度」に、日本でのキム・ヨナ人気は一挙に凋落したのだ。キム選手の熱烈なファンであることを公言してはばからなかったなかにし礼氏でさえ、「とても残念。決してフェアではない」と批判した。キム選手のような態度を日本人選手がとったら許されるだろうか? いやそもそも、決められた人数で行う練習、自分1人のためのものではないリンクで「練習を妨害された」「ここまでやるのかと思った」などと、いち選手が公けの場で発言するのを許すコーチがいるだろうか? 日本人のコーチは「礼儀」に非常に厳しい。山田コーチが伊藤みどりを育てていたとき、「成績がよくなると、練習のときに他の選手に対して態度が傲慢になってくる。それは厳しく戒めた」と言っていた。今回もキム・ヨナ側は、「浅田真央」とは言っていない。「ブライアン・オーサー・コーチとは5月から他の選手からのオファー説でお互い不便な関係が続き」というのは、「(実際にはない)オファー説を流したオーサーに不信感が募った」と読めなくもない。だが、一般には、「オーサーとの間に、浅田真央が割り込んできたために、順調だった関係にヒビが入った」と解釈するのが普通だろう。まさか、「あれはジュベールのこと」などと言うわけにもいくまい。その「解釈」を勝手に発展させて尾ひれをつけるカタチで、韓国メディアが連日派手に報道しているのだ。<続く>