ビアンケッティさんからの伝言(I messaggi della Signora Bianchetti)
先日も某ブロガーさんへのビアンケッティさんのメールをご紹介させていただきましたが、別の読者さんも彼女にメールしたところ、お返事が来たそうです。ブログをお持ちでないとのことですので、拙ブログで一部ご紹介させていただきます。もちろん、ビアンケッティさんご本人の了解を得ています。まずは、E.Sさんへのメールから。ダウングレード判定への私見の部分をご紹介させていただきます。As to the rule about downgrading of the jumps is a real aberration of the IJS. The skaters are penalised twice : by the Technical Panel that down grades the jump and by the judges who must assign a negative GOE. This idea has created a lot of criticism and I can tell you that it has been discussed in Los Angeles and there will be an improvement for next year. I do not know exactly how the new rule will read but I hope it will make things a little better at least. What is sure is that . The beauty and the art of figure skating have been killed by the new system. ビアンケッティさんも、ダウングレード規定は常軌を逸していると言っています。彼女のサイトでも、「少しだけ回転の足りないジャンプが、回りきっての転倒より低く評価されるなどばかげている」と批判していますね(つーか、当たり前のことですよねぇ)。こんな非常識なことがまかりとおっているのが、今のルールなんですね。絶望的です。このメールでは、回転不足判定されると、スケーターはダウングレード(ジャンプの基礎点をその下のジャンプのものにされる)され、GOEでマイナスにされることで、「2度罰せられている」と書いていらっしゃいます。Mizumizuが何度も指摘している、2重の減点のことですね。このダウングレード判定の考えについては、非難の嵐ですから、来季は改善されるであろうとのことです。新しい規則がどうなるかはわからないけれど、「少なくとも、多少はよくなることを望んでいる」と、ビアンケッティさんの言葉はとても頼りないです(苦笑)。そして、彼女が感じる一番の問題。「新採点システムによってフィギュアスケートの芸術と美が殺されてしまった」――これについては、細かな要件を満たすことで点が出る今のシステム、そうした要件を満たそうとすると個性的な美がなくなる(評価されないから)ということで、拙ブログでもすでに説明しましたね。「フュギュアは終わった」とMizumizuが考えているのも、昨今の「評価されるプログラム」のつまらなさです。今季はそれが決定的になりました。オールドファンなら納得していただけるでしょう。Mizumizuの意見では、ダウングレード判定は、廃止されない限り、「改善」はないと思っています。そもそもジャッジの良識にまかせるのではなく、ダウングレードするジャンプの線引きを厳密にしようとして、さらにめちゃくちゃになってるわけですから。4分の1回転という明確な基準を設けても、それを判断するのが人間である以上、見ているファンが納得できる公平で透明な判定などできないことは今季の「血祭り」が証明しました。事態はむしろ逆になったんです。ルールの読み替えでは、一部の選手が不利になる状況は変わりません。別の読者さん、K.I.さんに送られたビアンケッティさんからのメールでも、ダウングレード判定の愚に対して触れていらっしゃいます。回転不足のジャンプをダウングレードするのは本当に深刻な問題… それ以下はビアンケッティさんのサイトでの主張(そしてMizumizuが昨季から繰り返し主張してきたこと)と同じです。こちらも双方の了解を得て転載させていただきます。The problem of downgrading the under rotated jumps is a very serious one..I wonder how can any one even envisage that a triple or quadruple jump, slightly under rotated can be considered as a failed double or triple and gets less points than the same triple or quadruple fully rotated by marred by a fall. A real aberration! I have been fighting against this rule since it was adopted. Let's hope that somebody will listen.My only wish that the ISU will finally accept the idea that the system must be revised, must be symplified and the scoring made understanble and open to the public. 「採点はもっとシンプルに、わかりやすく、そしてオープンでなくてはいけない(つまり匿名にするなということ)」――もっともです。この常識が通じなくなるのがつまりは、政治力なんですね。