立山のライチョウとイワヒバリ
8月16日、立山室堂から五色ヶ原へ向かう途中でグヮ、グヮとカエルのような小さな鳴き声がした。慌てて立ち止まると、ハイマツの陰から現れたのは、ライチョウのオスである。彼はちらりとこちらを見ると、何事もなかったかのようにスタスタ歩いて出てきた。 ライチョウのオスオスを見たのは初めてだったので、興奮していると、さらに1羽、1mほど後をひょこひょこついていく。こちらは茶色のまだら模様でひとまわり小さい。メスか、もうずいぶん大きくなった幼鳥だろう。 先頭を歩いているオスは、3mほど先のハイマツの茂みの手前まで来ると立ち止まり、振り返って待っている。 ライチョウのオス驚いたことに、彼らの行進はこれだけでは終わらなかった。登山道の向こうから、さらに数羽やってくる。おいおい、人間の数も増えてきたでぇ。それはマズいやろ。しかし、幼鳥と思しき行列はのんきにこちらへ向かってくると、左にそれて例のオスが出てきたハイマツの茂みの中に入り、再び登場した。多少ガスっているので、バレていないと思っているのかもしれない。 こちらはオスのようだが、赤い肉冠がない。ずいぶん大きくはなっているが、幼鳥の可能性がある。どの個体が鳴いているのかはよくわからないが、たまにピヨピヨと幼鳥特有の鳴き声がかすかに聞こえるので、幼鳥がいるのは確かである。 夢中になって写真を撮っていると、反対側の斜面にはイワヒバリが増えてきた。人間が動くたびに驚いて飛び立つが、立ち去る気はないようである。 イワヒバリ ハイマツの茂みの間には3mほど開けた部分があるのだが、幼鳥たちはどうしてもそこで立ち止まってえさを探そうとする。おい、警戒心を持て。 先頭のオスに促されたのか、急に走り出した。速い速い。 別の個体も途中で完全に止まってえさを食っていると思いきや、やはり急に駈け出した。さっさと来いと叱られたのだろう。 こうして、10羽ほどのライチョウは無事に我々の目の前を横切ってハイマツの向こうへと消えていった。こんなにたくさん見たのは初めてである。ライチョウはメスだけで子育てをするが、繁殖期が終わると群れで行動するようになるらしい。幼鳥たちが大きくなったので、オスも加わって群れをつくっていたのかもしれない。今年も彼らの元気な姿が見られてよかった。盆休みの日記はこれでおしまい。