社会は変えられる
社会活動家・法政大学教授 湯浅 誠 このコラムも最終回。「世代を超えて考えたい」というタイトル通り、おばあちゃんや高校生が読んでも、ご納得いただけるように話してきたつもりですが、いかがだったでしょうか。 日本社会は、信じられないほど豊かになりました。同時に、飽食の時代において、かつての「欠食児童」のような子がいるという現実も、やはりなかなか想像しにくい。 「せっかく生まれてきてんから、はらいっぱい食べて大きくなりたい」と大阪の男の子が書いたのは、戦後すぐではなく「いま」の話ですが、この時代にどうしてそうなるのか、すぐには理解しがたいと思います。 それを受け入れるには、勇気と時間がかかります。「そんなわけない」と否定する方が、労力も少なくて済みます。ですが「はらいっぱい食べて大きくなりたい」と言った子は、消えてなくならない。この社会で育ち、私たちの老後を支える担い手になります。だから私は、その子に元気に、前向きに、生きてほしい。 私たちにできることはなんだろう、と考えてきました。このコラムでは、その一端をご紹介しました。「これならできそうだ」と感じられることが一つでもあったのなら、とてもうれしく思います。私たちの社会は、私たちの手で変えていける。皆さんと共にそう信じたいという願いを記して、このコラムを終えます。ありがとうございました。 最後に、現在、こども食堂を、より多くの子どもたちが立ち寄れる安心・安全な居場所にするための募金をインターネット上で行っています。ご協力いただければ幸いです。 (おわり) 【世代を超えて考えたい「子どもの貧困」<15>】公明新聞2018.4.24