K.I.さんはジャッジの匿名性について批判されたそうですが、ビアンケッティさんも以下のように返事をされています。I fully agree with your comments on secret judging. In my opinion, this was the worst decision taken by the ISU in the last one hundred years . But of course Ottavio Cinquanta, the ISU President, just wants to prevent any possible control on the judging to protect his image and that of the ISU. To me, it is just the opposite. Secret judging can only increase the feeling that it protects deals and miscunduct of a few dishonest judges. As to the random draw, you are right. The results could very depending on which judges have been drawn. This has been proven mathematically. And it is completely unfair to the skaters. この匿名ジャッジング採択は、ISUのここ100年の歴史の中で最悪の決定だった――ビアンケッティさんがもっとも批判しているのは新採点システムのこの部分です。ジャッジの匿名は疑念を招くだけなんですね。ランダム抽出も公平さを欠くのでダメです。Mizumizuは匿名のジャッジングに関しては、これまでそれほど批判的ではありませんでした。GOEを大盤振る舞いするジャッジや逆にしぶいジャッジがいるらしいことはわかっていましたが、それはむしろダブルアクセル以上のジャンプへのGOEの反映割合が大きすぎることのほうが問題だと思っていましたし、何より、タテマエ上は絶対評価でも、実質的には比較による主観点で出されてきた「演技・構成点」が、選手によってあまり差がなく、それなりに納得できる点を出してきていたからです。つまり主観点への抑制がそれなりに効いていると思っていたからなんですね。でも、今回の世界選手権女子シングルで「パンドラの箱」が開きました。やはり、匿名性は、ヤグディンも最初から批判していましたが、最大の問題点だったわけです。また、ジャッジの待遇の悪さも驚きますよね。この記事↓オーサーのお友達が、経費節減のためにジャッジの数を減らしたという話なんですが…http://sports.theglobeandmail.com/servlet/story/RTGAM.20081011.wspt_skating11/GSStory/GlobeSportsOther/homeAn event organizer must pay the costs of judges' transportation, accommodation, meals and a per diem, which works out to only about $25 a day per person. 大会組織委員会がジャッジに払う手当てが、1人1日あたり25ドルって…ジャッジが実際に手にする報酬とは違う可能性はありますが、いまだに「250ドル」の間違いじゃないかと思ってます(苦笑)。よくジャッジはボランティアのようなものだから清廉、という方がいますが、それは違うでしょう。本物のプロはそれなりの報酬で遇せられて初めて、誇り高く、独自性を保った仕事ができるんです。Mizumizu自身、仕事仲間はその人の能力で判断してます。それなりの人はそれなりの報酬を要求します。「ボランティアのような賃金でいいから、働かせて」と言ってくる人もいますが、使いものにならないので、仕事のお願いはしませんね。ジャッジの数が減ってから、意味のわからない演技・構成点のアゲ・サゲが始まったと思います。このオーサーのお友達は、今の採点システムを操作するのは、優秀な数学者でないと無理だと言ってますが、だ・か・ら、異常な演技・構成点の爆アゲが突然起こったんでしょ。優秀な数学者じゃないから、演技・構成点で極端な差をつけておかないと、うっかりすると別の誰かが勝ってしまうかもしれないから。そしたら意味不明の点差になって、みんな驚愕。プロトコルをフォローしてるコアなファンは呆れて、ジャッジを見放しました。ジャッジはくじ引きで選ばれ、選手がほとんどいないようなフィギュア後進国のジャッジも格式の高い試合のジャッジに入ってくる。当然経験が問題になる。そこで…"I'd like to say they're better educated than the inexperienced ones in the past," Dore said. "I think we have better education now. We have more visual education. We have a seminar every summer that has 120 people in it."毎年セミナーを開いて、ジャッジを教育するわけですね。資金不足なのに、セミナーは大々的に開く。ジャンプの評価の指針を決めているのは誰でしょう? 幅跳びジャンプばかりにGOEがつくのは? 飛距離の出ないサルコウやループにはそもそも加点があまりつきませんよね。それも変な話でしょう。で、一定の基準と要件を満たした、美しくもなく、たいして芸術的でもないプログラムに高い点を出すように刷り込まれる、と。そうやって「よりよく」ジャッジが教育されていく、と。よくわかりました。<う、また文字制限>