50年に1度
50年に1度武庫川女子大学教授 丸山 健夫「一日に降った雨としては50年に1度の大雨だった」。この確立、一体どんな風に計算するのだろう。ある場所の1年間で、1日に降った雨の量である日雨量の最大値を調べる。たとえば過去100年間のデータがあるなら、それぞれの年で最大値のデータが100個分かる。次にこの100個を小さい順に並べる。そして小さいものから数えて98番目の雨量を調べる。今は、300㍉だったとしよう。そうすると300㍉以上のデータは、今が98番目なので、残るは2個だけ。100年中2年だけが300ミリ以上である。100このうちの2個だから2%、つまりは50分の1だ。1日に300ミリ以上の雨が降れば、50年に1度の大雨になる。実際には、横軸に雨量を縦軸にカウントを取ってグラフを描き、きれいな曲線で近似した上で、同じ原理で計算する。重要なのは、50年に1度という確率は、過去のデータだけで計算されているという点だ。かつて世界各地の雨の統計をしたことがある。その時、温帯に比べて亜熱帯では、1年のうちでも1日の中でも、雨は時間的に偏って降る傾向があることがわかった。雨季と乾季、スコールなどがよい例だ。暑い地域では、雨は時間的に集中して降る傾向がある。そう考えると最近の日本の雨は、この亜熱帯的傾向が強くなったように感じる。地球温暖化の影響かもしれない。過去のデータだけから計算される50年に1度の大雨という表現。しかし気候という御天気のベース自体が変化すれば、その予測も変わらざるを得ない。何事においても、過去からだけの予測にとらわれない柔軟な思考で、対策を考えなければならない時代となった。 【すなどけい】公明新聞2020.7.17