耳なし芳一
『耳なし芳一』の怪談は、母親からの語りで知って、何となく作品の内容を知った気持ちでいました。ところが先日、小泉八雲記念館でラフカデイオ・ハーンの文庫、『怪談』を妻が入手したので、その中に収録されている『耳なし芳一の話』を読んでみました。そこで気付いたのは、子どもの頃に、耳から聞いて理解していた『耳なし芳一』と、実際に収録されている文庫本のお話とは、少し違って理解していたことに、気付いた次第です。芳一を寺に住まわせた和尚は、何者かに請われ、壇ノ浦の合戦の物語を弾き語ることになり、毎夜出掛ける芳一を護るために、般若心経を全身に書き付けて、芳一が連れ去られるのを防ぐのですが、両耳にお経を書くのを忘れたために、両耳だけ悪霊に持ち去られる、というお話です。私が分からなかったのは、誰がどうして芳一を連れ出して、壇ノ浦の合戦の物語を弾き語ることになったのか、という点です。『怪談』によると、入水した幼い安徳天皇の霊が、芳一をおびき寄せて、琵琶の弾き語りを聞こうとしたのです。やはり耳で聞くよりも、文字で表された内容を理解することが、大切なのですね。