石柱渓と中山渓
5月5日、天気がいいので、予定を変更して山口県下関市(旧豊田町)の石柱渓に行くことにした。道は途中から山の中に入り、細くなってきたが、近くにバス停があった。下調べを全くしていなかったのだが、なかなかの名所なのか、11時40分には10台以上の車が止まっていた。後で調べたら、国の天然記念物だった。入口には藤棚があり、ちょうど見頃である。案内板を見た家族がうれしそうに言う。「滝、こんなにあるんや。」ただし、川の流れはかなり緩やかである。あまり期待せんほうがええんちゃうか。歩き始めてほどなく、最初の滝に到着した。右側に下りる道がある。先に行った家族がわめく。「ショボっ!これ滝言うたら、アカンやろ!」その一言で私は下りるのをやめた。家族はまだかたまっている。進むかどうか思案しているのである。まあ、せっかくやから、行ったらええんちゃうか。歩くだけでも気持ちええやん。「ええとこがあったら、覚えといて帰りに撮ろな。」はいはい、写真が無駄にならんでええわな。小さな滝はいくつもある。石柱渓という名前からもわかるとおり、滝よりもその周辺の岩のほうがおもしろい。柱状節理だというのが、天然記念物に指定された理由である。柱状節理とは、おおざっぱにいうと岩石に割れ目が生じて六角柱などの形になったもので、溶岩が冷えてかたまってできるものが多い。山口県には黒い溶岩できれいな六角柱が並んだおもしろいところがあり、数年前に見に行ったことがある。しかし、ここのは侵食によるものらしい。そのためか、形はあまり整っておらず、不等辺五角柱が多い。日陰で暗いので、きれいに写らないのが残念だが、なかなかいいところである。撮りたい滝の名前を覚えながら、ほとんど平坦で歩きやすい道を歩く。落差2~4mの比較的大きな滝がいくつかあった。道はさらに続き、次第に上りになった。家族は、これだけ上ったのだから、最後に大きな滝があるのだろうと期待に胸をふくらませている。しかし、水音は次第に小さくなる。案内板の最後の滝の名前、何やったっけ。嫌な予感がする。前を歩いていたグループの叫び声が聞こえてきた。「ええっ、うっそー、これで終わりー?」前方には立ち入り禁止のロープが張られている。うわっ、やっぱりやられてもうた。後味、ワルっ!ゴールがはっきりした渓谷は初めて見た。文句を言っても仕方がないので、ここで引き返す。せや、写真撮らな。12時15分、これは撮影候補の1つやったなあ。 北海の滝しばらく歩くと、おもしろそうないい流れがあった。これって、撮影候補やなかったっけ?なぜ見落としたのだろうと不思議に思いながらまずは1枚。もっと近寄って水の流れを1枚。こちらは残念ながら、暗くてはっきり写らなかった。緩やかにカーブした道を振り返りながら歩く。数m進むと、滝の名前が書かれた札があった。なんや、これか。行きに候補に入れていた滝である。 閑山の滝家族の言う「ショボい滝」の脇をいくつか通過し、スタート地点まで戻ってきた。撮影候補に入れていても、一通り見てからだと、これは撮らなくてもいいなと思う滝が出てくる。もう一度言っておくが、ここのメインは滝ではなく、岩である。薄暗いので、滝と一緒に撮ると明るい水の流れが目立ち、柱状節理があまりはっきり写らなくなってしまうのが残念である。12時35分、入口の案内板で最後に見た滝の名前を確認する。一雨の滝…あったっけ?見たような気もする。その前は普賢の滝、こいつはちゃんと見たでぇ。ということは、遊歩道は最初からあのロープのところまでだったということになる。あの立ち入り禁止前の上りは…必要ないやん!それやったら、滝のところでストップせえや。この滝もなかなかやねえで終われるやん!まあええわ。後味が悪いだけで、なかなかよかった。駐車場に戻る途中、リング状になったシマヘビを見つけた。頭隠して尻隠さずどころか、頭以外は丸見えである。逃げ損ねて、とっさに頭だけはくぼみに突っ込めたのだろう。 シマヘビおーい、顔もちょっと見えかけてんでぇ。 シマヘビ完全に死んだふりを決め込んでいるシマヘビの体の上をアリが這っている。死んでいるのかと思ってしまうが、つついて確かめるなどというひどいことはしない。死の恐怖を感じたシマヘビにガブリとやられるのがオチである。12時50分、もういい時間である。昼食をとるため、近くの道の駅蛍街道西ノ市に行くことにした。13時だというのに、道の駅に入る車の行列ができている。嘘やろー。田舎やんかー。(決してバカにしているのではない。人がこれほど押し寄せるところだとは思わなかったのである。)幸い、出る車が数台あったので、すぐに中に入れた。下関ナンバーの車がほとんどである。渋滞を避けて近場でのんびりしようというのだろう。ここにはランチバイキングをしているレストランや温泉がある。はやるのも当然だろう。昼食の順番を待つ時間があったので、出たときには14時半近くなっていた。次の目的地は下関市(旧菊川町)の中山渓である。14時40分頃、駐車場というよりも草地といったほうがいいような広場に車を止めると、小雨がパラつき始めた。仕方なく、傘を用意して歩き出す。ため池のようなところが見える。水の流れは全くなく、緑色でとろっとしている。道は人が一人通れるほどと狭いが平坦で歩きやすく、ところどころになぜかヒラドツツジが咲いている。日陰なので開花時期が遅いのか、ちょうど見頃である。少し暗いので写真は撮らなかったが、白やピンクなどの花がみずみずしくきれいだった。幸い、雨はすぐにやみ、ほどなく、雌滝さまが現れた。石柱渓の滝よりは大きいが、撮影はパスした。水の流れはかなり緩やかで、ほとんど流れていないところもある。雌滝さまがあるのだから、雄滝さまもあるはずだが、期待していいのだろうか。14時50分、雄滝さまが見えた。落差数m、決して大きな滝ではないが、これなら、まあ撮ってもいいだろう。 雄滝さま15時10分、駐車場に戻ると、再び雨が降り始めた。高速道路に入る前にトイレに行っておこうと思い、もう一度道の駅蛍街道西ノ市の前まで戻ってくると、駐車場に入る車の行列で渋滞ができかけていた。げっ、まだ混んでんのかい!つくづく思う。下関の渋滞、恐るべし。近くの店でトイレを借り、美祢インターに向かう。再び降り始めた雨は、今度は本降りである。もうええわ。帰るだけやし。中国道は途中で事故もあったようだが、通行止めはなかったのか、流れがスムーズで、予定通りの時刻に家の最寄りのインターを通過した。料金の表示は1000円。やったー、本州西端まで行った甲斐があったー!GWの話はこれでおしまい。