国境の曖昧な要件を法的に規定
国境の曖昧な要件を法的に規定尾松 亮地域のルールで縛る2020年6月16日、マサチューセッツ州政府は同州に立地するビルグリム原子力発電所の廃炉に関して事業者Holtec社と協定を締結した。この協定は、マサチューセッツ州がHoltec社〈及びその子会社〉による廃炉実施を認める代わりに、廃炉計画に対しての追加の要件、ルールを設定したものだ。この協定により、廃炉完了後の跡地再利用に向けた汚染提言は連邦政府の定める0.25㍉シーベルトよりも厳しい、州基準の年間0.1㍉シーベルトが適用される。廃炉完了までに敷地内の使用済み燃料貯蔵施設を撤去する義務も定められた。マサチューセッツ州の協定は、地域主導で「廃炉完了」の姿を定め、廃炉事業を地域のルールで縛る試みである。このように廃炉の要件を立地州が規定する取り組みは、マサチューセッツ州が初めてではない。例えば18年3月2日付でバーモント州政府は廃炉事業者Northstar社と覚書(MOU)を締結している。14年末に閉鎖したバーモントヤンキー原発(同州ウィンダム郡)の廃炉に関して、同州政府がNorthStar社に追加の要件を義務付けたものだ。このMOUは、汚染除去実施のために財源確保義務や、バーモント州独自の放射線防護基準(年間0.15㍉シーベルト)に従うことなど、追加要件を定めている。同MOUは、廃炉に際して徹底した汚染除去を遂行させるため、サイト回復信用基金を設け、総額2億5000万ドル以上の財源を確保することを事業者に義務付けた。さらにNorthStar社は予期せぬ追加の汚染が発見された場合を想定して3000万ドル分の保険に加入する義務を負う。そして同社は廃炉事業における予算執行状況を毎月バーモント州政府に報告しなければならない。バーモント州のMOUは「全ての汚染された地下構造物の撤去」「地下4㌳までの深さに位置する全ての構造物の撤去」など、解体撤去に係る詳細ルールも定めている。政府の規制委員会が定める「廃炉要件」では「どこまで除染するのか」「どこまで施設・設備を撤去するのか」など曖昧な点も多い。国の要件が曖昧な部分は、立地地域が先手を打って「廃炉のルール」「廃炉完了の姿」を法的に規定しなければならない。上述の州政府による協定やMOU締結の取り組みは、そのことを物語っている。(廃炉制度研究会代表) 【廃炉の時代―課題と対策―⑭】聖教新聞2021.6.29