【人との関係で足りないものを加えてみよう】
【人との関係で足りないものを加えてみよう】★臨床心理士・すがのたいぞう氏の言葉から―◎私たちが病院に行くのは、どこか身体に悪いところがあるからである。 そして悪いところを見つけ、それをなおしてもらうのである。 機械が故障したときも同じである。 このような単純明快な成り立ちを「修理モデル」とでも呼んでおこう。 多くの人は、「修理モデル」が頭に染みついているので、「ここをこうすれば よくなる」という直線的な考えにはまり込みやすい。 しかし、「心」や「人間関係」の場合は、なかなかそうはいかないのだ。 たとえば、夫との関係で悩んでいる奥さんのカウンセリングでも、「夫のこん なところを改善すればうまく」というような簡単なストーリーは見つけにくい ものである。 なぜなら、人と人との関係は、相互作用によって成り立っているので、一概に 一方の問題であると決めつけることはできないからである。 「夫のわがままな性格がなおれば、夫婦関係はよくなる」と奥さんは考える。 確かにそれはその通りなのかもしれない。 しかし、ご主人は奥さんとの関係の中でわがままになっているのかもしれない のである。 相手の対応しだいで従順にも勝手にもなるという側面があるのかもしれない。 仮に、どんなときでもわがままな人であるとしても、人の性癖はそうやすやす と変わるものではない。 そこで、現状はそのままでもいいから、そこにあらたに何かが加われば二人の 関係はいい方向に行くのではないか、そんな問いの立て方をしてみよう。 何かを「なおす」という方向とは違う対策を考えてみるのである。 もちろん、これは夫婦の問題に限らない。 あらゆることに適用可能であり、有効である。 「たぶん、子どもができたら違ってくると思います」 「一週間に一回、じっくり話し合える時間をつくるといいと思います」 「共通の趣味を見つけるといいと思います」 「足りない」という思いから、このような方向に気持ちが向いていくとき、 人は「修理モデル」を超えた、問題解決の道を歩んでいるのである。 「どこが悪いか」ではなく、「何が足りないか」を考えてみよう。 (参考文献:すがのたいぞう著 「こころがホッとする考え方」 PHP)________________________________________*私たちは、なぜか相手の欠点に目がいきやすい傾向があります。 もちろん、相手のいいところを見ることもあります。 いいところだけを見て、その人との関係をうまくできるのがベストですが 人間関係はそう簡単なものではないようです。 どうしても、相手のよくないところが目につき、それをなおしてもらおう と願ってしまう。 なぜそう思いたくなるかといいますと、人は相手の欠点を指摘することで 自己の優位性、正当性を感じることができるからです。 そしてその感情が、多少なりとも自分を落ち着かせることに役立つからです。 しかし、この考えから抜けきれず、エスカレートするにつれ、自分で気づかな いうちにストレスを溜めることになります。 そうならないためには、初期の段階で、相手の悪いところをなおそうとするよ り、関係性の中で何が不足しているのかを考えることが、賢明な対処法の一つ です。 不足する関係性を見つけることは、相手への思いやりにもつながります。 見つけようとすること自体、相手をもっと理解したいという気持ちが表れて いる証です。 人間関係での悩み方にも、工夫をすれば違う展開が生まれることを知っておく のも無駄ではありません。