〇〇 自由なる個に弧がまとい心細る
♪ グーグルに地球をズームアップする荒野に並ぶ仙人掌の棘 時代は変わったと思う事しきりですが、こういう記事を読むとその変容振りには驚かされるばかりです。 朝日新聞の「灯 わたしのよりどころ」という連載記事より「職業」と言っていいのか、有料で依頼を受けて、ただその依頼者に寄り添うだけで文字通り何もしない、「レンタル何もしない人」という存在が注目されている。2018年6月から始めていて、これまでに4千超の依頼を受けてきたという。必要とされ、感謝されていて、ツイッターのフォロワーは40万人を越えているという。「レンタルさん」の森本祥司さん(39)1983年生まれ。大阪大学大学院理学研究科宇宙地球科学専攻修了。 利用者の一人、九州から状況した女性(32)は発達障害があって、地図を読むのが苦手で、集中力も続かない。2時間かかってようやく目的地にたどり着いた。そこに寄り添っていたのが「レンタル何もしない人」の彼。困っていても手を貸さず、何もしないで見守っているだけ。 この日、彼女は1万円を支払って彼を依頼したのだという。「家族や友達が一緒だったら絶対に甘えていた」。でも「レンタルさん」はただいるだけ。気を使う必要はなかった。彼女は、高校卒業後に就職した先で理不尽な扱いを受け、うつ状態になり退社。 日常生活でホームヘルパーが世話を焼いてくれるが、彼女はそういう手助けが「しんどく、つらい」と感じてしまう。「レンタルさん」に依頼し始めてから、一人で物事をこなす自信が付いた。鬱の状態も快方に向かっている。「レンタルさん」がいるから将来に絶望せず、強く生きていける気がする」収入なし、ストレスゼロ。“レンタルなんもしない人”やってます。(婦人公論インタビュー記事) この発想は普通の人には絶対には浮かばないでしょう。森本さん自身、学生時代から共同作業が苦手で、かいしゃでも組織の駒になりきれない。生きづらさを感じていた時、人から無料で食事と寝床を提供してもらう「プロ奢ラレヤー」という存在を知った。それで、「協調性のなさというコンプレックスを逆に売りにした活動をするという発想が浮かんだという。「依頼者がポジティブな効果を得ているかなんてわからないし、興味もない」と言う。 このスタンスが長続きしている所以だろう。真面目に考えすぎて相手の心の中に入り込むようなことになるのを避けている。それでは本末転倒になる。付かず離れず、そばにいて見守っているだけ。まるで神さまのような存在だ。 固定化したコミュニティーの中の息苦しさを抱えている人は多いと感じている。依存先はたくさんあった方が良い。自分はその中の一つの隠れ家なのかもという。 1時間1千円でレンタルされる「おっさん」もいる。45~55歳を中心に約70人が稼働している「おっさんれんたる」というのがある。登録料5,000円を支払ってレンタルされる権利を買う。「おっさん」の東海林大介さん(55)「時給千円ではペイできないので、お金目的ではない。人に感謝されることに喜びを感じるんです」 依頼者はお金を払い「話を聞いて」「同行して」と、身近ではない人に心を許す。SNSが普及して、いつでも誰とでも繋がれるようになった反面、強く、深い人間関係を作るのが苦手な人が増えているという。情報過多、人間関係の積み重なりで、息苦しくなっている。SNS世代は案外孤立してしまっているというのが現状のようだ。 自分の存在を認めてほしい、話を聞いてほしいと心の発露を求めている人がたくさんいる。ただ想像出来るような答えしか返って来なかったり、分別臭い意見や常識的なものに囚われた話など聞きたくもない。憂さ晴らしに愚痴を聞いてくれる人、黙って心に寄り添ってくれる人を求めている。 生活の個人化が進み、3人に1人が孤独を感じ、特に20~40歳代でその程度が強いという調査結果がある。初めて会う人やたまたま居合わせた人との交わりを「弱い紐帯(ちゅうたい)」と言う。強ければいいわけではなく、弱いからこそ愚痴が言えたり、要望を聞いてもらえたりする。 緩やかにかすかにつながっていて、何か困ったことが起った拍子につながりがオンになるような関係を作っておいた方がいいらしい。