【転職と適職】
【転職と適職】 知人から30歳になる息子のことで話を聞いてくれ、という連絡がありました。聞けば、帰省した息子さん今の仕事が自分に合わないので、他の仕事を考えている、という内容です。今は営業の仕事で、もともと苦手だったこともあり事務系の仕事に変わりたい。会社の体質が嫌とか、人間関係が嫌とかはないということです。そこで、ある本で読んだ転職にまつわるエピソードを思い出し、知人に話しました。内容は次のようなものです。________________________________________Aさん(男性)は就職5年目の営業マン。ある時、社内の人事異動で経理課に行くように辞令がおりた。「営業の俺が、なんで経理の仕事を?」と首をかしげた。とりあえず、会社の命令だからしばらく辛抱してみるか、と考え業務をこなす日々が続く。仕事の内容は、伝票の仕分け、仕入れから販売にいたる請求書のチェック、入力など。現金を扱う仕事ではないが、伝票とにらめっこする毎日の連続である。3か月を過ぎ、半年がたったがどうしても営業の仕事がしたくて仕方がない。Aさんは意を決して経理課長に談判。「今の、経理の仕事は自分に向いていません。前の部署に戻していただ けませんか」「どうしても嫌か?」「そうです」経理課長はしばらく考え、こう言った。「ふーん、わかった。営業の担当者に話してみよう。ただし条件がある。 君が嫌だという経理の仕事、具体的にどこがどういうふうに嫌なのか 論文を書いてこい。その論文をまず俺が見て、合格したら君の願いが 叶うように努力する」Aさんは、一応は自分の意見を聞き入れてくれた経理課長に感謝しつつも論文なんて大学で仕方なく書いたことはあるが、得意とする分野でもない。しかし、営業に戻れるなら、と気を取り直して準備にかかった。まず、書店に行き経理関係の本を何冊か購入。さっそく読み始めた。読んでいくと専門用語がどんどん出てきて、その意味を調べるということが生じる。かと思うと、具体的にどこが嫌かということを書くにしても、課長を説得できるだけの内容にしないといけない、という思いもあって、必死で書いていった。すると少しずつではあるが、「俺がやっていた、あの伝票作成はこんな意味があったのか」ということがどんどん解りだしてきた。Aさんは経理の仕事の面白さを発見することができた。出来上がった論文を手にAさんは経理課長のところに行った。「大変申し訳ありません。やっぱり今までどおり、このまま経理課で 仕事をさせて下さい」3年後、Aさんは経理課の課長代理に昇任した。今では課内では一番経理の知識が深いとのこと。________________________________________大体、こんな内容を知人に伝えました。仕事が適職かどうか、確かに向き不向きはあるでしょうが、そうとばかりもいえないことがあります。自分では向かないと思うことでも、やってみると自分では気づかない隠された能力があります。心理学の世界では、人は自分の力の15%しか使っていない、と言われています。可能性を現実化できれば、人生は広がり豊かになると思います。