【自分の仕事を尊敬する】
【自分の仕事を尊敬する】 ★中村天風師の講演記録(1965年当時)から― ◎今、日本一の電気事業者となっている人(注:松下幸之助さんです) が若い時から私のお弟子さんでいたんであります。 その人はね、まさか今日のような日本一の電気事業者になるつもり で、あの仕事をしだしたんじゃないんですよ。 一番最初は、裏長屋を三軒借りて仕事を始めた。 当時、裏長屋一軒の家賃が3円50銭。(注:その頃、銀行員の 初任給が50円位といわれ、仮にいま25万円として17,500円 になります) それを三軒借りてたっていうんですから、10円50銭だね。 それで、当時職工さんを養成する学校があったんだけど、その学校 に夜、通っている学生さんを、昼間だけ雇って電信柱なんかについ いる碍子(がいし)、あれの荷造りをする下請けをやってたんです。 その時、たまたま私のところに来たんです。 まだ私が44~45歳の時代です。今からちょうど45年前か。 その人は30歳ちょっと出たころです。 それで私の話を聞いて、感ずるところがあったんでしょうな。 自分ではそれまでは、ただもう卑しい仕事をしているとしか考えて いなかったらしい。 ところが、私が「まず第一番に自分の仕事に対する、本当の尊敬の 念を抱かなきゃいかん」と言った。 それ本当ですよ。靴ひとつ磨いたからといって、桶ひとつ洗った からといって、自分のしている仕事に対しては、自分が尊敬を払 わなきゃ。 碍子を包装する仕事をしている時でも、「一つも荷崩れがあっちゃ いかんぞ。包んだ碍子に破損があったら私たちの恥だから。 みんな一つ一つ、自分のものだという、愛情を持って包みなさい」 と言っていたんだ。 わずか10人ばかりの、職工の卵をアルバイトで雇っている小さな 会社でね。 ところが間もなく、「あそこの品物だけは安心して使える」と評判 になって、それから会社はどんどん大きくなったんです。 (参考文献:中村天風著「幸福なる人生」PHP)________________________________________ *今の自分の仕事が尊敬できるか。 こう問われて胸を張って「もちろんです」と答える人でありたい。 今、やっている仕事が重要なものでなくとも、真に尊敬できるか どうかはその人の考え方です。 重要な仕事でなければ尊敬できない、それはベストを尽くしている とは言えない。 仕事を単なる、生活に必要な金銭を得るための手段とするのか、 尊敬の気持ちを抱きながら仕事に取り組むのか、この違いはとても 大きなものです。 ベストを尽くすとは、誠心誠意で取り組むこと。 どんなことにも、ベストを尽くす人でありたいと思います。