【ほめ言葉シャワー】
【ほめ言葉シャワー】 齋藤 孝氏の言葉から― ◎ある小学校では「ほめ言葉シャワー」で語彙力を増やしている。 これは菊池省三さんという小学校の先生が始めた試みで、「ほめ言葉の シャワー」という実践を行っている。 菊池先生は、「学級崩壊立て直し請負人」とも呼ばれ、NHKの『プロ フェッショナル」という番組にも出演されている。 もともとは子どもたちの言動が粗暴になっているのをなくしたい、という ところからスタートしたそうだ。 ある教室で「なくしたい言葉」のアンケートを取ったところ、一位が 「死ね」続いて「ばか」「消えろ」「むかつく」「関係ない」など、相手 との関係を断ち切る言葉が並んだという。 菊池さんは、いじめや学級崩壊がこうした粗暴な言葉から生まれてくるの ではないかと考え、「ほめ言葉シャワー」活動を始めた。 具体的には、決められた一人に対してクラス全員が、ほめ言葉を自由起立 発表でシャワーのように行う。 ほめられた子どもは「お礼のスピーチ」をする。 これをクラス全員が順番に体験するというものだ。 30人のクラスなら、一人の子に最低でも30個のほめ言葉がかけられる。 それを30人の子どもが体験するので、30個×30人=900個の ほめ言葉が生まれる。 菊池先生はこのシャワーを年4回行うと言っているので、3600回の 「ほめ言葉」が教室にあふれることになる。 まさに「ほめことばシャワー」である。 このことによって何が起きたかというと、相手に注目して、細部まで観察 するようになったことや、人に対するプラスの言葉が増えたという。 このプラスの言葉を菊池先生は「価値語」と言っているが、ただ事実を指 摘するだけでなく、「価値語」をプラスしたポジティブな言い方が増える ことで、「ほめ言葉」の語彙が広がった。 例えば「A君はクラスの宝物です」とか「A君はA君らしいです」 といった素晴らしい「ほめ言葉」が並ぶようになったのだ。 小学生でさえ、練習すればこのような「ほめコメント」が言えるのだ。 私たちにできないはずがない。 (参考文献:齋藤 孝著「ほめる力」 ちくま文庫)________________________________________ *著者は大人用の「ほめ言葉シャワー」を成功させるコツがあるという。 1、ほめ言葉を言う時間がないときは、簡単なメモをとる。 2、いつでも始められる。たった1回でも効果が大きい。 3、「私のほめ言葉」「言われた嬉しかった言葉」などを発表する。 4、ほめ合うことに関する格言を集める。 5、仲間以外の人もほめる「ほめ言葉シャワー」を作るとその人も喜ぶ。 6、周囲にこの活動を知らせると、意欲づけになる。 別の話だが、企業でもこれと同じような実践をして成功した事例がある。 2006年当時、経営に苦しんでいた日本航空・JALグループは経営難 の原因の一つに社員間のコミュニケーションの欠落があったことを反省し、 次の方法を考えたという。 それは、社員どうしで相手の、気配りや励ましなどに対する感謝の気持ち を形にして伝えるために「サンクスカード」というメッセージカードを 部門を超えて交換する、ということだった。 たとえば、運行管理担当者から空港所担当者へは、 《滑走路上の落下物に関して迅速な報告を頂きブロックアウト(出発) 直前の航空機から不安全要素を排除して運航させることができました》 整備部門から機長へは、 《SQ(故障)発生時の整備処置のご協力に感謝申し上げます。あなたの ようなCAP(機長)がJAK(グループ企業の日本エアコミューター) を築くものと信じ私たちも頑張ります。ありがとう!》 結果的に、社員の意識が変わりその後、会社は黒字決算になった。 社員間のよいコミュニケーションは職場を明るくし、事故を防ぎ会社自体 の利益を上げる。それが社員の幸福につながる。 学校も、企業も、家庭内も同じだ。 ほめ合える社会環境作りは大切だ。