【笑顔の効用】
【笑顔の効用】 明治大学教授・齋藤孝氏の言葉から。 (※これから社会人になる人のために書かれたものです)《◆上機嫌でいることは社会人の基本的マナー 「笑顔を忘れない」というのは、人に好かれる場合の基本中の基本です。 この点に関して、みなさんは日本人に生まれたことをおおいに喜んでください。 小泉八雲の日本名で知られるギリシャ人作家ラフカディオ・ハーンは「日本人 の微笑」という文章の中で、日本人はたとえ身内の不幸を人に伝えるときでも 微笑みをたたえている、と書いています。 これは自分の不幸悲しみを相手に伝染させないようにする日本人ならではの 配慮です。 芥川龍之介の『手巾』(ハンカチ)という短編小説にも、息子の死を微笑みを たたえて話しながらも、テーブルの下でハンカチを裂かんばかりに握り締めて いた母親の話が出てきます。 みなさんも、これから社会人として、人から嫌われずに生きていくには「一生、 上機嫌で行く」という決意が必要です。 わが子を亡くしたときでさえ、微笑みをたたえているのが日本人なのですから、 みなさんも少々仕事がうまくいかないくらいで不機嫌になってしまうのは、あ まりにも未熟で幼稚だと心得ましょう。 私は職業倫理として上機嫌でいることが必須と考えていますので、それを徹底 するため「上機嫌Tシャツ」というのをつくったことがあるくらいです。 胸の前には「上機嫌」と大きくプリントされ、背中には小さな文字で「意味も なく」と書かれています。 それを着て、授業をすると、不機嫌には決してなれません。 「意味もなく上機嫌」「どんなときでも上機嫌」というのが、人に好かれるため の大人の作法になります。◆笑顔の効用は人からかわいがられること 上機嫌とは、いつも微笑んでいる、笑顔を見せるということですが、笑顔の 効用は人からかわいがられる、ということです。 犬も喜んでしっぽを振って駆け寄ってくるほうが、人間にかわいがられます。 カーネギーはこんな例をあげています。 病院の待合室で、みんな押し黙って順番を待っていたときのことです。 若い母親が赤ちゃんをつれて入ってきました。 そして、不機嫌な顔つきで順番を待っている紳士の隣に座ったのです。 赤ちゃんは満面に笑みをたたえて、不機嫌な紳士を見つめました。 すると紳士は赤ちゃんに微笑み返し、若い母親に自分の孫のことを話し始めた のです。 やがて待合室にいた全員がおしゃべりに加わり、いらだった雰囲気がほぐれた ということです。 心にもないつくり笑顔ではこうはいきません。 赤ちゃんの心の底から出てくる笑顔がみんなの笑顔を引き出したのです。 口角を上げただけの張りついたような笑顔と自然の笑顔とは違います。 「今ここに生きていることが楽しい」と言わんばかりの喜びの表情が場をなご ませ、明るくします。 みなさんも何か心がはずむような感覚を自分のくせにして、いつも笑顔を見せ られる習慣をつけるといいでしょう。》 (出典元:齋藤孝著「齋藤孝が読むカーネギー『人を動かす』創元社」 * * * 人間が他の生き物と違ういちばんおおきなことは、人間は笑顔になることが できるということです。 生まれてすぐの赤ちゃんは母親の笑顔に接することで、自分の存在が喜ばれて いることを感じ取り、笑顔で返すのです。 赤ちゃんが最初に学ぶのは、笑顔になるということです。 笑顔になると、笑顔が返ってくる。 これが人間の社会なんだな、と赤ちゃんは学びます。 だから、いつも笑顔でいることが生きる喜びにつながっていくのです。 年齢をかさねると、笑顔のほかに微笑みというもう一つの表現が身につきます。 人がふとしたときに微笑む光景を見たとき、何ともいえない心地よさを感じた りするものです。 笑顔の習慣を身につけ、心地よい毎日を過ごしましょう。 (by ハートリンクス)